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『税金のことが全然わかっていないド素人ですが、相続税って結局どうすればいいのか教えてください!』発売記念【オンラインイベント】(全3記事)

親や親族が亡くなった後の相続税対策は間に合わない? 専門家が教える、相続人のための6つの節税対策

『税金のことが全然わかっていないド素人ですが、相続税って結局どうすればいいのか教えてください!』の刊行を記念して開催された本イベント。対象になる財産やならない財産、相続税の計算方法など、いざというときに慌てないための相続税の基本を解説します。本記事では、相続専門の公認会計士/税理士 兼 社会人落語家の石倉英樹氏が、2024年1月からスタートした相続や贈与に関する新制度について解説します。

前回の記事はこちら

相続税対策はいくつあるか?

石倉英樹氏:ここから中盤に入っていきます。もう1つ、質問です。みなさんなんとなく「あれやっている」「これやっている」という方はいると思うんですけど、主に相続税対策と言われるものがいくつぐらいあると思います?

今画面に映したものが、亡くなる前の相続税対策で、一般的に言われているもので約11個あります。

①から⑤が生前贈与系の相続税対策で、⑥から⑪が贈与以外の対策です。今回の書籍の中でもこれを一つひとつ、かなりページを割いて、細かく説明をしています。

その中でもみなさんに馴染みがあるのが、①の普通の生前贈与かなと思います。1年間に110万円以下であれば、贈与をしても贈与税はかからない。贈与税にも非課税枠があります。これを使って、毎年毎年、親御さんからお子さんに贈与をしていくのがけっこう一般的なやり方かなと思います。

一般的な「生前贈与」など、相続税対策は11個ある

それ以外には教育資金の贈与。これは具体的に言うと1,500万円まで。おじいちゃんやおばあちゃんが、お孫さんにまとまったお金をドンっと渡せるんですね。銀行に口座を作って、そこにお金を入れるやり方を取ります。

③番の結婚・子育て資金贈与とは、名前のとおり婚礼や子育ての費用。こちらもまとめて贈与ができる。

④番は住宅取得資金贈与。これはちょうど改正になって、当初は去年の年末で終わる予定でしたが、延長になっています。お子さんが家を買いたいと言ったけど、まとまった資金がない時に、親御さんが贈与というかたちで支援できる制度です。

⑤番はおしどり贈与。20年以上連れ添った夫婦の間で贈与が行える。⑥番以下は、生命保険に入っていると、相続人1人あたり500万円の非課税枠がありますので、その非課税枠の範囲内で死亡保険に加入する方法です。⑦番、⑧番は、不動産を使った相続税対策。

広く言うと⑨番の住宅リフォーム(も不動産を使った相続税対策になります)。お金を持って亡くなってしまうと、その額面に丸々相続税がかかるんですけれども、不動産に置き換えると評価額が下がります。これは後ほどスライドを使ってお話しします。

⑩番は、お墓とか仏壇は相続税のかからない財産、非課税財産と言われます。なのでそれを生前に買っておけば、その分、相続税が節税になる方法です。⑪番は養子縁組、これは後ほど、お話をしたいと思います。

2024年1月から贈与に関する法律が変わった

今年の1月から贈与に関する法律が変わりました。生前贈与をしていた方が亡くなってしまった場合ですね。亡くなる3年前までの生前贈与は相続税の対象になります。

要は(生前贈与から3年以内に相続が発生した場合は、課税対象として)相続財産に戻すという、ずっと昔からあるルールですが、この2024年1月以降に、今までの3年から最大7年まで(課税対象に)戻すよう変更になります。

3年戻しが7年戻しになると聞いたことがある方はいると思うんですよね。でもけっこう勘違いしている方が多くて、ちょうど今年の1月から7年戻しになると理解されている方がいらっしゃるんですけど、実はそうではないんです。

