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社長賞を4度も受賞した元NECプロジェクトリーダー・五十嵐剛氏新刊『結果を出すチームのリーダーがやっていること』発売記念無料オンラインイベント(全5記事)

「悪い報告が突然上がってくる」と言う上司が見落としているもの あえて報告・連絡をしない部下の心のうち

『結果を出すチームのリーダーがやっていること NECで学んだ高効率プロジェクトマネジメント』の刊行を記念して開催された本イベント。社長賞を4度も受賞した元NECプロジェクトリーダーで著者の五十嵐剛氏が登壇し、悩めるリーダーのためのチームで成果を出す方法を明かします。本記事では、風通しの良い雰囲気をつくる「YES & MORE」話法や上司にあえて報連相をしない部下の心境について語りました。

前回の記事はこちら

風通しの良い雰囲気をつくる「YES & MORE」話法

五十嵐剛氏(以下、五十嵐):『結果を出すチームのリーダーがやっていること NECで学んだ高効率プロジェクトマネジメント』の第3章「成果につながる! 風通しの良い雰囲気づくり 『YES & MORE』話法で、トップダウンとボトムアップを両立させる」。YESで提案してきた内容を認めてあげて、「じゃあもっとこうしたら?」と話すということです。

私は昭和生まれなので、昔は上司に褒められたことはなかったですね。上司の役目は部下を叱るとか、赤ペンを入れるのが立派な上司だと(言われていました)。だから、私が部下を褒めていると、「お前、部下のご機嫌を取ってどうするんだよ」と上司に言われたりしたんですが、「違うんじゃないの?」と思っていました。

人はやはり、褒められて伸びるんですよね。逆にけなされて、「なにくそ」と思って力を発揮する場合もあるかもしれません。稀にそういうことがあればそれでいいんですけど、しょっちゅうけなされていたら、みんなやる気をなくすだけなので、やはりいいところを伸ばしていかないと(いけません)。

これは会社だけじゃなくて、お子さんでもそうです。人の良いところを認めてあげるところが大事だなと思います。

部下への褒めと指摘のバランスは9対1

五十嵐:「YES」と「MORE」の配分なんですけど、私はせいぜい8対2で、理想的なのは9対1ですね。YESが9で、MOREが1。この配分は、具体的には時間ですね。例えばメンバーと10分話した時に、9分褒めて、最後に「ここをもう少し良くするといいかもしれないよね」と言う。

すると、すごく満足感というか、「認められた」「認知された」と感じられる。そうした中で、「じゃあ、ここ1個は直そうか」と言われたら、すごく「がんばろう」と思えるんです。

中には「ちゃんとYES & MOREをしています」と言っていても、1分褒めて、残り9分でMOREを言い続けている人がいるんですよね。たぶん5対5でもダメなんですけど、やはり最後に聞いた言葉って残るんですよ。MOREが9分もずっと続くと、そっちのほうが印象が強くなっちゃう。

やはり9対1で、まずはYESが9、MOREが1。それは内容というよりも時間ですね。やはり時間によって重要度というか認知度は変わってきますので、なるべく時間を大事にしていだければと思います。

(チャットを見ながら)「認めるほうが先」。本当にそうなんですよ。まず、YESです。認められたら人の話も聞こうかなと思いますけど、BUTから言っちゃったら「はいはい、わかりました」ってなりますよね。

リーダーとメンバーのビジョンがズレている時は

五十嵐:実はいただいている事前質問の中で「YES & MORE」に関係するところがあるので、ちょっとご紹介します。50代の男性の方で「チームリーダーが意識すべき点と無視する点を、どう判断したらいいんでしょうか?」という質問がありました。

これはチームの熟成にもよるんですけど、まさに先ほど私が話した「トップダウンとボトムアップ」のところだと思うんですね。組織としてどうしても達成しなきゃいけないゴールに関しては、やはり譲れないところですよね。ただ、そこをどうやって実現するか、そのへんは部下に任せていいと思います。

あと、権限委譲も本書の中で述べています。聞かれている内容は本文の中にもけっこう書いてありまして、1つだけじゃないんですけども。やはり「トップダウンとボトムアップの融合」が、チームリーダーが意識すべき点と無視する点のトレードだと思います。

あと、事前にいただいた質問の中で、20代の男性から「自分の実現したい将来ビジョンと、メンバーの考える将来ビジョンが微妙に異なる際、チームとして掲げるビジョンをどう設定するか」。

