生成AIの進化で、企業の覇権争いに変化が起こる?

DaiGo氏(以下、DaiGo):(AIは)「こういう観点で言ったらどうなるの?」とか、忖度されないから良いんですよね。だからAIに何をしてほしいかをちゃんと伝えられる言語能力を持ってる人の能力(の価値)が高くなってくる感じがしていて。

昔はやはり本を読んで勉強してる人が強かったけど、だんだん「なんとか、スペース」って、検索センスがある人が強くなったじゃないですか。それがAIでどんどん、もっと違う領域にいってると思うので。

だから今も「日本の未来、大丈夫ですか?」みたいな話になってたと思うんですけど。こういうゲームが大きく変わるような技術が出てきた時に、覇者が変わるから、意外と僕は「GAFAじゃなくなるんじゃないか説」が(あると思います)。

木内翔大氏(以下、木内):おぉ。

茶圓将裕氏(以下、茶圓):あぁー、覇者が誰なのか問題については開発者のお二人、どうですか? 僕はMicrosoftかなと思うんですけど(笑)。

渡辺圭祐氏(以下、渡辺):可能性はありますよね。でもMicrosoft、Google、Appleの覇権はそんなに揺るがないのかなというところがあって。今ってスマホやデスクトップでやり取りして、そこでユーザーの好みを取っていって、それが競合優位性になりますよねって話なんですけれど。

今後AIが発展していった時にどうなるかと言うと、今GPT-4が目を持ったみたいに、どんどん個人の生体データ、汗や目の動きを取るみたいな。次はApple Vision ProのVRやApple Watchが出てくると「全部統合した上で個人のプリファレンス(好み)をレコメンドしますよ」みたいになってくるんですよね。

そうなった時に、全世界にハードウェアをちゃんと作って、全部AIを裏で統合して作れる企業がどこにありますかって話になる。

茶圓:なるほど。やったらもうGAFAや、確かに。

AIが発達した未来の「最強のアスリート」とは?

DaiGo:プラットフォームとしてはたぶん、GAFAが最強のままでいると思うんですけど。例えば、僕はこういう思考実験をするのがめちゃくちゃ好きなんですけど……アスリート業界って、あんまりAI関係なさそうじゃないですか。

例えばテスラが作ってるロボットみたいなヒューマノイドができたとして、ヒューマノイドと人間が走って戦うとか、ロボットが絶対勝つからおもしろくもなんともないじゃないですか。

茶圓:確かに、ぜんぜんおもろないですね。

DaiGo:あれは人間(同士)がやらないとおもしろくない。さっきお話しされたASI(人間の知能を超えたAI)とか、AIが今後もっと発達しても、アスリートは走り続けてるはずなんですよ。じゃあASIが生まれて最強AIが世の中に普通にある時代の、最強のアスリートは何なんだろうって考えたら、今とは違うと思うんですよ。

今は自分で考えて、いろいろ試して、走り方を工夫したりする人が最強のアスリートじゃないですか。でもたぶんそのASIができたら、答えは彼らが知ってるわけですよね。ということは、AIに言われたとおりに、寸分違わずロボットのように……。

茶圓:素直なやつが強い(笑)。

DaiGo:そう。素直に、何も余計なことをせずに、言われたとおりやるやつが覇者になるじゃないですか。

自分を出さない「イエスマン」が重宝される時代に

茶圓:それは性格的に日本人が向いてるんじゃないですか?

DaiGo:もちろんそれもそうですし。でも、今まではそういう人ってダメだったわけですよ。なぜかと言うと、コーチが言ってることが必ずしも正しいわけじゃないから、批判的な思考を持って「これ違うんじゃないの?」って試す人が1位になったのに……。

もし唯一の答えを持ってるAIができたら、言われたとおりにやる機械みたいな人間がトップになってしまう。これは覇者が変わってるじゃないですか。

茶圓:それおもしろいですね。確かにテクノロジーが変わると価値観というか、重要なものが変わっていくので、それは確かにあるかなと思いますね。

DaiGo:GAFAはもしかしたらトップかもしれないけども、じゃあGAFAの中で優秀とされる人間は、今いる人たちと同じなのかって話で、そうすると……。

茶圓:イエスマンが重宝されるみたいな。

DaiGo:自分を出さない、自分を殺せるやつがトップになるという、ディストピアみたいな。

茶圓:ちょっと悲しい世界ですね(笑)。

DaiGo:思考実験ですけどね。

最終的なバトルの勝敗は、AIが関係ないところで決まる

木内:深津さんは今のDaiGoさんの意見に対してどう思いますか?

