2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
ビジネスも人生もグロースさせるコミュニティとの向き合い方(全1記事)
提供:一般社団法人コミュニティマーケティング推進協会
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小島英揮氏(以下、小島):今日最後のクロージングセッションということで、ビジネスにコミュニティは大事だという話をしながらも。でも、ビジネスもキャリアも公私混同というか、そんなにパキッと分かれてないじゃないですか。
KT氏(以下、KT):分ける必要がないです。
小島:そうですよね。そうすると、この2つ(ビジネスとキャリア)に対して、コミュニティはどう作用しているのかとか。個人としてはビジネスも含めて、どうコミュニティと向き合えばいいかなという話をしていきたいと思います。
(KTさんを)知らない人はいないと思うんですけど、一応かたち上は必要かなと思ってスライドを1枚用意しましたので、自己紹介をお願いします。
KT:あらためまして、現在はSnowflakeという会社で、シニアプロダクトマーケティングマネージャー兼エヴァンジェリストを務めております、KTと申します。実はこの中でも、Tableauから私のことを知ってくれている人もいらっしゃったようなので、ちょっと経歴を説明します。
私はもともと2015年から、Tableauというデータを可視化する道具を売っている会社で、5年ぐらいやらせてもらっていました。私は「ツール」とはあまり呼びたくないんですけれども。その時にいろいろ作ったものが今も動いているところがあって、Tableauの方面で私のことを知ってくださっている方も多いですね。
その後、同じデータの業界でTableauのデータをビジュアライズするような、いわゆるデータベース、データウェアハウス、データレイクといった領域をカバーしていくSnowflakeというプロダクトの担当に転職をしました。ちょっといろんな機能が拡張しているんですけれども、今はこれをやっているという感じです。
ただ、コミュニティは私の人生の軸でもあるので、そういった中で今もTableauコミュニティの人たちともつながっています。Tableauのコミュニティってもともとすごく有名で、私が広げた感はあっても作った感はなかったんですよ。
小島:広げた感。
KT:はい。それで「イチから自分で作ってみたらどうなるんだろうな?」と思って、やっています。Snowflakeは一応グローバルの企業なんですけど、海外からも「日本のコミュニティが一番盛り上がっているね」と言われるぐらいの実績を積んできました。
小島:すばらしいですね。
(会場拍手)
小島:実は僕もJAWS(Amazon Web Servicesが提供するクラウドコンピューティングを利用する人々のコミュニティ)はイチから作ったコミュニティで、その前にアドビ。
先ほど横田(聡)さんが、アドビのFlexで僕と一緒にやったとお話されていました。あれは、アドビが買ったマクロメディアという会社が、もともとコミュニティのベースを持っていたんです。僕が引き継いだというか、マクロメディアで担当していた方がマージの時に(アドビに)来なかったんですね。まあ外資だったので(笑)。
KT:(笑)。
小島:僕は「君、コミュニティをやりなさい」と(その時の上長に)言われて、「何ですか? それ」みたいなところから、スタートしていて。でも、いろいろやって学ぶ中で、さっきのKTさんの話と一緒で「イチから設計してみたいな」と思って始めたのがJAWSでした。
今日もすごい成功例としていろんな話をいただきましたけど、「たまたまなんじゃないか?」と言われるので、次から次に証明したくなって、今日ここに至るみたいな感じなんです。
KT:そうですよね。
小島:でも、コミュニティはすごく再現性があるものなので、みなさんのビジネスやキャリアを広げるものにして(いければと思っています)。まさに人生もビジネスも、両方グロースさせるものとしてコミュニティを見ていただくと、人生が豊かになるんじゃないかなと思います。
小島:ビジネスのところでいくと、これはいい記事ですよね。
KT:ありがとうございます。
小島:「『ない製品』は生き残れない」という。サムネイルだけで、「これはいったい何だろう?」と僕は思って読んだんですけど。
KT:(笑)。これね。
小島:この記事を読んだ方はいますかね?
(会場挙手)
どうだろう。おお、けっこういる。どんな記事だったか、ちょっとお話ししていただいていいですか?
