新しいことを習慣化するためのコツ

大平信孝氏(以下、大平):あとはこれもよく言われてることなんですが、脳は面倒くさがり屋で、防衛本能が最強なので、新しいことを習慣化するにはエネルギーがいるんですね。ただ、私たちの日常生活の中には、すでに習慣化していることがいくつもあります。

大村信夫氏(以下、大村):歯を磨いたりとか。

大平:歯磨いたり、電車に乗ったり。なので、新たに行動をプラスしたい時には、そこにくっつける「くっつけ作戦」がとてもおすすめです。

大村:「通勤電車に乗ったら読書」とか。

大平:スマホというよりは、読書や勉強に充てるとかですね。

大村:なるほど。ちなみに僕、けっこう合いの手を入れてやってるんですが、終わります(笑)?

大平:そうですね、ちょっと巻いていかないといけない(笑)。まだイントロダクションですよ。

大村:イントロダクションなんだ(笑)。すみません、イントロダクションでこんなに時間が経っちゃって。

大平:今、お伝えした脳科学的な考え方やちょっとした小ネタを使っていただいて、「すぐやる人」になっていかれると、かなりストレスは減ると思います。ただ、ToDoリストの先延ばしはなくなったとしても、すぐに仕事や人生が充実するわけではないということも知っておかれるといいかなと思います。

「ぶっ飛んだ目標」を立てると先延ばしが減る

大平:ストレスは明らかに減ると思いますが、「先延ばしをやめる・減らす」だけでなく、「自分にとって本当に大切なことに時間を使う」という観点もないといけません。ただマイナスをゼロにするだけではなくて、プラスの領域も作り上げていくのは、とても大切なのではないかなと思います。

そして、その時には「ぶっとんだ目標」を持ってはいかがでしょうか。予定調和的な無難な目標や「このままいったら、こういけるな」という目標というよりは、非連続の少し無理めな(目標を持つ)。

大村:リニアじゃなくて。

大平:じゃなくて、乗り換えちゃう。

大村:それも中途半端じゃなく、思いきりぶっ飛ぶほうが良いですよね。

大平:そうですね、思いきり。ぶっとんだ目標や目的地とか、「こっちに行きたいんだ!」という未来の方向性ができると(先延ばしが減る)。

「原因論的な思考」と「目的論的な思考」の二大思考パターンがあると思っております。行動にブレーキがかかってしまう場合は、原因論的な思考です。私もすごく悩まされた1人なんですが、行動できない自分を責めちゃうんですよね。

「なんで自分はできないんだ、何が原因なんだ」という原因追求を、私も過去の自分に対していっぱいしてきたんですが、それだとドライブがかからないというか、スイッチがなかなか入っていかなかったんです。

意識を未来に向けて「本当はどこに行き着きたいのか」「本当はどうしたいのか」という目的地を設定する。それこそ「ぶっ飛んだ目標」とも表現してるんですが、「私はこっちに行きたいんだ」という方向性を明確にした時に、先延ばしが激減したんですね。

先ほどの(紹介した)小ネタでも減るんですが、さらに本質的に、より効果的に先延ばしを激減させたい方は、目的論的な思考を(持ってみてください)。

大村:この「目的論」というのが、「ぶっとんだ目標」。

大平:そうですね。

タスクリストをこなすだけの時間の使い方でいいのか?

大平:アドラー心理学が「未来志向型の心理学」とも言われている1つの論点なのかなと思うんですが、アドラー心理学的にも目的論はすごく大事にされてる論点の1つです。だから本当に、アドラー心理学にすごく助けられた1人です(笑)。

大村:『嫌われる勇気』とか。

大平:『嫌われる勇気』から始まりますね。私の1冊目の本も、実はアドラー心理学の実践本として「アドラー心理学を体感できる」というコンセプトで企画を提出したところ本にしていただいたんですが、まさにこの部分ですね。

「目的論的な思考をどうやってセルフコーチングで実践していったらいいか」というのをまとめたんですが、先延ばしを撃退していくためにも、より充実した時間をお過ごしいただくためにも、ここが重要かなと思います。

大村:時間で言うと、僕は「命とは時間である」ということを言っていて。まさにこの一瞬一瞬が命なわけですよね。だから時間を無駄にするっていうのは、命を無駄にしてることだと思うので。

大平:本当にそうなんですよ。時間って本当にかけがえのないものですよね。ある意味、お金よりも大事だと思いますね。

大村:ドラッカーの「ヒト・モノ・カネ・情報」でも、「一番大事なのは時間である」とおっしゃっていたので。

大平:(一番大事なのは)時間なんですよ。タスクリストをこなすだけの時間の使い方で果たしていいんだろうか? というところですよね。

大村:そうなんですよね。

リソースを使うべき先は「緊急ではないけど重要なこと」

大平:よく「Have to doリスト」と「Want to doリスト」という言い方をしています。私たちには、やらなければいけないことはもちろんたくさんあるんですが、人生が終わる時に「よし、いっぱいHave to doリストをこなしたぞ」と言って、納得して死ねるかというと……。

大村:死ねないと思いますよね。

大平:なかなか死にきれないですよね(笑)。後悔が先に立つと思います。Have to doリストとも向き合ってきたし、自分がやりたいことのWant to doリストとか、本当に自分が「価値がある」「大事だ」と思ったことにもいっぱい挑戦してきた時間があればあるほど、充実度は間違いなく上がると思います。

