対面ならすんなりできる会話が、テキストだと伝わらない
前田鎌利氏(以下、前田):(参加者コメントで)「会社で3年くらい前からTeamsが導入され、コミュニケーションがTeamsチャット主体の人とメール主体の人がいます。相手によって使い分けるべきだと思うんですが、なかなか難しいですね」。
山本大平氏(以下、山本):そうですね。チャット弊害はうちの弊社でも確認していて。ちょっと仕事の話をすると、「コンフリクトマネジメント」というコンサルジャンルがあるんです。
前田:コンフリクトマネジメント。
山本:コロナ後に、社内でよくわからないコンフリクトが起きている会社が多いんですよ。「これまではこういうことがなかったんだけど、けっこう増えている。どうしたら包括的に抑えられますか?」と、弊社はよく人事系の方々から相談を受けるんです。これがチャット文化の弊害だと思います。
言っていること同士の対立ではなくて、お互いに会って話せばすんなり行くことをテキストにしちゃうと、感じ方が違っちゃう。それも情報量の話で、例えばLINEで「ありがとうございます」って送るじゃないですか。そこに丸があるとかないとか、そんなのを気にする人も意外といるんですね。
前田:わかります。丸ね。
山本:でもその感覚って、会えば「ありがとうございます!」「ありがとうございます……」ってわかるじゃないですか。そこはチャット文化の弊害なので、なるべく対面で会ったほうがいいんじゃない? とは、けっこう言っています。
出社を促す施策を行っている企業も
前田:「78.6パーセントの企業はリモートやテレワークを継続する」というデータがあったと思うんですが、実際に今、大平さんの周りのクライアントさんの出社率はどれくらいですか?
山本:業界や会社規模によるんですが、1つ言えることは、コロナ前とコロナ後で圧倒的に全体的に変わっている。うちのクライアントで言えば、リモートを主でやっている会社が意外と半分ぐらいですね。
前田:家を出るのとずっと家にいるのとでは、日常の中で接する人間の数が圧倒的に違うじゃないですか。これ、けっこうきついなと思っていて。外に出たら出たで嫌なこともあるんでしょうけど、楽しいこともあったりするので。
山本:そうなんです。
前田:某製薬会社さんは「ウェルカムバックキャンペーン」という、出社させるためのキャンペーンを組んでいて。不思議ですよね。
山本:不思議ですね。
前田:かたやNTTさんとか、出社したら出張手当がつく会社さんもできたりしているから、コロナ前後ではコミュニケーションも変わってきているということですね。
山本:そうですね。
前田:いろいろと(コメントを)いただいていますね。ありがとうございます。「手紙は書きませんが、メモを渡す時はできるだけメールより手書きメモにします」。さすが。
山本:いいですね。
前田:昔はよく出張から帰ってくると、机の上に付箋で「お土産です」とか書いて置いてありましたけど、出社しなくなるとお土産すらもらえない。
山本:そうですね(笑)。
前田:ありますね(笑)。(参加者コメントで)「スタバのクーポン付きのハガキとか、世代関係なくクリスマスカードとか贈ります」。
山本:これもいいですね。
前田:さすが。
人間が視覚で捉えられる情報は、全体の約5パーセントだけ
前田:(参加者コメントで)「チャットは言語化能力が上がるので勉強になりますが、リアルでお会いした時の肌感は何物にも代えがたいですね」。そうそう。空気感や、その時の匂いや香りとかもありますからね。「確かに弊害を感じます。顔を合わせたことがない人でも、チャットでガンガン責めてくる人がいたり」。
山本:(質問者さんは)「責めている」と認識されているんですが、意外と送っているほうは責めているつもりはない場合があるんですよ。解釈がずれている。会えば一発ですよね。
前田:そうですよね。「小学校の先生に年賀状を出したら手紙が返ってきました。小学校の時のように鉛筆で書かれたものでうれしくなりました」。いいですね。ありがとうございます。
山本:手紙の本質は、さっきの「会う」という話とまったく一緒です。さっき誰かが「肌感」とおっしゃってたんですが、そこだと思っています。
「なんだ、難しいことを言いやがって」という感じになると思うんですが……理系の人間なので量子力学の話をすると、僕の友だちで量子の研究をしている人が何人かいるんですが、みんな同じことを言っていて。僕らに見えている世界は、情報量として何パーセントくらいだと思いますか?