KT:これは「Gainsight」というカスタマーサクセスのプラットフォームをやられている会社さんに、ゲストとして呼んでいただいてたんですけれども。すごくいい機会をいただいて。「やはりカスタマーサクセスにコミュニティって不可欠だよね」ということで(お話をしました)。
小島:この方が日本の代表の方。
KT:絹村(悠)さんという方です。私が彼と一緒にTableauにいたという付き合いもあって、「コミュニティといえばKTでしょ」ということで、お呼びいただいた感じだったんですね。
今ここにいらっしゃる方は絶対違うと思うんですけど、一歩外に出ると、正直言って「え? コミュニティって何?」「要るの?」「なくてもよくない?」みたいな感じじゃないですか。
小島:まだまだ知られていない。
KT:まだまだ、まだまだですね。今ちょっと機運は高まってきていますけど、やはり「どうやって(コミュニティを)作ったらいいのかわからない」という状況の中で、私は「コミュニティがない製品って生き残れないですよね」という話をしたんですよね。
なぜそういうことを言ったかというと、どんなプロダクトも、やはり機能レベルで言ったらほとんど同じになってきています。
小島:そうなんですよね。決定的に違う製品ってなかなか作りづらいというか。同じ開発言語、同じマーケットで、なんなら給与レンジが同じなら、同じぐらいの能力がある人を雇えるわけです。(だから)製品の機能としての差を作るのはすごく難しくなっています。
KT:機能もそうですし、私はやっぱり技術と同時に「ビジョンの共有」をすごく大切にしています。ビジョンの共有がされていないプロダクトって、死んでしまうと思っているんですよね。
小島:これが「ない」。
KT:ない製品。何かと言うと、機能を作ることじゃなくて「その機能をもって、どんな世界を作ろうとしているんですか?」というストーリーをちゃんと(伝えることがビジョンの共有だと思うんです)。
小島:機能はあくまでも道具であって、その道具で何をなしたいんですかという、フィロソフィーとかビジョンのほうが実は大事だと。
KT:そうですね。私の製品もSaaSの製品ですし、要は進化していくんですよね。経営者の方も明確に言っていますけれども、やはり今あるそのままの製品というより、「どの世界に向かおうとしているのか」というところで選ぶ方も、かなり多くなってきているかなと思っています。
私たちの製品は、今はこういう機能を作っているけど、そもそもこういう機能を使って、こういう世界を目指していますよと。
小島:なるほど。だから、むしろ機能ファーストじゃなくて、世界観や方向性などのユースケースが重要であると。
KT:そうです。私はエヴァンジェリストという役割なので、プレゼンテーションなどでそれを外に向けて発信するわけですね。でも、それって1人で発信していてもぜんぜん意味がなくて。
小島:めっちゃ効率が悪いんですよ。全員に会えないから。
KT:そうなんです。効率が悪いし、私のことがあんまり好きじゃない人とかもいると思うんです(笑)。
小島:な、何と言いました?
KT:いやいや、いるから。
小島:いや、オーラは感じますけど、嫌な人はいないと思いますけどね。
KT:でもなんか、「言っていることがわかんないな」という人は絶対にいると思います。そうなった時に、例えばここでみなさんが感動してくれて、社内に持ち帰った時に、私が直接説明するより、社員の方が説明したほうがわかりやすい言葉にできるじゃないですか。
小島:同じユースケース、同じ体験、同じ価値観を持っている人が、「こういうことだからいいんだよ」と言うと、すっと入ってくるみたいなね。
KT:昔から言っているんですけど「同じことを違う言葉で言う」というのはすごく大切。
小島:言い換えね。大事ですよね。まさに協会がフェローという仕組みで、「BtoBにはこの方」「BtoCにはこの方」と立てています。それは僕が言うと、同じことを言っても「Amazonの人ですよね」になっちゃうんですけど、その分野の人にお話をしていただけると「なるほど」と。言う人が変わると、耳も開く。
KT:ぜんぜん違う。
小島:その人がどんどん多くなると、届く先も増えると。それが束になっているのがコミュニティだとしたら、うまく自分自身の思いを伝えたい時に、他の方に一緒に伝えてもらえると、たぶん世界って広がるんじゃないかなと。
KT:そうだと思いますね。水滴みたいな感じで、ぴょーんと1個だけあったら、波紋がぽよよんとなって終わるじゃないですか。でも、水滴がたくさんあると、波紋が最終的には波になるんですよね。
小島:波になる。なるほど。
KT:そんな感じなので、いつか私が言っていたことが、誰が言っていたかわからなくなるのが目指すべき世界だと思うんですよね。
