2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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渋澤健氏(以下、渋澤):GDPを高めるためには大量消費があって、それを満たす大量生産があって、それが消費されないと大量廃棄がありますよね。たぶん私がみなさんの年齢の時には「GDPが高まるからいいじゃないですか」という感じだったと思うんです。
40年くらい経っていますが、たぶん私が大学生の頃にはそんなふうに答えなかったと思うんです。どっちかというと「もっと自分は豊かになりたい」「お金を儲けたい」といったと思うんですが、40年で何があったと思いますか? だって、同じ人間、同じ日本人だと思っているのに。
竹内誠一氏(以下、竹内):どうなんですかね。昔は経済成長をすごく実感できる社会だったのかもしれないとは思います。
例えば、両親がちょうどバブル期に大学生だったのかな? たぶんそれくらいだったと思うんですが、そうなると土地の値段も上がって、「山手線内の土地でアメリカが買える」みたいな都市伝説があったというのを母親や父親から聞いたりはした。
そういう時だと「お金が正義」みたいな感情になりやすいんじゃないかなとは、話を聞いていてなんとなく思ったんです。今はたぶん、そういう風潮はあんまり感じないですよね。
渋澤:だけど、前のそういう風潮って「いいな」とは思わないんですか? だって、山手線内でアメリカを全部買えたらすごいじゃないですか。
竹内:それを実際に体験したことがないので……。
川崎莉音氏(以下、川崎):あんまり想像がつかないのかもしれない。
渋澤:イマジネーションがちょっと……。
川崎:イマジネーションが足りないのかもしれないですね。
渋澤:おもしろいですよね。体感したことがない、体験したことがないということです。
渋澤:要するに、自分の目に見えるところではないからということだと思うんですが、お二人が先ほど語ってくれたことは、実は目の前に見えないことを実現したかったわけじゃないですか。
竹内:なんて言えばいいんですかね。ただ、どちらかというと「お金、お金」ってすごく走っていくような感覚には、あんまりなったことはないかなと。
川崎:わからないですが、現状、自分がそこまでお金に関して不満を抱いていないからかもしれないなとは思います。
渋澤:なるほどね。私が仕事をし始めたのは1980年代だったんですが、外資系の金融機関だったんですね。なぜそこに行ったかというと、稼げると思ったから行っているわけじゃないですか。
だけど当時、1980年代までの外資系金融機関には東大生はあまりいなかったんです。ところが1988年くらい、バブルのピークからすごく変わったなと思っていて。
何が起こったかというと、東大の法学部(出身者)が官庁にも大きな銀行に行かないで、外資系に流れ始めたんですよ。なんでですかね。東大ですよ。
川崎:やっぱり官僚のお給料が低いからじゃないですかね(笑)。
渋澤:警察はすごく高いんですか?
川崎:いえいえ。外資系に比べるとですが、ぜんぜん低い。
渋澤:だけどそういう意味では、同じ東大生であったとしても、けっこうギラギラ感があった人たちも当時はいたわけでしょう。それは単純に時代環境が違うからですか? だって同じ東大生ですよ?
川崎:今でも外資系の金融機関に行きたい人というはけっこう多い。
渋澤:ギラギラしている人います(笑)?
川崎:はい。ギラギラしている人は、周りにはぜんぜんいるかなとは思います。
渋澤:実はこの週末、ヘルスケアセクターのいろんなベンチャーをやっている若手たちが集まった会に参加したんですが、そこで会った女性がある食品ベンチャーの方だったんですね。
「前職は何をしていたんですか?」と聞いたら「財務省でした」と言われて、「へぇ。そうなんですね」って。まだお若い人だったから「何年務めたんですか?」と聞いたら「9ヶ月です」と言われて(笑)。すごいですよね。
当時は大蔵省と言っていましたが、昔の価値観だったら財務省でずっとキャリアを積んでいく。だけど今は9ヶ月ですよ。そういう女性の方だったら、たぶん財務省的にもすごく期待していたと思うんですが、昔の価値観と今はなんでそんなに変わっちゃったんですか?
