なぜ相手から「結論から話して」と言われてしまうのか?

加藤想氏:今回は、「話が分かりやすい人の特徴」について考えていきます。あなたの周りにも話が分かりやすい人と分かりにくい人がいると思いますが、両者の違いは何だと思いますか? 滑舌が良くて滑らかに話していても、いまいち分かりづらいということがあるように、話し方を鍛えればいいという単純な話ではありません。

いろんな要素がありますが、個人的には話し始める前の段階で、分かりやすいかどうかが決まると考えています。私の周りにいる話が分かりやすい人を観察する中で見つけた、話が分かりやすい人の特徴について、今回は3つお伝えをします。

まず1つ目の特徴は、「相手の聞きたいことを理解している」です。「何を当たり前のことを言ってるんだ」と思った方もいるかもしれませんが、できていない場面に遭遇することも多く、よくよく考えると、実は難しい営みだったりします。

「結論から話して」と言っても、相手がなかなか結論を話してくれなかった経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。その結論こそが相手が聞きたいことであり、これを正確に把握しないと、結論から話すということはできなかったりします。

相手の聞きたいことを強く意識できる方は、コミュニケーションの成否は受け手が決めるということを、心の底から分かっている方だと思います。どれだけ自分なりに工夫して、準備をして伝えたとしても、相手のことを理解していなければ何も伝わりません。

相手の聞きたいことを理解していると、結論から話したほうが良い相手なのか、もしくは過程を伝えてから結論を話すほうが良いのかを柔軟に選択することができます。

ただし、相手のことを理解するには、相手の立場や関心ごと、持っている情報、自分との関係性など、多岐にわたって把握をする必要があります。日頃から興味を持って接することが大事になります。ぜひ周りの方の観察から始めてみてはいかがでしょうか。

「つまりこういうこと?」と相手に話を要約されてしまう理由

2つ目は「構造化できること」です。相手の聞きたいことを理解した時に、その聞きたいことは、どんな要素が組み合わさっているのかをひもといて、構造化することが大事になります。例えば、相手があなたの上司で、あなたの推進している営業施策の進捗が、〇なのか✕なのか気になっていたとします。

進捗が〇であることを伝えたい場合に、「問題なく進んでいます」とだけ伝えても、相手は納得してくれないかもしれません。定量的な効果が出ていないと納得しないのか。もしくは予定していたTo Doが進捗どおりでないと納得しないのか。実は想定外が起きているけど、今後挽回できるアクションプランがあれば納得してくれるのか。それらは、その時々の状況に応じて変わってきます。

また、自分なりに論点を組み立てたあとに話す時は、相手の論理構造に合わせて伝えることが大事です。相手が疑念を持つポイントがあれば、先にその内容を抑えてから次の論点を話すなどの工夫をすることで、すんなりとコミュニケーションができたりします。

最後の3つ目は「話のラベリングができること」です。相手の聞きたいことを理解して、さらに構造化ができるだけで、かなり話のわかりやすい状態にはなっていると思いますが、中には伝えたいことも明確なのに、口下手がゆえに、意図したとおりに伝わらない経験をした方もいるのではないでしょうか。

私も前職の時に、上司から「加藤さんが言いたいのは、つまりこういうこと?」と、何回も要約をされた苦い経験があります。こんな時に意識すると良いなと思うのは、先にラベリングをした上で話し始めるということです。

例えば、「〇〇について質問なのですが」とか、あとは「✕✕について認識を合わせたいのですが」といったことを頭につけると、相手は「これからこの領域についての会話をするんだな」と描くことができて、考えるべき範囲を限定させることができます。

これによって集中して話を聞ける状態を作ることができます。最後まで話を聞いて初めて「質問だったんだ」と分かる場合は、それまで話した内容を、いちいち思い出しながら質問に答えることになって、相手は余計な思考体力を奪われることになります。

ラベリングについては、『(世界で一番やさしい)会議の教科書』という本にも詳しく載っているので、気になる方は手に取ってみてもらえるとうれしいです。というわけで、今回は「話が分かりやすい人の特徴」について考えてみました。相手のことを理解する。構造化。ラベリング。何か参考になるものがあるとうれしく思います。