小島:TEDのあの踊り始める動画(デレク・シヴァーズ: 社会運動はどうやって起こすか)にありますよね。でも、初めに真ん中で踊っていた人って、途中からフレームアウトしていなくなっちゃうんですよね。
KT:いなくなっちゃって(笑)。
小島:踊りだけは残っているみたいな。でも、なんかすごくわかりますね。
KT:それが本当に文化になったということだと思うんですよ。エヴァンジェリストが1人で言って、「なんかすごいね」というのはいいけど、それは文化じゃないんですよね。
小島:なるほど。文化にまで昇華しないといけない。昇華するには、同じ価値観の人が同じことを言っているだけじゃいけないので、それがコミュニティだと。製品も誰とお付き合いするかで、進化の方向が変わったり、進化のスピードも変わったりする。
KT:まさしく。
小島:製品の進化のスピードは早くしたいし、ユースケースはどんどん見つけたいので、そうしたらコミュニティを介したほうが合理的ですよね。ということですね。
KT:そうですね。コミュニティの方って、本当に使い込んでいらっしゃるので、その方々の意見とかって聞くべきだと思うんですよね。
小島:それで市場に関して言うとデータね。Snowflakeのやっている世界も……僕も恥ずかしながら、初めて出てきた時に、今さらここに出てくるのか、と思ったんですよ。データウェアハウスって昔からあるし、Amazon にもRedshiftがあったよねとか思ってたわけですよ(笑)。今は俺は間違っていたと思っているわけですけど(笑)。
でも、その世界観を広げる人たちと一緒に進むと、市場の再構築とかリポジショニングってこんな簡単にいくんだなと思ったんですよね。
KT:そうですね。もともとはData Cloudと言っていたんですけど、その世界観がすごくはっきりしていたので、いろんなデータがグローバルにつながっていくようなことですね。
小島:僕はどうして見誤ってしまったかと言うと、初めは「データウェアハウスってそういうものだろう」という、自分が昔持っていた参照点に当てはめてSnowflakeを理解しようとしたんですよ。「なんかよくわからないところもあるけど、同じじゃね?」と思っていたら、違った。
KT:はい(笑)。
小島:だから逆に言うと、いつも同じコミュニティにいるとその視座になっちゃうので、たぶん新しいコミュニティでSnowflakeを見なきゃいけなかった。今ならわかります。それはすごく思うんですよね。
そうすると、ユーザーもやはりいろんなコミュニティに出たほうがいろんな視座が得られて、結局はより良いところに導いていけるんじゃないかなと思いますね。
KT:そうですね。
小島:さっきも、この前のセッションで複数のコミュニティに出入りするような、日程確認から始まるという話をしていましたけど(笑)。
KT:あれすごいですね(笑)。
小島:日程確認以外にやはり……なんだろうな、外のモノサシをいろいろ取り替えてみるみたいな。メガネを変えるには、たぶんいろんなコミュニティに出入りするといいです。お客さまの目を通じてマーケットや製品の方向性が見えるのは、ベンダーからするとすごくいいんじゃないかなと思うんですよね。
KT:そうですね。
小島:じゃあキャリアもいってみましょうか。会社のキャリア……会社のグロースにはコミュニティは大事そうだと。今日はずっといろんなセッションをやっているので、みなさんもなんとなくわかっているでしょう。今日KTに来てもらったのは、キャリアとコミュニティの話がしたいなと思っていて。
僕はコミュニティがすごく大事になっている背景はこれだと思っているんですよね。自分がいる組織には先生がいない。だいたい昔は……と言うと年代の話になっちゃいそうなんですけど、教えてくれる人が中にいるはずだったんですよ。
KT:あ〜、なるほど。
小島:教えてくれる人が社内にいるから、先輩が偉かったわけです。だけど先輩が経験してきていないものをいろいろやらなきゃいけない時代になっているし。外資に行ったら、誰が先輩かもはやわからないじゃないですか。そうすると、メンターというか、師を外に求めなきゃいけないと。
KT:そのとおりだと思います。
小島:これがコミュニティを通じて、外の知見やネットワークを取り込むという考え方になると思うんですけど。KTがやっているDATA Saberは、まさにこれを具現化しているなと思っているんですけど。ちょっとお話していただいていいですか?
KT:このDATA Saberプログラムは、90日の間にさっき私がお伝えした技術とビジョンの双方を兼ね備えた人間を育てるというものです。
小島:技術とビジョン、いいですね!
