ヘリコプターを使用したマグロ漁業の危険性
ジョン・ケイ氏:こんにちは。ジョン・ケイと申します。前職は米国空軍のドローン・オペレーターです。Valtecの創業者でCEOをしています。
Valtecは、商業漁業のAIソリューションを提供しています。当社のAIの活用により、漁船は魚群をより速やかに探知できるようになります。当社のミッションは、商業漁業における能率や安全性、サステナビリティの向上です。
当社の最初のマーケットはマグロ漁業、年間6兆5000億円の市場です。海は広大で地球表面の70パーセント以上を占めています。さらに、漁船は比較的移動速度が遅く、せいぜい時速20キロメートル程度です。そのため、商業的に捕獲されるマグロの9割以上がヘリコプターを船上から飛ばすことで発見されてきました。
しかし、ヘリコプターの使用は手間がかかり危険を伴います。運搬や整備に多大な労力を要し、乗務員の事故や負傷のリスクも高い状況があります。また、ヘリコプターであっても魚群探知は結局、人が行う作業であり、人が肉眼で状況を探るため、認識・判断ミスも避けられません。
話をコストに戻します。ヘリコプターは3億円以上で非常に高価である上に、各種役割を担う乗組員のチームも必要です。移動中の船に着陸できるパイロット、精密かつ魚の群れを識別できるフィッシュ・スポッター、ヘリコプターの整備士、これらのメンバーが3ヶ月仕事を続けるための食料と水も必要です。燃料費も月5,000万円以上かかります。
ドローンを自動で派遣してマグロ魚群を特定
ここでヴァルテックの登場です。我々は「プロジェクト・ニモ」を立ち上げ、マルチドローン制御ソフトウェアを使用したAIソリューションを提供します。ヘリコプター1機の代わりに3機以上のドローンを用いて魚群範囲を広げることが可能で、最大25機までドローンを増やすことができます。
当社のソフトウェアではAIがドローンを操縦するので、ヘリコプターパイロットが複数いなくても大丈夫です。弊社のドローン・オペレーターが1人で自然言語を使ってドローンに探索場所を指示します。コンピュータビジョンを使用するため、今まで以上に魚群が正確に検知されます。
サステナビリティにも配慮がなされています。マグロ漁業をはじめとする商業漁業は環境への影響が大きな産業で、石油消費は世界全体の石油消費の1.2パーセントを占め、漁獲量1トンあたりのCO2排出量は2トンにのぼります。我々のシステムは、石油消費量を減らし、漁獲1回あたりの効率を向上させます。
Valtecのシステム「プロジェクト・ニモ」のデモをお見せします。ニモは複数のライブソースからデータを抽出し、マグロ魚群がいる可能性の高い場所を試算してから、ドローンを自動で派遣して実際の場所を特定するのです。
画像に気泡が映っていますね。水中に見える泡はマグロの大群を示しています。20トンもの大群です。ニモは学習により操業の際の漁獲高と漁獲効率を向上させることが可能です。
日本のマグロ市場は世界最大
我々はさらに、特定のドローンに依存しないシステムを構築しています。ミッションごとに、大型漁船では搭載が可能な固定翼型ドローンを、小型漁船ではeVTOLドローンなどを使用します。大洋長距離ミッションのために、すでに大手ドローンメーカーと提携し協業しています。
水産業の盛んな国々の水産業大手企業であるLungSoon Ocean GroupやFnabelleなどとも手を結んでいます。台湾・フィリピン・パプアニューギニアの地域最大級の漁船団も私たちの顧客です。また、マグロ漁業用ソナーブイを製造する大手メーカーとも協業しています。こうした連携により、ヴァルテックの市場シェアは今後もより一層の拡大が期待されます。
我々のビジネスモデルはSaaSモデルです。船舶は、1隻あたり月額780万円を支払います。これは、ヘリコプター賃金と同程度の料金設定です。
マグロ漁業から発足したValtecは、いずれ他種の遠洋漁業にも進出する予定です。我々が構築するのは海洋インテリジェンスシステムであり、市場はますます拡大するでしょう。
世界第2位と第3位のマグロ市場である台湾やパプアニューギニアでは、すでにお取引が始まっています。そして今回、世界最大のマグロ市場である日本との関係構築のためにここにいます。
日本は、海洋機器製造や水産物加工の分野においても世界をリードしています。日本とのお取引により、我々は市場における大きな成長の機会をいただけると考えています。
私たちはAIと商業漁業が作る未来を創造します。ぜひ共にそんな未来を作りましょう。ありがとうございました。