2024.12.10
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経営者力診断スペシャルトークライブ:上司としての悩みを一掃する! Z世代を育てる・人を動かす・転職で成功する、上司コミュニケーション術(全6記事)
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経営者やリーダー向けの各種セミナーを開催する経営者JPのイベントに、『部下を育てる上司が絶対に使わない残念な言葉30』著者の曽和利光氏が登壇。「Z世代を育てる・人を動かす・転職で成功する、上司コミュニケーション術」をテーマに講演を行いました。本記事では、上司が良かれと思って言った言葉が、部下にとっては逆効果になってしまう理由を語ります。
曽和利光氏(以下、曽和):(残念な上司の言葉の)3つ目の「責任感がないなぁ」です。これはまさに一昔前のベストセラーだった『嫌われる勇気』だと思うんですね。
フラットな世の中になってきて、会社の中での上下関係も昔とはだいぶ違ってきています。なんなら年功序列もなくなってきて、年下の上司がいたりすることも、これが出てきている背景だと思います。だから、みんなの意見を聞いたりとか、妙に民主的にやろうとするというんですかね。
あとは、あまりにも「君の気持ちはわかるよ」と言う。この中(『部下を育てる上司が絶対に使わない残念な言葉30』)にも出したんですが。
これはみんな言っちゃいけないってわかると思うんですが、「俺は違うと思うんだけど、会社がこういう判断だったんだよな。ごめんな」という言い方は、共感しているようでいて、向こうからすると「いや、そう思うんだったら徹底的に上と喧嘩してくれよ」みたいに思うというんですかね。
組織の一員として議論は徹底的にしたものの、もうやると決まったんだったら、いかに自分がその方針に反対だったとしても、本当は徹底的にメンバーを動機付けをするほうに走らなきゃいけないと思うんです。
それなのに、まだ部下におもねるかたちで「俺は違うと思うんだけどこうなっちゃったから、しゃあないからやろうよ」って言うと、部下は部下で「それもかっこ悪い」って思うというか。
井上和幸氏(以下、井上):最悪ですよね。
曽和:最悪ですよね(笑)。こういう一連の言葉が3つ目かなと思います。
井上:そうですね。
曽和:お話の中で通底するところがコミュニケーションということで、言葉や表現の大事さについてお話ししてくださっているんですが、その前にファクトとしての行動があるということだと思うんですよね。そことの整合性がちゃんとあれば、先ほどのワードは非常に響く。
でも、言葉は一見わかったふうだけど、実際の行動がまったく逆だったり、あるいは行動されていなかったりすると、逆に受け手からするとネガティブになる。
曽和:そのとおりですね。だから、「わかっていないな」と思われないためには、わかる努力をしていたら、わかってなかったとしても変には思われないと思うんですよ。
むしろ「こんなに聞いてくれていても、それはわからないかも……僕が表現できなかったな」って思うと思いますし、腹案を持った上でやっているんだったら、まどろっこしいとは思われないですね。
本当に上と戦っているのが見えていたら、「今回は右に行くことに決まったからがんばろうぜ」って言ったら、本当はもう言わずもがなという感じで信じてくれると思うんです。
なので結局、言葉というのは最後の締めみたいなものです。マネジメントだけじゃないと思いますが、仕事は行動がすべてということで、マネジメントにも同じことが言えるということだと思いますね。
井上:そうですよね。
曽和:はい。
曽和:あと2つだけなので言っちゃうと、「古臭いなぁ」というのは、要は「環境が違うのに過去の自慢をされても」という話はよくある話だと思います。
特に大きな違いって、一番かどうかはわからないですが、労働時間はだいぶ減っていますよね。日本は決して働きすぎどころか、欧米先進諸国と数字を比べても働いていないほうに入ってきています。
井上:役職別とかで見ますと、顕著に出てきますよね。
曽和:そうですね。
井上:逆に言うと、欧米の方、エグゼクティブはかなりハードワークでもあったり。
曽和:そうですね。いわゆるトップのエリート層みたいな方々はちょっと別かもしれないんですが、若手とかを見ていると、ここ数年だけでも(労働時間が)すごく減っているところがある。それを「俺は猛烈に働いたから」みたいな話があったりとか。
