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UTokyo Future TV ~東大と世界のミライが見える~ Vol.13 「教えて、渋澤さん!お金ってミライをどう変えるの?」(全4記事)

現金を知らない子どもの増加で“マネーゲーム化”する可能性 渋澤健氏×東大生が語る、若い世代の金銭感覚

東京大学基金アドバイザーである渋澤健氏がナビゲーターを務めるオンライン対談シリーズ『UTokyo Future TV』。今回はゲストに東大の学生2名を招き「お金はミライをどう変えるのか?」という問いをテーマに対話を行いました。本記事では、キャッシュレス化が進む中で“お金がゲーム化する未来”の可能性について語りました。

渋澤健氏×東大生が語る「お金と未来」の話

渋澤健氏(以下、渋澤):みなさん、こんばんは。『UTokyo Future TV』にようこそ。ナビゲーターを務めさせていただく渋澤健です。いつもは本郷で開催するこの会ですが、実は今日は駒場のリサーチセンターに来ておりまして、ここは食堂です。

食堂コマニと言いまして、ご覧いただけるように、さまざまな研究者だけではなく、学生、そして外部の方々がいろいろと触れ合いながら、新しいクリエイションを作るスペースということで立ち上がったものなんですね。

この『Future TV』も、今回でもう13回目になります。いつも私がすごく緊張しているのは、東大の知の巨人に私がお話をおうかがいすることなんですが、今回はちょっと趣向を変えて、私のホームグラウンドである「お金と未来」の話をします。そして、話し相手は現役の大学生です。

今日はハイブリッド型で開催していますので、どういう展開になるか楽しみにしています。じゃあ、ちょっと行ってみましょうか。よろしくお願いします。

(会場拍手)

渋澤:こんにちは、渋澤健です。よろしくお願いします。

川崎莉音氏(以下、川崎):よろしくお願いいたします。東京大学法学部4年の川崎莉音と申します。

渋澤:川崎さん、よろしくお願いします。

竹内誠一氏(以下、竹内):同じく、東京大学農学部4年の竹内誠一と申します。よろしくお願いいたします。

渋澤:よろしくお願いします。

(会場拍手)

渋澤:みなさんもありがとうございます。さてと。こういうパターンは初めてなので、楽しくやりましょう。今日は会場にも聴講者の方がいらっしゃいますし、オンラインで参加されているみなさんもいます。どうもありがとうございます。

若い世代が望む“理想の未来”とは

渋澤:今日のテーマは「未来」ですね。未来のために何が必要かを若手のお二人に聞いてみたいと思うんですが、その中でおそらく1つ必要なことは「お金」だと思います。今日は未来とお金を掛け合わせて、みなさんと一緒に考える時間にさせていただきたいと思います。

さっそくですが、若手世代のお二人は未来をどのように考えているのか、あるいはどのような未来を見たいのかをお聞きしたいと思うんですが、どちらが先にいきますか?

竹内:じゃあ、自分からいこうと思います。

渋澤:普通はレディーファーストで女性に譲るんですが。

竹内:本当ですか(笑)。

渋澤:いえいえ(笑)。どうぞ。

竹内:自分は、東京大学運動会という運動部の連合組織の「総務部」という、本部のようなところで取りまとめをやっていたんですが、そういった視点から考えると、やはり未来は大学スポーツをもっと盛り上げていきたい。

具体的に言うと、世界の有名な大学だと、運動やスポーツに力を入れているところがすごく多くて。東大も力を入れていないわけではないと思うんですが、やはりそういった海外の大学と比べると、まだまだスポーツに向上の余地があるかなと思っている。

人気や一般的な認知度という面でも、大学スポーツ、特に東大の大学スポーツを盛り上げていけるといいなと思っています。

渋澤:なるほど、そうですか。わかりました。

経済や個人のキャリアにも影響する、ジェンダーギャップ問題

渋澤:じゃあ川崎さん。

川崎:私は、地方の女子学生が進路選択の時に直面するジェンダーギャップを解消しようという「#YourChoiceProject」という団体を運営しております。そういう見地から、日本のジェンダーギャップが解消された未来が一番見たい未来だなと思っています。

渋澤:共通した質問になるのですが、もう1つ。なぜそういう未来を見たいんですか? 「Why」ですね。じゃあ今度はレディーファーストで。

川崎:いくつか理由はあるんですが、まずは個々人が多様な選択肢の中からちゃんと自分の進路を選べる、未来を選べるということを実現したいというのがありまして。ジェンダーギャップがある中だと、選択肢が制限されてしまう状況が起こりますので、そういうところを改善したいというところが1つ。

あともう1つは、ジェンダーギャップが激しいままだと、日本のGDPにもすごく悪い影響を与えます。経済の面でいうと、ジェンダーギャップが解消することで、もうちょっと日本のGDPが豊かになるといいなというところです。

渋澤:なるほどね。竹内さんはどうですか?

