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新しいキャリアの可能性を広げるリスキリング~3万人以上を指導したプロから学ぶ、最短でリスキリングを成功させる方法とは?~(全4記事)

人間は“周りにいる5人の平均をとった人”になる リスキリングの重要性と、挫折せずに学び続けるコツ

3万人以上を指導してきたリスキリングのプロ、清水 久三子氏。今回は清水氏の22冊目の著書となる『リスキリング大全』の出版を記念し、リスキリングの始め方、成功させるための方法を解説します。本記事では、リスキリングを阻む3つの「メンタルブロック」の壊し方について語りました。

前回の記事はこちら

スキルセット変革の4つのステップ

清水久三子氏(以下、清水):(「3つのリスキリングマップ」)の最後は「学びのロードマップ」です。何を、どうやって、いつまでに学ぶのか、達成状況を考えてロードマップを作っていくということです。学びって、スキルセットをどんどん変革していくことになりますので、やはりステップアップしていくわけですよね。その変革の段階は4つあります。

1つ目が「知っている」という、概念を理解している段階。2つ目が「やったことがある」という、具体的に理解している段階。3つ目が「体系的にちゃんと理解している」という、フレームワークなどで体系的にいくつかの具体的なことをまとめている状態。最後は、それを人に伝えられるような状態です。

ぜひ、このStep3以降を目指していただきたいんです。多くの方が、Step2の「やったことがある」レベルで終わってしまうと、また違うリスキリングをする時にスピードが落ちてしまうんですよね。

せっかく何か新しいことにチャレンジしたのであれば、それを体系的にまとめておく。できれば人に伝えられるレベルにしておくと、また新しい仕事にチャレンジする時も「あの時こうだったから、こうやって変えてみればいいんじゃないのかな」と、立ち上がりが早くなりますので、Step3以降を目指していただくといいと思います。

これはロードマップなので、時系列を入れていくんですね。「いついつまでにStep1を完了する。Step2がいつまで。この頃にはみんなに教えられるようになっていよう」というふうに時系列を入れていきます。

達成状態を入れたら、達成するためにどういうインプットをしていくのか。やはりリスキリングはアウトプットしないと身につかないんですよね。なのでインプットだけではなくて、「こういう機会でちゃんとアウトプットして身につけていこう」という、アウトプット機会も入れていただくといいかと思います。

Step3に行ったら「この頃には、みんなの前で『自分はこういうスキルを身に付けましたよ』というプレゼンができるように、教えられるように発表会をしよう」とか、そんなふうに決めておかれるといいかと思います。

こうやってやっておくと、「気がついたらやっただけで終わっていた」ということも防げますので、ぜひロードマップを作ることもやってみてください。

リスキリングを阻む、3つの「メンタルブロック」

清水:ということで、いよいよ最後に近づいてきました。リスキリングをしようとすると、「不安」「怖い」とか、いろんなことをおっしゃる方が多いんですよね。それはいわゆる「メンタルブロック」といって、自分の気持ちを阻んでいるものです。メンタルブロックには、どんなものがありますかね?

松岡永里子氏(以下、松岡):「やってもムダだ」とかでしょうか。

清水:いきなり否定的な感じで来ましたね(笑)。まさに、自分の思いを打ち消してしまうようなネガティブな考え方ですよね。あるいは「怖い」「恥ずかしい」「不安だ」「できないかも」「無理なんじゃないか」とか、いろいろありますよね。

メンタルブロックには大きく3種類あります。1つ目が「向いてないんじゃないかな」「こうしなくちゃいけないんじゃないか」「絶対に無理だ」と、自分で思い込んでしまっている「思い込みの壁」です。

2つ目が「不安だ」「怖い」という「精神的な壁」です。新しいことを始める時だと「今までやってきたことを止めるとなると、周りがなんて言うかな?」と、世間体を気にしてしまうこともありますよね。

3つ目が「環境の壁」です。家族・友人・同僚・しがらみといった、自分とこれまで付き合った方々が「そんなのやらなくてもいいんじゃない」と言う。「嫁ブロックがかかる」と言いますが、転職しようとすると家族からの反対に遭うこともあると思います。

