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Do it ourselves! 汗をかき、手を働かせる…株式会社TOKIO・国分太一のチーム共創論 (全3記事)

独立後100社から声がかかったTOKIOが丸亀製麺とコラボしたわけ 国分太一氏が語る、企業との協業で得た視点

SmartHRが主催するイベント「SmartHR Connect 〜AIとHRテクノロジーが紡ぐ革新的企業への進化〜」が開催され、多様な分野のエキスパートたちがHRテクノロジーと人事戦略の未来について語りました。「Do it ourselves! 汗をかき、手を働かせる…株式会社TOKIO・国分太一のチーム共創論」と題したセッションには、国分太一氏と髙倉千春氏の2名が登壇。本記事では、企業との協業で得た視点や、今後の企業の成長におけるエンターテインメントの役割について語りました。

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コンフォートゾーンから抜け出す必要があったTOKIO

髙倉千春氏(以下、髙倉):日本企業だと「コンフォートゾーン(心地いいところ)から抜け出さないと新しいものは起きない」と言われています。でも心地良いいところから抜け出すのにはすごく勇気がいるんですよ。私は株式会社TOKIOを起こした時がそれ(コンフォートゾーンを抜け出した時)なのかなと思っていたんですけど、その一歩前にやっていらっしゃったんですね。

国分太一氏(以下、国分):なんにもわかっていなかったけれど、解釈するとそうなんだなと思います。

髙倉:そこでおそらく一回ミュージックだけのコンフォートゾーンから抜け出さなきゃいけない。日本企業でいうとそんな外部環境が来ちゃったわけですよね。

『ミュージックステーション』や黒柳徹子さんが司会の『ザ・ベストテン』を、私もよく見ていました。でも失礼ながら「もう、ああいうものじゃ生きていけない」という話もあって。「じゃあ、TOKIOにどうやってもう1回違うステージで活躍してもらうか」という時に、後ろには拡大した“チームTOKIO”がいたんですね。

国分:当時からすごくたくさんいました。

髙倉:なるほど。でもその人たちとの関係性がちゃんとできていないと「TOKIOを支援しよう」とは思わないと思うんですよ。

だって申し訳ないけど、後ろの人はTOKIOさんじゃなくてSMAPを応援してもいいわけです。でもTOKIOを信じて「この人たちはすごいんだ。次のステージで輝かせよう」となるには、どういうことがあったんですかね?

国分:……魅力(笑)? それはちょっと、どうなんですかね。当時僕はすごく必死だったから、感謝の気持ちはあるけれど、なぜ僕らに対してそれだけ寄り添ってくれたのかは、正直わかっていないかもしれないです。なんなんですかね?

髙倉:SMAPも好きですし嵐も大好きですけど。違うのはTOKIOの方は一人ひとりの人間味がすごく溢れていますよね。

国分:うーん、そうですか?

髙倉:チーム戦になった時にそういうものが出て「応援しよう」と思われた方がたくさんいらっしゃるんじゃないかと。しかもそこに感謝の念を持っていらっしゃるわけじゃないですか。

国分:そうですね。

お互いプロだからこそ、企業に対して遠慮をしたくない

髙倉:今、日本企業では「最終的には関係性や信頼が組織の力じゃないか」と言われています。

国分:過去をあまり振り返ることはないですが、ものすごくいいチームであったことは間違いないし、胸を張ってそう言えますね。

髙倉:そうですね。それと社長のメッセージを読んだんですけど、「たくさんのプロとタッグを組むんだ。(自分たちは)プロフェッショナルなんだ」とおっしゃっていて。

私も芸能界の方と人事対話をさせていただくことがあるんですが、(芸能界は)本当に限られた時間での勝負。TOKIOさんはすごくたくさんのファンを抱えていらっしゃいますが、どうやってファンベースを作るのかも大変じゃないですか。

組織人はぬるくて、会社にいるとそれなりに生きていける。でも芸能界の方は本当にプロフェッショナルだなと思うんです。プロとして「これは守っていきたい」「チームでこれは大事にしよう」という思いを大事にしている。それをもとにほかの方々とつながっていくような……。そこはどうですか。

