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ChatGPTによる新規事業開発の進化 ~数万パターンのアイデア探索から自社の勝ち筋を見つける方法~(全3記事)

ChatGPTがDXや価値創出の「ブレイクスルー」になる理由 自社ならではの「価値」を生み出すためのAI活用法

「ChatGPTによる新規事業開発の進化」をテーマに、リブ・コンサルティングが新規事業やサービス開発に取り組む人に向けたイベントを開催。同社の先進技術研究組織「ACROBAT」の所長・森一真氏が、ChatGPTを新規事業開発に活用する際のポイントなどを語りました。

生成AIの衝撃

森一真氏(以下、森):では、本編に入っていきたいと思います。ちなみに11月にも同じタイトルでセミナーをやり、今回はその時の「再講演」ということだったんですけれども、実は大幅に内容をアップデートしまして。「バージョン2」ということで(笑)、ぜひ聞いていただければと思います。

生成AIは非常に進みが速い領域なので、まずは最新トレンドをご紹介します。また新規事業開発の中で、AIをどう活用していくのかという考え方もお話しします。特にアップデートが大きかった事例を詳しく紹介したあと、パネルディスカッションに進めていきます。

では、直近の生成AIのトレンドから、5分ほどお話します。「生成AIの衝撃」ということで、ここはもうみなさまご存知のとおりですね。

昨年(2023年)の3月なので、ちょうど1年前にChatGPTの最新バージョンGPT-4が出て、日本でも大きく話題になりました。そのあともどんどんアップデートを続けています。ほかにはAnthropic(アンソロピック)がAWSと組んで徐々に流れがきていると思いますが、いまだにOpenAIが最強かなと思います。

ChatGPTはテキスト生成AIなので、基本的には文章や言語を扱うのが得意です。一時期は「本当にセキュリティは大丈夫なのか」と話題になりましたが、エンタープライズ向け製品もかなり充実してきた印象ですね。Microsoft Copilotをはじめとして、ChatGPT Enterpriseなんかも出ています。

あとは業務用のアプリケーションを構築するためのMicrosoft AzureやGoogle Cloudなどのクラウド環境にも、普通に生成AIが入っていますので、今は誰でもどういった企業でも、自社専用の生成AIアプリケーションを自由に作れるようになったと思います。

ChatGPTの最新機能をいくつかご紹介します。まずは画像の認識と生成ですね。

チャットの指示の中に画像を取り込んで、その画像を解釈して回答を出したり、指示した画像を作ったりできます。

あと音声ですが、今、iPhoneのアプリケーションでは音声対話ができます。

向こうも音声でしゃべってくれますし、音声で入力したことをちゃんとテキストに起こしてくれるんですね。キーボードがない環境でも使えて、けっこう会話もしやすくなったと思います。

ついこの間、OpenAIのChatGPT上で作るBOTが公開されました。ダウンロードではないんですが、いろいろな人が作っているBOTが公開され、会話ができるGPTsのストアがオープンしました。

BOT自体は数がたくさんあるんですが、まだそんなにがっつり使っている人はいないんだろうなと思います。でも数も種類もかなり増えていますので、今後もしかしたら、ものすごくバズるかもしれないなと思っています。AppleやGoogleのアプリストアみたいな感じで、どんどん経済圏ができあがりつつあるなと。

ChatGPTで自社ならではの「価値」を生むために必要なこと

:いろいろな機能がどんどん出ていますが、我々は、特にChatGPTがDXのブレイクスルーになると見ています。これはDXのわかりづらさや成果へのつながりづらさ、あと人材・組織面での課題が非常に多かったところに対して、ブレイクスルーを起こすと考えています。

従来のDXでは困難だった業務、いわゆる知的生産、実際の成果物ですね。ドキュメントや表、レポートなどを直接作るアシストができる。それから従来のSQLやPythonのコードなどのプログラムを触らなくても、自然言語でデジタルが扱える。そして後ほどもう少し詳しくお話しますが、知識を資産化することもできます。

きれいなデータじゃなくても、WordファイルやPowerPoint、PDFなどの人間用のドキュメントをそのまま使うことができるので、企業の中に眠る知識を資産化しやすくなっています。そこが非常に大きなポイントかなと思います。

特にChatGPTは、OpenAIがすでに学習済みのAIとして提供しています。従来のAIは、企業の中のデータだけを学習して、企業の特定ケースを解くために作っていくのが一般的なやり方でした。昔は「ビッグデータ」と言われていましたが、非常に大量のデータを学習させないと、問題を解くことができなかった。

でもChatGPTはすでに一般的な公開情報で学習済みの状態で提供されている汎用的なAIなので、だいぶ状況が変わっています。現実のビジネスの問題を高い精度で解決していくには、いかに自分たちが自社独自の知識や特定の問題を解くための専門知識を持ち、ChatGPTと連携できるか。ここが価値の源泉になります。

企業における生成AIを活用した価値創出の事例

:それをうまく扱うことができれば、「知的労働のスケール」が見込めると。これはまさに知的労働の産業革命だと考えられます。マニュアルや自社のナレッジをいろいろなシーンで使えるようになる。

