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The HARD THINGS 次世代の起業家へのメッセージ 〜連続起業家が語る挑戦の軌跡と野望〜(全4記事)

会社を売却して得た「30億円」で家具やアートを買い集めたワケ 前澤友作氏がNOT A HOTELの代表に伝えた意外なアドバイス

「Cross the Boundaries」を旗印に、日本最大級のスタートアップカンファレンスIVS(インフィニティ・ベンチャーズ・サミット)が2024年も昨年に続いて京都で開催されました。今回のセッション「The HARD THINGS 次世代の起業家へのメッセージ」には、インターホールディングスCEOの成井五久実氏、newmo代表の青柳直樹氏、そしてNOT A HOTEL CEOの濱渦伸次氏が登壇。ANRI 代表パートナーの佐俣アンリ氏がモデレートし、彼らが良い企業で高待遇を受けながらも起業を決意した理由などが語られました。

トレンドでも収益が出ない事業での資金調達の難しさ

佐俣アンリ氏(以下、佐俣):あらためましてセッションを始めたいと思います。タイトルが「The HARD THINGS~連続起業家から次世代の起業家へのメッセージ~」ということで、事前にお話ししていて、少し偉そうなんじゃないかという声もありました。

私たちは現在も起業し、いろいろなことにチャレンジしています。自己紹介はみなさんネットで検索してみてください。情報が出てきます。はじめに今何に挑戦していて、何が辛いのかを成井さんにお聞きしたいと思います。

成井五久実氏(以下、成井):成井と申します。よろしくお願いします。レジェンドの先輩たちと今日登壇できてうれしいです。よろしくお願いします。

(会場拍手)

成井:私は99.5パーセントの真空率ができる真空パックを使って、世界中のフードロスとCO2を削減しようと2回目の起業を始めました。1回目はキュレーションメディアを立ち上げ、それをベクトルに売却して今2回目の挑戦をしています。HARD THINGSということで、資金調達は非常に難航しましたが、先月シード期でようやく2.5億円の資金を調達しました。

何がハードだったかというと、環境やSDGsは今トレンドですが、収益が出ていないため「シリーズA以降にお願いします」という投資パターンが多く、前職のメディアとは違って、夢を売る、将来のインフラになる可能性のあるものを売る難しさを感じました。

メルカリを辞める際の最大の挑戦

佐俣:では、newmoの青柳さん、お願いします。

青柳直樹氏(以下、青柳):お願いします。

(会場拍手)

青柳:起業して大変なことがたくさんあります。ライドシェアをやっているので「本当に実現するの?」という声を今も言われ続けていますが、それをわかって始めたので、正直なところ楽しんでいます。議論はずっと続きますし、その中でやれることをやらせてもらっているので、正直、一番大変だったのはどうやってメルカリを卒業させてもらうかということでした。

佐俣:これは偉大な起業家ならではの悩みですよね?

青柳:辞めること自体はたぶんできると思うんですけれども、どうやって応援してもらいながら辞めるかが、この半年、9ヶ月くらいで一番大変でした。そのあと送り出してもらってからは、正直HARD THINGSというのは特になかったのかなと思います。

どうやってメルカリにとって良いかたちで辞められるかを一番悩みました。会社にとって大変なことは間違いないですが、引き継ぎをしていただける方や経営陣のみなさんに背中を押してもらえるかが一番の悩みでした。その後は小さいオフィスから始めて、資金調達に行って断られることもありましたが、それも経験として前向きに捉えています。

濱渦伸次氏(以下、濱渦):青柳さんでも断られるんですか?

青柳:「これだ! これだ! 俺のやりたかったことだ」と思って、毎日気持ちを切り替えて前に進んでいます。

佐俣:ありがとうございます。拍手。

(会場拍手)

新たな挑戦に向けられた数々の疑問

佐俣:では、NOT A HOTELの濱渦さん、お願いします。

濱渦:NOT A HOTELの濱渦です。よろしくお願いします。青柳さんと一緒で、僕もZOZOに5年間いたんですけれども、どうやって辞めるかはけっこう考えていて、ロックアップは3年だったんですけど、5年間いて、「辞めれないかな、このままずっとZOZOだな」と思っていたんですけど、前澤(友作)さんがある日突然宇宙に行くって言い始めて、同じ日に辞表を出しましたね。

佐俣:なるほどね、同時に出したと。

濱渦:同時に出しました。それで辞めて、新しいチャレンジを始めたんですけれども、大変だったのはやっぱり、先ほど青柳さんが言われていたように、「実現するの?」という声をずっと聞き続けてきたことです。

最初に10億円の家をネットで売りますと言った時、「おもしろそうだね」と言ってくれたのはアンリさんだけでした。僕のポエムを読んでアンリさんは出資してくれましたが、金融機関や銀行ではポエムが通用しませんでした。

実際に100億円販売し、ようやく金融機関や銀行も応援してくれるようになりました。現在、2025年度までに1,000億円を販売する計画があり、さらに大きなチャレンジをしています。

佐俣:1,000億円売るんですか?