国分:本当にそうですね。僕はエンターテインメントの中でしか生きてきていない。けれども各企業さんとタッグを組むことで、もしかしたら役に立つことがあるのではないかと感じているんです。

僕らもプロフェッショナルだし、企業さんもその仕事ではプロだからこそ遠慮もしたくない。新しいプロジェクトには、お互いが胸を張りながら同じ50パーセント・50パーセントぐらいの力で向き合えたらいいなと思っています。

この社会にジョインすることで、エンターテインメントが役に立つことも絶対にあるんじゃないかなと感じています。

100社から声がかかる中で、丸亀製麺と共創パートナーに

髙倉:すばらしいですね。プロフェッショナルだからプロフェッショナルを尊重できるということですよね。では具体的なお話を聞きたいなあと思っています。株式会社TOKIOさんは、どんなことをおやりになっているのか、ぜひご披露いただきたいと思います。

国分:そうですね。会社を立ち上げた時、まず最初に日本経済新聞さんに「私たちは会社を立ち上げます」という広告を出させてもらいました。

その中に「私たちとなにか一緒にやりませんか」というメッセージも伝えたんです。するとホームページ上に大・中・小関係なく100社の会社さんからお声をいただきました。

メンバーと話しながらその中から1社だけ選んで、僕らの思いとその会社の方の思いをつなげたものをかたちにしたんです。

そこから丸亀製麺さんと共創パートナーというかたちで商品開発をしたり、子どもプロジェクト(わくわく食育プロジェクト)として「食育を通して子どもたちとどうやって向き合っていくか」を一緒に考えさせてもらったりしています。

今は福島県の西郷村に東京ドーム2個分のフィールドを買いまして、株式会社TOKIOではなく、株式会社TOKIO-BAというまた新たなプロジェクトを始めています。このフィールドではいろいろなモノづくりをして、人に集まってもらおうと思っていて。

自分たちはエンターテインメントで人を集めることはやってきましたが、商業施設を作ることはもう「ど素人中のど素人」なので、ちょっとマジで大変です(笑)。でも一歩踏み出し、失敗を見せていくことで、自分ごととして考えてもらえるフィールド作りができるんじゃないかなと思っています。

この場所は成長していく場所だと考えているんですね。そのためにはいろいろな人たちの力がすごく必要で、自分ごとにしてもらうことが大切かなと。だからこそ完璧には見せたくない。「心配だなぁ」と思えばたぶん自分ごととして考えてくれるのかなと思っています。

うちの社長がここに来てくれた人たちと農業体験をしたり、夏野菜を一緒に植えたりもしていて。今は本当になにもないので、こうやって今のフィールドを見てもらい、数年後にここがどう変わっていくのか。その目撃者になってもらうために、いろいろとやらせてもらっていますが、本当に大変です。

今こそ、人間としての五感を鍛えることが大事

髙倉:汗をかいて、自ら大変なことをやって、おそらく失敗もされて。すてきですね。かっこ悪いTOKIOも見せているんだと思いますけど、そうやって成長しようとしているTOKIOの方の背中を見て、子どもたちは感動するんでしょうね。

国分:そうですね。『ザ!鉄腕!DASH!!』をやっていなければこういうフィールド作りも考えていなかったと思うんです。自然の大切さや五感で感じたことが「こんなに大切なんだな」とあらためて40代で気づかせてもらっていて。それをちゃんと人に伝えていくことが大切なのかなと。それがTOKIOの役割かなとも感じております。

髙倉:人事を長らくやらせてもらって、今だからこそやらなきゃいけないなと思うのは、人間としての五感を鍛えることだと思うんですよね。ビルの中で仕事をしていると「こういうのをやってください、こういう部局です」と縦割りなことが多い。まじめにちゃんとやるとお給料をいただいてボーナスが入る。

これは日本が成長していく時に絶対に必要だったんですけど、でもちゃんとやりすぎると、新しいことが起こらない。実は今「人間としての五感をもう1回よみがえらせよう」というのがあるんです。だからTOKIOさんのやっていることは、おそらく企業研修にお使いになると……。