竹内:どうなんですかね。逆にどう思われます?
渋澤:そうですよね(笑)。
竹内:自分たちとしては、生まれた時からお金をすごく意識してきたわけではない。どういう表現が正しいのかわからないですが、ある意味で日本社会がある程度成長しきったのか、成熟していたのか。もちろん、両親がすごくちゃんと育ててくれたというのもあると思うんですが。
お金が足りないとか、お金がなくて困るとか、お金をすごく強く意識するような機会がそこまでなかったというのは、1つあるのかなとは思うんです。ただ、自分たちは生まれた時からそういう状態なので、時代の変遷を見てきた渋澤さんとしてどう考えられているのかはうかがいたいです。
渋澤:そうですね。「デフレで日本がダメだ、不況だ」というのが20〜30年くらい続いたと言いましたが、日本社会ってかなり豊かですよね。そう思いません?そういう意味では、満たされていることは1つあるかと思うんです。
渋澤:今はいいかもしれないけど、私が若い頃だった昭和時代は、日本の人口動態ってどんなかたちをしていました?
竹内:若年層がすごく多くて……。
渋澤:ピラミッド型社会ですよね。それが平成時代になると、みなさんのおじいさんおばあさんくらいの団塊の世代の方々。そしてその下の世代が、たぶん(みなさんの)お父さんお母さんくらいかな、というレンジに入ってくると思うんです。
そのひょうたん型社会が、そのまま30年くらいシフトしたじゃないですか。じゃあ、みなさんが現役になるこれからの令和時代はどうなるのか。
川崎:縮小ですね。
渋澤:(手で逆ピラミッド型をジェスチャーしながら)こうですよね。だけど、今の社会福祉制度は逆ピラミッド型で作られましたか?
川崎:いや、違います。
渋澤:(手でピラミッド型をジェスチャーしながら)こうですよね。それが、一気に逆ピラミッド型になりますよね。どうする?
川崎:大変ですよね(笑)。
竹内:そういう意味では、将来への不安はすごくあるかもしれないです。将来どんなにお金があったとしても、それがいつまで保てるかわからないというのはすごく感じていて。だからどっちかというと、精神的なほうにいってしまうのかもしれないですね。
渋澤:なるほど、そういうことなんですか。
川崎:「老後預金が2,000万円必要だ」みたいなことが出されて話題になったり、「大丈夫かな?」みたいな不安はありつつ。でも、まだ漠然とした不安にとどまっているので、とりあえず現実逃避ではないんですが(笑)。
渋澤:だけど、現状維持の道をたどると将来ってどこに行きますか? 逆ピラミッドにしか行かないじゃないですか。
渋澤:なぜ不安を感じるかというと、昭和時代に築いたいろんな社会や成功体験があり、ほとんどの場合は人間って一番簡単な答えを求めるので、これまでの延長線上で考えるんですよ。それって無理じゃないですか。
これからは、未来は2つあると思っていて。1つは確実に起こる人口動態の見える未来。これは見えますよね。もう1つの未来は「見えない未来」なんです。なんで見えないかというと、不確実性なんですね。不確実性とは何かというと、先ほどおっしゃった「不安」かもしれない。不安の反対側には何があります?
川崎:安心?
渋澤:安心よりもうちょっとポジティブに。
川崎:期待?
渋澤:そう、期待。期待や不安は不確実性じゃないですか。期待どおりにならないこともたくさんあるし、不安でどうにもならないこともある。そういう意味では不確実性は良いほうに転ぶかもしれないけど、悪いほうに転ぶかもしれない。悪いほうに転ぶしかないのであれば、それは確実なので見えるんですね。
だけど見えない未来に対して、どのようにそれを良いほうに持っていくかと考えた時に、みなさんの世代はどのようなマインドセットになるべきだと思います? 先ほどの現状維持というのは、昭和時代に築いたいろんな価値観等があって、それをそのままいきましょうということですよね。
川崎:やっぱりイマジネーションで、どういう未来にしたいかをちゃんと自分で作っていく。
渋澤:そうですよね。
渋澤:みなさんは、インターネットが常時つながっていなかった生活を覚えています?
