アナログ作業だから生じる、文章の「単純なミス」

東真希氏:こんにちは。私たちは、日本語の文章の間違いを修正するAI「wordrabbit(ワードラビット)」を開発しています。企業では、たった1つの文章の間違いによって損失が発生していることをご存じでしょうか? 例えば印刷物の電話番号を間違えて、損害賠償で数百万円。書籍に複数のミスが見つかり、回収で数百万円。こうしたことが実際に起きています。

「でも、それってごく一部じゃないの?」と、思われた方もいらっしゃるかもしれません。確かに簡単なメールなどは、間違えても特に問題にはなりません。でも実際には、顧客への納品資料など、間違いが損失になる文章が存在しています。

では、こうした間違いを防ぐために、出版社など文章のプロがどのようにチェックしているのかをみなさんはご存じでしょうか? 実は、ほとんどが紙とペンによるチェックなんです。私も何年もそうしてきました。だからこそ見逃しが起きてしまっています。

しかも大抵は、後から見直ししてみると「どうしてこんな単純なミスをしちゃったんだろう?」という非常に単純なものばかりなんです。このようなアナログによるチェックの課題を解決するのがwordrabbitです。wordrabbitの開発理念は「人の集中力を最大化する」ことです。使い方は簡単で、Word上でwordrabbitを開くだけです。もちろんブラウザ版もあります。

これはビジネス書籍の文章です。書くたびに、リアルタイムで次々と修正候補が提案されます。一度にチェックできる文量はビジネス書籍1冊分と、従来の10倍以上です。

てにをはの修正、漢字の修正、不快語など、非常に多くの項目がチェックできます。従来は間違いの可能性を指摘するだけだった箇所も、wordrabbitならベストな改善案まで提示します。

wordrabbitと従来の生成AIとの違い

さらに、wordrabbitができるのは誤字脱字のチェックだけではないんです。誤字脱字のない文章でも、固有名詞や金額が事実と違えば損害が大きくなります。そこでwordrabbitは、人の目で確認すべき箇所をハイライトします。さらに内容や用語の確認までできます。これまで1件1件検索していた手作業の手間までも自動化します。

wordrabbitの最大の強みは、人間が文章を把握する能力をプログラム化した論理エンジンです。この論理エンジンは、言語学と情報工学の専門知識を合わせて作り出されました。時間や資金があっても到底真似できるものではありません。この論理エンジンと独自のAIモデルが相互に検証を行い、AIだけでは実現できなかった正確な検証を実現していきます。

でも、このような理想的なシステムも決して簡単に開発できたわけではありません。初期段階の正答率は低いものでした。それでも私たちは改善を続け、現場の課題を解決するソリューションを生み出すことができました。

「でも、これって生成AIでできるんじゃないの?」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。実はこれは生成AIの不得意な分野なんです。特化型AIであるwordrabbitは文章の個性を維持し、架空のものを作り出すことはなく、国や出版のルールに則った修正を行うという強みがあり、性能は他社製品を大きく上回っています。

国内トップ10の出版社のうち2社で導入済み

私たちは企業が利用する場合のセキュリティにも強いこだわりを持っており、入力内容が学習データに利用されることは決してありません。このように、ありそうでなかったwordrabbit。お客さまからは「人が見過ごしたミスを発見した」「業務工数が3割削減された」といった声をいただいています。

料金は個人から法人まで、アシスタントを雇うのと比較すると非常に低価格です。リリースから8ヶ月が経ち、アカウント数は右肩上がりです。

営業なし・広告なしで、すでに国内トップ10の出版社のうち2社で導入されています。国内のAI市場は約1兆円、私たちは将来、学習データの整備などにもwordrabbitを活用していきます。

さらに教育現場でも活用できます。教育市場では、学生や日本語を学ぶ外国人の学習支援にwordrabbitが活用できます。日本の教育現場では、教師の長時間労働や生徒の作文力の低さが課題となっています。それは教師が作文指導に力を注ぐだけの余力がないからなんです。

このような課題に対して、実際にすでに小6から中2までの生徒の作文支援にwordrabbitが活用されています。これは実際の中学生の文章です。wordrabbitは生徒の文章を書き換えることはありません。生徒は解説を見て自ら理解を深めていくことができ、教師は内容面の指導に集中できます。

最後に、wordrabbitは文章を書く必要がある人のためのAIです。AIに代わりに書いてほしいじゃないんです。人間が生み出したものをより良くすることにAIの力を使いたいんです。それが「人の集中力を最大化する」という、私たちの理念に込めた思いです。その実現のために、これまで不可能だったことに、これからも挑戦していきます。ありがとうございました。