国分:あ、そうなんですよ! 実は今年(2024年)ここで企業研修を1回やったんですよ。新入社員の方にまずはチームビルディングを。例えば「鳥小屋を作ってください」という話をします。設計図は作っちゃだめで、ここにいるチームで「鳥がどうやったらこの部屋に来るか」だけを考えてくださいと。

釘を打つこともやったことがない人たちでも、チームごとに話し合いながらやっている。僕も参加させてもらって、「それでは(鳥は)来ないよ」と言うと「いや、こういう思いで作っているから来るんですよ」と言われたりして、すごく良かったんですよ。

髙倉:おもしろい。

国分:みなさん、ぜひ研修に使ってもらってもかまいませんので、よろしくお願いします。

社会課題やサステナビリティを考える上で欠かせない視点

髙倉:アイドルのTOKIOと一緒にやれるんだったら私も行きます! いや、本当にまじめな話、(ふだん)ちゃんと整っている中で仕事しているじゃないですか。今、経済界に変革のビッグウェーブが来ているんですよ。

このビッグウェーブをどう乗り越えるかは、ちゃんとしたところで仕事をしていても感性が鈍るだけなんですね。だから一回飛び出さないとだめ。極端ですけど、私はビルから出たほうがいいと思っています。

国分:1回土を触ってみるとか。

髙倉:土は大事ですよ。次の企業の社会課題を解決するとかサステナビリティとか、みなさんおっしゃっているじゃないですか。でも「人間は何のために生きているか」を考えないと、絶対に答えは出ないと私は心から思っています。

国分:会社のことだけではなくて、本来の人間として……を考えないといけない。

髙倉:そうです。人間がどう生きていくかの原点に触れないと、おそらく次には行けない。ヨーロッパでは実際にやり始めているんですよ。だからそういう意味じゃ(TOKIOさんは)先駆的な取り組み!

国分:ありがとうございます。

髙倉:ちょっと(話が)戻っちゃうんですけど、丸亀製麺の話をもうちょっと聞いてもいいですか。実は丸亀製麺が好きで、会社に勤めていた時に、毎日丸亀製麺に行っていたんです。トマたまカレーうどん、残念ながら売り切れですよね。

国分:そうですね。(期間)限定だったりするので。

髙倉:あれはおいしい。「おいしかったですよね」と言わざるを得ないのかな。

国分:あれはうちの副社長の松岡(昌宏)がリーダーになって考えたんです。丸亀製麺さんは味のプロじゃないですか。松岡が考えたものを味のプロにちゃんと伝えて動かしたのは、本当にすごいなと。

髙倉:いやいや、すごいセンスだと思います。私はロートの前は味の素で働いていたんです。だから味のことはだいたいわかるんですけど、トマトはものすごくうまみ成分が多くて、あれをカレーに入れるセンスはすごいなと思っていて。

国分:へー、(松岡に)伝えておきます。

多くの応募があった中で、なぜ丸亀製麺だったのか

髙倉:ぜひ! 何百件と応募があった会社から、なんで丸亀だったんですか。

国分:これはまた違うプロジェクトになるんですが、僕らが会社を立ち上げた当時、丸亀製麺さんも「うどんで日本を元気に」というワードだったんですよね。当時僕らが新しいことをやろうと思った時に「こんな会社、おもしろそうだね」というノリで、共創パートナーとして組んでいただけた。

僕らからすると丸亀製麺さんの遊び心が、今も共創パートナーにつながってるのかなと思っています。そこはもう感謝しかないですし、(僕らに)エンターテインメントの可能性を感じてくれたのかなと思います。

髙倉:なるほど。

国分:(丸亀さんと)打ち合わせをしていても、受け止める器の大きさは本当にすごいなと思っていて。

髙倉:じゃあTOKIOさんが「こんなんどうですか」「トマトはどうですか」と言っても、「素人が何を言ってるの?」じゃなくてちゃんと受け止めてくれたんですね。

国分:受け止めてくれます。でも「持ち帰ります」と言われます。

髙倉:(笑)。

国分:その場ではなにも決まらない。でも受け止めて持ち帰ってもらって、それがかたちになると、僕らが言ってきたことは間違いじゃなかったんだなとも思うし、自信にもつながる。