KT:実際にカテゴリーが2つになっていて、両方を90日以内にクリアしないと卒業できないんですよ。超えちゃったら終わりですっていう感じなんですけど。先生になる人がいて、無償という言い方がいいのかあれなんですけど……お金はかからない。
小島:金銭的な報酬ではないと。
KT:ないです。組織内で会社の仕組みとして使われている方もいらっしゃいますし、社外の人を育成されている方もいらっしゃるんですよ。これってすごくないですか?
小島:社外の人をね。
KT:そうです。ぜんぜん違う会社の人がぜんぜん違う会社の人を育成するようなことが普通に起こっています。
小島:これがすごく大きな波になっているなと思ったのは、今回登壇してくれた内之倉(鈴菜)さんという方に福岡から来ていただいています。まさにDATA Saberの制度で、弟子が今どんどんステップアップ中ということですよね。
KT:そうですね。
小島:KTのことは知っているんだけど、「話したことないです〜」とか言って。でもここに登壇することを言って、昨日は一緒に飲むところまでいったわけですけど。
KT:そう、一緒に飲めてうれしかったです。
小島:つまりKTが直接教えていないけど、教えるという流れが連鎖できているのがこの仕組みということでしょ?
KT:私が直接教えていたのは2019年の5月までで、2年半で105人くらい育成したんですけれども。要は、1人でやっている限りは2年半で105人を超えられないんですよね。5年で200人じゃないですか。
Tableauって、もともとすべての人がデータを見て理解できる世界を作るというミッションを持っていたので、どうがんばってもそのミッションを果たせないなと思ったんですよね。それでみんなにやってもらおうって。
小島:KTの話っていいですよね。必ず時間軸がある気がする。「いつかやりたい」じゃなくて、「いつまでにやるか」がすごくはっきりしているじゃないですか。いつまでにやるかってすごくビジネスライクに聞こえるけど、夢って早く実現できたほうがいいし、野望は早く達成したほうがいいじゃないですか。
KT:そうです。そもそも90日にしたのも、私が4年くらいかけてゆるっと……ゆるっとというか、楽しくですね。時代によって教材がなかったからしょうがないんですけど。
私にとって象徴的だったのは、データってビジュアルじゃないとわからないんだよという、ビジュアルアナリティクスというセッションを最後の最後に知ったことです。「それを最初に教えてくれたらよかったのに」と思って、みんなにその苦労をしてほしくないから。
小島:同じプロセスを踏んじゃいけないと。
KT:そうそう! それがダメだったとか嫌だったわけじゃないんだけど、私が気づいたんだから、みんなには楽してもらおうと。あの90日のプログラムが楽かと言われると楽じゃないですけど(笑)。
小島:それでも90日で終わるようになっているという意味だと楽ですよね。どこを基準にするかはありますけど。
KT:そうですね。とにかく4年かけたら遅すぎると思ったんですよね。
小島:プログラムになると今度は可搬性ができるので、教えるという機能を渡すことができるような。
KT:教えることによって自分自身も成長するので、みんなにとってのオポチュニティにもなるんですよね。
小島:よくこの手の話をすると「どうしてみんな無償で教えるんですか?」と聞く人もいるんですけど、すごく勘違いしているなと思っていて。その人は「誰にでも無償で教えられる説得方法を教えてください」って言っている気がするんですよ。
そんな方法はないけど、100人いたら5人くらい「それはおもしろい」「私もそうしたい」と(思ってくれる人がいます)。その5人からスタートする観点がすごく大事で、結局その初めの5人をどう見つけるかがスピードにつながっているなと思うんですけど。初めに教えられる方ってどうやって出会ったり見つけたんですか?
KT:なんかキャンプ行こうぜみたいな感じで集まって……(笑)。
小島:つまり初めに個人的なトラストがあって、そこから新しい関心軸に行ってみないかみたいな?