こちらも本文の102ページに書いているんですけど、「ディスカッションをする重要性」。ああだこうだと一緒に計画を練り上げることもそうですし、最初のほうに「ビジョンを決めるためにみんなで話し合ってスローガンを決める」というのも書いています。それがすごく大事になってくるかなと思いますね。

これも先ほど言いましたけど、「YES & MORE」でメンバーの声をしっかり聞いて、「ここはいいよね。でもここはどうだろう?」と。場合によってはメンバーが正しいことを言っていることだっていっぱいありますから、メンバーの声をちゃんと聞く。

チームですから、同じ目的に向かっていく。グループはたまたま一緒になっているだけかもしれないけど、チームはやはり目標が一致してなきゃいけない。ビジョンはリーダーの独りよがりじゃなくて、みんなと話し合って決めていくことがすごく大事になるのかなと思います。

報連相ができない理由は、メンバーがメリットを感じられないから

五十嵐:続きまして、「報・連・相・相で現場情報Get!」というところです。「メンバーにきちんと報告・連絡をしてほしければ、先に相談の件数を増やす」「報告と連絡は一方通行だけど、相談は双方向!」「相談が増えれば、チームの雰囲気や信頼関係が改善して報告・連絡も増える!」。

特に4月に新入社員等も入ってくると、「報・連・相を大事に」といろんなところで言われます。なんでこれができないかというと、報告・連絡をしても、メンバーにとって良いことがないからですよね。「報告や連絡をして、メンバーに何が返ってくるか」というと、良いことが返ってきたことは、あんまりないような気がしますよね。

ここに書いてあるとおり、報告と連絡は一方通行なんですね。でも、相談はお互い同じ立場に立つものです。メンバーからしたら「リーダーが僕の話をちゃんと真剣に聞いてくれて、相談に乗ってくれた」となれば、信頼関係はぜんぜん変わってきます。

「この上司にだったら、ちゃんと相談してもいいな。この上司はちゃんと僕のほうを見てくれて、心配してくれている」となれば、当然、報告と連絡は上がってくるんですよね。特に「メンバーの話を聞く時は、ちゃんとへそをメンバーに向けて話しましょうね」というのを入れているんですけども。

やはり相談をした時に、リーダーが自分の真正面を向きながら話をしてくれるのと、パソコンのほうを向きながら耳だけ傾けて「うん、うん」と言うのとはまったく違う。メンバーとしては「この上司だったらいろんなことを話せるな」と信頼関係が出てきますよね。

上司が部下に「何かあったら相談しておいで」と言っても、部下はあんまり相談に行かないと思います。仮に行っていたとしても、忙しそうにパソコンを見ながら話を聞かれたら「あ、もう行かない」となりますよね。

「悪い報告」が突然上がってくるわけ

五十嵐:本当に相談は大事なんです。「メンバーの話はへそを向けて聞く」をやってもらえればなと思います。この「報・連・相」に絡んで、職場のあるある事例をちょっと紹介します。よく「『悪い報告』が突然上がってくる」と言う上司がいますね。

例えば期末です。特に1月とか2月とか3月。4月の新年度が始まる前、3月末の年度の終わりくらいに、突然悪い報告が予算会議とかで上がってきて、「なんだそれは! そんな話は聞いていない」といった話が上がってくる。

なんでかといったら、上司に報告を上げると叱られて、かつ救いの手はないから。例えば一緒に客先へ行って対応してくれることもなく、社内報告のための宿題が増えるだけ。上司の上にまた上司がいますから、報告を受けた上司は自分の上司にいかにうまく説明するか、みたいなことで(頭がいっぱいになっている)。

しかも現場にも行かないから、メンバーの言っている報告内容がよくわからない。そうすると、「これがわからないから、もっとわかるようにこれを書いてこい」みたいに、追加で資料を頼むわけですね。そんな資料がガンガン膨らんでいっちゃって、結局上司は現場よりも(自分の)上司の顔を見ているんじゃないか、みたいなね。

そういうのを部下はすごくよく見ていますから、「もうこの上司はダメだな」と思うと、もう報告しなくなりますよね。報告はサラリーマンの義務であり、責任だけども、そんな報告をしていたら、実際に困っている現場のお客さまのために時間を取れなくなってしまう。

現場の人は困っているお客さんを最優先に考えなきゃと思うから、下手をすると上司より偉くて、ちゃんとやるわけですよ。「変に社内報告して、そんなところで工数を取られるくらいなら、お客さま対応を優先して期末に一度叱られよう。どうせ年度末になって終わるんだから、この1回で済ませよう」と。

やはりこのへんは賢いですし、人間ですよね。これをわからない人たちがたくさんいるのかなと。つまり、「上司が現場をわかっていないんでしょ?」というところです。

リーダーはメンバーのために何ができているか?