髙倉:そうですよね。人間同士の縁なので、ある種向こうも感覚的に「ここがおもしろいじゃん」と思ったんだと思うんですよ。でもそれをかたちにするのは実は難しくて。

国分:いやぁ、そうですよね。

ダメ元で提案した丸亀製麺のキャラクター

髙倉:はい。縁だけじゃ事業は起こらない。トマたまカレーうどんができるまでの過程で、いろいろな話が出てきたと思うんです。TOKIOさんとしては学びもあったんじゃないかなと思うんですけど、どうでしたか。

国分:先ほどからずっと「職に対するプロ」と言ってますけど、僕たちが見せているのはエンターテインメントの表現の部分。でも丸亀製麺さんは味の部分を追求し、満足度を上げていくプロ意識がすごくて。

当たり前ですが、そういうところは本当に勉強させてもらっています。今までに考えたことのない角度まで気にされているんだなとあらためて感じました。でもまったく関係ない異業種とジョインできるから、とにかく楽しいですね。(当時から)丸亀製麺さんにはロゴはあったんですが、キャラクターがいてもいいんじゃないかと思って……。

髙倉:まる亀ちゃん。

国分:そう、僕がまる亀ちゃんを描いたんですよ。

髙倉:見ました。見ました。

国分:ダメ元で(キャラクターが)あってもいいんじゃないかなと話したら、「その発想は実はなかった」と言ってくれて。人を喜ばせる要素やターゲット層を若めにした時に、ああいうキャラクターが立つんじゃないかなと思ったんです。

子どもも来てくれる丸亀製麺さんだったら、「まる亀ちゃんがいるね」とほっこりするのもいいんじゃないかなと。そしたら「ぜひ、それは作らせてください」となったので、勇気を出して言ってみるのも大切なのかなぁと思いました。

髙倉:そうですよね。さっきのプロフェッショナルの話につながるんですけど、お互いに餅は餅屋で専門家だと。お互いを尊重し「リスペクトして入れてみよう」というオープンさがある。そのオープンさは、ある意味自信があるからなんですよね。

TOKIOさんはエンターテインメントで自信があるし、丸亀さんは「味のことは任せてくれ」と。それぞれに自信があるからこそ、相手に胸襟を開く気がしています。これが中途半端だと「いや、俺はなんでも知っているから余計なことは言うなよ」となっちゃうんだけど、そこがすばらしいのよ。

国分:そこを受け止める器はすごい。

髙倉:そうですね。

シビアでまじめ過ぎる日本企業を揺さぶる力

国分:正直大きい会社になればなるほど、いろいろな部分で「リスクをとらないようにしなきゃ」ということもあるとは思うんですが、(丸亀さんは)スピードも早いなとずっと感じています。

髙倉:そうですか。おもしろいですね。今、楽しいとおっしゃったじゃないですか。やっぱり人間なので楽しさがないと続かないと思うんですよ。

国分:本当にそうですね。

髙倉:日本人はまじめだから「楽しく学んだり勉強したりするのは良くない」「つらくないとだめでしょ」となるんだけど。私は楽しい時に初めてエネルギーが出てくると思うんです。エンターテインメントは楽しいじゃないですか。

国分:そうですね。人を喜ばせようという部分なので。

髙倉:これからはエンターテインメントの役割がすごく大きい。シビアでまじめ過ぎる日本企業を揺さぶるのに、もしかして必要なのはエンターテインメントなのかなとちょっと思ったりもします。

国分:そうですね。ここ数年、もうちょっと前からSDGsやサステナブルというワードが出てきてます。僕らはその前の前の前ぐらいから『ザ!鉄腕!DASH!!』でいろいろなことをやってきた。そのワードが出てくる前から経験させてもらったことは、すごく自信になっているなぁとは思いますね。

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