これは本にも書いたんですが、効率的に働く仕組みを先人たちが作ってくれていれば、本当はこんな非効率なシステムが今ここには残っていなくて、猛烈に働く必要なんかなかった。なのに、「お前らがシステムを変えずに猛烈に働いて、なんとかしちゃったから残ってんじゃねぇか」感があるというか。
井上:なるほど、確かにね。
曽和:システムというのは別にITシステムのことだけじゃなくて、マネジメントシステム、稟議書、意思決定も全部含めてのことなんですが、若手の方々にいろいろと話を聞くと、「本当は変えるべきレガシーなシステムをなんで残したんだ?」「『猛烈に俺は働いた』じゃねぇよ。戦うところ、間違ってね?」みたいな。これ、よくある話だと思うんですけどね。
曽和:例えばリクルートでよくあった話だと思うんですが、リクルートって目標を達成しちゃうと、さらに目標が高くなるじゃないですか。非合理な目標を与えられて、無理してでも達成しちゃうので、それでマネージャーに「なっ、できただろ?」みたいな感じで言われて(笑)、また目標が高くなる。それが組織的に世代間で行われていることがあって。
だから「古臭い」という言い方が正しいのかはわからないんですが。個々人に対して思っていることではないんですが、若い方々は上の世代に対して「もうちょっとあなたたちがやっておいてくれたら、今、もっといい状況になっていたのに」感があるというか。
我々の世代もみんな上に思うことなのかもしれないんですが、「団塊の世代がもうちょっとがんばっていてくれたら」とか思うようなこともあったりする。
井上:そうですね。
曽和:でも、それは本当は自分に返ってくる話だとは思うんです。このへんが、古臭いというか、昔語りすることのかっこ悪さの背景にある話かなと思っていました。
井上:なるほど。重なりながらもちょっと違うところもあるのかなと、ふと思って。
よく出そうな会話で、上の方が「俺たちの時はこんなSaaSのシステムはなかったわけだ」「ネットや携帯自体がなかった中でやっていたんだ」「飛び込み営業を1日何件やっていたんだ。それからすればお前ら恵まれているんだぞ」みたいな話を、良かれと思ってする上司の姿がふと浮かんだんです。時空を飛び越えて比較してもしょうがないこともありますよね。
曽和:これもこの中(『部下を育てる上司が絶対に使わない残念な言葉30』)にも書いてあるんですが、「そんなことを言っていないで、あなたは今、同じ時間を生きているんだから、あなたもChatGPTをもっと駆使してやってください」みたいな(笑)。
井上:今の中で比較してどうなのか? という話ですよね。
曽和:「今、恵まれた時期をあなたも生きているじゃないですか」って思うというか。僕が今言っているのは、極めて若者をステレオタイプ化して言っているわけで、僕がおじさんとして、自分として、個人として思っていることではないです(笑)。
井上:(笑)。
曽和:でも、こう思っている人がいるなっていうだけなんですけどね。
井上:そうですね。わかりました。
曽和:ちなみにこれは(『部下を育てる上司が絶対に使わない残念な言葉30』の)章立てなんですが、この5章で書いているんです。
最後の「頭が固い」というのは、若干ひろゆきさんっぽい感じといったらちょっと変かもしれませんが、エビデンスを求めるというか。ビジネスもサイエンスの1つだと考えれば、ファクトベースやエビデンスベースで物を考えるのは当然だと思うんですよね。
ファクトに基づいてしか世の中は動いていかないので、若者の提案や考えに対してエビデンスを求めてチェックをしていくことは、上司の1つの仕事でもあると思うんです。
ただ、まだ誰もやったことがないことや、未来の予測を基にやっていることに関しては、エビデンスは出しようがないわけですよね。なんならエビデンスが出てきた頃には、もうそれは誰かがやって実績を出しているので遅いわけです。
そうなってくると、エビデンスがないものを判断するのが、究極的には本当の上司の仕事だと。なのにエビデンスを求めているということは、責任逃れに思われるというか。
もちろん時間の制限もあるとは思うんですが、限界まで、ファクトがわかるまで、その中で探せばすぐわかるファクトを、しかも違うということがわかるのを探さずに言っているのはダメだと思います。