KT:そうですね。105人とはそれぞれ信頼関係があるんですけど、とはいえやはり濃淡はありますと。例えばプライベートで子どもが小さいから来られないとかしょうがないじゃないですか。
小島:それはしょうがないです。
KT:ただ重要なのは(コミュニティのメンバーが)たくさんいるということです。絶対に入れ替わりがあるんです。最初の10人が今もいるかというといない人もいるし、後から帰ってくる人もいるんですよ。
小島:なるほどね。
KT:何がいけないって、最初に5人とかで(コミュニティを)始めちゃうといなくなっちゃって、0になるじゃないですか。だからいっぱい作って、常に新陳代謝ができるようにしておくの。それでいなくなったとしても誰かが残ってるから大丈夫、その人がいなくなってもまた新しい人が来るから大丈夫というふうにしておく。
小島:ちゃんとインベントリー管理というか、在庫管理ができているんですね。
KT:そうですね。いなくなった人を責めたり追いかけたりしちゃダメです。でも、いつでも帰ってこられるホームなんだよって。私はホームということをテーマにしているんですけど、「あなたはいつでも私たちの心のホームの一員です。帰りたくなったらいつでも帰っておいでね」というスタンスを貫き続けることですね。
小島:かっこいい。今みんな「なるほど、そういうスタンスでやるとたくさん人が集まってるんだ」って思ったかもしれないけど、絶対違って(笑)。
KT:あれ?(笑)。
小島:いなくなっても大丈夫な(くらい十分な数の)人を巻き込む力とセットだと思うんですよね。ゆとりがあると優しくなれるというか。
KT:あ、そうですね。
小島:3人しか頼れる人がいないとすごく頼っちゃうじゃないですか。
KT:それはダメなやつですね。
小島:ゆるく……ゆるくでもないんだな。かなりビジョンを共有した人をどうたくさん仲間に引き込むか。結局そこも直接説得するよりは、この人同士が「おもしろそうだからやろう」という横のつながりでもあるんですかね?
KT:そうですね。それが結局、この仕組み化なんですよね。このDATA Saberというものは仕組み化の象徴なんです。私が105人を育てて、みんなに弟子を連れてこいって言ったけど、誰も連れてこなかったんですよ。なぜかと言うと「どうやってKTがこの人を選んでいるかわからないから」と言われたんですね。
小島:あ〜、すごくわかる。自分はできちゃうんだけど、(人には)教えられないですよ。明らかにこの人じゃないですか? みたいに思うんだけど。
KT:そうそうそう。(私も)わかるけど。たぶん小島さんもわかる。「目がキラキラしてるでしょ」とか言って。(みんな)「え? どこ!?」って(笑)。
小島:「本人がやりたがってるもん」って僕も言うんですけど、「どこを見てるんですか?」って言われるんですよね。
KT:でもそれは正しくて、そのクオリティを保ちたいと思ってくれたみんなに感謝しているし。だから、みんなと一緒に仕組み化を作ったんです。私は仕組みを作るのはそんなに得意じゃないので、その時に集まった何人かの仕組み化をするコアのメンバーと作ったんですよ。
それをもとにやっていくと仕組みで作った基準をみんなが超えてくる。そして、その中にビジョンも入っている状態になって、新しい人がじゃんじゃん入ってくる感じです。
小島:なるほど。こういう理解でいいですか? 初めは、自分以外に教えられる人がいればスケールしていくと。それで勝手にレイヤーを作って、あとは同志を集めればいいと思って「じゃあ、やろうよ」と言ったけど、そんなに簡単じゃなかった。なので、仕組みを作るところからの同志を作ったという感じですかね。
KT:そうですね。マテリアルはあるんですけど、要は試験だったり、この点数を超えてねといったこと。特にコミュニティポイントというのがあるんですけど、例えばブログを書くようなことが、全部ポイント化されているんですね。そのへんがわからなかったので、そういうのを(仕組みとして)やったという感じですね。
小島:なるほどね。コミュニティの動かし方として、状態や心地よさが大事だけど、引っ張るところはチームじゃなきゃいけない。僕は、倉貫(義人)さんが書いている「チームとコミュニティの違い、会社・組織をどう捉えるか」というブログをすごく参照するんですけど。
コミュニティを維持するためにはリードする力が必要で、それは仕組みやチームだと思うんですよね。だから、このプロセスはやはりチームで作ったんですね。
KT:そうですね。仕組みだけ残っていればいいという話じゃなくて、仕組みと情熱が高いレベルで継承されていないといけないというのが重要なので。
小島:仕組みと情熱を高いレベルで継承する。
KT:仕組みだけポンって渡すと、ただの資格試験みたいになっちゃうんですよ。ここに師匠の存在が重要で、全部オートメーションできるんだったら、フォームだけでいいじゃんってなると思うんですけど。ダメなんですよ。
小島:オンラインのeラーニングのコースがあればいいんじゃないかと(思われがちです)。
KT:そうそう、そうじゃないんですよね。極論を言うと全部クリアしてきているけど、この人はふさわしくないと師匠が思ったら、それはやっぱりダメなんですよ。
小島:それが情熱ってやつですね。
KT:そうです。この人はちゃんと本当に情熱があるのかなという師匠の見極め。そこはやっぱり人間じゃないと絶対できないことですね。
小島:なるほどね。その情熱センサーの継承ってどんな感じなんですか?