竹内:自分は運動会総務部と、洋弓部で実際に競技者としてアーチェリーをプレーしていて。周りから応援されるとか、周りに知ってもらえていることが、競技をする上でのモチベーションになったり、力につながっていくなということをすごく感じていて。

「誰もが知っていて、応援されている」という環境を作ることで、選手のパフォーマンスの向上や練習環境の向上にもつながってくるのかなと思って、そういった未来があるといいなと思っています。

渋澤:なるほどね。

未来を考えるうえで大切なのは「共感」

渋澤:共通項があるとすると「現実は今のままなんだけど、より違う存在、未来を実現したい」ということだと私は理解しました。それを実現するためには少なくとも2つの要件があると思うんですが、なんだと思いますか? これは打ち合わせしなかったから(笑)。

竹内:そうですね。1つは、先ほどおっしゃられていたようにお金は絶対に必要だと思っていて。もう1つは、人間の人的資源もすごく大事なんじゃないかなと思います。その2つかな。

渋澤:実はもう1つの要件は、まさに人的資本というか、人しか持っていない要件なんですよ。なんだと思います?

川崎:みんながその未来を「実現したい」と共感することが、やはり必要なのかなと思います。

渋澤:そうですね。たぶん共感も関係していると思うんです。なぜかというと、共感すると人が集まるのでいろんなことが起こるんですが、イマジネーションだと思うんですよね。想像力。

「今は存在しないけど、こんな世の中があったらいいよね」「そういう未来を実現させたいよね」ということだと思う。そういう意味では、今日はお金で未来を実現させるみたいな、けっこうギラギラ感があるテーマなんですが、本来は併せて考えなきゃいけないものだと思うんですよね。

だから「どのような未来を見たいのか」をイマジネーションすることによって、そっちのほうに向かうことはあるかと思うんです。

現金を使わない今、お金は「ゲーム化」している?

渋澤:さて、そういう意味ではお金のことを考えた時に、そもそも最近って現金は使っていますか?

川崎:私はぜんぜん現金を使っていなくて、ほとんど電子マネーです。

竹内:自分もほとんど電子マネー。PayPayやクレジットカードを使うことがほとんどかなと思います。

渋澤:なるほどね。実は私も最近はほとんど使わないんです。前だったら、お金は現金という手に持って実感したものがあるじゃないですか。だけどそれが実感できないまま、お金ってどういうふうに感じています? (感覚的には)「ポイント」みたいになっちゃうじゃないですか。

川崎:「スマホで見る口座残高に表示される数字」みたいな感覚です。

竹内:「数字」とおっしゃっていたんですが、本当にそのとおりです。数字の減った・増えたで、お金がある・ないという感覚にある。目の前に物的な実態としてあるものではあんまりないかな、という感じですかね。

渋澤:ということは、お金がゲーム化しているという感じですか?

竹内:それに近いと思います。

渋澤:なるほど。実は、私は今から15年くらい前にコモンズ投信という会社を仲間たちと立ち上げたんです。そのきっかけが「世代を超える投資が必要だな」ということで、長期投資のファンドを運用しています。

今の子どもたちは“お金を触ったことのない世代”

渋澤:「世代を超える」というのは、親から子どもへ、あるいはおじいちゃんおばあちゃんから孫へという考え方なんですが、お子さん向けに4つのお金の使い方を一緒に勉強するものがあるんですね。その1つ目が、先ほどの「お金を使うこと」なんです。

だけど、それは小さなお子さんもすぐわかることじゃないですか。コンビニに行ってキャンディを買えたり。その時に、小さなお子さんはどうやってお金を実感しているのかなと。もしくは見たことがないかもしれない。お年玉をもらって、お金が見えた瞬間にお母さんが「私が預かります」と持っていっちゃうかもしれませんよね。

(お金が)非常にバーチャルな存在になっちゃうかもしれないじゃないですか。だからそういう意味では、お金という実感をどのように持つか。ご自身たちはどうですか? 子どもの頃はまだお金を触っていたと思うんだけど、これからはぜんぜん触ったことのない世代が生まれるわけじゃないですか。

川崎:確かに。ぜんぜん触ったことがないと、本当に数字というか、マネーゲームみたいな感じになってしまっていくのかなという気もします。

竹内:そうですね。数字でしか見ないと、「このくらいお金がある」「このくらいのお金でこれを買える」という感覚がだんだん失われていってしまうのかもしれないですし。実感として「どのくらいお金を使った」というのがわかりにくい社会になっていくのかなというのは、なんとなく感じましたね。

渋澤:なるほどね。それだけだとあまり未来を実現できそうな感じはしないですね(笑)。どうでしょう。ちなみにお金持ちになりたいですか?

川崎:私はそんなに欲はないです。

竹内:あったらうれしいなと。正直な気持ちとしては、自分で好きな時に好きなものを買えるくらいの余裕は持ちたいなと。やはり精神的にも違いますし。

渋澤:そうですよね。本当に自分がやりたいことの手段としてお金があるというのは、とても便利なことですよね。そういう意味では、小さなお子さんでもお金の概念をおわかりいただけると思うんですよね。

学生たちは貯金をしているのか

渋澤:2つ目のところなんですが、今、お金が足りないと。お小遣いが足りないけど、例えばゲームを買いたいという時には何が必要ですか?

