CLOSE

『部下との対話が上手なマネジャーは 観察から始める』出版記念イベント(全3記事)

忙しすぎて、チームで「今何が起こっているか」を把握しきれない管理職 部下のマネジメントよりも先に注目すべきもの

本イベントは、本イベントは、『部下との対話が上手なマネジャーは観察から始める ポリヴェーガル理論で知る心の距離の縮め方』の出版を記念して開催されました。同書籍の著者で株式会社ロッカン代表の白井剛司氏が登壇。本記事では、マネージャーの負担が増大している背景や、なぜマネージャーに観察力が必要なのかを語りました。

神奈川県丹沢の農場で、農業体験やマインドフルネスを提供

白井剛司氏:今回、ビジネスの人たちだけでなく、忙しい人全員に観察を勧める本を出しましたので、その内容を話していきます。よろしくお願いします。

今日は人事の方、忙しいマネージャーの方、マインドフルネスの世界の方々もいらっしゃっています。内容が全部わかる人もいれば、1つしかわからない方々もいると思うので、なるべく多くの方がわかりやすいようにお伝えしていきたいと思います。

まず自己紹介です。僕は16年間、広告会社で人材育成をやっていました。今もそうですが、主に現場の人間関係や指導をテーマにしてきました。あとセルフマネジメントということで、マインドフルネスも10年ぐらいやっています。MBSR(マインドフルネスストレス低減法)の講師もやっていこうと思っています。

これとは別で、今親兄弟6人で神奈川県の丹沢に引っ越して、弟を中心に農場で農業体験やマインドフルネスを提供しています。これ(画面右上のたくさんの人が寝ている写真)は、ボディスキャン瞑想ですね。僕の今までの経験も活かして、企業や組織に農業体験しながらチームビルディングしていただくこともやっていこうと思っています。

僕はわりと人材育成の流れでマインドフルネスに出会って、最初はゴエンカ式のヴィパッサナー瞑想から入りました。アメリカのエグゼクティブの方々に向けた、(ドラッカー・スクール准教授の)ジェレミー・ハンターさんにも教えているプログラムに通ったり。3年ぐらい前から、さっき言ったMBSRの指導養成講座を受けて、マインドフルネスを本格的に学びました。

それで、2年前から今回のイベント主催のマインドフルネスビレッジや、DMW(ディス・メディカル・ワークショップ)クラブで学んでいます。最初は(ヴィパッサナー瞑想は)修行的な瞑想ではあったんですけど、だんだん日常に近づいてきた経緯があります。今はどっちかというと国内、特に丹沢で「自然を前にしてマインドフルネスをやっていけるか」を考えたりしています。

与えられた時間より、やることのほうが多い現代人

ビジネスパーソンを中心に、みなさんお忙しいと思うんですが、今がどんな状況なのかという話と。「観察することによって、忙しい状況がちょっと変わるんじゃないか」という、ポリヴェーガル理論の話をさせていただきます。

僕も、もともとマインドフルネスがベースになった上で、ポリヴェーガル理論と出会ったので。今日は実際にエクササイズとしてのマインドフルネスを1個か2個、体験してもらいたいと思っています。そんな感じで、初めての方もマインドフルネスを体験できるような時間にしていきたいと思います。よろしくお願いします。

はじめに環境認識の硬い話になりますが、お付き合いください。今はVUCAの時代とか言われています。僕はこの(米経営学者の)ピーター・センゲという人からすごく影響を受けたんですが、端的に言うと、(現代は)「与えられた時間より、やることのほうが多い」と。どんどん時間が短くなって、やることが増えている流れの中に生きていると言われています。

だからやはり、どんどん大変になっていくところはあるかなと思います。(その原因の)1つは効率化かなと思います。仕事の環境が昔とちょっと変わってきているので、かつての組織と今の組織を比較しようと思います。

かつての組織のマネジメントは、1つは人材育成をして、仕事は短期と中長期がうまく回っていく、好循環が起きていた時代かなと思います。

だから短期で業績が上がるので、人がついてきてくれて、組織に人が増えていく。その人を育成して将来的にもどんどん成長していく。だから、仕事と人の成長がリンクしてる状態だったと思っています。

マネージャーの負担が増大している背景

今は(昔とは)違っていて、これだけではない要素がたくさん出てきています。そんな中で、今回の書籍のテーマであるマネージャーについては、こういう状態になっています。もともと短期と中長期のビジネス成長と人の育成が(マネージャーの仕事として)あったんですが。2016年の働き方改革で、良いことではあるんですけど、限られた時間の中で仕事しなきゃいけなくなりました。

コンプライアンスや情報セキュリティとありますが、10年〜20年の間にどんどん増えてきています。あと2020年から始まったリモートワーク。スピードも重視されるし、人数も少なくなってきて、どんどん効率性が上がってきています。そんなふうにだんだん忙しくなる中で、やはり心理的安全性がなくなってきているので、ここを増やしていこうと。

さっきのものと比較すると、これは「自組織の成長」ということでベクトルがうまく一致してたんですけど。今はそれぞれ目的とする矢印の方向がバラバラになっています。だからアクセルとブレーキを両方踏んでいる感じとか、いくつも同時にレバーを引いてる状態になっているとも言えるかなと。マネージャーや人を育てるリーダーの方々は、けっこう大変な状況にいます。

