職場の部下に「強く言わなきゃ」と思っても言えない…

熊谷翔大氏:今日は「強く言えない人へのアドバイス」がテーマです。仕事の場面で、相手に対して強く何かを伝えることができないと悩んだ経験は、誰もが一度はあるのではないでしょうか。例えば、職場の後輩や部下が、期待している動きをしてくれない時や、何か失敗をしてしまった時に、「強く言わないとダメ」と頭ではわかっていても、なかなか言えない。そんなイメージです。

同僚と話をしていると、「いやぁ、強く言うのは苦手でできないんですよね」みたいなことを時々耳にします。その「強く言えない」の裏側にあるのは、おそらく「相手に何か思われたらどうしよう」とか、「自分も失敗することがあるから、自分だけ相手に対して強く言ってしまっていいんだろうか」みたいな心理が働いているはずです。

また、今のご時世は、ハラスメントに対する目線が厳しくなっています。もちろんハラスメントに厳しい目が向けられること自体はあるべき姿だと思いますし、非常に良い流れだと個人的には思います。問題はその流れがあることで、過度にハラスメントを怖れて何も言えなくなってしまうという状態ではないしょうか。

このように、相手に強く言えずに悩むというのは誰もが抱える悩みだと思いますが、ではどうすればいいのか。絶対的な正解はないかもしれませんが、私がこれまでマネジメントをする中で、いろいろ考えて試してきた、私、熊谷なりの「こうするのがいいんじゃないかな」という考え方、方法についてお話しいたします。

声を荒げず、メンバーの成長を促す効果的な伝え方

まず考え方について、「相手に強く言う」という認識は思い切って忘れてしまいましょう。強く言う必要があるのは、人の命とか安全に関わる時だけだと思います。それ以外は強く言う必要はないと考えています。

よくありがちなのが、「強く言う」か、「まったく言わない」かの極端な二択になることだと思います。お勧めの考え方は「淡々とはっきり言う」です。強く言う必要はありません。

その「淡々とはっきり言う」の具体的な方法ですが、まずトーンはとにかく変えないようにしましょう。いつもどおりに淡々と、仮に怒りの感情が自分の中にあったとしてもぐっと堪えて、少し微笑むくらいのつもりでちょうどいいのではないかと思います。

そして伝える言葉ですが、私がよく言うのは、「あなたの今後のことを考えると」とか、「次に似たような状況になった時に失敗してほしくないから、あえて伝えますよ」みたいな言葉を言ってから、「あれは良くなかったよ」とか、「こうしたほうがもっといいよ」みたいな感じで話すようにします。ミスを責める言い方をするのではなくて、あくまでも相手にとってメリットがあることを伝えるというイメージです。

個人的には、相手に何かフィードバックをする時こそニコッと笑って、「言いたくないけれども、あなたのためを思って言いますね」と言うのが、一番いいんじゃないかなと感じています。いずれにしても、強く声を荒げて何かを伝えても、相手は「怒られた」ということしか頭に残らないはずです。だからこそ、淡々とはっきり言うのがベストではないでしょうか。

ということで、「強く言えない人へのアドバイス」ということで、考え方と具体的な方法についてお話ししました。相手に対して何かを指摘するコミュニケーションは、なかなか難しいんですけれども、伝えてあげないと、特に相手の後輩や部下の方の成長につながりません。

だからこそ、いろんな工夫をして、時にはぐっと堪えて、相手が受け止められるトーンで、はっきり伝えてあげるのがいいのではないでしょうか。何か参考になれば、ぜひ今日から心掛けてみていただけるとうれしく思います。それでは今回はここまでです。