2024.12.10
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多くの人が70歳を過ぎても働くといわれている「人生100年時代」においては、自分らしく、やりがいを持って働くことが重要視されています。本イベントでは、『ライフキャリア 人生を再設計する魔法のフレームワーク』著者の原尻淳一氏と千葉智之氏をゲストに迎え、これからの働き方や自分らしい事業の作り方について語りました。本記事では、人生100年時代を生き抜くための「ライフキャリア」の考え方について解説します。
千葉智之氏(以下、千葉):さっそく中身に入っていきますが、導入として、こんなお話から入りたいと思います。本を出した関係で、最近いろんな会社の人事部の方とお話しすることが多いんですが、特にセカンドキャリア系の研修コンテンツがすごく少ない、という話がよく出ます。
あってもけっこうファイナンシャルな、老後のお金の算段みたいな研修が多いと。(老後の)2,000万円に足りないみたいなことですね。あとは若手社員の離職率がなかなか下がらないという話とか。
人事の方は、そもそも自分のキャリアプランが見えないと。100年時代って言われてるけど、自分も見えないのに社員に向けてキャリアの研修を作るのが大変みたいですね。こんな悩みがけっこうよく出てくるので、ヒントになる話をしていければと思います。まずそもそもキャリアの考え方の変化の話からします。
私は今年(2024年)、51歳です。原尻さんも同年代なんですけど、いわゆる団塊ジュニアど真ん中です。僕らが大学卒業して新卒で就職する時って、今よりもかなり終身雇用的な色が強くて。新卒で入った会社に、もしかすると定年までずっといるかも、みたいな感じで来ました。
このキャリアの考え方を説明する時に船と乗組員に例えるんですが、僕らが新卒の時は、船長さんというよりは乗組員で、その船の中で役割を果たすイメージでした。
会社に人生を委ねるみたいなところもあったので、なるべく大きくて安全な船、つまり大企業がいいよねという考え方でした。それから30年経ち、今どう変化しているかというと、リーマンとかバブル崩壊とかいろんなことがあって、最近はやっぱり、自分のキャリアは自分で舵をとらなきゃいけない。
会社は面倒を見きれないので、自分のキャリアを自分で舵をとるキャリアオーナーシップみたいな話が多いと思います。将来的に自分で舵をとらなきゃいけない、船長をしなきゃいけないってことを考えると、(船が)大きくて安全ならいいというよりは、「舵取りのスキルが身につく環境に身を置きたいよね」となってきます。
なので、必ずしも大きな船ではなくて、この舵取りのスキルが身につくような船に乗りたい。どちらかというと乗組員というよりは船長さんという気持ちで働くんだというのが、最近のすごく大きな変化かなと。そもそもキャリアって言葉は、僕らが新入社員の頃はなかったかなと思います。
千葉:最近、日経新聞で1つ象徴的な記事があって、これは東京商工会議所さんが1998年からずっと採ってる調査です。
新入社員に「就職先でいつまで働きたいか」って質問したものなんですが、1998年の調査から去年まで、「定年まで働きたい」って人のほうが「チャンスがあれば転職したい」って人よりも、数字上は高かったんですよね。実際はもう逆転してるかもしれませんが。
ただ、今年初めて、この数字が逆転していると。つまり、今の新入社員って、会社にずっといるのではなく、自分で舵をとってやらなきゃいけないって意識で社会に出てきてるという話です。
僕らの時とは180度違う感覚を、若い人は持っているといえます。僕らのような団塊ジュニアの方々とかは、無意識に持っていたこのキャリアのOSを入れ替えなきゃいけないタイミングなんだなと、この記事を見てすごく思いました。
その中で、今日のライフキャリアのお話は、みなさんの課題やニーズに答えられるような内容なんじゃないかなと思っています。課題感としては、ここに書いてあるような人生100年時代って言われるけど、人生80年時代では老後15年だったのが35年に延びるから、この35年間どうやろうか。
あと、年齢が上がってくると、どうしても目の前の仕事に対して、やる気・モチベーションが高まらなかったりする。そういうやる気をどうやって高めようかとか。あとテレビニュースでもすごく言われたりして、ちょっと不安になっちゃったりする課題感。
もし何かできるのであれば早く準備をしたいけど、どうしていいかわからない。こういうさまざまな課題感があると思うんです。今日の考え方を知ってもらうことによって、100年時代を生き抜くイメージができるので、不安が減ったり。会社への見方が変わるので、自分や仕事に対するモチベーションも上がる。
