“やりたい仕事”が変わっていくのは自然なこと

中村直太氏:今回のテーマは、「Willを仮置きする3つの問い」です。前回、Willを大切に働こうという話をさせていただきました。ここでのWillとは、シンプルに「やってみたいこと」だと捉えてください。みなさんは、今の会社でやってみたいことは何ですか? 仕事を通じてどんなことに取り組みたいと思っていますか?

現時点で具体的なイメージが頭に浮かぶ人もいるかもしれませんが、なかなかイメージしづらい方のほうが多いのではないでしょうか。仮に入社面接の対策として、そのようなことを一生懸命準備していたとしても、それはあくまで入社前の自分で考えたイメージにすぎません。

実際に働き始めてより具体的な情報が入ってくると、そうではなかったと気づくこともあるでしょうし、「自分がやりたかったことは、実はこういうことなのかな」と、アップデートされていくこともあるでしょう。

ここで重要なのは、やってみたいことは、必ずしも一度決めたら「絶対にこれだ」という固定的なものではありません。本書では「仮置きのWill」というコンセプトでお伝えしていますが、あくまでも現時点の仮置きであり、流動的で柔軟なものであるということです。

一度自分が口に出したことはなんとしてでも守りたくなりますけれども、仕事や働くことに対する理解が深まることで、自分自身の興味関心が移ろいでいくのは自然なのではないでしょうか。

そのように考えてみると、いったん仮置きでやってみたいことを持ち、それを動かしながら更新していくことを繰り返して、探求していく中で本当にやってみたいことを見つけていくことができます。

やりたいことを見つけるための3つの問い

私自身も、自分が本当に何をやりたいのかがわからないまま、いったん縁があった目の前のことに一生懸命に取り組んできた時期があります。その中で、「もしかしたら、自分は本当はこんなことをやりたいんじゃないか」と気づかせてもらって、時に深掘り、時に軌道修正をしていきながら今に行きつきました。

そして現在も、そのプロセスを楽しみながら、よりやりたい度合いの高い仕事に近づいていっている感覚で生きています。このように、仮置きのWillと表現するくらい、やってみたいことは捉えどころがないわけですが、その輪郭をつかむために役に立つ3つの問いがあります。

1つ目は能力に関する問いで、「自分は何が得意なのか」。2つ目は欲求に関する問いで、「自分は何を求めているのか」。最後の3つ目は価値に関する問いで、「自分はどのようなことに価値を見出すのか」です。

シンプルな問いは得てして答えを出しにくいんですけれども、その効果は強力です。自分自身の能力、欲求、価値を起点として、目の前のことに一生懸命に取り組みながら、「自分は本当に何をやりたいんだろう」と自問自答を繰り返していく。そうやって少しずつ定まっていくものではないかと思います。

メンバーが主体的に動き出す、上司側の問いかけのコツ

では、マネジメントする側の立場から何ができるでしょうか。メンバーが、仕事の中で自分がやりたいことを見出し、主体的に生き生きと働いていけるように、3つの問いを使いながらガイド役になってあげるのはいかがでしょうか。

ガイドする1つの方法は、3つの問いを投げかけてあげることです。「何かやってみたいことがあれば、いつでも提案してね」と大雑把な問いを投げかける代わりに、「どんなことが得意なの?」とか「何を求めて仕事をしているの?」とか。「どんなことに価値があるって思うの?」など、能力や欲求、価値に焦点を当てた問いかけで、やってみたいことにつながる材料を引き出してあげるイメージです。

もう1つの方法は、3つの問いに沿って客観的に見えていることをフィードバックしてあげることです。人間は思ってる以上に自分のことが見えていません。みなさんも第三者から言われて、初めて自分の強みに気づいた体験があるのではないでしょうか。特に入社間もないメンバーが、自分自身のことを冷静に評価するのは簡単なことではありません。

ですので、「仕事の中で○○さんはこんなことが得意ではないですか?」とか「こんなことを大切にしてるように思えたんですけど、ご自身はどう思いますか?」とか、自己理解のヒントになるような材料を提供してあげるようなイメージです。

仮置きのWillは、働くことに意欲と方向性を与えてくれます。意欲と方向性があれば、主体的に行動することができます。行動すれば、体験が増えます。そして、体験は新しい情報と自己理解をもたらします。新たな情報と自己理解は、Willをアップデートする材料になっていきます。

そんなサイクルを回していきながら、自分もメンバーも主体的に生き生きと働ける職場は素敵だなと思います。