2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」にてマネジメント部門賞を受賞し、10万部を突破した『任せるコツ』。著者である山本渉氏をゲストに迎え、自分も相手もラクになる正しい“丸投げ” というテーマでイベントが行われました。本記事では、効果的な褒め方のコツや、仕事を丸投げする上司への対処法などを解説します。
鳥潟幸志氏(以下、鳥潟):書籍(『任せるコツ』)の後半の中で褒めることについて取り上げた言及があって。私も部下とコミュニケーションをする時に、もちろん指導したり、いろいろやるんですが、褒めるって意外と難しいなと思っていて。
そこであらためて、この書籍の中で特に強調していらっしゃった「褒める」ということに関して、やり方とか、どこに気をつければいいかみたいなことを教えていただいてよろしいですか。
山本渉氏(以下、山本):本の主題としては『任せるコツ』なんですが、任せるには、任せる相手を作る・育てること、育成もすごく重要になるので、後半は育成パートにしているんです。その中で、モチベーションの上げ方の1つとして「褒める」というのがあって、褒め方も紹介しています。
褒めること自体が目的になるのはあんまり良くないなと思うんですが、モチベーションを上げるためとか、もっとがんばってもらうために褒めていくということが、褒めることの意味なのかなと大前提として思っています。
褒め方って大きく2つあって、「垂直承認」と「平行承認」と言います。垂直というのは、同じ人の過去と比べて縦軸で褒めるということですね。「1年前はこれができなかったのに、これができるようになったね」「前期の売上はこれだったのに、今回は120パーセント行ったね」という褒め方です。
それに対して平行は、「誰々さんに比べると良かったね」と、他の方と比べるということです。どっちを推奨しているかというと垂直承認で、目的としては「さらに成長してほしい」ということなので、前よりも今、今よりも先と、成長につながるからです。
山本:逆に叱り方で考えると、水平が良くないというのはよくわかると思います。「誰々さんに比べてダメじゃないか」というのはかなり良くない叱り方だと思うんですが、「褒めるほうならいいんじゃないか」と思って、ついついやってしまいがちです。
鳥潟:やってしまいがちですね。
山本:自分自身もマネジメント職になってすぐ評価を戻す時に、「同期の中でも何番目だったよ」とか「誰々さんは君より先輩なのに、君のほうがパフォーマンスが良かったね」みたいな褒め方をついついしてしまっていたんです。
それは誰か1人を下げることにつながりますので、陰口とまでは言わないですが、信頼関係(につながること)もあります。何よりも、その人がさらに成長してもらえるかどうかという意味では、縦軸の褒め方をしてあげるといいかなと思います。
鳥潟:でも、これは本当に落とし穴というか、横比較で「あの人よりもできてすごいね」とか「あの部署のあの人より」とつい言ってしまいがち。
山本:言っちゃいますよね。
鳥潟:そっちのほうがわかりやすいですし、ある意味、上司としては比較対象があるっていうのは楽なんでしょうね。ただ、その人の過去と比較してあげる垂直承認は、その人のことをちゃんと見ていないと言えないということにもつながりますよね。
山本:それは大きいですね。
鳥潟:先ほどおっしゃっていただいた、事前にしっかりとその方を理解したコミュニケーションを取るということが、まさにそこにもつながってくるということですね。
山本:特に若い方は、ちゃんと自分のことを見てくれているかどうかをすごく気にされるので、「半年前はこうだったけど、こうなったね」と言うと、「あ、しっかり見てくれているんだな」と信頼関係に結び付くし、しっかりモチベーションのアップにもなると思います。
鳥潟:叱るのも褒めるのも、その人の過去と比較することが大前提ということですよね。
山本:そうですね。そして、それ自体が目的にならないようにする。叱る時も、部下がひどいミスをしたってなるとどうしても感情的になっちゃって、叱ることで溜飲を下げているというか、ストレスを発散している場合もあるので。