あと、いろんなテレビのニュースの不安も、一番の原因は会社に依存してるからなんですね。自分でコントロールしづらいものなので不安が生まれるんですけど、自分で舵をとるとコントロールできる領域が増えるので、過度な不安がなくなります。
千葉:フレームワークで明日から何をどうすればいいのかがわかる内容になっていて、準備もすぐに始められます。今日聞いてもらった後にこんな変化が起きて、100年時代がワクワクする状態になったらいいなぁと思っています。
今日お話しするベースとなるのは、この『ライフキャリア 人生を再設計する魔法のフレームワーク』という本なんですが、実は10年前にこの前身となる本を出しています。そして3年ぐらい前から研修をやっています。いろんな会社でもう1,000人ぐらいの方に受けていただいてるんですが、非常に評判が良くて。
「来年もお願い」とリピートしていただいています。こういう内容だったら本にして、もっとたくさんの人に知ってもらおうということで出したのが、この本になります。
では、さっそく中身に入っていきます。ワークキャリアからライフキャリアへという話なんですが、ワークキャリアっていうのは、会社を中心とした、会社に閉じたキャリアの話です。
ライフキャリアは会社だけじゃなくて、プライベートも含めた人生全体を捉えたキャリアのことです。なのでワークキャリアからライフキャリアに大きく見方を変えてみましょうというのが、本の中身になっています。
千葉:そもそもなぜこういう本を書いたのか。今日ご参加のみなさんには釈迦に説法かもしれませんが、『LIFE SHIFT』は有名なリンダ・グラットンさんが書いた本ですね。この中に、2007年生まれの日本の子どもたちの平均寿命は107歳だと書かれてあります。
今2024年なので、来年ぐらいからこの子たちは社会に出始めるタイミングなんですね。つまり、これは未来の話でもなんでもなくて、まさに100年時代が始まっているということです。
これまで長らく、人生80年時代と言われてました。80年時代は非常にシンプルでした。初めに勉強して40年働いて、引退後15年から20年ぐらい年金と退職金で悠々自適に暮らすみたいなのが、これまでのキャリアの流れです。
これが100年時代になると20年伸びるので、やはり上のシンプルな一本道だとなかなか難しいと。なので100年時代は、この学びと仕事をマルチサイクルで重ねながら進んでいく。そしてこの延びた部分を自力でなんとかしていかなきゃいけない時代になるってことですね。
人類史上100年時代って初めてなので、まだ誰も経験したことがない。それが世界で初めて、日本に来るタイミングなので、ここの20年をどうしましょうかと。
みんな正解を持っていないんですが、歯を食いしばってやるよりは、生き生きと楽しみながら過ごしていける方法はないだろうかと考えて、本に書きました。
具体的にどういう話かというと、先ほどの『ライフシフト 100年時代の人生戦略』の中で、リンダ・グラットンさんは、この100年時代を生き抜くための資産を有形資産と無形資産の2つに分けています。
そしてその中でも特に、3つ無形資産がある中で、特にこの3つ目の変身資産が大事だと言っています。先ほどのいくつかのサイクルを回していく、このステージに移行させる意思と能力を貯めていきましょうと。
ここのキーワードとしては、「キャリアを資産として捉えましょう」ってことですね。資産なので、積み重なっていきます。みなさんのこれまでの仕事のいろんな経験を棚卸しした時に、どんなキャリア資産が貯まっていて、今後どういう資産を貯めていけば、より楽しく生き生きと働けるキャリアになるのか。これを考えてみましょうというのが、今日の内容になります。
具体的にどう考えていくのかの話を、原尻さんにしていただきたいと思います。
原尻淳一氏(以下、原尻):僕らが作ったフレームワークは「キャリア・ビルディング・ブロック」と名付けています。これは5つのブロックで構成されたシンプルなフレームワークです。
横軸は、千葉さんが話してくれた生産性資産と変身資産に分けています。生産性資産は、自分が会社で働いているビジネスの領域を指します。一方で変身資産は、ビジネス領域というよりはプライベートな領域で、趣味や家庭での活動を含みます。
これまでビジネス領域だけがキャリアの対象でしたが、プライベートの領域でも資産が築けることに気づきました。
仕事柄、私はよくYouTubeを見ますが、多くのYouTuberは自分の特技や趣味をコンテンツにしてマネタイズしています。例えば、料理を得意とする主婦がYouTuberとして活動したり、お笑い芸人がコントを配信したり、ソロキャンプ好きの芸人さんがキャンプのコンテンツを作ったりしています。みんな特技を活かしているのです。