まずは「自分をとどめているメンタルブロックってなんだろう?」と、洗い出すことをおすすめします。多いのは「なんだかわからないけど不安」「よくわからないけどモヤモヤする」といった感じなんです。なので、なんだかわからないものがちゃんとわかると、壊しようが出てきます。

「身近な成功事例」を探すことがおすすめ

清水:どんなふうに壊すのかをご紹介します。思い込みの壁の場合は、自分の思い込みと逆の例をたくさん探すのがおすすめです。例えば「自分はもう年だから、新しいことにチャレンジするのは無理だな」と思っているのであれば、年を取ってからチャレンジした成功事例をいっぱい探すんですね。

「この人、この年齢なのに成功している」というのを見ると、だんだんと「なんだ、できるかもしれない」という気持ちになっていくんですよね。周りに例がないからそう思い込んでいるので、逆の例を探していくと「もしかしたら私もできるかも」という気持ちになって、メンタルブロックが外れていきます。

精神的な壁は、身近な成功事例を探すことで壊せるんですね。見えない世界はすごく怖いと思ってしまうので、「あの人もできている。この人もできている」となると、「私だってできる」となることがあるんですよね。

逆の例を探していると、たまに超人ばかりが集まってきます。「80歳でトライアスロンに成功」となると、「それはさすがにちょっと私には……」となってしまいます。なのでそうではなくて、身近な友だちや同僚が成功しているのを見ると、「もしかしたら私もできるんじゃないかしら」という気持ちになりますよね。

そういう方が近くにいないのであれば、先ほど言ったように何かのコミュニティに入ることによって「あの人もこの人もできている。じゃあ私も」という気持ちになって、メンタルブロックが外れていきます。

人間は“周りにいる5人の平均をとったような人”になる

清水:環境の壁も似たような感じです。「付き合う人を変える」というのは、いきなり結婚するとか離婚するとか、そういう話ではまったくないのですが、やっぱり環境を変えるのはすごく重要なんですよね。

なぜかと言うと「人間はいつも周りにいる5人の平均をとったような人になる」からです。これは、いろんな調査をやって本当に結果が出ているんですよね、

具体的に言うと、年収レベルも確実に変わると言われています。同じ年収レベルの人といたら、ずっとそこでステイですし、自分の周りの5人が高い年収だったら、自分もだんだん上がっていくと言われています。

なので自分の環境を変えるには、付き合う人を変えるところがすごく大きいです。コミュニティや越境が、メンタルブロックを壊していくことになるわけですね。

メンタルブロックは、まず「自分にどんな思い込みや恐怖心があるのか」を明文化してみてください。そして、どうやったらそのブロックが壊せるかを考えます。そのあとで、ちゃんとそれが壊れたかどうかも書き留めておくことをおすすめします。

書き留めておくと「そうだ。私はあの時、ああやってメンタルブロックを壊した。だから今回もできる」という気持ちになるので、次のチャレンジで役立つんです。

私もアパレル会社からコンサルティング会社に入ったのですが、ものすごく大変だったんですよね。ただその時は、いろんなメンタルブロックをみなさんに壊してもらった経験があります。

メンタルブロックの壊し方は「書き留める」ことが重要

清水:また、コンサルからフリーランスになった時も、ものすごい恐怖感があったわけですが、先にフリーになった先輩やいろんな経営者の方にメンタルブロックを壊してもらった経験があるので、それを全部書き留めているんです。

仮にまた新しい領域でリスキリングしたいと思ったら、書き留めておいたものを見て「私は2回、3回と乗り越えてきたから、たぶん次もこのブロックは崩せる」と。そんなふうに書き留めておくと、自分の中にやり方があるんですよね。

みなさんも、自分のメンタルブロックをどう壊すか、何があってどう壊して、壊した結果何が起きたのか、自分のストーリーとしてちゃんと書き留めておくことをおすすめします。ということで、私からのお話は以上です。みなさん、いかがでしたでしょうか?