そうではなくて、どうやったらその人が同じ失敗を起こさないのかを考えると、伝え方も変わってくると思うんですね。叱る、怒鳴るんじゃなくて、しっかり指導をしていく。指摘をして、指導をして、どうやったら良くなるかという改善点を一緒に考えていくということにたどり着くはずなので、まずは目的を持っていただくといいと思います。
鳥潟:よく「アンガーマネジメント」とか言いますけど、たぶん人間だから誰でもイラっとくるのはあるでしょうけど(笑)。
山本:気持ちはすごくわかりますね(笑)。
鳥潟:よく7秒空けると落ち着くとか言いますが、イラっとした時にそのままの勢いでしゃべらずに、いったん落ち着いてみる。「目的は、あくまでその人の成長だったり、プロジェクトを成功させることだよな」と、一度自分に問いを向けられると、今言っていただいたように前に進むことができるという話ですね。ありがとうございます。
鳥潟:予定よりも少し早いんですが、続々といろんな質問をいただいていますので、ここからは質問も取り上げながらお話ししていければなと思っております。
まず、「いいね」が多いものからいければと思います。「異動により新しい部署の管理職になった時に、自分より業務に詳しいメンバーや実績あるメンバーにお願いをすることが多い。けっこう聞いてくれるメンバーもいるけど、様子見をしてくるメンバーもいる中で、自分よりも圧倒的に経験がある方にどういう任せ方をしたらいいでしょうか」。いかがでしょうか?
山本:なるほど。確かにちょっとつらいポジションだと思うんですが、年配の方が自分の部下というパターンも今は多くなっていると思うので、それに近いと思います。ゴールというか、「これをやってください」というのをしっかりお伝えして、進め方とかはその方のほうが詳しかったりするので、そこに対するリスペクトをしっかり持つことが重要かなと思います。
鳥潟:なるほど。
山本:ただ、遠慮しちゃって「これをやってください」というのも言えないのが一番良くないので。
部署によっていろいろ違うと思うんですが、「セールスを20パーセント伸ばしてください」なのか、「このぐらいヒットする新商品を開発してください」なのか、ゴールをしっかり伝えて、そこからどう進めるかは逆に教えてもらうというスタンスでやっていくといいと思います。
鳥潟:確かにいいですね。やはりリーダーとしては、目的、背景、Why、Whatを考えているからぜひお願いしたいんですが、Howの具体的な部分は私よりも経験が豊富なわけですから、「逆にどういうのがいいと思われますか?」と聞きながら任せていく。その裏には、やはりリスペクトがあることが大事だということですね。
山本:そうですね。ビジョンというとちょっと大げさな感じはすると思うんですが、部としてのゴールやチームとしてのゴールは共有して進めていくのがいいと思います。
鳥潟:ありがとうございます。
鳥潟:じゃあ、どんどんいきますね。ベテランでやる気がない年上の同僚に仕事を任せなきゃならない立場にあるという方からです。「自分であまり考えずにすぐに聞いて、やる気があんまりない、指示待ちの方に対してのうまいお任せの仕方」。こういうご質問が来ていますが、いかがでしょうか。
山本:これもなかなか厳しいシチュエーションだと思います(笑)。
鳥潟:これも難しいですね(笑)。
山本:そもそもやる気がないっていうのは難しいので、まずはモチベーションを上げていかなきゃいけないんですが、モチベーションだけで(本の)チャプターをしっかり書けるぐらい複雑なトピックなので、「これさえやっとけばいい」ということはなくて。
「なぜモチベーションがないのか」から逆算で考えていかなきゃいけないので、その方を詳しく知らないと方法はお伝えできないところはあるんですが、まずはなぜモチベーションが上がらないのかを知って、それに対応していくことが1つですかね。
あと、先ほどと重複するんですが、チームとしての目的やゴールをお伝えして、なるべく参加してもらうことが必要です。たぶん年配の方でも、何か得意なところはあると思うんですね。例えばですが、コミュニケーション能力はそんなになくて、人付き合いはうまくないんだけども、システムを作るのだけはすごく得意とか。良いところを探して、そこをすごく引っ張り上げたり。