これは、仕事だけでなくプライベートでも立派に資産が作れる時代になったということです。だからこそ、私たちは2つの軸でキャリアを考えることを提案しています。
縦軸は3つの段階で定義しています。まずは投資の段階ですね。会社では研修やOJTで人材に投資しますが、これは投資のレベルです。この段階が満たされると、個人で何かを創り出せる「創造レベル」に達します。
創造レベルになると、仕事もプライベートも楽しさが増し、モチベーションが上がります。ライフキャリアの考え方では、この創造レベルの資産をどれだけ貯められるかが重要だと考えます。
これら創造レベルの資産をうまく融合し、有形資産化して所有できる段階が100年時代のゴールになると考えています。大野さんが言っていた新しい自営業の形がゴールになるというのは、まさにこのことです。自分の資産を融合しながら、小規模でもビジネスを保有できたら一つのゴールになるというシナリオです。
原尻:キャリア・ビルディング・ブロックは、3つのステップで考えます。まずは本業の分析です。これまでのビジネス経験やスキルを棚卸しし、どんなビジネス創造資産を持っているかを確認します。これはビジネスを生み出すための資産です。
次にプライベートの分析です。自分の趣味や特技を再確認し、それがどんな資産になるかを考えます。このステップを経ると、自分の好きなことや得意なことが見えてきます。
1と2で創造レベルの資産が見つかったら、それらを融合して新たなビジネスやアイデアを妄想し、楽しむことができます。これを資産融合の段階と呼びます。この3つの順番でこのフレームワークは分析していきます。
ここで再度、投資レベルと創造レベルの違いについて考えます。私たちは資産のレベルを5段階で分析できるようにしています。初めの投資レベルは、知識を学び、一緒に経験する段階です。会社では基礎知識を学び、OJTで経験を積みます。
次は、自分で仕事をこなす段階に進みます。1サイクルやってみて「こういうふうにやるんだな」と学び、自分で創意工夫する部分が出てきます。これが創造レベルの1歩です。
次は、人に教えるレベルです。自分のスキルが体にしっかり身についている証拠になります。最上級は自分で新しい何かを生み出せる段階で、これを「Create」と呼びます。新しい仕事や趣味を自分でアレンジして作り出す最高レベルです。
パワー指数を使って資産分析し、創造レベル以上の資産同士で掛け算すると大きな効果が現れることがわかります。教えるレベルでは3×3で9のパワーが、Createでは5×5で25のパワーが生まれます。これによってインパクトの大きさを数値で把握できるわけです。
先ほどのキャリア・ビルディング・ブロックになぞらえて言うと、創造レベルの部分の尺度をしっかり持ち、パワーが高いものを掛け算する意識を持つことが重要です。逆に言うと、1.0や0.5のレベルはあまり効果がないので、ここを資産融合してもあまり跳ねないということです。
原尻:幸福感に関する研究によると、幸福感は自己決定権が広いことに起因します。創造レベルの資産を持っていると、自己決定領域が広がりますよね。仕事や趣味が楽しくなるのは、自分の意志で何でもやれる領域が広がるからなんです。
ライフキャリアを考える上では、創造レベルの資産を多く持つことが重要です。50代から60代にかけて、自分の得意なもので小商いを始める実験を行い、定年後にスムーズに移行できるシナリオを作ることが理想です。
人生100年時代において、50歳から60歳の間に次のステージへの準備を進め、60歳から75歳までの間に自分のやりがいを持った活動を見つけることが大切です。退職金や年金、新たなパーソナルビジネスの3本柱で、100年時代の不安を解消できると私たちは考えています。
千葉:いったんここでスライドはおしまいです。
大野:原尻さん、千葉さん、どうもありがとうございました。今ご紹介いただいた内容も、とってもわかりやすくて、おそらく聞いてらっしゃる方々も「うん、理屈はわかった」って感じかと思うんですよね。
さて、その上でもう少し自分事として理解していくためには、仕事の領域と、プライベートの領域と、パーソナルビジネスを創造するための3つのステップがありますが、それぞれについての疑問を私のほうからお聞きしてみたいと思います。
ご参加のみなさんからもご質問あれば、Q&Aのほうに質問を投げていただき、可能な限りフォローしてみたいと思います。よろしくお願いします。
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