濱渦:そうなんです。1,000億円を今準備しているというところです。よろしくお願いします。

前澤友作氏からの意外なアドバイス

佐俣:今回どうしてもみなさんに聞きたいことがありまして。みなさん、既にお金持ちなわけですよ。しかもすばらしい会社に良い待遇で在籍されていて、ハイパフォーマーな方々なんですよね。なのに、どうして起業を志したんだろうなと。情熱の源泉をすごく聞いてみたくて。今度は濱渦さんから、お願いします。

濱渦:僕の場合はみなさんとちょっと違って、最初の会社をZOZOに30億円で売却したんですけど、前澤さんに「3年で全部使い切れ」って言われたんですよ。それで実際に使い切っちゃったんですよね。

佐俣:それ、すごくないですか? 何に使ったんですか?

濱渦:家具とかアートとかワインとか、ちょっと恥ずかしい話ですけど全部消費です。「使った分だけ返ってくるよ」と言われて使ってみたら、ぜんぜん返ってこなかったんですよ。「これ、どうしよう」と。

この経験を次の起業に活かすしか返ってくる方法はないと思ったのが1つと、あと前澤さんの打ち上げをカザフスタンまで見に行ったんですよね。目の前で宇宙に行く人のチャレンジを見ると、自分もちっちゃいチャレンジだと恥ずかしいなって思うようになってきて。前澤さんのせいですという感じですね(笑)。おかげです。

佐俣:補足すると、ちょうど一昨日NOT A HOTELに行っていたんですけど、ものすごい高級なソファーが置いてあって、「これ、いくらするんですか?」と聞いたら、「数千万円するもので私物です」って言われて。要は会社では買えないので、濱渦さんが私物を置いていて、それがその時の消費で購入したものなんですね。

濱渦:そうです。ああいうのがいっぱいあって、今倉庫の費用ももったいないので、NOT A HOTELに置かせてもらっているという。

佐俣:なるほど。でもああいうものに使ったから審美眼が磨かれてNOT A HOTELにつながったという意味では、感謝していますか?

濱渦:もうめちゃくちゃ感謝しています。

佐俣:なるほど。良い話で終わって良かった(笑)。

青柳氏を突き動かした起業の原動力

佐俣:青柳さんは、なぜ新しい事業に挑戦しているんですか?

青柳:私はたぶんこのテーマじゃなかったら今起業をしていないですね。

佐俣:なるほど。

青柳:とにかく日本のモビリティの問題にフラストレーションを溜めていて、これは変えられると信じているのに、ずっと変わってこない10年ぐらいを見てきた。2023年の8月に、菅(義偉)前総理が「ライドシェアの解禁の議論を」とおっしゃった記事を見て、衝動的なものかもしれないんですけども、「これは自分がやるしかない!」と思ったんですね。

7年前にも1回、グリーとメルカリの間で起業しようとして、その思いを封印してメルカリにジョインして。本当にメルカリではいろいろやらせてもらえて、めちゃくちゃ良かった。また戻ってもいいと思っているんですけど、人生1回きりで、一番重要なのは最後に後悔しないことだと思うんです。

メルカリですごくがんばった。報酬も得て、実績も得て、そんなかたちで自分がビジネスである程度成功するのか。でも、リタイアした時に「僕らが見ている日本の移動の風景って変わっていないよね、困っているよね」みたいなことで絶望するだろうなと思って。

佐俣:ハードルが高いですね(笑)。

青柳:私は今まで、特にグリーとかは創業に近いタイミングからだったので、濱渦さんほどお金を使っていない。自分や家族の生活だけだったら別に困らないので、そのアドバンテージを手に入れているんだったらそれを使おうと。報酬がなくてもたぶん10年ぐらい働けるので、だったら5年、10年かけられることをしようと思って、それをそのままメルカリの役員に伝えました。

佐俣:けっこう激情があるんですね。

青柳:そうですね、そういう意味では激情がありますね。やっぱり社会を変えるっていうのは、何かにフラストレーションを感じていることが多いですし、それが情熱の源泉になることが多いですね。

佐俣:なるほど、情熱の源泉はフラストレーションなんですね。

濱渦:青柳さんはすごい熱い方なんですよ。僕は初めましてですけど、もっと冷静で、淡々とした方だと思っていたんですが、実際にはめちゃくちゃパッションがあられる方だなと思いました。

