首相が感じた3つの「なぜ」

田中和徳氏(以下、会長):これより議員・岸田文雄君からの審査申し出に関する件について、議事を進めます。

審査に先立ち一言申し上げます。本日の政治倫理審査会は、政治倫理の確立に資するため、議員自らの申し出に基づく審査であります。申し出人であります岸田議員には、簡明に国民に対する説明責任を果たしていただきたいと存じます。

また質疑者にも真摯に解明へのご努力をいただくよう期待するとともに、相互に限られた時間でありますことにご留意願いたいと存じます。なお審査会開会中の入退室は原則としてご遠慮願いますので、よろしくお願いいたします。

また会長として付言をいたしますと、政治倫理審査会は静謐な環境のもと、議員の申し出に対し審査を行う場所であります。委員、傍聴議員におかれましては、不規則発言は行われないよう申し上げます。

衆議院政治倫理審査会規定第17条第2項により、議員・岸田文雄君から弁明を聴取いたします。

岸田文雄氏(以下、岸田):会長。

会長:岸田文雄君。

岸田:政倫審出席にあたり、まず自民党の派閥の政治資金問題を巡りまして、国民のみなさま方に大きな疑念を招き、そして政治不信を引き起こしていることに対しまして、自民党総裁として心からお詫びを申し上げます。

今、私は「乃(すなわ)ち後来の種子未だ絶えず」という(吉田松陰の)言葉、つまり志を持った有望な人材を将来に引き継いでいくことの大切さを述べた、この言葉を噛みしめています。私たちは今の政治を、未来の世代に自信を持って引き継いでいくことができるだろうか。このことを思います時に、誠に申し訳ないことであると思っております。

なぜ「何かがおかしい」と思いながら、長年続いてきた不記載の慣行を是正することができなかったのか。その原因がこの日本の政治における当選回数優先主義ですとか、あるいは長いものに巻かれる、こうした風土があるとしたならば、我々は風通しの良い政治の風土、これを作っていかなければなりません。

また、なぜ政治資金の収支を明確にする、この当然のルールすら守ることができなかったのか。その原因が政治における順法意識の欠如であるとしたならば、コンプライアンスの確立に向けた改革をしっかりと進めていかなければなりません。

そして、なぜ問題が生じた際に、政治家自身の責任が十分に果たされないのか。これを思う時に、この原因に「政治は特別なものである」という特権意識があったとするならば、その特権意識を是正し、政治家も当然の責任を果たすよう改革を進めていかなければなりません。

「前例にとらわれない」という決意で政倫審に出席

岸田:政治への信頼を回復するため、私自身先頭に立って、前例や慣習にとらわれることなく、改めるべきは改めていく。まずは今、自浄作用が求められている自民党が抜本的な出直しをしていかなければなりません。

その一歩として私自身、古い派閥のあり方から決別することを決心いたしましたし、また本日も委員のお許しを得て、自民党総裁として政倫審に自ら出席をし、マスコミオープンのもとで説明責任を果たすことといたしました。これも「前例にとらわれない」という私の決意の1つであります。

その上でまず、今回の事件の概要についてご説明をさせていただきます。今般、自民党の一部の派閥において、政治資金規制法の不透明・不適切な会計処理が指摘され、検察当局による捜査も行われました。

その結果、清和政策研究会、志帥会および宏池政策研究会の各代表者兼会計責任者、清和研および志帥会所属の国会議員や、その秘書。これらがそれぞれ政治資金規制法違反により、公判請求または略式命令請求がなされました。

また検察はこれらいずれの派閥においても証拠上、収支報告書の作成は代表者兼会計責任者を含む会派事務局がもっぱら行っており、捜査の結果、派閥幹部の関与は認められなかった旨を発表しているところでありますが、他方こうした刑事責任とは別に、道義的責任や政治的責任が生じるのではないか。こうした指摘があります。

