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経営者力診断スペシャルトークライブ:上司としての悩みを一掃する! Z世代を育てる・人を動かす・転職で成功する、上司コミュニケーション術(全6記事)

若手が上司や取引先を動かすためのコミュニケーション術 知ったかぶりせず「バカになって聞いてみる」ことの大切さ

経営者やリーダー向けの各種セミナーを開催する経営者JPのイベントに、『部下を育てる上司が絶対に使わない残念な言葉30』著者の曽和利光氏が登壇。「Z世代を育てる・人を動かす・転職で成功する、上司コミュニケーション術」をテーマに講演を行いました。本記事では、相手を動かすための手法「シン報連相」について解説します。

前回の記事はこちら

相手を動かすための手法「シン報連相」とは

曽和利光氏(以下、曽和):日本ってよく「ミドルアップダウン」って……。

井上和幸氏(以下、井上):言いますよね。

曽和:元神戸大学の金井壽宏先生が昔から言っていましたが、真ん中の人が上にも下にも(マネジメントをする)という感じで、「日本の組織の強さは課長の強さだ」みたいな感じだったと思います。つまり、中間管理職の方々にとっても同じというか。

もしかしたら日本の社会にありがちな権力構造なのかもしれないんですが、おっしゃるとおりで、実は管理職の方々も同じような能力が必要なのではないかとは確かに思います。

井上:なるほど。たぶんみなさんがご興味があるのが、「報連相だから知っているよ」という方々も多いとは思うものの、何が「シン」なんだろう? って思っていらっしゃる方もいらっしゃるんじゃないかと思うので、ぜひそのへんを。

曽和:まず前提として、この中(『シン報連相』)にはいろんな手法論が書いてあるんですが、やり方は千差万別というか。自分の持っているキャラってあるじゃないですか。

例えば、すごくガンガン前に出て、生意気だから上に気に入られるタイプもあれば、「はい、わかりました!」と言って、なんでも柔軟にやるタイプもあったりするので。自分のタイプと動かしたい人のタイプの2つの組み合わせによって、使える手法がグワッと変わってくるというのがこの本です。

実は、「1個のやり方で上を動かすことができますよ」ということは書いていないんですね。「こういうやり方もあるし、この場面においてはこういうやり方もある」と、いっぱい選択肢が書いてある感じなんです。

ですから、本当は「ここは何」って言えるといいんですが、実はあんまりないというか(笑)。そのケースに合わせてコンティンジェンシーに、場合によって合わせていくのがコアかなと思います。

井上:なるほど。

若手のうちは「聞くこと」自体が褒められる

曽和:ただ、じゃあまったくコアがないというと、1つはアサーティブなコミュニケーション。アサーションとかアサーティブネスとか、直訳するとアサーションって「主張」という意味ですが、日本語で「主張」と言うと固いので英語のままで使われている言葉がありますよね。要は、角が立たない方法で自分の主張したいことをやるということです。

アサーショントレーニングが2日とか3日あるぐらい、けっこう体系化されていて。ユーメッセージ、アイメッセージもそうですし、DESC法、イエスバット法とかいっぱいあるんですよね。要は、単に主張して言えばいいわけではない。相手の気持ちに立って、納得感を持って素直に受け止められるような主張の仕方をすることが、コアと言えばコアだと思うんですね。

それがいったい何なのかというのは、自分のキャラと動かしたい相手のキャラによって違ってくる。ちょっと一言で言うのは難しいんですが、こんなところですかね。

井上:なるほど。僕がどうこうはないんですが、おうかがいしたり本を拝見していて、曽和さんがおっしゃるとおり、くくりは本当に千差万別かなと思います。

グッドコミュニケーションの切り口としての報連相の話をしてくださっていると思うんですが、その観点の関わり方で言った時に、ふと僕が思ったことがあって。どなたか忘れちゃったんですが、確か僕も20代の時に言われたことがあって。その後、僕のメンバーになってくれている人、特に若手世代の方とかに折々言っていたことがあります。

年齢で切る必要はあんまりないんですが、わかりやすい話だと思うので、例えば「20代の時は何を聞いたって恥ずかしくないんだから、バカだと思って聞きまくったほうがいいぞ」って、僕自身も言われたことがあるんですよ。これが1つ。

ただ、後段があるんですが、「30歳を超えてそれをやっていたらバカだぞ」って(笑)。うちの若い世代のメンバーとかには言ったことがあるんですが、若手の時は本当に聞くこと自体が褒められるので。逆に言うと、自分がわからないことをどんどん聞きまくるとか、知りたいことについてどんどん聞きまくる。

知ったかぶりをせずにバカになって聞いてみる

井上:聞かれるコミュニケーションの働きかけをされるって、たぶん上司やお取引先の方とかからするとうれしいじゃないですか。そういうかたちでどんどん(自分から質問をする)。あんまり賢すぎるやつって、どっちかっていうと若い時は嫌われると思うんですよね。

曽和:そうですね。

井上:本質的には理解をしていかなきゃダメなんだけど、あんまり勉強して、かしこまって「それって御社ではこういうことですよね」と言うよりは、「えっ、それってどういうことなんですか?」と入っていけるほうがいい。これって年齢じゃなくて、社内も含めて関係する人との専門性の差異でも使えるんですよね。

例えば井上がマーケティングのメンバーだったとすると、人事に関することは別に自分は専門ではないわけだし、年齢が上だろうが下だろうが、人事のプロフェッショナルである曽和さんに臆せずどんどん聞くほうがいいわけですよね。

でも、マーケのことに関しては、逆に言うとちゃんと知らなきゃダメだったりする。「30代は、ただバカじゃダメだぞ」というのは、そういうことでもあるんですよね。30代というのも、TPOによってどういうことをやっているかによって違うと思うんですが。