2024年以降に亡くなったとしても、戻される期間はしばらく3年間です。今と変わらないです。法律が変わる前と変わらず、ずっと3年戻しが続きます。そしてある時を境に、戻される期間がちょっとずつ長くなるという体制になっています。いつからかと言うと、今度は2027年以降にご相続が起きた場合(亡くなった場合)ですね。

例えば、2027年6月に亡くなった場合は3年6ヶ月戻し。次の年に亡くなった場合は4年何ヶ月戻しと、ちょっとずつ戻しの期間が長くなることになります。それで、2031年以降に亡くなると、やっとここで7年戻しになる。

なので、いきなり7年戻しにはならないとだけ覚えておいていただければいいかなと思います。さらに、この3年戻しとか7年戻しは、適用される方とされない方がいらっしゃいます。

例えば、親御さんからお子さまに生前贈与をしていた場合、お子さまは相続人にあたりますので、通常は親御さんの財産を相続するんですね。財産を相続する方は、3年戻しとか7年戻しの対象になります。だけど、相続しない人は対象外です。

例えばお孫さんやお嫁さん、そもそも相続しない人に贈与をしていた場合には、この3年戻しとか7年戻しという話は一切出てこないことになります。「あっ、そうなんだ」と、初めて聞いた方もいらっしゃると思います。極端な話、亡くなる前の日に贈与していても、相続しない人への贈与は、戻されないんです。

相続人への贈与のルールも改正され、より便利に

「じゃあやっぱり相続人は(課税対象に)戻されちゃうのね」と普通は思うんですけども、今回もう1つ改正が入っております。これも書籍の中でかなり詳しく説明を入れている箇所です。今お話ししたのは暦年贈与(110万円までは贈与税がかからない)というお話だったのですが、もう1つ、相続時精算課税制度があります。

これも今年の1月1日以降、体制が変わっております。画面の右側の図に赤い枠で110万円(非課税枠)とありますね。親から子どもにこの制度を使って贈与した場合、先ほどの暦年贈与と同じように、110万円までは贈与税をかけない制度が新しくできました。

さらに良いことは、下のポイントにも書きましたが、相続人への贈与も110万円以下は贈与税がかからない。さらに、相続の時にもこの110万円は戻さなくていいよという枠が、新しくできました。

初めて聞いた方は、「なんだ?」と思いますよね。書籍にかなり詳しく書いていますので、後でぜひ。ここでは、相続時精算課税制度が新しくなって、今までよりも使い勝手がよく便利になったと、覚えておいていただくといいかなと思います。

生前贈与と合わせて、不動産を購入したり建築すると、これも相続税対策になると、先ほどの生前対策の節税策で挙げました。これを具体的に絵で示したのが、今映しているスライドになりまして、本の中では85ページで記載しております。例えば5,000万円で土地を買った場合、当然購入価格は5,000万円です。

だけど、その下の相続税評価額を見ていただきますと、価値は5,000万円ですが、評価額は約4,000万円ぐらいに下がるんです。つまり1,000万円評価減になります。これはなぜかと言いますと、相続の時には一般的に路線価を使って土地の評価をいたします。

これが、一般の価格よりも約8掛け、要は一般的には2割引きで評価をされていると言われています。5,000万円購入価格のものが、4,000万円ぐらいで評価をしてもらえる。その分だけ節税になっています。

一方で3,000万で建物を建てました。その場合は建築価格が3,000万円です。しかし、相続税評価額は、建築価格の約5割〜6割と言われておりますので、半分くらい。合計で約2,500万円ぐらいは評価が下がり、その分だけ節税になります。

養子縁組で節税

もう1つ、養子縁組で節税もできます。(スライドに)絵が描いてありますけれども、見ていただきたいのは、右側の計算式のところですね。これはとってもわかりやすいと思います。先ほど相続税の基礎控除額、非課税枠のお話をしました。

その計算式が、3,000万円+600万円×法定相続人の数です。ということは、養子縁組をすることで、相続人が増えるんですね。相続人が増えると、非課税枠、つまり基礎控除額が1人増えるごとに600万円増えますので、その分だけ相続税が少なくなる。