7名の弁護士も参加して判明した事実の概要

岸田:このため自民党では私の指示のもと、2つの弁護士事務所の7名の弁護士の方にもご参加いただき、事案の事態解明に向けた調査を行いました。検察の捜査によって判明した事項と合わせて、これまで判明した事実の概要をご説明いたします。

まず清和研においては、所属議員が販売した派閥のパーティー券の売上のうち、各議員のノルマ超過分として派閥から還付等された金額が、派閥の収入・支出として計上されていなかったものであります。

検察によれば平成30年から令和4年の収入・支出に関し、それぞれ約6億7,500万円の不記載が判明をしています。また還付を受けるなどした所属議員の関係政治団体においても、これらの還付金等が収入として計上されておらず、79名の議員等が収支報告書の訂正を要することが判明をしております。

現在、順次報告書の訂正や会見等による説明が行われておりますが、聞き取り調査の結果ではこうした事案が具体的に、いつ、どのようにして始まったかは判然としないものの、遅くとも十数年前から行われていた可能性が高いことが明らかになっています。

また還付等の手続きの過程において、派閥の事務局側から所属議員等の議員事務所に対し、還付金等を政治資金収支報告書に記載しないように指導していた例があったことが判明をしております。

なおこれまでのところ、派閥が支出した資金を議員個人が受領した例は、聞き取り調査を含めて、党において把握されてはおりません。また還付金等を政治活動費以外に使用したり、違法な使途に使用した例も把握されておりません。

志帥会と宏池会への調査でわかったこと

岸田:次に志帥会では、所属議員が販売した派閥のパーティー券の売上のうち、各議員のノルマ超過分として派閥から還付等された金額が、派閥の収入・支出として計上されていなかったものであります。

検察によれば平成30年から令和4年の収入・支出に関し、約2億6,500万円の収入、約1億1,600万円の支出の不記載が判明しています。また志帥会所属議員6名に対する寄付金が未計上であり、これら6名の議員側の収支報告書も所要の訂正が行われました。これらに関し、派閥幹部による会見等が行われております。

聞き取り調査を通じて、このような還付金等の取り扱いは少なくとも10年前から続いていたことが判明している一方、志帥会においては派閥から議員側に対し、そうした取り扱いの指示・説明等があったとの回答はありませんでした。

なお志帥会についても、これまでのところ派閥が支出した資金を議員個人が受領した例は党において把握されておらず、また還付金等を政治活動費以外に使用したり、違法な使途に使用した例も把握されておりません。

そして宏池会では、所属議員が売った派閥パーティー券のうち誰が売ったか不明のものについて、収入額の計上の際に漏れるなどしていたものであり、検察によれば平成30年から令和4年の収入に関し、3,059万円の不記載があったことが判明をしております。

いずれも当時の会計担当者の会計知識の誤解や帳簿作成上の転記ミスなど、事務処理上の疎漏によるものであり、これらの状況については事務総長が記者を交えた場において説明したほか、私自身も予算委員会の場で説明申し上げてきたところであります。

以上、今般の事件の概要をお話しいたしました。引き続き関係議員等において、あらゆる機会を利用して説明責任を果たすことが重要であり、党としても促してまいります。

再発防止に向けた改革の断行

岸田:また、改めるべきは改める改革を断行していく必要があります。そのため私が本部長となる政治刷新本部を立ち上げ、国民の信頼回復に向けて取り組むべき事項を中間取りまとめとして決定し、改革の断行に着手をしています。

すでに本件の発端となった派閥パーティーを禁止するなど、派閥からお金と人事を切り離すことといたしました。またコンプライアンスを徹底するため、会計責任者が逮捕・起訴等の事態になった場合、その団体の代表を務める議員も事案の内容に応じて処分できるようにするなど、3月17日の党大会に向けて党規約・規則などの改定作業を進めています。

そしてあるべき政治資金規制法の改正についても、党の政治刷新本部の政治資金規制法改正ワーキンググループにおいて、第1に責任の強化として、一定の悪質な場合に会計責任者のみならず政治家本人も責任を負う法律改正を行うこと。