竹内:今足りないんだったら、誰かから借りるしかない。

渋澤:借りる!? すぐそこへいきますか。ちょっと気をつけなきゃダメですよ(笑)。もうちょっと純粋に考えましょう。

竹内:貯めて買うしかないです。

渋澤:そうですよね、貯金です。貯金していますか?

川崎:少しだけ。

渋澤:少しだけ?

竹内:自分はそこまで意識できていないかもしれないですね。

渋澤:もしかして、もう借りているんですか?

竹内:いや、借りてはいない(笑)。借りてはいないですが、口座残高が一定を下回らないようにとは思っていますね。

渋澤:なるほど、そこが大事ですよね。下回ってから借りると、けっこう大変なことになりますよね(笑)。

だけど、そこも小さなお子さんはすぐわかってくれると思うんです。「足りないけど、貯めたら将来買えます」ということは、イマジネーションもちょっと働くと思うんですよね。「将来は買える」という感じで。

その2つのお金の使い方は、たぶん小さなお子さんでもすごくわかりやすいと思うんです。なぜなら自分のことだからですよね。「Me」のことじゃないですか。

幼い子どもにも「助けたい」という気持ちはある

渋澤:今度は3つ目のお金の使い方を話したいんですが、12月がどういう月かわかっていますか?

川崎:クリスマスですか?

渋澤:クリスマス。どうですか?

竹内:12月は大晦日とか、そういう印象ですかね。

渋澤:それもそうなんですが、実は、これなんですよ(着ている服を見せながら)。何だかわかりますか?

川崎:寄付月間ですよね?

渋澤:そうです、寄付月間です(笑)。よくわかっていますよね。寄付という考え方は、小さなお子さんはあんまり接点を持っていないかもしれませんが、説明すると必ずわかってくれるなと思うんですよ。なぜなら小さなお子さんでも、困っている人たちがいれば「助けたい」という気持ちはあるじゃないですか。

だけど子どもですから、親から離れたら何もできないし、遠いところに行ったとしても「力がないから何もできないな」ということがわかると、お子さんの顔ってどんどんどんどん沈むんですね。

だけど寄付の話を丁寧に説明すると、自分では行けないけど他に行ける人たちがいて、その人たちが行けるように自分のお小遣いからちょっと寄付すればいいんだと、お子さんがわかってくれる。

それではぜんぜん足りないから、友だちと、家族と、みんなと一緒に寄付する。そうすれば、その人たちが困った人たちのところに行って助けることができる、ということをこれまたイマジネーションすると、今度はお子さんの顔がパッと明るくなるんですね。

自分は何もできない無力な存在ではなくて、みんなと一緒にちゃんとできるんだということが、大事なポイントだと思うんですね。

お金の使い方は「Me」から「We」へ

渋澤:そこで何が起こるかというと、私が期待しているのは、Mがクルッとひっくり返ることです。「Me」のお金の使い方じゃなくて、「We」のお金の使い方がそこにあるんじゃないのかなと思うんです。確か、クラウドファンディングをやられたという話を聞きました。

川崎:そうです。ちょうど一昨日くらいまで。2週間で426万円集めさせていただきました。

渋澤:すごいじゃないですか。

川崎:ありがとうございます。

渋澤:聞きましたか(笑)?

竹内:自分では到底扱ったことのないような金額を(笑)。

渋澤:すばらしいです。それはどういうテーマで?

川崎:先ほどもご紹介したように、地方女子学生の進路選択の時のジェンダーギャップを解消したいということで、メンタリングコミュニティを運営していて、そこの運営基金としていただきました。

渋澤:先ほど「共感」という言葉を使われたじゃないですか。今回のクラウドファンディングでは、どのように共感を呼んだんですか?

川崎:それこそハッシュタグキャンペーンを実施して、実際に地方女子だった方々から「自分はこういうハードルを感じていた」というのをSNS上でつぶやいていただいたり。

あとは、こういう課題は今まで目に見えにくかったところでもあるので、私たちが実際にアンケート調査をして、数字で「こういう課題があります」と示したり、そういう工夫をしたと思います。

渋澤:今の実例を受けて、竹内さんはどうですか? (大学)スポーツを進める上で、何かヒントはありました?

竹内:そうですね、共感という文面でいくと、やはりスポーツをがんばっている人たちの気持ちが大切です。

自分が昔スポーツをすごくがんばっていて、今の学生がスポーツをがんばりたいという気持ちもわかるから、「がんばりたい」「勝ちたい」「勝負したい」という気持ちに共感をする。それが寄付の原動力になるのかなということは、スポーツの面からもすごく参考になるところだなと思います。

渋澤:なるほど、そうですよね。

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