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片付けパパ対談 #16 「すぐやる人」になる ~ 科学的に「先延ばし」をなくす技術 ~(全5記事)

面倒な仕事は「前日にちょっとだけ着手」するとサクサク動ける 気合い・根性では入らない“やる気スイッチ”を押すライフハック

『片付けパパの最強メソッド』の著者・大村信夫氏が旬なトピックでゲストと対談するシリーズ。今回のゲストは『やる気に頼らず「すぐやる人」になる37のコツ』著者の大平信孝氏。本記事では、面倒な作業を先延ばしにしてしまう人におすすめな「10秒アクション」「仮決め仮行動」のコツを解説します。

前回の記事はこちら

そもそも人間の脳は面倒くさがり屋

大平信孝氏(以下、大平):「『やる気』待ちしてはいけない理由」なんですが、今日は科学的に先延ばしをなくす技術をお伝えしたいので、脳科学的なところもお伝えしたいなと思います。

やはり脳の防衛本能は強力なんですよね。これは誰にも備わっているものなんですが、命に別状がない限り、私たちは今までの行動をそのまま踏襲しようとするんです。

大村信夫氏(以下、大村):「現状維持バイアス」だと。

大平:脳は「現状維持」が大好きなんです。

大村:大好きですよね。

大平:だから言い方を変えると、「脳は面倒くさがり屋だよ」と表現しています。

大村:「ホメオスタシス」というやつですね。

大平:そうなんです。今は新年のタイミング(イベント開催は2024年1月18日)ではありますが、「今年こそ」「今年はいろいろ流れを変えていくぞ」「早起きして、運動もして、勉強もして、片付けもして」と(目標を立てても)、3日ぐらいはなんとかなるんですが、3日以降はまた戻ってしまうんですね。

大村:「三日坊主」と言いますからね。

大平:「いつもどおりの自分でいきましょう」という現状維持のパワーに飲み込まれてしまって、結局は「あれ? 気づいたら、またいつものパターンで行動している。考えている」と。

大村:でも、生物学的にそういうものなんですよね。

大平:そうなんです。もうしょうがない。

つい先延ばしする自分を責める必要はない

大平:脳は現状維持が大好きなんです。だから、先延ばしをしてしまうとか、「面倒くさい」と思ってしまう自分を責めないでいただきたいんです。

「自分は性格的にちょっと欠陥があるのかな?」「自分って能力的に劣っているんじゃないか?」と、私も過去にはその誤解をしていて、自分のことを責め過ぎてしまったんです。

でも、自分のことを責め立てて流れが良くなるんだったらいいですが、だいたい良くならないですから。ますます自信が失われて、ますます行動するエネルギーや挑戦する意欲が少なくなっていくんですよね。

大村:脳の基本機能なので、ある意味正常だということですよね。

大平:そうなんです。だから、あなたはぜんぜん悪くありません。でも(そのままでは行動を)やらないので、それをどうやったらいいか? というところですよね。

大平:そうそう、そうなんです(笑)。でも、もし脳の望遠本能、つまり現状維持の作用が強力すぎたら私たちは変われないじゃないですか。ですが、実は脳には「やる気スイッチ」も存在しておりますので、ご安心ください。それが「側坐核」というところです。

大村:「側坐核(そくざかく)」と読むんですね。

大平:「そくざかく」と読みます。この部位に上手に刺激を与えて、脳を上手に活用すれば、自分で「やる気スイッチ」を入れることもできちゃうんですね。では、どうやったら側坐核のスイッチが入るのかをお伝えしていきたいと思います。

「よし、やるぞ」と気合いを入れたり、それこそ「『やる気』待ち」みたいな状態でも、残念ながら側坐核のスイッチは入りません。あとは、人から応援されたり命令されたとしても、側坐核のスイッチは入らない。

大村:さっき言っていたように、内発性に対しての外発性になっちゃう。

大平:外発的な部分でもありますね。側坐核のスイッチは気合い・根性では入らないということです。

やる気スイッチを押すコツは「10秒アクション」

大平:じゃあ、側坐核の「やる気スイッチ」をオンにする方法は何なのかというところなんですが、実はすごくシンプルで「え、これだけ?」という感じなんです(笑)。

大村:「10秒動く」?

大平:「10秒動く」。実は本当にこれだけなんです。「すぐやる人」になるには、おすすめは「10秒アクション」ですよとお伝えしています。

大村:10秒。

大平:「たったこれだけで、あなたも『すぐやる人』に」ということです。私の過去の実体験でもあるんですが、東京マラソンに運良く当選しました。まだ僕はフルマラソンを走ったことがなかったんですが、せっかく当選したので完走したいなと。「週3回、朝30分走るぞ」と目標を立てたんですが、まあ、やらないです。

大村:やらないですよね(笑)。

大平:「昨日飲み会だったし」とか、言い訳して基本はやらないです。

大村:あぁ良かった。やはり人間ですね(笑)。

大平:人間です(笑)。「今日はちょっと曇っているな」「寒いな」「もうちょっと寝ていたいな」とか、いろいろ言い訳をして「よし、今日もやらない」ということが続いて。でも、だんだん本番が近づいてきて「さすがにこの状態だと完走できないな。作戦を変えよう」ということで、10秒アクションです。

「『30分ジョギングをする』の最初の行動って何かな?」とイメージしました。自分の場合は「ジョギングシューズを履く」だなということで、前の日に玄関にジョギングシューズを置いておいて、朝身支度をしたら四の五の言わずに履く。10秒アクションをとにかく実行しようと。