深津貴之氏(以下、深津):半分ぐらい賛成で、ただ僕はもう少し身も蓋もない勝負になる気もしています。要はおっしゃるとおり、AIの言うことを着実に積み込ませる人間が伸びるっていう勝負になってくると思うんですけれども。GAFAとかじゃない、我々一般の人間のAIの最終バトルって、AIで決まらないところで勝負が決まるので……。

茶圓:具体的に言うとどんな感じになるんですか。

深津:すごく身も蓋もない言い方をすると、全員が全員AIと同じことを言うベストプレイをしてくると、最後は遺伝子とか骨格、生まれた土地にAIにアクセスできるだけの環境があったかどうかがものを言うみたいな。AIの部分が全員イコールになると、究極的にはAIじゃないところでの勝敗がめちゃめちゃ重要になるかなと思います。

茶圓:なるほど。肉弾戦とか、そんな原始人類みたいな戦いになるんですかね。

深津:そうそう。

DaiGo:でもAIが超論理的だとしても、人間って超論理的じゃない生物なので。例えば機械がすべて完全にできるようになっても、たぶん僕らって「手摘みで摘まれたそばの実を、職人が石臼で挽いて作った1日30食限定のそば」をありがたがるじゃないですか。

茶圓:確かに(笑)。

DaiGo:だから例えば絵とかメイクも全部AIがやる時代になった時に、「私このメイク自分でやったんだよ」「マジで? 自分でやったの?」みたいな。そうなってくると、ちょっと価値という意味では変わってくると思います。

深津:もっと身も蓋もない外側のゲームになると、同じAIを使って同じ味のそばを作っても「山奥のそばvs駅前5分」みたいなところで決まると。勝敗要因は、不動産みたいなぜんぜん違う話になるかもしれない。

茶圓:なるほど、別軸での勝敗が。わかりました。

DaiGo:「丸亀AI製麺」とか出てきても、あんまりありがたみないですもんね(笑)。

(一同笑)

茶圓:いつ使うんかなと思ったけど、意外とゴングを鳴らすタイミングがなかったですね。

人口減少・高齢化の日本は、AIとめちゃめちゃ相性が良い

木内:(AIの)「日本での活用率を上げる」みたいなこともたぶん、1個のテーマになってくると思います。2024年に普及するんじゃないかっていうところはあると思うんですけど。

深津さん、いろんな自治体・企業に対してAI活用のコンサルティングもされてますけど。2024年、何か一気に活用が広がっていくイメージはありますかね。

深津:個人的に日本に期待してることで言うと、日本の場合は雇用をリプレイスするAIが作りやすい、あるいは海外は作りにくいところがあって。要はアメリカで労働者を置き換えるAIを作ると、普通にデモが起きて労働闘争になるんですけれども。

茶圓:ストライキっていう意味ですね。

木内:ハリウッドではありましたもんね。

深津:日本の場合、そもそも人口が足りないから、AIで労働者をリプレイスするどころか、AIを入れても足りないかもしれないみたいな状況なので。人口減少かつ高齢化っていうのは、AIとめちゃめちゃ相性が良い気はします。

茶圓:確かに高齢化で人手不足と、世界でも日本は稀有ですもんね。

AI時代に、寿司職人は最後まで生き残る

あおちゃんぺ氏(以下、あおちゃんぺ):どんな仕事だと取られないんですか?

深津:基本的に現段階ですと、完全な知能労働かつ無限にコピペできるような仕事は、機械に取られやすいんですけれども。さっき言った「そばを打つ」みたいなのもそうかもしれないし、「不動産を内見する」とかもそうかもしれないですが、複数の物理作業が間に挟まるものほど、現段階ではリプレイスされにくいかなと。

DaiGo:つまり考えることはリプレイスされるんだけど、手を動かさなくちゃいけないことに関してはリプレイスされないので、たぶん寿司職人は最後まで生き残る。そういう話になってきますよね。

あおちゃんぺ:あぁ、そっか。

茶圓:ちょうど2024年の初めに、ABEMAで討論したんですよ。フィジカルが強いやつが勝つという、「筋肉」って結論になりました。

あおちゃんぺ:(笑)。

茶圓:Uber Eatsはまだもうちょいいけると思うんですよ。最終的にドローンが飛ばすのはあるかもしれないですけど、規制諸々4~5年かかるんで。「筋トレして走って、フィジカル鍛えてUber Eatsしよう」っていう結論になったんで、フィジカルが入ってくるところは2~3年ぐらいは大丈夫ですね。

あおちゃんぺ:今後そういう仕事も、ロボットにAIを搭載するようになって、全部取られたりする……?

深津:あるかもしれないんですが、ロボットは意外と高級品ではあるので。結局ロボットが仮に1台100万円だとすると、100万円でロボットを買うよりも人を雇うほうが安いかもって言われてるので、ケースバイケース。

あおちゃんぺ:確かに、そっか……え、でも100万円で買い切りですよね!?

深津:100万円は今適当に言いました(笑)。

あおちゃんぺ:(笑)。

茶圓:実際はもっと高くて「人のほうが安い」ってやっぱりなるので、なかなか進まないと思います。

AIが作った資料と人間が作った資料では、価値は変わるのか?