前田:僕らの視覚で見えている世界。
山本:そうそう。
前田:何パーセントくらいかな。5割くらいですか?
山本:どうですか?
参加者1:2割、3割。
山本:(正解は)5パーセントぐらい。
前田:5パーセント!? すごいね。
山本:実は(見えていない部分が)95パーセントはある。
会えない人にオファーするための最高の手段は「手紙」
山本:オンラインで会話していたら、情報の95パーセント分がカットされる。だから今日は会いたいなと思ったんです。どういうことかというと、ノリとか温度感は会っているからわかるんですが、測定技術がないだけで(会っていない時でも)きっとあるんですよ。
前田:なるほどね。
山本:95パーセントを遮断した状態でオンラインミーティングもやっているし、メールのテキストなんかはもっと伝わらない。情報をちゃんと伝えたいし、表情も伝えたいし、音声の抑揚も伝えたい。そもそも人間って生物なので、本来はこういうシステムはなかったはずです。伝えたい場合は、こうやって会ったほうが伝わる。
でも、会ったことがない人にオファーをする場合はどうしたらいいのか。会えないなら、じゃあ最高の手段は何? というと、やはり手紙になりますよね。
前田:すごい。みんな明日から手紙を書くしかないですよ。
山本:いやいや(笑)。無理やり書かないで。あまり言うと僕も「メールで来たよ」となっちゃうので。
前田:ケースバイケースでやってください。(参加者コメントで)「それ(「自分にはメールで連絡が来た」)を言う人って、その人と会ったことがあって、人となりを知っている人なんですよね」。そうなんですね。それはきっと嫌なやつだな。
山本:そうですね。
前田:そんな人への断り方を。
山本:次へ行きましょう。
同時に仕事の依頼が来た時、どちらを断る?
前田:次の質問にいきたいと思います。2つ目は「断る時の優先順位と判断基準は何ですか?」です。
山本:なるほど。難しいな。
前田:もう1個が「高単価でご縁も深い方から同時に依頼が来たら、どっちを取りますか?」。どっちも条件は一緒だということですよね。両方からご依頼が来たんだけど、両方とも同じくらいお金をもらえる。ただ、両方とも縁があるのでどっちも断りづらいなという時に、どっちかを断らなきゃいけない。
「断る時の優先順位と判断基準」とあるんですが、大平さんはどうですか? 物事を断る時に、優先順位付けや判断基準とか、置かれている軸みたいなものはありますか?
山本:質問の確認なんですが、ご縁が同等に深い方で、仕事のオファーとして同じぐらいのギャランティだという設定で合っていますか?
前田:合ってますよね。
後藤:おっしゃるとおりです。
山本:その場合はシンプルで、早く来たほう。
前田:1秒でも早く来たほう。いいですね。先入れ先出し。
山本:まったく同等だという話であれば、シンプルに「早く来たほう」で決めています。
前田:だそうですよ、美佳ちゃん。
山本:だって、後から来た人を断る時にすごく簡単に断れませんか?
前田:理由が明確ですよね。
山本:「先にいただいていたので、そちらを優先させていただきました」と言っても、別に(断られたほうも)嫌な気はしないと思うんですよね。
後からもっといい案件が来ても、先に決まったほうを受ける
前田:例えば、あまり関係ない人とすでに仕事が決まってたんだけど、同じタイミングでもっといい案件が来た。先に決めちゃったんだけど、ほとんど関係がないし、できることなら先に決めちゃったほうを断りたい。
後藤:めっちゃ聞きたいですね。
前田:聞きたくない? すでに決まっちゃっているけど、もっといい案件が来ちゃった時に、先にくれた人を断る断り方って何かあります?