KT:ここは仕組み化してないし、いらないので。
小島:わかる。
KT:ここはできないです。これをやっちゃったらAIができるという話になっちゃうので。
小島:なるほどね。でも仕組み化のところはみんなでやって、共同の成果物としてやっていく。
KT:ここは作る時にちゃんとみんなにメッセージを伝えていったし、私がメッセージを伝えた人が継承してくれている感じがします。もうすぐ卒業生が2,100人になるので、見たことない卒業生がたくさんいるんですけど、どなたと会ってもぜんぜん違和感ないですもん。
小島:それはイズムが継承されているんですね。
KT:だから、育ててくださっているすべてのみなさんに感謝しています。
小島:すごいですね。こんな感じかなと思っていて、あるところからスタートするじゃないですか。プログラムがあると習熟度みたいなのが上がってくると。
小島:でも一方で、たぶんTableauも、ある分野でやったのと違う使い方があると知ると、ちょっと関心が移ったり。そこでも同じように習熟度が上がっていくと、ぜんぜん違うところに2ホップから3ホップくらいできるんですけれども。
仕組みがあって、同じレイヤーで横に違うことをやっている人がいたりする。それに出会えるのは、やはりコミュニティの大事なところかもしれないですね。
KT:そうですね。DATA Saberのコミュニティ……この場合は、Tableauのコミュニティというふうに言い換えるんですけれども。技術の中でもビジュアライゼーションが好きな人とか、計算式がすごい人とか地図が好きな人とか、当然いろんな興味関心があるので。
小島:そうですね。そこはたぶん習熟度と関心度に分けられる感じがしますよね。
KT:そう。関心度が違って、習熟度がそれぞれあるような。だいたい会社で使おうとなると、そんなにいろんなことはしないんですよね。
小島:だいたい決まっている。
KT:そう。この図が作れればいいという感じなんですけど、ほかの会社の人とコミュニティに入ることで「こういう使い方がありますよ」と。
それはコミュニティのTableau Publicみたいなもので、世界中のすごいビジュアライゼーションを見て感化されている人もいれば、社内でこういうダッシュボードを作っていますというのもあります。
そういう中で、「こんなのいらないと思ってたけど、うちの会社でも使えるじゃん」というのはけっこうありますよね。
小島:そうするとAもBもCもできる人みたいな、希少価値が出てくる。同じTableauが使える人でも、こういう見方もこの操作もできて、こんな助言もできるよみたいな。それが組み合わさっていくと、その人の“求められ度”がすごく上がってくる。
KT:単純にスキル面でもそうですし、そもそもユーザー会で外へ発信することもあるので、プレゼンターとしての能力も出てきます。Cがプレゼンテーション能力とかになると、さらに希少性が上がってくると思います。
小島:ユースケースを知っていて、実際に教えられて、プレゼンもいい。
KT:ここでユーザーグループの運営になってくると、企画とかになってくるんですよね。コミュニティの人(のスキル)って、けっこうすごいバラエティに富んでると思いますね。
小島:同じ方向を見ているはずだけど、お互いの違いにちょっと関心があって、その部分を習うことで、AもBもCもできる人という希少性を高められるということですかね。
KT:どちらかと言うと、Tableauはプレゼンテーションがもともとうまい人が多いんですけど。Snowflakeのコミュニティはエンジニアの方が多いので、企画をやったことがない方が多かったんです。それが、いつの間にかモデレーターの能力がめちゃくちゃ上がっていたり(笑)。
小島:違う分野のコミュニティの人に出会って、あの力があったほうが簡単に説明できるなとか、僕もああいうふうになってみたいとか。
KT:そう。コミュニティに参加することで初めてやるようになったので、社内の経営層への説明もうまくなったと言っていました。