30代に入っているぐらいだったら、すでに自分が確立している部分もあるから、今度はそこのところでバリューを提供できるような報連相なりアウトプットができないと、社内であれ、社外であれ、相手の方からしたら認められなくなる。こういう構造は1つあるかなというのをちょっと思い出したんですよ。

曽和:なるほど。井上さんに言われて気づいたというか、わかったような気がするんですが、確かに(コミュニケーションの取り方は)いろいろだという話をしました。

共通点として、コミュニケーションの基本だとは思うんですが、相手に合わせてやるのは『シン報連相』的な上向きのリーダーシップにおいても当然です。でもそのためには、相手を知ろうとする強烈な素直さであったり、わかったつもりや知ったかぶりするんじゃなくて、バカになって聞いてみるとか。

ほかにも何かあるとすれば、これも昔よく言われたんですが、「TTP(徹底的にパクれ)」とか言われたりしますよね(笑)。「この人は」って思う人がいるんだったら、何から何まで真似してみろと。何から何までというのは仕事だけじゃなくて、朝(会社に)来る時間から、スケジューリングの方法から、飲みにいく場所から、身につけているものから。

何が効いているのかなんていうのは、そんなもんお前にわかるわけないだろうと。やってみて、「これは別に趣味やな」「朝8時に来るのが意外にすごいコツだぞ」みたいなものが、ようやくわかるというんですかね。

多くの方が言っている話にもつながりますが、素直さみたいなものや吸収力があってこそ、上の人の視野がようやくわかってくるといいますか。なので、上向きのリーダーシップでもあるのかもしれませんね。

リクルート流「わからないことはお客さまに聞け」というスタンス

井上:もう1つリクルートのことで思い出したのが、僕の世代よりも上の人たちで使われていたもので、「わからないことはお客さまに聞け」っていうフレーズがあったんですよ。

事件かなんかで……もっと前になるのかな? 「そういうスタンスだとプロフェッショナリティがないから」ということで、その後はあまり言わないようにしようとなったらしいんですが。僕は社誌か何かで最初に読んで、「それはそう。聞けばいいよな」って思ったんですよ。

曽和:「大いなる素人集団」という言い方がありましたよね。

井上:大いなる素人集団ですよね。

曽和:「大いなるって何だ?」みたいな。でも、そういう意味ですよね。もちろん前提として、「何も勉強せずに言って、なんでも教えてもらえ」という意味じゃないと思うんですよね。だけど、そう聞こえるのでたぶん使わないようになったと思うんですが。

井上:かもしれないですね。

曽和:知ったかぶりするわけじゃなくて、調べてわからなかったことや聞いてわからなかったことは、徹底的にお客さまに聞くことによって、本当にお客さまの立場をわかることができる。

井上:今、マーケティングでは「顧客主義」とか「顧客ニーズを原点に」ということがすごく言われるようになっていると思うんですが、たぶんそれをもともと体現していたんだろうなって思うんですよね。

曽和:そうですね。上向きのリーダーシップにも通ずることなんじゃないのかと思います。

聞くと、「お前、そんなことも知らないのか」「調べてから言え」って怒られるかもしれないんですが、確かにそれはダメな場合もあると思います。でも半分は、なんかテヘペロでいいと思うんですよね。「あっ、すみませんでした」みたいな感じで(笑)。それが今は、ちょっとググったら出てくるとか、それでわかったふうになったりする。

井上:そうなんですよね。

組織で起きる問題のほとんどは誤解から生まれる

曽和:タイパ重視の世界ということで、本を読むんじゃなくて、切り抜きのほうを見て理解した感じになるとか。本の解説YouTubeもいっぱいあるじゃないですか。あんなのでわかったふうになるのとちょっと近いというか、人に対する理解も「コンパクトにやっちゃおう」っていう話もあるのかなっていう気もするんです。

井上:そうですね。

曽和:でも、人みたいな複雑なものを理解しようとする時には、それでは今の時代においてはなかなか難しいんだろうなと思いますね。

井上:プログラム1(残念な上司の言葉と対策)のところで曽和さんがおっしゃった、善な意識で一生懸命知ろうとして情報収集をした時に、変なステレオタイプで、部下から「わかってないな」と思われるという話がありましたが、今の話は逆の立場からして同じようなことになりますよね。

部下側からした時に、上司から見て「ちょっとわかってないな」ってなるのが、たぶん今の話だという感じがしますね。

曽和:そうです。だから、この本って対称なんですよね。歩み寄ろうという感じかもしれない(笑)。

井上:なるほど。

曽和:上司の人は『部下を育てる上司が絶対に使わない残念な言葉30』を読んでもらって、部下の方は『シン報連相』を読んでいただくと、すごく誤解が解けるというか。

井上:別に曽和さんの本の営業トークじゃなくて、全員の立場があるから、本音で両方を読むのがいいと思いますね。

曽和:営業トークでもあるんですが(笑)。組織で起こっていることのほとんどは誤解だなと思っているので、歩み寄るという感じです。いろいろ問題があるといっても、結局、そんな悪人が世の中にいっぱいいるわけではなくて。上司も動機は善、部下も動機は善。ところがいろいろなボタンの掛け違いだったりで、いろんな問題が起こっている。

部下は上向きのリーダーシップを持つ。マネジメントというのは、結局は自分の見え方について自己理解をすることですよね。こういうことをすることによって誤解がどんどん減っていけば、コミュニケーションコストが減って、もともと持っている善意が現れて、いい関係性になる。こんな仕組みじゃないかなと思うんです。

井上:なるほど、ありがとうございます。これもまた後でラップアップすると思います。

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