山本:もしくは、「チームのほかのメンバーにもそれを教えてください」と言うと、意外と喜んでやってくれたりもするんですよね。やる気を失っていたけど、「そういうふうに言われたらまあ、ちょっとやってみるか」って動いてくれることもあるので。良い面を見つけていくと同時に、モチベーションが上がってない理由を潰していくという作業をしていくといいと思います。
鳥潟:ありがとうございます。書籍の216ページに、モチベーションを下げる要因が10個書いてあるんですよね。これだけパパッと読み上げます。
やりたい仕事ではない、向いている仕事ではない、仕事に意義を感じない、将来性がない、仕事にプライドが持てない、上司が見てくれていない、評価されない、期待されていない、仕事に達成感がない、成長を感じていない。
確か書籍の中では、これ1つというよりも、いずれかが影響している可能性があると書かれていて、まずはそれを探るのが1個目なんじゃないかと。書籍の中でそれぞれの打ち手が紹介されていますので、ご質問いただいた方もぜひ読んでいただいて、どこがモチベーションの減少要因なのかを探っていただけるといいかなと思いました。
山本:はい。先ほどお伝えした「褒める」というのも、その中の1つでご紹介をしています。
鳥潟:ありがとうございます。
鳥潟:では、どんどんいきたいんですが、まだあんまり触れられてないテーマで……あっ、これにいきますね。「丸投げ上司のボスマネジメントについてアドバイスが欲しい」。けっこう「いいね」が集まってます。
「逆に上司に任せすぎだと気づいてもらえる方法とか、伝え方があればアドバイスをください」。逆の視点でおもしろい質問だなと思うんですが、いかがでしょうか。
山本:なるほど。間違った丸投げというか、つらい丸投げをしてくる上司に対して何をしたらいいのか。
鳥潟:そうですね。書籍の中では書いてない内容だと思うんですが、応用できるものがあれば教えてください。
山本:その方のデスクに、そっとこの本を置いておくのが一番良い方法かなと(笑)。
鳥潟:(笑)。確かに。これはおもしろいですね。
山本:誰かにプレゼントするっていう、何気にギフト需要がすごく多くて。Amazonのランキングでもギフトに入っていたんですが、そういう利用のされ方も多いので。ほとんどは経営者の方がマネジメント層に渡したり、上司が新しくリーダーになった人に渡すパターンが多いんですが、逆をしてみるのもいいかなと思います。
山本:真面目な話をすると、「ちゃんと話す」というのが一番なんです。だた、そうなっているということは、コミュニケーションもうまくいってなかったり、信頼関係もうまくいってないので、「これがつらいですよ」「この丸投げの仕方が良くないですよ」というのも言えない関係なのかなと思って。そうするとなかなか難しいですね。
1回打診してみるというのもあるかもしれないですね。逆にこっち側からゴールを聞き出して、「これがゴールで、こういう目的なんですね。ということは、ここまでにこれをやればいいんですか?」って聞く。それでやってみると、意外と向こうも「あ、ちゃんと理解してやってくれるならいいな」と思ってくれて、少しずつ直っていってくれたらいいなと思います。
鳥潟:確かに。書籍の132ページ目に書いてある「正しい丸投げのポイント」ってあるじゃないですか。本来、上司が考えて依頼すべきなんですが、そこを(部下から)確認しにいくというのは確かにありですよね。「これどういう目的なんですか?」とか。
あと、断る余白というのはまた聞き方が難しいんですが、逆に言うと「今、実はこういう状態ですが、それでもやったほうがいいですか?」って率直に聞いてみるとか。逆にそこを確認しにいくというのは、確かにすごく良い取り組みだなと思います。
あと、個人的に悩まれてる方に「私だったらこうするかな」と思うのが、上司の方が依頼してくる仕事の何が自分につらいのかを認識して伝える。
モチベーションを下げる要因が10個あるとも書いてありますが、これも人によって違うと思うんですよね。やりたい仕事じゃないからつらいのか、もしくは将来性がない仕事をやらされていると思うからつらいのかとか。まずは自分で認識して、そこについて会話しにいくのも1個のやり方かもしれないなと思いました。
山本:そうですね。
鳥潟:非常に気づきがある内容です。ありがとうございます。
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