2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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企業のDXの取り組みや組織設計、マーケター育成などをテーマにトップマーケターを招くグロースXのセミナーに、『なぜ「つい買ってしまう」のか? 「人を動かす隠れた心理」の見つけ方』の著者で、同社執行役員の松本健太郎氏が登壇。「調査を通じて顧客理解を深める具体論」をテーマに、デジタル時代のマーケターに求められるスキルや、SORフレームワークで態度変容を促すアプローチについて語りました。
松本健太郎氏(以下、松本):今までお見せしたのが、「定性と定量を使い分けた顧客理解」というアプローチになります。今日視聴されている方はリサーチャーの方が比較的多いと思いますが、「いや、自分のアプローチと違うかも」とか、「ちょっとここは独特だよね」というところは、恐らくあると思います。
ただ、定性と定量を使い分けて、定性に必要なアプローチと定量に必要なアプローチを用いて、「リスキリングってなんでしないんでしょうね?」というふわっとしたお題をひもとく。ある程度、群で「共感が得られそう・得られなさそう」「当てはまる人が多そう・少なそう」というところまで要素を分解するという観点は、「言っていることはわかる」という方が恐らく大勢おられるんじゃないかなと思います。
定性調査を用いて、「リスキリングをしない理由って何なんだろうね」というところを深掘りして、複数の理由を知ることで顧客の解像度が高まり、定量調査を用いて、「リスキリングをしない理由ってどのへんですか?」を聞いて、ボリュームを知ることでさらに顧客の解像度が高まったと。
恐らく今日視聴されている方の中には、定量調査をメインに顧客理解を務めていらっしゃる方が多数おられるんじゃないかなと思います。データや調査を使って顧客理解をつかめるというのは、非常に重要なことだと僕自身も考えています。一方で、僕も経験がありますが、いまいちピンと来ていないというか、「うーん、そうなんだろうけど、そうじゃないような。何だろう、このモヤモヤ」と思うのは、冒頭の「原因と結果」です。
これは必ずしも行動と態度である必要もないでしょうし、理由と行動にひもづく必要はないかもしれませんが、やはり「因果」が欠落している。その行動をする理由・しない理由の「しない理由」の深掘り度合いに「うん?」と思われる方もおられるんじゃないかと思います。
「定性調査は何のために使うんだろう?」と考えた時、僕は結果を起こした原因を深掘りすることだと思いますし、定量調査は、その理由・原因の部分が、はたしてどれぐらいの人に当てはまるかを知るために行うものだと思います。これが定性と定量の使い分けの1つのアプローチになると。顧客の解像度を深めるという観点で、具体像を浮かび上がらせる手法の1つが、定性・定量を用いた顧客理解の「型」の1つに当てはまるのではないでしょうか。
「型」というところですごく重要なのがマーケティングです。いわゆるプロモーション観点のマーケティングだけではなく、プロダクトを作り上げるマーケティングも含まれるでしょう。昨今のデジタル時代のマーケティングで考えると、LTVベースで事業の売上を予測しやすくなった側面もあるでしょうし、逆に難易度が上がった点もあるかと思います。
「マーケティングのリスキリング」と考えると、今お話しした顧客理解の文脈もあるでしょうし、「LTVベースで計測ができるようにならなければならない」というのもあるでしょうし、もっと言うと、「アジャイルな組織に変革をするには」という観点もあると思います。
今日ご視聴されている方は、マーケターの方が多いと思いますが、デジタルがベースになったことで、従来からの知識にプラスして新しいことをいっぱい覚え直さないといけない、新しいことを使い倒さないといけないという状況でもあると思います。これは「最初からデジタルです」という方もそうだと思います。
僕自身も20代のキャリアはデジタルマーケティングごりごりでしたが、ベースの知識が運用型広告に絞られていたので、その領域は答えられるけどそれ以外のことはわからず、めちゃめちゃ苦戦しました。
部門業務が自分の目線に偏ると、PLのことがよくわからない。数字やデータがゴールになって、受注や売上がゴールにならない。ということは、お客さまを見失ってしまいますし、サイロ化されて横の部署がやっていることがぜんぜんわからない。もっと言うと、僕は20代は運用型広告に絞られていたので、「30代になった時にどうしよう」「40代になった時にどうしよう」とものすごく不安でした。
デジタルをメインにしている会社だけでなく、オフラインをベースにしている会社でも、似たような状況があるかもしれません。デジタルの知識だけがつまみ食いされて、全体観が描けていないケースもあるでしょう。
グロースXの特徴を2つお話しします。1つ目は、eラーニングのサービスを提供していることです。2つ目は、eラーニングで知識が身に付いた状態で、グロースXを学んでいる人で集まり、1時間ワイワイ振り返りをしたりワークショップをやって、知識を深掘りする体験ができることです。
ここに書いてあるのが、グロースXのサービスを通じて身に付く知識構造の一部です。当然、実行の部分はすごく大事ですが、基礎の部分で今日お話しした顧客理解のところも重要です。他にも、「PDCAをどう回すか」とか、「事業フェーズで判断をどう回すか」「KGI・KPIの設定の仕方」も大切です。さらに、そもそもビジネスパーソンとしてのマインドセットをどう定着させるかも重要かなと思います。