川崎:つながっていない生活……あんまり覚えていないです。
渋澤:たぶん覚えていないはずです(笑)。だから「デジタルネイティブ」と言われているじゃないですか。じゃあインターネットの特徴は何かと考えた時に、一部の国を除いて国境がないわけじゃないですか。
イマジネーションのスイッチがちょっと入って、「インターネットは国境がない」と考えた時に、日本国内だとお二人は人口が少ないマイノリティじゃないですか。上の世代から押し潰されちゃうような重荷をちょっと感じるかもしれないけど、国境をイマジネーションで取っ払っちゃうと、どういう世の中が見えると思います?
竹内:世界的に見たら、人口ピラミッドはまだまだピラミッド型だと思うので、そこまで広い視野を持てることができれば、将来もそんなに不安視しなくていいのかなと思います。
渋澤:ですよね。実は世界では、みなさんの世代がたぶん一番多いんですよ。圧倒的に若いんですね。どこにいるかというと、グローバルサウスという途上国が多いんです。だけど、途上国にいる同年代のみなさんは何を求めていると思いますか? 彼らはどのような未来を欲しいと思っていると思いますか?
川崎:途上国だとなかなか教育を受けられなかったり、困っている人たちが多いので、そういうところが困らなくなるような未来。
渋澤:そうですよね。
渋澤:「困らなくなる」の1つは、単純にいうと仕事に就きたいということですよね。そして生計を立てて、家族を養いたいということだと思うんですよ。これは日本で考えると当たり前のことだけれども、ニュースを見ていても世界はいろんなところで戦争があって、ニュースにならないところでもいろんなことがあるじゃないですか。
いろんな課題を抱えているということは、それが実現できないかもしれない。だからみなさんも聞いたことがあるSDGsが存在しているわけですよね。あれが目指しているところは「誰1人も取り残さない」じゃないですか。
そう考えた時に日本は、私が思うには大企業、中小企業とスタートアップ、現在の東京だけではなくて、日本全国でいろんなかたちで直接的、あるいは間接的に世界の多くの国の人々の生活を支えることができるんじゃないかと思うんですよね。
もしそれができて、世界の多くの国々が「日本っていいよね」「伴走してくれてありがとう」と言ってくれれば、これからの日本の未来はどうなるんでしょうね。
川崎:世界の中で、日本の存在感がもっと大きくなっていくのかなと思います。
渋澤:そうですよね。持続可能な成長がSDGsなので、日本の人口が減ったとしても、世界とともに良い意味でのいろんな成長を一緒に作れるんですよ。そう考えると、そんなにネガティブに考えなくてもいいなとイマジネーションしちゃうんですが、ちょっと飛躍しすぎですか? どうですか?
川崎:そういう未来は、聞いていてすごくわくわくします。
渋澤:私はこれからどんどん老人になっていくだけなんですが、みなさんがそれを作らなきゃいけない時に、どのようなスイッチを入れるのが大事なのかな。
川崎:それこそ寄付月間で言うと、日本は寄付をあんまりしない文化なのかなと思っていて。アメリカだとお金持ちがポンって寄付をするイメージがあるんですが、日本だとそんなに盛んではないのかなというイメージがある。
渋澤:だけど、神社に行くと何をします?
川崎:あっ、お賽銭を投げます。
渋澤:している。そこに文化があるじゃないですか。だけどあれは「Me」のためにお祈りしていますよね。
川崎:そうですね。
渋澤:あるいは、自分が大切と思っている周りの人たち(のためのお金)じゃないですか。だから、ちょっと違うかもしれませんよね。お金は自分にとってもすごく大切だけれども、自分が会うこともない遠い人たちに寄付するには、かなりイマジネーションが必要じゃないですか。
そのためにも、ちゃんとそういうお手伝いができるスイッチが、日本全国でいろんな世代に入ったらすごいですよね。
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