木内:企業の導入で言うと茶圓さんの専門分野だと思うんですけど。2024年、企業の導入って広がりそうですか?

茶圓:めちゃくちゃ広がると思います。日本って保守的なんで、ChatGPTをほぼ使ってないのはサーバーが海外にあるからなんです。日本国内にサーバーがあるだけでOKっていうので、今いろんなプレイヤーが日本企業にゴリゴリ推進していて。普及率はもっと上がるかなと思います。

DaiGo:今でも「PowerPointは手で作んないと価値がない!」みたいな、AI禁止にしてる会社とかちょこちょこありますもんね。

茶圓:「いつの時代やねん、さっさと使いなさい」と思うんですけど。

DaiGo:さっきの手作りのそばみたいな、見分けがつくものだったら価値が出ると思うんですけど。見分けがつかなくなってきたらたぶん、ありがたみは変わらないと思うんですよね。

茶圓:そうですよね、おっしゃるとおりです。

あおちゃんぺ:もはや手間かけてやるほうがアホっぽいなって思っちゃう。時間の有効活用という意味でも任せたほうがいいって思う。

DaiGo:確かに。

深津:「社員のなんとかさんが心を込めて作ったPowerPoint」とか、評価すべきかどうか難しいところで(笑)。

(一同笑)

DaiGo:心を込めて作られたPowerPointってだいたいちょっと迷惑ですよね、長いし(笑)。

茶圓:サクッと作ってくれよっていうね(笑)。Amazonで社内PowerPoint禁止って有名じゃないですか。時間かかるから、Wordで文章だけでプレゼンしろっていうぐらいなので。僕そもそもパワポいらん派なんで、無駄やなとは思うんでね。AIでサクっと作ってもらったらいいとは思ってます。

ビジネス向けAIが登場する中、クオリティの課題も

木内:この間、営業系のイベントに呼ばれて登壇してきたんですけど。今、商談準備とかPowerPointの作成とか、もうAIでできちゃうらしくて。実作業で1日かかる作業がもう20分くらいで、提案書からパワポまで作れちゃうことを聞いて「マジかよ」と思ったんですけど。でも営業での利用率はまだ(低い)。

茶圓:実際ちょっとクオリティが(追いついていなくて)、「お客さんに出すのは……」ってやっぱりなりますね。Gammaとかはけっこうスライド生成で有名なんですけど、あと最近、Microsoft CopilotがPowerPointについたので。PowerPointの横にチャットボットがあって、例えば「何か作って」って言ったら作ってくれるんですけど、ちょっとクオリティはまだ……という感じです。

DaiGo:文字の配置とか、あのへんは弱いですもんね。最近だいぶマシになってきたと思いますけど。僕はすごく面倒くさがりなんで、YouTubeのサムネを作るのが心の底から嫌で。Canvaを使っても嫌なぐらいなんですよ。

茶圓:それでも嫌なんですね、相当嫌いですね(笑)。

DaiGo:「嫌だな、無駄だな」と思ってたんですけど、でも最近……。

深津:あのへんは1~2年で自動化されそう。

DaiGo:ですよね。でも一番きつかったのは、背景は作れるんですけど、文字の配置が下手すぎて。でもあれも最近ちょっと良くなってきて。

AIのビジネス利用が広まっていくための筋道

深津:ただ文字は、GAFAがあんまりやる気出して日本語のレイアウトとかをやりそうにないので、ちょっと我々は不利ですね。

茶圓:そうなんですよ。アリババが出してるAnyTextは中国語特化なんで、まだマシなんですけど。GAFAとかOpenAIの人とか、けっこう僕も知り合いに聞くんですけど、日本はまったく眼中にないらしいんで(笑)。日本ナイズする気はないらしいですね。なので「僕らがもっと盛り上げていかないと」っていうのは、すごく感じてますね。

木内:でも、Canvaとかが進化してくれたら、自動で良きに計らってくれそうですよね。

DaiGo:それっぽいものは作ってくれるんですけどね。

木内:そうですよね。だからAI活用が普及する1個の希望としては、今後そういう既存のマスを取っているツールがAIを搭載して進化していくことで、あんまり意識せずに僕らがAIを使えるようになってくるんじゃないかなと。

茶圓:ほんとそう思いますね。なので、インターフェースはChatGPTじゃなくて裏側に入っているので。みなさんがふだん使っているツールの裏側にAIがいる感じだと思います。CanvaもけっこうOpenAIと提携してごりごりやっていると思うので、期待したいところですね。

木内:そうですね。じゃあDaiGoさん、カンペが出ているので。

あおちゃんぺ:(笑)。

DaiGo:5分ぐらい前からずっと、「もう少しだけ未来に進んでみましょうか」というカンペが出ていたんですが、ちょっとおもしろい話だったので、しばらく無視してしまいました。