成功につながる決断のパターン

青柳:グリーに入った時も絶対モバイルインターネットが来ると思いました。田中(良和)さんや山岸(広太郎)さんや藤本(真樹)さんと一緒にやったら、事業が何であっても成功すると思って、リスクを取れる今がそのタイミングだと判断して投資銀行を辞めました。それが人生で一番良い決断だったので、「この決断のパターンはいいな」と思いました。

細かいこともいろいろ考えるんですけど、最後は「このタイミングだ」という時にちゃんと決断を下せば、あとはどうにかうまくいくと思っているので、それを実践するようにしています。

佐俣:ちなみに僕、13年前に起業した時の初期のエンジェルが青柳さんだったんです。だから大先輩なんですけど。

青柳:いやあもう、本当にありがとうございます。ご縁をいただいて良かったです。

佐俣:でも、この半年とかを見させてもらって、日に日にエモーショナルになっていっていますよね。

青柳:自分では気づいていないんですけれども、いろんな人から「今一番元気ですね」と言われます。

佐俣:輝いていますね。

青柳:ありがとうございます。

佐俣:ちなみにさっき、このままでは自分が絶望すると言ったんですけど、newmoでどこまでの景色が見られたらある程度「自分の人生やったな」と思えますか?

青柳:いや、それは尽きないなとは思っていて。自分たちが実現したいと思って、それがグローバルに対して遅れを取っているところは、すぐにでも解消していきたい。ただ、もうすぐ自動運転の時代も来るし、それが来た時の街のあり方とかも変わっていくので、きっとこのテーマは10年やり続けても飽きない。今は、自分の中での「ここまで行ったら」みたいなのは設けられていないですね。

佐俣:ありがとうございます。

南場智子氏に憧れての起業

佐俣:最後に成井さん。

成井:経済的にインパクトがあり、かつ社会貢献性が高いテーマに惹かれて、今回のインターホールディングスの2回目の挑戦に踏み切っています。背景としては、私はDeNA新卒なんですけど、南場智子さんに憧れて起業家になった節がありまして。

佐俣:なるほど、なかなかパンチの効いた理由ですね。

成井:本当に2回目とかは「2,000億、3,000億円やるために起業したんじゃないのか」と思いまして、今回はやはり経済的な規模、インフラになり得るような大きい挑戦をしたいとすごく思いました。

佐俣:経済的な規模ってある意味時価総額とかも大事ということですか?

成井:おっしゃるとおりです。なので南場さんを目指すなら2,000〜3,000億円以上。ということは、売上で3桁億円以上を目指せるビジネスじゃないといけないなと思って。

佐俣:いいですね。

成井:すみません(笑)。

佐俣:青柳さん、今ニヤニヤしていましたね。

青柳:前澤さんの話と南場さんの話を聞いて、僕も「あっ、そうなんだろうな」って。自分で意識していなかったけれども、身近で見ちゃっているというのはけっこう確かにありますよね。

濱渦:あります、あります。

佐俣:濱渦さんもありますか?

濱渦:そうですね。前澤さんは、この前ルームツアーで出していましたけど、あのすごいマンション。その前に行かせてもらって、毎回ハードルを上げてくるんですよ。「俺を超えてみろ」みたいなハードルを毎回見せてくる。いつもお金がないって言っているくらいまた新しいチャレンジをしているので。

佐俣:どんどん使うからお金ないんですね。

濱渦:もうガンガン使って。また新しい会社、カブ&ピースもやられていますけど、本当におもしろい先輩です。敵わない人が近くにいるというのは起業し続ける1つの大きな理由かなと思いますね。

4,500万円の赤字経営から2年で営利1億円へとV字回復

佐俣:成井さんに戻します。南場さんに憧れて、2,000億、3,000億円と考えて今やっていると。

成井:はい。私も濱渦さんと一緒で、ロックアップは1年だったんですけど、買収されたベクトルで、結果5年いたんですよね。当時は西江(肇司)さんが子会社を10社上場させるという目標を立てていて。私はベクトルが買収したメディアの5社を統合した会社を任されました。蓋を開けたら赤字の会社も含まれていて、最初は苦労しました。

佐俣:それは、一般的には押し付けられたと言いませんかね(笑)?

成井:火中の栗を拾いながら5年間いたんですけれども、マイナス4,500万円の赤字経営からのスタートを、2年で10億円の売上の営利1億円までV字回復をさせた経験は経営者として貴重な経験ができました。一応ある意味10億円、20億円の壁というのは見えたので、そんな時に南場さんを思い出して、「あれ、20億円の会社を作りたかったんだっけな」というのが本当にきっかけでした。

佐俣:ありがとうございます。みなさんエモーショナルで、先人たちの刺激を受けているということですね。

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