山本:それは、そもそもの考えが“エロい”です。
(一同笑)
前田:そもそもね。
山本:受けちゃったんだから、先に来た人に対してはやりましょう。人としてね。
前田:断っちゃいけないよねと。
山本:そんなエロい考えは。
前田:よくない。
山本:後に来た人には「ちょっと待ってもらうことはできますか?」と言う。それしか方法はなくないですか(笑)?
前田:みなさん、いいですか。そんなスケベ根性を出しちゃダメだということです。
山本:(笑)。
後藤::ありがとうございます。
(一同笑)
前田:でも、よくあるんですよ。
山本:ありますか。
前田:優先順位づけって日常の中にもあって、仕事と家族では「家族優先」というのが明確だったら、当然家族を取ることもあると思うんです。
断るときも正直に、誠実を心がける
前田:例えば、仕事が決まっているのにあとで運動会の日が決まったとか。「家族優先にしたいんだけど、先に仕事が決まっちゃっているから断れない。だけど家族の運動会に行きたいな」という時に、結局「ごめんね」と言って仕事を断るのか、「ごめんね」と言って運動会に行かないのか、これってけっこう難しかったりしません?
山本:僕はあまり難しくなくて、さっき言ったところはブレないですね。
前田:じゃあ、先に仕事が決まっているから「運動会ごめんね」と。
山本:知ってたらそっちへ行ったかもしれないけど、入れちゃったから。
前田:なるほど。
山本:さっきエロいって言っちゃいましたが、僕らの会社でも「誠実」はすごく大事にしていて。社員にも「そこをブレないようなコミュニケーションを心掛けようね」と言ってます。
前田:ブラさないって、会社として大事なスタンスで必要なところですよね。
山本:そうですね。ごまかさない。相手のことを気にしすぎて、違う理由をつけて断らない。正直ベースで「先に入れていました。すみません。でも、他の案件がないタイミングもあるから、そこまでお待ちできますか?」と言うだけですね。
前田:いいですね。断る時の優先順位と判断基準は、基本的には時間軸の部分とか、先にお約束したかどうか。
仕事における「緊急度」と「重要度」
山本:ただ、よく救命病棟の話があるんですよ。
前田:救命病棟。
山本:言い方は悪いですが「ちょっとお腹が痛いぐらい」の患者さんが来ました。緊急性によって重要度がまた変わってくるので、処置していたらヤバイ、命がヤバイとなった場合は話が違うと思うんですね。その場合は、もちろん後者のほうに行くべきですよ。それには理由があるから、ちゃんと説明する。仕事も一緒かな。
前田:なるほど。いいですね。緊急度については、社員の方にも社員教育みたいなものをされているんですか?
山本:そうですね。緊急度、重要度のマトリクスをみんな書けるようにはしていて。「緊急と重要、どっちが大事だと思う?」とか、カジュアルに質問して考えさせる時はありますね。
前田:緊急と重要、どっちを取るかですか。難しいですね。
山本:例えば鎌利さんが医者で、明日は学会で「IPS細胞ならぬナンチャラ細胞の報告をして、ノーベル賞を狙いに行くんだ」と。でも、病院から「先生、緊急の患者さんがヘリで搬送されました。先生しか助けてもらえる人いないんです」と。どうします?
前田:月9だったら間違いなく手術を取りますよ。
山本:月9だったら(笑)。リアル鎌利は?
前田:リアル鎌利は迷うなー! 「他にできる先生はいないの?」って言いたいところですけどね。
山本:いない。
前田:いないんですよね。でも、やはり「医者になった時のポリシーは何か」に立ち戻りますよね。
山本:そうなんです。つまり、学会の発表って重要度としてはすごく高いんだけど、緊急度で言うと、別に今回の学会じゃなくてもまたそのあとがあるんですよ。でも、その人の運ばれた命って緊急度がめっちゃ高いですよね。なので、その場合は緊急度を選べよと、うちの社員には言っています。
前田:なるほど。でも、どの会社に勤めていても、意思決定する軸は持っていなきゃいけないですね。
山本:そうですね。だから、緊急度と重要度をどのように考えるかは社員それぞれに委ねていて。点数化して考える社員もいれば、ざっくりと考える方もいるので、軸は必要かなと思います。
前田:ありがとうございます。