第2に外部監視の目の強化として、政治団体に対する監査について対象範囲を拡大する法律改正を行うこと。第3にデジタル化の推進・強化として、収支報告書のオンライン提出促進や銀行振込の推進に向けた法律。これを行うことを指示しているところであります。

こうした再発防止策と並行して事実の確認に努め、関係者の処分と政治責任についても、党として判断をしてまいります。

そして最後に申し上げますが、「信無くば立たず」。政治に対する国民のみなさんの信頼なくして政治の安定はなく、政治の安定なくして政策の推進はあり得ません。

今、我々は国の内外に、多くの先送りできない課題を抱えています。外にあってはウクライナ情勢、あるいは中東情勢を挙げるまでもなく、我が国はこの複雑な国際環境の中で、この東アジアにおいて戦後最も厳しい安全保障環境に直面をしています。

内にあっては30年間続いたデフレ経済から脱却を成し遂げて、物価高に負けない賃上げ、構造的な賃上げを実現する正念場を迎えています。こうしたことを考えます時に、政治に課せられた責任、これは極めて重いものがあります。

政治の停滞は決して許されない。震災復興をはじめ、国民生活にとって大変重要な来年度予算についても、期日どおり成立しないなどということがあってはならないと確信をしています。

しかし、だからこそ政治の信頼回復が大事だということを、あらためて強調しなければなりません。自民党は自らを変えなければならない。私自身、自民党改革・政治改革の先頭に立って、この改革を進めていく覚悟であります。

以上、申し上げた上で、今日の政倫審にあたりましてご質問を受けさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

政倫審出席に向かわせた強い危機感

会長:これにて弁名は終わりました。次に岸田文雄君に対し質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鷲尾英一郎君。

鷲尾英一郎氏(以下、鷲尾):会長。

会長:鷲尾君。

鷲尾:自民党の鷲尾英一郎でございます。本日は大変貴重な機会をいただきました。時間もないことですので、さっそく質疑に入らせていただきます。

ただいま岸田総裁から、国民との信頼関係をしっかりとつないでいかなければいけないというご覚悟をいただきました。私ども党所属議員一同、一人ひとり徹底した活動を通じて、国民の信頼回復を図ってまいりたいと、そういう覚悟でございます。

とりわけ本日、政倫審開催にあたりまして、岸田総裁自らが出席をすると、こういうことになりました。それは私ども、昨日まではまったく考えられなかったことであります。ぜひ総裁が自ら政倫審に出席をされるに至った思い、そして今国民に対して伝えたいということを端的に、あらためてお聞かせいただけたらと思います。

岸田:会長。

会長:岸田君。

岸田:この政倫審を巡りましては、関係者のみなさん、与野党を通じて開催に向けてさまざまな努力を続けていただいておりましたが、開催方法等を通じて調整がつかず開催の見通しが立たない。こういった状況を私自身、承知しておりました。

そもそも私自身はこの政倫審というものは、政倫審規則に明記されているように、議員本人の意思が尊重されるものであるということを申し上げてきました。

そういった政倫審のルールが最大限尊重されるべきだというふうに申し上げてきたところでありますが、しかしこの現状を見た場合に、このままでは国民のみなさんの政治に対する不信、これはますます高まってしまう。強い危機感を感じました。

こうしたことを踏まえて私自身、前例にとらわれることなく、マスコミオープンで説明責任を、この政倫審において果たさせていただきたい。こういったことを決意した次第であります。

そしてご質問は「そこで何を訴えたいか」ということでありますが、まず1つは今回の事態を招いたことについて、自民党総裁として、あらためて心からお詫びを申し上げるということ。

そして今、政治は大変大きな責任を担っている重大な時だからこそ、信頼回復に務めなければならない。私自身、自民党総裁として先頭に立って信頼回復に向けて努力をしていく、その覚悟を示させていただく。

この2点、特に申し上げさせていただきたく来させていただいた、こういった次第であります。