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第892回 ペライチ書評『人を動かす「正論」の伝え方』(全1記事)

上司をスムーズに動かすには「自分が決めた」と思い込ませる 発言力や影響力がなくても、意見を通せる伝え方

日本最大のビジネススクール「グロービス経営大学院」が、ビジネスパーソンに向けて、予測不能な時代に活躍するチャンスを掴むヒントを配信するVoicyチャンネル『ちょっと差がつくビジネスサプリ』。本記事では、業務改革やプロジェクトにおける、社内の人を巻き込む伝え方についてお届けします。 ■音声コンテンツはこちら

発言力や影響力がない状況で、自分の意見を通すには

本山裕輔氏:今回は『人を動かす「正論」の伝え方 譲れない思いを上手に話す技術』という本をご紹介します。

よく「誰が言うかよりも何を言うかが大事」って言いますよね。あれ、正直私はドラマの世界だけだと思ってたんですね。現実の世界では、「何を言うかよりも誰が言うかが大事になっちゃってるじゃない」と思っていました。

しかし、この本を読んで、発言力や影響力がたとえ相手に劣っていたとしても、正論を通し続けることはできるんだと学ばされました。それが今回ご紹介する、この『人を動かす「正論」の伝え方 譲れない思いを上手に話す技術』という本です。この本は京都大学の教授でもあり、安倍内閣で内閣官房参与を務められていた藤井聡氏の本です。

この著者のエピソードとして特に印象的なのが、大阪都構想をめぐる論争です。あの大阪都構想について真正面から反対をし続けた方が著者の藤井氏です。この当時、藤井氏はSNSのアカウントを持っていないということで、発言力・影響力はそれほど高い状況ではありませんでした。

それにもかかわらず、草の根的にどんどん仲間を増やしていって、大阪都構想に反対し続け、結果として大阪都構想を否決に追い込んだと。ここで注目すべきなのは、発言力や影響力で圧倒的に差があったのにもかかわらず、どうやって藤井氏は自分の正論を広げていったのかということです。この疑問について種明かしをしてくれているのが、まさに今回ご紹介した本なんですね。

この本は正論の作り方や見せ方、伝え方について、数々の生々しいエピソードと共に教えてくれます。どっちかというと、中身やテクニックよりもエピソードが本当に読む価値が高いかなと思ったんですが、私自身特に印象に残ったポイントを2つご紹介できればなと思います。

社内の抵抗勢力を説得しようとするのは、ほぼ無駄

まず1点目が、敵を説得するんじゃなくて仲間を増やすことに注力しましょうということです。正論を通したい時は、得てして正論を阻む敵がいますよね。抵抗勢力とも言いますけど、こういう人たちがどうして抵抗してくるかというと、正論が通っちゃうと、自分が不利になっちゃうからなんですね。だから徹底して抵抗をしてきます。

私自身もいろんな職場とか会社で、業務改革やDXみたいなプロジェクトに関わってきた中で、本当に数々の抵抗勢力と戦ってきました。この時に身をもって思い知ったんですけど、抵抗勢力を真正面から説得しようと思ってもほとんど意味がないんですね。

新卒1年目とか2年目の時は、例えば「なぜ業務改革をしなければならないのか」とか「業務改革によってどんな利益が生まれるのか」みたいな論点について、自分で言うのもなんなんですけど、かなりロジカルに資料を作り込んで挑んだこともありました。

しかし、それが刺さった試しがないんですね。じゃあどうすればいいか。この本が教えてくれる方法は、「敵を説得するのに時間を使うんじゃなくて、仲間を増やすことに時間を使いましょう」ということなんですね。

私も実際にやってみたことがあるんですけど、さっきの業務改革の例で言えば、抵抗勢力を説得するための資料作りに時間を使っても無駄だと。そうではなくて業務改革に賛同してくれる仲間をどんどん増やして、外堀を埋めていくことに時間を使いましょう、ということです。

すると、だんだん業務改革に賛成する人がどんどん増えていって、逆に抵抗勢力の人たちが少数派になっていきます。周りとの和を重んじるこの日本では特に、少数派になった途端、抵抗勢力の勢いがガクンと落ちていきます。

こんな感じに持っていくためにも、敵を説得するんじゃなくて仲間を増やすのに時間を割いていく。これは正論を通す1つの突破口になるかもしれません。

上司を動かすには「自分で決めた」と思わせること

正論を通す時の2つ目のポイントは、「上司に自分が決めたことだと思い込ませる」ということです。これもこの本を読んで、「確かにな」と思ったポイントです。

やっぱり発言力がない人が正論を通そうと思ったら、どうしても自分より強い権力を持った人に頼らざるを得ません。会社で言うと、正論をスピーディに通したいなら、上司に動いてもらう必要もあったりします。

この時に重要になるのが、上司に「自分が決めた」と思い込ませることなんですね。というのも、やっぱり人って相手に説得されたくないんですよね。誰だって、相手に説得されたから決めるんじゃなくて、「自分の意思で決めたんだ」という感覚でいたいわけです。

これはぜんぜん私の主観ではなくて、『選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義』という本でも証明されているわけです。人間の幸福度を決める最も重要なファクターの1つは自己決定感、つまり自分で決めた感覚であると。

だから何か提案を通したいと思った時は、自分では「A案がいいな」と思っていたとしても、上司に持っていく時は「A案がいいと思います」と言うのではなくて「A案とB案どっちがいいと思いますか」と聞いたほうがけっこうスムーズだったりもします。

中には、「私はA案がいいと思ってるんですけど、〇〇さんはどう思われますか」と自分のスタンスを明確にした上で質問する方法を好む上司もいるかとは思うので、そのへんは質問の仕方を工夫する必要があるかなと思います。

ただ、いずれにせよ大事なのは、上司に「自分が決めたんだ」と思い込ませること。これが、なんだかんだ自分の思い通りにことを進める時のコツなんじゃないかなと思います。

まとめます。今回ご紹介した『人を動かす「正論」の伝え方 譲れない思いを上手に話す技術』を読んで、私自身特に印象に残ったポイントは2つありました。1つ目は、敵を説得するんじゃなくて、仲間を増やすほうに注力すること。2つ目は、上司に「自分が決めたんだ」と思い込ませること。この2つは特に大事だなぁと個人的に思います。

他にも、正論を通すためにどうやって修羅場を乗り越えてきたのかのテクニックやエピソードがとても生々しく描かれていますので、本当におすすめの1冊です。よろしければ読んでみていただけるとうれしく思います。

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