小島:そのちょっとした憧れが周りにちらちら見えるのはすごく大事だと思っていて。「やれ」と言われてもできないんだけど、なりたい人がいるとやるじゃないですか。なりたい人がちらちら見えるのが、1つの価値観やモノサシだけで動いている会社との違いなんじゃないかなというのはとってもあるかなと。
KT:コミュニティにいる人は、すごく学びの場が多いと思います。
小島:これは最後にネタで用意したんですけど。どういう表現をしたらいいかなといろいろ考えて、いろんなコミュニティに足が掛かっているほうが安定するんじゃないかと思っていて。
コミュニティですごくがんばっても、1個のコミュニティにしかいないと、そこが揺らいでしまうとか。さっきの横田(聡)社長と田中(邦裕)社長の話の中で、ビジネスの場合はどんなにコミュニティが良くても、産業自体が斜陽になっちゃうとどうしようもない。
そしたら、そのコミュニティを運営しているスキルを持ちながら、ほかに行ったほうがいいわけじゃないですか。
KT:さっきの斜陽の話はすごくセンシティブで、愛していれば愛しているほど、みんなしがみつくはずなんですよ。斜陽のプロダクトのコミュニティにいても、ちょっと悪い方向に行っちゃいかねないじゃないですか。
小島:うん。
KT:自分の軸をいい意味で冷静に見ておくのはすごく大事だと思います。
小島:一本足打法だとすごくね……。
KT:一本足打法怖いですね(笑)。
小島:歪んだジェンガみたいに、1本抜くとガラっとなっちゃうかもしれない。それよりは、足がたくさんあったほうが安定するよねと。足を突っ込んでいるコミュニティの数と考えてもらうと、すごく安定するんじゃないかなと思うんですよね。
KT:私もそう思います。
小島:実際KTもTableauもあり、今はSnowflakeもある。もちろんそれ以外のいろんな立ち位置があるんじゃないかなと。
KT:いっぱいあります。そしてここもコミュニティ。
小島:ありがとうございます。KTが自分の所属コミュニティにCMC_Meetupって書いてくれて、ちょっと俺うれしかった!(笑)
KT:もちろんです。ダメだったら悲しいくらい! 私は入ってないのみたいな(笑)。
小島:どういうふうに越境していくかというところで、(コミュニティを)設計する時に注意していることがあるので、ちょっと紹介しておきますね。
たぶん、初めはコミュニティって関心軸で集まると思うんですよね。例えばヤッホー(ブルーイング)さんみたいになりたいんだったら、BtoCとかtoCのビジネスですと。
エンタープライズの話を聞く人は、うちはJTC(伝統的な日本企業)です、みたいなものがまぁ、ちょっとあるじゃん。違う関心軸なんだけど、話が合う人と会うとちょっと越境しやすいんですね。
KT:ありますね。
小島:今日もたくさんチャンネルがあったから、初めてJTCの話を聞きましたとかね。ちょっとした越境で、JTCの人が初めてヤッホーの話を聞いたということがたぶんあるんですよ。そこで仲良くなる人ができると……。
KT:めちゃくちゃいいですね。
小島:そう。僕がコミュニティを作っていて、コンテクストがすごく大事だという話をしているんですけど、懇親会は必ずやると言っています。あれは僕が飲みたいだけじゃなくて(笑)。それがあったほうが信頼軸を作りやすいんですよね。
信頼軸がメッシュになっていくと面積が広くなるんですよ。コミュニティの足の踏み場が多くなって、他のところにも渡りやすくなって、どんどん安全な場になっていくんじゃないかなと思っています。
みんながそういうふうに見ているかどうかはわからないんだけど、僕の頭の中では縦軸と横軸をどう実装するかはめっちゃ大事なところなんです。今のDATA Saberも理念やプログラムだけじゃなくて。さっきの情熱って、この軸にあるんじゃないかなという気がするんですよ。
KT:うん。
小島:一緒に話しに行って意気投合するとか。KTに言われたら「そうだよね!」と思うとか。逆にKTも誰かに言われたら「そらそうだ」みたいな。こういう横軸がないと、絶対に縦だけではコミュニティはうまくいかないんじゃないかなと思っているんですよね。横軸のところはどうですか?