松岡:ありがとうございます。「周りにいる5人」というと、ふと思い浮かぶ顔があるんでしょうね。「変わりたいならそのうちの1人を入れ替える」というコメントも来ています(笑)。

清水:「新たに足すという」感じで替えればいいと思います。辞めなくてもいいと思うんですけどね(笑)。

松岡:濃淡をつける、とかですね。変わりたいと思うなら、ふだん自動で考えることを1回書き起こしてみる。先ほどのお話にあった「壁」があるところも、こういうふうにお話を聞いて整理すると、気づくことが多かったんじゃないかなと思います。

これから質問やパネルディスカッションに移っていくので、感想はもちろん「もう少しここを聞きたい」といったお話があれば。直接、著者の方に聞けるチャンスはなかなかないと思いますので、清水さんへのご質問も受け付けています。

清水:ありがとうございます。

松岡:私は目の前でお話を聞いていて、チラチラ見ながら時々話しかけてくださって楽しかったです(笑)。ありがとうございます。

頭ではわかっていても、リスキリングに踏み出せない…

松岡:では、ここからパネルディスカッションに移っていきたいと思います。冒頭でお話しいただいたところと重なるのですが、みなさんは「リスキリング」というキーワードに導かれて参加していただいたと思います。もっと言うと「完全にできています」という方がほとんどいらっしゃらないからこそ、参加されているのかなと思います。

(参加者からの質問で)「リスキリングが大事だと頭でわかっているのですが、動き出せません。どこから手をつけるといいですか?」。もちろんメンタルブロックもあると思います。「まずはここから始めてみてよ」「ここから始めるといいよ」というアドバイスをいただければと思いますが、いかがでしょうか?

清水:もし、もう自信があるのであれば、3つのリスキリングマップを作り出すことがまず1つです。「不安だ」「なんとなくこれでいいのかわからない」とか、モヤモヤしているのであれば、環境を変えることだと思います。

仲間がいるコミュニティに入ってみたり、場合によっては越境して違う世界を見たり、ぜんぜん違う視点を持つことで「もしかして私はこういうのが向いているんじゃないのかな?」と、やりたいことや自分に必要なものが定まることもあります。ですので、環境を変える一歩を踏み出してみるのがいいのかなと思います。

松岡:ありがとうございます。小さくてもいいから、環境を変えることが大事だということですね。

清水:そうですね。そこまではできないのであれば、ぜんぜん違う領域の仕事をしている友だちを誘って「どんなことしているの?」と聞いてみるとか。それだけでも一歩だと思うんですよね。

違う世界に触れるところからやる。とにかく一歩、できれば知っている人がいるところがいいと思いますね。自分1人で何かやるんじゃなくて、誰かに話して、その作用・反作用で自分は何をしたいかを考えていくのがいいと思います。

松岡:ありがとうございます。

環境を変えると、結果は後からついてくることも

松岡:先ほど「闇鍋」という表現が出てきましたが……。

清水:「闇練」ですよ(笑)。

松岡:「闇鍋」じゃない(笑)。闇鍋は使わないですね(笑)。闇練という言葉もありましたが、「1人でやらない」というのはけっこう大きなキーワードになるんですかね?

清水:1人でできることはかなり限られていると思ったほうがいいですね。「人の力をどれだけ使えるのか」というマインドになると、本当にリスキリングのスピードが上がります。

「人に迷惑をかけるんじゃないか」と思っている方もいるかもしれませんが、やってもらうだけじゃなくて、逆に相手の刺激にもなっているので、お互いにいい作用・反作用が生まれると思ってやるといいと思いますよ。

松岡:そうですね。ありがとうございます。「転職がいいきっかけになりました」というコメントも来ています。

清水:そうですね。それは思いきり環境が変わっていますからね。

松岡:環境を変えると、後から結果がついてくることもあるんですかね。

清水:思い切って飛び込むこともいいと思います。

松岡:大きなことじゃなくても、話す相手を変えるとか、ふだん話している内容をちょっと変えてみるとか、それも含めて「環境を変える」ことから一歩踏み出していただければと思います。

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