例えばこれ(スライド)は営業シーンですが、いろいろなお客さまや営業担当者、さまざまなシーンに応じた情報の加工が、その時々でできるということですね。

こういった自社の知識をうまく扱って、知的労働をスケールすることができるようになる。こういったところをポイントとして覚えていただければと思います。

今日は特に「新規事業開発」がテーマですが、価値創出領域の最たるものかなと思います。実は国内でもこの領域の実績や事例がかなり出てきています。

明治安田生命さんが保険の営業で提案に使っていたり、伊藤園さんがパッケージ開発に使ったり。あとはセブン-イレブンさんが商品企画に、アサヒビールさんが技術文書の要約で使っていたりと、かなり使われ始めている印象です。

海外の先進事例としては、けっこう規模が大きいスタートアップであるアストラゼネカさんとアブサイ(Absci Corp)が治療薬の探索、創薬の領域でAIを使っています。実は創薬でAIを使うのと事業開発の領域で使うのはちょっと似ているところがありまして。

何百万ものタンパク質のパターンを分析して、良さそうな薬の候補を探すので、原理的には事業開発の領域とけっこう近いのかなと思っています。科学的な方面にいくと、こういった事例もあります。

新規事業開発に活用する際のポイント

:このように価値創出領域での活用がどんどん進む生成AIですが、新規事業開発の領域でどう使っていくのかをご説明します。

ChatGPTで新規事業アイデアを考えようとした時、一番簡単なのは「こういう業界でこういう新規事業アイデアを考えてみて」と。これでもなにかしらは出てきはするんです。でも今回やっていくのはもう少し複雑な内容です。

事業開発にはステップがあります。

特に(スライド)前半の「事業仮説の探索・評価」を重点的に、生成AI活用を考えていきたいと思います。

まず、従来人間がどうやっていたか。数ある市場の中から領域を絞り込んで、その領域で事業アイデアを考える。

自社のアセットや市場の課題を掛け合わせて、ソリューションを考えていくという流れが1つあります。

あとはそういったベースのアイデアがあって、一定の市場調査などを踏まえてビジネスモデル仮説に落とし込む。これが一般的な流れかと思います。

ただ、これを人間が主体で進めていくといろいろな課題があります。目的やゴールが不明瞭だったり、なかなか取り組み領域が決まらなかったり、アイデアの幅が狭かったり、リサーチが難しかったり。

そんな課題が多々あり、実際のところ探索や分析、仮説の策定・検証など非常に負荷が高い業務が多数積み重なって、なんとか事業企画に落ちていくんですね。

そもそもできる人が少ないのと、組織で知見を貯めようと思っても属人性が高すぎてなかなか貯まらないのが、課題として大きいのかなと考えます。

ChatGPTの3つの特徴

:ここでChatGPTのようなテキスト生成AIをどう使うかです。前提としてChatGPTの共通認識を形成するために、まずChatGPTの3つの特徴をお話しします。

要はChatGPTは、人間の思考をシミュレートできるということなんです。例えばなにかしらの概念の理解や、その概念に対して思考処理をする。そして情報を分析するだけでなく、仮説的に深掘りできます。

1つ目が「概念理解」です。

これはChatGPTを触られている方だったら、感覚はわかると思います。例えばこれ(スライド)は経産省が出しているDXレポートの一文ですね。

「既存ビジネスの効率化・省力化ではなく、新規デジタルビジネスの創出や、デジタル技術の導入による既存ビジネスの付加価値向上がDXです」と言っています。これをもとに「概念理解していることを示してください」とChatGPTにお願いすると(笑)。

「主題がDXで、キーポイントがこれで、ただの技術の導入じゃなくて価値に結びつけることが大事だって説明していますね」と。これでChatGPTがある程度理解しているのがわかります。

2つ目の「思考処理」とは、今、理解した概念について「こういうことをやってみてください」という指示です。

新規デジタルビジネスの創出や既存ビジネスの付加価値向上について「日本の典型的な製造業に適用した場合に、どんな変革が生まれるかを考えてみてください」と。

そうすると実際に適用したかたちで「データ駆動型サービス」「カスタマイズ製品」「スマート工場」などがでてきます。これは先ほど概念理解したものを、典型的な製造業に適用したものです。

3つ目は「仮説的な深掘り」です。

これ(スライド)はダミーの情報なので実際の企業ではないんですが、例えばこういう自動車部品の製造会社があったとします。

その情報を提供して、先ほどのデジタルビジネスの創出で「これを入れると、どんな内容が考えられますか」とさらに細かく聞く。考えられる理由を踏まえて仮説的な深掘りができます。これはChatGPTを使われている方だったら何気なくやっていらっしゃると思うんですが、この3つの特徴をうまく活用していくのが、このあとの「事業開発のAI化」になります。

今のようなAIへの指示を「プロンプト」と言います。OpenAIがプロンプトのガイドを出していますので、ご興味ある方は見ていただければと思います。

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