五十嵐:これがもし、一緒になって客先へ行って、頭を下げて対応してくれたら、「ああ、この人のためにがんばろう」という気になるんですけどね。山積するリーダーの悩みについて、今回は3つの事例を紹介させていただきました。この本にこういう話がいっぱい詰まっておりますので、ぜひ読んでいただければなと思います。

 「上司から部下に相談するという意味での双方向も大事かな」。それもすごく大事だと思いますね。やっぱり上司に相談されると、「あのリーダーが僕を頼ってくれた」となって、メンバーはうれしいですよね。

ちょっとだけ時間があるので、メンバーはあなたのために何をしてくれているか、聞いてみましょうか。「会議に遅れず、参加してくれています」「〇〇さんに指示されたらやりますからって言ってくれる」。いいですね。

あえて厳しいことを言うと、言葉どおり受け止めていいかどうかは、考えないといけないかもしれないです。でも、おそらくきっと信頼関係ができているんですよね。「自分の担当業務を責任を持って実施してくれている」。

今コメントでいただいた、「部下の謝罪に付き合った結果、毎度連れ出されて困ってる上司が気の毒」だと。僕がここで言いたいのは、メンバーってリーダーの言うことを100パーセント聞いてますよね。

リーダーの指示に対して、メンバーは基本全部やろうとします。期待しているものに対してどれくらいの出来具合かは置いといて、一生懸命やる。組織上あなたの言うことをちゃんと聞くのがサラリーマンとしての務めだから、というのはありますが、あなたがリーダーだとすると、メンバーはあなたの指示で全部動いてるわけですよね。

逆に言うと、リーダーは、メンバーのために何ができてるんだろうかと、僕は非常に気になっているんです。「自分の担当業務に責任を持って実施してくれてる」「私が間違ってたらちゃんと指摘してくれる」というコメントもありますね。

リーダーに対してね、下がちゃんと言えるような、言いやすい雰囲気ができてるんでしょうね。これは大事ですよね。

“リーダーだからできること”を考える

五十嵐:リーダーであるあなたがメンバーのために何をしているかについてのコメントです。「チームビルディング」「働きやすい環境の整備」「マネジメントは何かを部下に教える」「話を最後まで聞く」「メンバーに無理なく気持ちよく仕事をしてもらい、達成感を得てもらいたい」。

「『じゃあどうしたいの?』 と聞く」。これも非常にいいですね。メンバーのために何かできてるのかなって自問自答した時に、仕事を与えてるというのは当然の話ですよね。与え方が悪ければ、部下にとっては苦痛でしかない。

例えば「給料をあげている」。でも普通の会社でいったら、例えば課長さんが主任さんに対して給料をあげているわけじゃなくて、給料をあげているのは会社ですよね。

例えば「評価をする」。いい評価をしてあげているといっても、例えばあなたの上にも上司がいて、10人の中ではAさんに「S」をつけたんだけど、実際の評価は10人のチームが10個くらいあって、そこを全体でプールしてつけるから「B」になっちゃうとかね。あなたの評価がイコールでメンバーの評価につながらないこともけっこうありますよね。

そうすると、メンバーはリーダーの言うことを100パーセント聞いて仕事をしているのに、リーダーはメンバーのために何をやっているんだろうと。やはりそこは一緒じゃないとおかしいと私は思っています。

例えば私は、やはり感謝の気持ちや、「こういう仕事を続けたらいいことがあるんだよ」と夢や希望、やりがい(を与える)。あとみなさんからも挙がってきていましたけど、挑戦する機会や働きやすい環境。

​例えば​ハードの空調がしっかりしているとか、デバイスがいろいろちゃんとあるとかももちろんそうですけど、みんなが声を出しやすい、風通しの良い環境作りをするとか。

質問の中にありましたが、反対意見を言った人が傷ついちゃうような環境もあるみたいなんですね。そうじゃなくてみんなをリスペクトしていく環境を作ることが、リーダーじゃないとできないことなんだろうと。これは一例ですけど、そういうことを考えながらリーダーをやっていかないといけないなって私は思っています。

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