2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
第1234回 トレンド経営学『メンバーを育てるためのコミュニケーションとは?』(全1記事)
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加藤想氏:今日は、「メンバーを育てるために、どのようにコミュニケーションをしていけばよいのか」について考えていきます。
最近よく聞く声としましては、「メンバーが自発的に動けるように働きかけたいけど、なかなかうまくいかない」「新卒で入社してくれた方がすぐに会社を辞めてしまう。理由を聞くと『成長できる環境がない』と言われてしまった」と。こんな声をよく聞きます。
人を育てると言うと、まず研修が思い浮かぶ人がいるかもしれませんが、研修を受けただけで一気にレベルアップして、その後も仕事でバリバリ成果が出せるかと言うと、そうではありません。あくまでも成長するためのきっかけをつかむものでしかありません。
そしてやはり、メンバーを育てることに対して最も効果があるのは、日々のメンバーとのコミュニケーション。この中でいかに成長につなげていくかだと思います。あなたの周りにいるメンバー育成が上手な方、そしてチームメンバーがみんな生き生きと仕事をしている方は、コミュニケーションが上手な人が多いのではないでしょうか。
私自身も育成をしないといけない立場として日々悩んでいるのですが、書籍であったり、コミュニケーションがうまい上司を観察する中で見つけたことを、今日はご紹介したいなと思います。
そもそもメンバーを育成するとはどういうことか。中原淳さんの『駆け出しマネジャーの成長論 7つの挑戦課題を「科学」する』 という本に書いてあった定義が、個人的にはしっくりきています。そこに書いてあった内容としては、「リスクをとってメンバーに仕事を任せて、適切なタイミングでフィードバックする」とありました。
もちろん事細かく指示命令型で仕事をお願いして、その過程で成長させていくこともありかなと思うんですが。ただ育成をするという観点であれば、手取り足取り指示をして、それを実行するのは、効果が低いんじゃないかなと思います。メンバーが自分で考える時間を奪わず、あくまでもメンバーに任せることが、部下育成の原理かなと考えています。
ではどういうスタンスでメンバー育成に挑めばよいか。これも、吉井理人さんの『最高のコーチは、教えない。』という本が非常に参考になりました。吉井さんは現在、千葉ロッテの監督をされている方で、以前WBCで日本が優勝した時のピッチングのコーチでもありました。
この本の内容としては、どのタイミングで怒るのかも書いていたんですが、選手として活躍していた当時、野村(克也)監督は手を抜いた時だけしか怒らなかったそうです。つまり結果やプロセスに対して怒るのではなくて、気持ちが入っていなかったかどうかだけで、怒るかどうかを判断しているということでした。
そして「気づかせる」というスタンスを崩さないことも大事だと書いていました。その際には「観察」「質問」「代行」、この3つがキーワードとなるようです。
しっかり相手を観察して、ただ正解を教えるわけではなくて、(相手が自分を)客観視できるように質問をひたすら繰り返して、相手に気づかせるように質問していく。そして代行というのは、相手になったつもりで考えてアクションを行う。
やはり目の前のメンバーが困っていると「こういうふうにしたら?」とアドバイスをしたくなるものですが。その際にぐっと我慢をして、相手に気づかせるために「これはどうしてこういうやり方なの?」と質問していくスタンスが、育成には大事なんじゃないかと考えています。
最後に、フィードバックの時はどうするのかについてお伝えをします。もちろん何か気づいたことがあった際、フィードバックをすることは大事です。タイミングや場所、どのように何を伝えるのか。これをそれぞれ真剣に考えることが、相手にとって価値があることです。ただ、特に厳しめのフィードバックをする時は、非常に頭を悩ませる方も多いんじゃないかなと思います。
個人的に非常に参考になるのが、長村禎庸さんが書いた『急成長を導くマネージャーの型 地位・権力が通用しない時代の“イーブン"なマネジメント』 という本に書いてあった方法です。そこでは、「必ず事実確認をした上で、自分を主語にしてフィードバックをする」と書かれていました。
そして場合によっては、いったん厳しいフィードバックをしたあと、あえて相手の反論を聞かずに、少し時間をおいてから、どう感じたのかを確認する。だいたい1週間後ぐらいに、「以前私はこういうフィードバックをしたけど、どうだった?」と聞いてみる方法です。
フィードバックで失敗する方のよくあるパターンとしては、「あなたはこういったコミュニケーションの方法が良くないからダメだと思うよ」と、事実を確認せずになんとなくの印象でフィードバックしてしまうパターン。
また、「〇〇さんが良くないと言っていた」と、自分の主語ではなくて他人の主語で話してしまう。こういったフィードバックは、相手にとってまったく自分ごととしてとらえることができないので、このへんはしっかり考える余地があるかなと思います。というわけで、今日はメンバー育成のコミュニケーションについて考えてみました。何かヒントになればうれしく思います。
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