忙しすぎて「今何が起こっているか」を把握しきれないマネージャー

僕は飛行機のパイロットに例えていて、(操縦席には)メーターとかいろんな計器類がたくさんありますよね。(一方マネージャーは)あれだけの忙しい状況になってくると、人から報告を受けても仕事のことや次のことを考えたりしていて、今どんなことが(チームで)起こってるかわかりません。

だから操縦桿(機体を前後左右に傾ける装置)を握ってはいるんですけど、握ってるかどうかもわからない感覚で、メーターも確かじゃない状態。現実も、起こっていることがしっかり見えてない忙しい中で、タスクを処理してるんじゃないかなと思います。なので、まずは今何が起こってるかを理解するところから始めないといけないのかなと思います。

僕がずっと学んできたことの1つが、「マネジメントの父」と呼ばれているドラッカーです。(ドラッカーは)まず自分をマネジメントしないと、他者をマネジメントできないですよ、と言っています。どうしても他者をマネジメントすることが求められているとは思うんですが、その前に、自分の中をしっかり見ていこうよ、ということです。

例えば、土台が安定してないのに家を建てるみたいなことです。外で起こってることがいろいろあるかもしれないけど、自分の状況に余裕がなかったり、ちょっと疲れていて状況を悪く考えたり、疑い深く考えたり。ネガティブな考えで情報を受け取ると、やはりあんまり良いマネジメントができないと思います。

かつてのキャリア形成が成り立たなくなっている

今マネージャーの話をしてきたんですけど、決してマネージャーだけではなくて、メンバーの側も大変なんですよっていうところを話します。

これは学習のモデルです。かつての職場なんですけど、真ん中にはロールモデルになる先輩がいます。新入社員が入社して、同心円上の一番外に入ってきますよね。そして、先輩がいる中央にだんだん向かっていって、10年ぐらい経つと一人前だよねと言われる。

職人や料理人、あと例えば洋服を作るような工房とかは、こういう成長の流れをしていきます。だからみんな同じ仕事をしていて、先輩を見習ってだんだんステップアップしていって、憧れの先輩に近づいていく感じでした。

いわゆる徒弟制ですが、これが成り立つには条件があります。環境があんまり変わらない時はこれでいいんですけど、今みたいに環境の変化が速いと、このモデルは成り立たなくなってきます。この頃のキャリアは階段を上っていくようなイメージです。だから「速く階段を上ったほうがここに近づける」みたいなモチベーションを求められていた時代かなと思います。

可能性は無限大だが、足場が安定しない若手のキャリア観

ただ今はちょっと違っていて、かつての職場がさっきの1つのサークルだとしたら、どんどんエリアが広がってきています。より効率性が上がってくると、同じ営業でも、業種専門の営業や企画をする営業の人がいたり。販売でもオンライン型の営業をする人もいれば、大型のクライアントに直接接点を持つような人もいたりする。

昔は1つのサークルの中心に向かっていったんですけど、今はどんどん仕事の領域が変わってくるので。「自分はどこに向かっていくのか」を考えなきゃいけない状況になっているのかなと思います。

そんな中で、場合によっては「ロールモデルがない」とよく言われてはいたんですけど。もうこの緑の線になると、いわゆる社内ではなくて社外の人をロールモデルにしていくこともあったりします。

いくつも矢印がある感じですね。だから「ネットワークをたくさん作って、自分のキャリアを伸ばしていきたい」みたいな感覚を持つ若い人が多いと思うんですが。「キャリアと言ったら何ですか」という話をすると、今度は「万華鏡」という答えも出てくるんです。

方向性が定まってないので、可能性は無限大にある。だけど自分の足場が安定してない、みたいな感覚があるのかなと思います。なので、個人の自由度はけっこう増えるんですけれど、先輩の姿を見て成長していくところがないので、方向性がわからなかったり。安心感やつながりが減っていると思います。

マネージャーもメンバーも「安心感」が持てない時代

なのでマネージャーもメンバーも、どっちも安心を感じにくい時代なのかなと思います。マネージャーだけが安心するっていうことではなくて、みんな一様に不安を持ってる、安心感がない時代なのかなと。

そんなふうに一体感を持ちづらいところではあるんですけれど、だからこそコミュニケーションを増やしていこうという流れがあります。ただやはり忙しい中で時間を作っているので、コミュニケーションの時間は増えても、お互いに気持ちの余裕がなかったり。相手の話を聞けなかったりするところもあるのかなと思います。

相手の発言に、「今度はこう返さなきゃ」って頭の中で考えたりする。そうすると(相手は)話をちゃんと聞いてもらえた感じがしなかったりします。

そんな中で、今回は「観察」が大事かなと思い、提案をしました。本当は観察だけじゃなくて、いろんな制度や会社の仕組みも変わらなきゃいけないと思うんですけど、それはやはり時間がかかるので。今マネージャーが自分でできることとしたら、やはり観察なんじゃないかなということです。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 10点満点中7点の部下に言うべきこと 部下を育成できない上司の特徴トップ5

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!