でも、実際に探しても「このファクトまでしか見つからない。ここから先は全部仮説だ」というものに対して懸けてくれないと、頭が固いと思われるというか。いわゆる論理的思考よりも、今だと仮説思考とか。
要は「こうなって、こうなって、こうなる」というのがベースの重要な思考だったとしても、本当はちょっと飛躍のある仮説というか、間のエビデンスは想定でしかないんだけれども、「こうなるんじゃないか」というふうに見られるかどうかが、実はビジネス上の勝負なんじゃないかなと。特に、今みたいな世の中だとそうだと思うんです。
結局、自分の責任逃れというか、エビデンスのあるものに対してだけ懸けるというのは、かっこ悪い上司の1つのあり方なのかなと思います(笑)。
曽和:上司からすると、部下に対して「論理的思考能力をチェックしてやっている」みたいな感じになるのかもしれないです。ベースはそりゃ大事です。実際、論理的思考がぐちゃぐちゃで、論理的に間違っているものは絶対に失敗するわけですね。
確かに、おかしいものを指摘するというのはそうなんですが、今言ったようにエビデンスが足りないとか、絶対にすべて揃うことなんかないものに対してまで、それを突き詰めることがあったりすると、頭が固いと思われる。
井上:なるほどね。
曽和:そういうものをいくつか集めたのが、この5章目ということでございます。ちょっと長くなりましたが。
井上:なるほど。「頭が固い」の話は、ある意味、上司の勝負どころに感じる気もしますね。
逆にすごく尊敬されている上司の方って、例えばチェックのところで部下の方々が見えていなかった非常にクリティカルな穴にパシッと気づくとか、なんとなく見過ごしていたようなものをちゃんと気づかせてくれるとか、実際にそういう人っているじゃないですか。
曽和:そうですね。
井上:大局的な空間把握力・情報把握力がすごく高い経営者の方や事業トップの方って、総じてそういうところがすごくあると思うんですよね。だからそういう人だと、部下からすると「○○さんの言うとおりだな」ってなるんだと思うんですよね。
でもそうじゃなくて、重箱の隅をつつくじゃないんだけど、「どこを見ているんだろう?」とか、曽和さんの言うとおり「全データ揃えろってことなの?」みたいな。
曽和:事例主義というか。
井上:うがった見方で、実際に上司の方もそういうところがあるのかもしれないですが、要するにあまり前に進めたくないからつつきまくっているとか(笑)。そうすると、部下の人に見透かされますよね。
曽和:そうですね。
曽和:最初のほうでも言ったんですが、これらすべてに共通するものは、決して上司の方々が本当にそんな悪い人ばっかりかというと、そんなこともない。動機は善だと。
井上:「善」。
曽和:「地獄への道は善意で舗装されている」という、ヨーロッパのことわざなんですかね。ちょっとわからないんですが。
井上:はいはい、ありますよ。
曽和:すごくおもしろいことわざだなと思って。「動機は善で結果は悪」というのが、実は一番たちが悪いというんですかね。みなさんがやっていらっしゃる時や、メンバーに対して言っている時には、決して「メンバーをいじめてやろう」とか、そんなふうに思ってはいない。
ただ、実は奥底の自分でも気づいていない無意識のレベルでは、若干逃げが入っていたりとか、そういったものがある。他人である部下から見ると、それを見透かされている。こういう構図のことがすごく多いんじゃないかなと思いますね。
井上:そうですね。
曽和:ですから変な話、ちょっと良く言いすぎかもしれないんですが、この本って、マネージャーの方々の中にある潜在意識というか、無意識をチェックしていただくための本とも言えるというか。
自分が言っているのと同じようなことを「あっ、言っている」ということがあると思うんですが、それを言っている背景には、こういう悪い考えというか、ずるい考え、弱い考え、不安な考えがあって。言ってないかどうかをチェックしていただくようなものになるんじゃないかなと思います。
なんで僕がそれを書けるかというと、自分がずるくて不安で弱くて(笑)。そういうマネージャーだからっていうのと、そういう人を見てきているということもあるんですけどね。
井上:なるほど。本音を書いたということですね。
曽和:そうですね。
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