KT:私は、この信頼軸を自分のストーリーと読み替えているんですけど。例えば、複数の足を持つ時に、何かストーリーがあればいいと思うんです。私の場合は、Tableauというデータビジュアル会社のプロダクトをすごく推していて、みんなも慕ってくれていると。
その状態で競合他社に転職したりして、そこのコミュニティをやりますとなった瞬間に、私の過去のストーリーが崩壊するんですよ。
小島:わかる。
KT:でも、SnowflakeはTableauとめちゃめちゃ相性のいい製品だったから、何の問題もないんですよね。私のストーリーは、過去から今も繋がっているんです。もちろん、競合他社に行っちゃいけないということじゃないですよ。ストーリーがあればいいんですけど、ないと困るよっていう話です。
自分なりにちゃんと物語があって、なぜ私はここからここに行ったのか。それがだんだん続いていくと思うんですよ。
将来、Snowflake以外のコミュニティもやりたいと思うと思うんですけど、私が考えているのはパラダイムシフトの絵みたいに丸がだんだんずれていく感じです。
小島:あぁ、グルングルン回りながら、円の中心はちょっとほかのところに行く。上に行ったり、下に行ったり。
KT:そうそう。それで面積を増やしていくというイメージを持っておくと、自分のストーリーとしてはつながっている。そのほうがやっぱり強い。足がぜんぜん違うところにあると、体がバラバラになっちゃうじゃないですか(笑)。
そうならないように、みんなが自分の人生の物語を持ってどういうコミュニティを運営するのかとか、所属するのかと考えると、コラボレーションもしやすいですし。実際、SnowflakeのコミュニティにTableauコミュニティから来てくれている人もいるし、やっぱりそういうことも起こるんですよね。
小島:なるほど。ぐるぐる回りながら移動していくっていうのはいい表現ですね。今日の尾原(和啓)さんのセッションでも、ループをどう理解するか、いろいろなかたちで説明してくれましたけど。
回し続けながらどこかに行く、面積が広がる、辿ってきた……。それがマイストーリーかもしれない。歩んできた轍が長く伸びていくようなことって、やっぱりひと所にいるとできないじゃないですか。そのためにはぐるぐる回していくのがすごく大事なんですね。
KT:回していくのが大事で、そうしてたどり着いたのがここでもあるわけです。コミュニティを2つ運営してきたから、今ここにいさせてもらえているのかなとも思いますし。
小島:たぶん今のKTの感覚だと、データをみんなにもっとうまく使ってほしいというストーリーの延長に、いきなりコミュニティのマネジメントとかマーケティングを考える世界がぽっとやってきた感じですよね。
でも、それも何人かの信頼軸があって、これはちょっと知っておくといいかもとか。もしくは自分がやってきたことが言語化されているような気づきがけっこうあったんじゃないかなと。
KT:すごくありましたし、共通していることだったり、みなさんの悩みで私が助けてあげられることもたくさんあるなと思いました。
小島:このCMC_Centralのセッション構成自体も、ちょっとずつ越境するような場にしてきていますし。横をつなぐために、僕はいつもいろんな懇親会とかをやってますけれども。このあと行かれる方はどのくらいいらっしゃるでしょうか?
(会場挙手)
小島:わお!
KT:お〜すごい!
小島:すごい。220人ですって。
KT:すごいですね。
小島:僕もよく連れて行ってもらう、シルクロードっていう……シルクロード行ったことない方はどれくらい?
(会場挙手)
KT:あ、初めてです。
小島:多い。ようこそシルクロードへ。なんで俺が宣伝してるんだという感じですけど(笑)。
小島:そこで220人が、今日のいろんなキーワードをもとにどんどん横につながっていくってすごく大事だと思います。たぶん全員とつながる必要はないんですけれど、話が合うとか、お話をしたい人を見つけて、1ホップ、2ホップやっていただく。
そうすると、今日来た時と帰る時ではたぶん景色がぜんぜん違うし、足が1本伸びているかもしれないと思うので、このあとのネットワーキングを楽しんでいただきたいなと思っています。絶対楽しい。
KT:絶対楽しい! さっきマルチコミュニティのすすめとあって、ここにいらっしゃるみなさまは、コミュニティマーケティングを運営している方や参加している方、いろんな方がいらっしゃると思うんですけど。基本的には、ご自分の事業や会社があって……当たり前ですけどそうじゃないですか。これって別に会社のイベントとかじゃないので。
なので、私が今日最後にお伝えしたいのは、みなさんはもうすでに越境していますと。みなさんは、すでにマルチでけっこう安心感のある土台を手に入れつつあります。私自身もデータというところからコミュニティに自然とやってきて……。
小島:そうですよね。
KT:もしかしたら、これからデータというのは取り払ってもがんばれるような感じになってくるんだと思うんですよ。そういうきっかけになると思うので、ネットワーキングして、どんどんアイデア、インスピレーションをもらってもらうといいんじゃないかなと思います。
小島:ということで、KTに、みなさんに拍手をお願いします。
KT:ありがとうございました。
(会場拍手)
一般社団法人コミュニティマーケティング推進協会
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