グロースXでは、この体系を約半年間アプリを使って学び、その後みなさんが集合した状態で教育を受けるという体験ができます。半年を「長い」と感じることもあるでしょうし、「半年で定着するかな?」と考える人も多いかもしれません。
グロースXは、アプリ学習で学んだことをアウトプットする場として機能するだけでなく、みんなで集まって一緒に学ぶ体験ができます。学術的には「コラーニング」と呼ばれていますが、「一緒に集まって話す」という体験自体が組織を活性化させたり、チームビルディングの観点で有効だと思っています。
実際に、6ヶ月のコースを修了した後はマーケティングで学んだ知識が定着するだけでなく、その先も学び続ける組織になっていきます。部署が違っても、共通で一緒に何かを進めるという、チームビルディングの観点でも非常に貢献ができると思います。マーケティングの知識は、事業を運営する上で必要な知識の1つですが、プラスして組織としての一体感が定着するのは、恐らくグロースXの特徴ではないでしょうか。
グロースXにはスキル診断やアセスメントがあります。受講すると、最初に「30のスキルがどこまで定着しているか」や「どこが弱いか」を明らかにすることができます。また、例えば50名が受講していて、そのうち30名ぐらいが顧客理解に大変関心が高いとわかると、私やCMOの西井さん、COOの山口さんなどが、スペシャルセッションを行うこともあります。例えば、山口さんがブランディングについて、西井さんがCRMについてお話しするといった具合です。
学ぶ前に組織のどこが弱く、どこが強いかを明らかにして、6ヶ月を通じて、弱いところを高め、強みをさらに伸ばし、組織全体でどれぐらいのスキルを持っているかを明確にすることができます。これもグロースXのおもしろみの1つだと思います。
最後に、「SORフレームワークで態度変容を促すアプローチ」についてお話しします。これはあくまでも1つの考え方で、唯一の正解ではありませんが、通常はこのように読み解いていきます。具体的には、先ほどの定量調査で、「リスキリングをしない理由」について、ある程度重み付けがされた回答をご覧いただきました。そこで、回答者の方に「会社、職場、仕事内容に求めることは何ですか?」と聞いています。
この「求めること」は、「リスキリングをしない理由」を反転させたものです。例えば、「新しい仕事を覚えたら、昇進などで評価をしてほしい」や「仕事に必要なスキルを学習する際は、金銭面で支援してほしい」などです。もともとは「○○だから、リスキリングはしたくない」という理由でしたが、それを言い換えて、「もし会社が、新しい仕事を覚えたら昇進などで評価をしてくれるようになったらどうだろう?」と考えるわけです。
先ほどの回答とほぼ同じ内容になっています。「新しい仕事を覚えたら、昇進などで評価をしてほしい」の項目では、トップ2で65パーセントでしたし、「新しい仕事に挑戦したい」の項目はトップ2は37パーセントでした。
1つのアプローチとして考えられるのは、「リスキリングをしよう」という刺激が与えられた時、「どうせ会社は変わらない」と思う人はリスキリングをしないでしょうが、刺激の部分で「リスキリングをきっかけに評価制度がアップデートされる」とか、「必要なスキルが体系化される」ということをセットで伝えると、「これをやった分だけ評価されるようになるのかな?」と考えが変わり、リスキリングをする方向に向かうのではないかということです。
2年前ぐらいに、教育の領域でリスキリングがかなり盛り上がりましたが、2024年の今はけっこう盛り下がっています。なぜ盛り下がっているのかというと、その解がここに出ているのかもしれません。
会社側は従業員に「やれ、やれ」と求めるけど、「やった従業員を正当に評価できているのか?」という問題ですね。これが2023年に界隈で注目を集め、2024年のベースアップにも絡んでいるという論文が出てきたりしていました。
態度変容を促すには、リスキリングは教育のお膳立てをするだけでなく、評価制度の支援や、出世とスキルの関係性の明文化の支援まで提供すると、事業会社側に求められるのではないかということが明らかになりました。1つの見方ですね。
このスライドが最後になります。
今回のテーマは「顧客理解」でしたが、本当に理解すべきは「態度変容」なのかもしれません。なぜなら、態度が変わるということは、そこに人の本質があるからです。私はよく「心の叫び」と表現しますが、「あ! そうそうそう! だったらやるよ」「だったらやらないよ」「だったら買うよ」という心の叫びは、態度変容においてどのようなメッセージを発するかということだと思っています。
今回のテーマがリスキリングであれば、「学習だけでなく、組織のトランスフォーメーションが一緒じゃないと、従業員は付いてこないですよね」というのが見えてきたということだと思います。
ですので、顧客理解という観点では、定性・定量の調査を通じて顧客の解像度を高めるだけでなく、さらにその先の「何があったら態度が変わるのか?」というところまで含めて顧客理解をすると、より解像度が高まるのではないでしょうか。このように考えております。本日はありがとうございました。
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