大村:タイムマネジメントやタスク管理でもあるのかなと思っていて。それこそ『7つの習慣』で、緊急・重要の4象限があるじゃないですか。みんな「緊急で重要」をやりたがるんだけど、本当に人生を豊かにするためには「緊急ではないけど重要なこと」にいかにリソースをつぎ込むかなんですよね。

大平:おっしゃるとおりです。今日の先延ばしの撃退の考え方も、緊急かつ重要なことにも使っていただけるんですが、一番レバレッジがかかるのは「緊急ではないけれども重要なこと」。ここの先延ばしをなくした時に人生が飛躍するんですよね。

大村:そうなんです。僕もこの考えを知ってはいたけど、ちゃんとやってなかったんですよ。やはり、知ってるのとやるのはぜんぜん違うなと思って。

僕はそれをやり始めてから、第2象限を意識して先にスケジューリングしちゃうんです。そうすることによって、第1象限にいくことが少なくなってくると『7つの習慣』でも言ってました。実体験できたので、やはりそこは重要かなと思います。

大平:そうなんです。

クリエイティブ思考、行動力アップにもつながる

大平:だからこそ、第2領域の「緊急ではないけれども重要なこと」の領域で「ぶっとんだ目標」を立ててほしいですね。「私は本当はこっちに行きたいんだ」という、本質的に行きたいところを目標設定して先延ばしをやめていただくと、がらりといい方向にシフトしていくと思います。

大村:(視聴者コメントで)「緊急でないけど重要なことに10秒取り組むと、幸福になる」。まさにこれが言いたいことだったんじゃないですか?

大平:まさしくそうです。もちろん、やらなければいけないことの先延ばしは減らして、ストレスも減らしていただきたいですが、私の一番の思いとしては「本当に価値があると思っていること」を実行していただきたいですね。せっかく生きているのだから、絵に描いた餅で終わらせずに。

大村:変な話、そこ(本当に価値があると思っていること)に集中していくと、それ以外はやらなくなっていきますよ(笑)。

大平:そうなんですよ。本当にやりたいこと、自分に価値あることに取り組み始めると、やはり楽しいんですよね。行きたい未来に指をさして挑戦してる人は魅力的なので、協力者が現れたり、新しいアイデアが生まれたりします。

あとは壁が現れたとしても、「それをどうやって乗り越えようか?」「本当はどうしたいんだろうか?」と、思考がクリエイティブになるんですよね。

そうなっていくと行動力も上がりますし、なによりも乗り越えるためのアイデアや、協力するためのアイデアがどんどん出てくる。そうすると、ますます良い展開が生まれていくんですよね。

大村:そのとおりだと思います。

「ちゃんと」することをやめてみる

大村:「アイゼンハワーマトリクス」は(ドワイト・D・)アイゼンハワー大統領が提唱したものなんですが、第2象限に集中することは本質かなと思います。「ぶっとんだ目標」っていいですね。

大平:あえてちょっと強い表現を使ってますが(笑)。もちろん原因論的思考も重要ではありますが、原因論的な思考にプラスして目的論的な思考(を持つ)。二刀流じゃないですが、「本当はどうしたい?」という2つの思考を使っていけるようになりましょうということですね。

大村:やはり「(自分は)なぜできないんだろう?」って思っちゃうんですよ。

大平:普通は思います。

大村:勉強や受験をして、100点満点で80点を取ったとしても「この20点は何なんだ?」って、そっちに(思考が)いっちゃうんですよね(笑)。でも、80点取ってるから十分じゃんって。

大平:そうなんですよね。

大村:プロ野球選手だって、打率が2割5分とか3割でも十分でしょう。イチローですら別に10割じゃないでしょう。だから、なんでみんな10割を(目指して)やるのかなって。(その根底には)「ちゃんとしなきゃ」っていうマインドがあるから。

大平:そうそう、完璧主義。

大村:完璧主義なところがあったけど、逆にそれを手放すことによって、僕もすごくいろいろなチャンスが入ってきたので。まさに仮決め・仮行動で「ちゃんと」をやめてみるのはありかと思います。

大平:「仮決め・仮行動」で、目的論的な思考も活用する。

大村:第2象限に向けて「10秒アクション」をしていくということですね。

大平:そうですね。それが今日一番お伝えしたかったところです。

人間は“悪いところ”を責められると心を閉ざす

大村:「本当はどうしたい?」というところについて、我々ミッションラボとしては、人生のミッションや使命は「命を使う」と書くので、これがあると軸ができていくと思っていて。

大平:「命の使い道」ですもんね。おっしゃるとおりです。

大村:そうすると「これはやらなくていいじゃん」とか、選択基準ができるんですよ。

大平:そうなんですよ。自分が何を大事にして、どうしていきたいのかっていう、使命・ミッションに基づいた自分の軸がしっかりしていれば、「あれも、これも」とならずに済むんです。「私にとってはこれ(が重要)」という押さえどころがわかるので、タイムマネジメント上もかなりアクセントがつきますよね。

モノに対しては、何が壊れてるのか、何がうまく機能してないのかを突き詰めていく原因論的な思考はすごく良いんです。ただ、対ヒトは感情を持ってますので「何が原因なんだ」「どこが悪いんだ」と言われると、心を閉ざしてしまうというか。自分を責めてしまったり、逆ギレしてしまったりするんです。

なので人の感情に対しては、目的論的な思考をメインにアプローチをしていきましょう。そうすることによって、例えば定期面談や1on1のクオリティもぜんぜん変わってきます。

大村:なるほど、これはコーチングでも(応用できる)。

大平:そうですね。

大村:勉強になる。