こういうとっても簡単な理屈になります。特にご相談をうかがっていると、お孫さんを養子にされる方も稀にいらしゃいます。ここで1つ注意点があるんですけれども、お孫さんが養子になった場合、これは孫養子と言います。

その場合は、お孫さんが払う相続税は通常の相続税より1.2倍、要は20パーセント増しになります。いきなりおじいちゃんおばあちゃんから孫に相続させますので、1回相続を飛ばすようなイメージですね。

本当は2段階での相続ですけど、1回飛ばしていきなりお孫さんにいくので、その分やっぱり、相続税はちょっと高くなります。これがお孫さんを養子にする時の注意点です。書籍の105ページに、養子縁組の具体的な相続対策の方法が詳しく書いてあります。今お話ししたのが、生前にできる相続税対策です。

親や親族が亡くなった後にできる相続税対策

このページ以降は、亡くなった後にどんなことができるかを6つ書いています。①、②、③は相続税を計算する時の控除ですね。未成年者控除とは、相続人の中に未成年の方がいらっしゃった場合、その場合は一定額相続税を引きますという控除ですね。

②番の、相続人の中に障害をお持ちの方がいらっしゃる場合も相続税は一定額控除されます。③番はちょっと変わっていまして、例えば去年、ある方が亡くなって、今年また別の方が亡くなって、相続が続いてしまったような場合ですね。

1回目の相続で相続税を払って、すぐまた相続が起きて、そこでもまた相続税を払うのは、けっこう負担が大きくなります。具体的には、過去10年以内に相続が続けて起きてしまった場合に、一定額を相続税から控除するのが、この相似相続(続いて相続が起きた場合)の控除制度です。

さらに、影響が大きいものとして、④番、⑤番の控除が使えると、相続税がけっこう安くなります。④番は、知っている方も多いかなと思います。配偶者が相続する場合には、配偶者にかかる相続税を大幅に削減するのが④番の「配偶者の税額軽減」です。

具体的には、配偶者の法定相続分、一般的には2分の1と考えていただいていいかなと思います。その額までであれば、配偶者には相続税をかけません。さらに、法定相続分を超えて配偶者が相続しても、具体的な金額で「1億6,000万円までは相続税はかけないであげるよ」という制度になっています。

なのでこれを使っていくと、かなりのケースで配偶者の方には相続税がかからない仕組みになっています。

「土地の評価」次第では大きな節税の効果が見込める

⑤番の「小規模宅地の特例」は初めて聞いた方もいらっしゃると思います。ですが、これは節税策としてとっても効果が大きい特例です。今日初めて聞く方は、覚えておいていただきたいと思います。

お父さんが亡くなってしまった場合。そのお父さんが住んでいた家を、例えば奥さまが相続する。あとは同居していたお子さまが相続する時に、その自宅の土地の評価額を大幅に割引してあげるのが、この⑤番の小規模宅地の特例です。

この割引幅がとても大きくて、ご実家や住んでいた家の場合は8割引きしてくれますので、この特例が使えるか使えないかで、けっこう相続税の金額は変わってくると思っていただいていいと思います。面積の制限がありますけれども、100坪まで8割引きできます。そして⑥番は土地の評価減ですね。これはスライドでご説明します。

例えば、そのご自宅の形が真四角ではないとか、形が良くない土地とか、間口が広い土地とか。奥行きがちょっと細長い土地や、面している道路の道幅が狭いとか。あとは逆に土地が広すぎるといった、一般的な真四角の土地でない場合には、土地の評価を減らすことができます。

これはけっこう種類がありますので、もしご相続が起きた時、自分の家の土地がどれぐらいの評価になりそうなのか、どういう特例か、評価減が適用されるのか。これも書籍の36ページで詳しく書いてありますので、ぜひ参考に見ていただきたいと思います。

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