「30分しっかり走ろう」というふうにすると心理的なハードルも高いんですが、「ジョギングシューズを履く」だけだと、「それぐらいだったらいいか」と、心理的なハードルが下がるんですね。靴さえ履いたら、脱ぐことはあんまりなくて(笑)。

大村:そうですね(笑)。

大平:履いたら外に出て、外に出たら家の前を散歩して、だんだん体が温まってきて「じゃあ公園へ行こう」みたいな感じです。

先延ばししていることを「文字化」するのが効果的

大平:「ジョギングシューズを履く」という10秒アクションを設定して、愚直にシンプルに「10秒アクションだけやろう」というふうに実行したら動けたんですね。週3回以上、週4日走る時もありましたし、結果はぎりぎりでしたが完走できたわけです。

大村:おめでとうございます。

大平:ありがとうございます。

(会場拍手)

大村:大変なんですよね。

大平:本当に大変なんです。その実体験からも10秒アクションが大切ですね。「先延ばしが気になっている」「なんとかしたい」と思われている方は、「先延ばしを撃退したい行動の『最初の10秒』では何をするかな?」というのを、面倒くさがらずに「文字化」していただきたいんです。

大村:文字化。

大平:文字化するんです。例えば「本をもう少し読みたい」ということであれば、「本を手に取る」「1行読む」とか。先延ばししていることの最初の動作を10秒アクションとして文字化して、愚直にそれだけを実行していただくと、おどろくほど先延ばしは減ります。

大村:なるほど。とにかく10秒。10秒だったらなんかやれそうですね。

大平:「10秒だったらまあいいか」と思えますよね。

まず10秒動くと、その後の行動の“着火剤”になる

大平:先ほどは「側坐核にどうやったらスイッチを入れるか」という話だったんですが、実は小さく動くことで側坐核のスイッチが入るんですよ。だから気合いや根性ではなくて、自ら起こす小さな行動が側坐核に刺激を与えてくれるんですね。

大村:ドミノ倒しみたいにがーっと行くんですね。

大平:そうなんです。「最初の1枚」みたいなイメージで、1枚倒していただくと、その後はだーっと倒れていくイメージです。

大村:これは「10秒」というところがポイントかなと思って。10秒だといけますものね。その10秒は考えないでやっちゃうんでしょ?

大平:そうなんです。10秒で終わることはなくて、最初の10秒が“着火剤”の役割を果たしてくれて、結果的に3分、5分、10分、15分と続きやすいんですね。

大村:僕は朝起きられないんですが、昔聞いたのは「人間は10秒あると『やらない理由』を考えちゃう」。だから僕、朝起きたらその瞬間にアホになって布団から出るんですよ。

大平:(笑)。それもある意味10秒アクションなんです。

大村:やはり(布団の中が)暖かいじゃないですか。

大平:今は特に寒いから。

大村:特に寒いから、10秒回っちゃうと言い訳をいろいろ考えちゃうんですよ。

大平:「もう少し大丈夫だろう」となりますよね。

大村:そうそう。それを考えないでアホになって、わっていくと起きられるって最近気づいた。

大平:そうですね。布団から出たら、その後に戻るってなかなか(ない)。

大村:そう、ない。

大平:「あまりにも寒くて」という時はあるかもしれませんが、その後の動作にいきますよね。

大村:そう。あとは、起きる30分前から暖房を思いっきり付けておく。

大平:なるほど、いいですね。快適な環境を作っておく。

大村:すみません、ちょっと話が逸れちゃった。でも、そういうことに近いですよね。

大平:そうなんです。

なかなか行動できない人は“考えすぎ”なことが多い

大平:脳科学的にも、脳は現状維持が大好きなので、面倒くさがり屋で変化を嫌うんですね。ですが、そうしたら私たちは一生変われないじゃないですか。

ただ、脳は大きな変化は嫌うんですが、小さな変化なら「可塑性」という性質で、粘土に少しへこみを作る、その小さなへこみぐらいの変化だったら見逃してくれると言われています。だから防衛本能のアラートがかからないんですね。だから、10秒アクションぐらいの小さな変化・小さな行動であれば、面倒くさがる脳をすり抜けられる。

大村:なるほど。それが習慣化していけば、デフォルトになってくるということですね。

大平:そうなんです。だから、私が接してきている「すぐやる人」は、めちゃくちゃ気合いと根性で筋肉隆々の人というよりは、すごく力が抜けていて自然体な方なんです。

だから大村さんがおっしゃったように、すぐやることが当たり前になっているというか、それがデフォルトになっているんです。そうなったら、しめたもの。いい流れをどんどん作っていけますので。

そして先ほどもちょっと触れましたが、さらに先延ばしを撃退していくためのポイントです。書籍では、やる気に頼らないで「すぐやる人」になる37のコツをお届けしているんですが、そのうちの1つの「仮決め仮行動」です。

考えること自体はものすごく大事なんですが、考えすぎてしまう人、考えているだけで行動する時間が極端に減ってしまう場合は、「仮決め仮行動」で良しとしてみませんか? ということです。筋トレでも、まずは自宅で腕立てをやってみる。

大村:10秒でやれるということですよね。

大平:まずはスクワットを1回やってみるとか。「何か道具をそろえてから」「ジムがいいのか」「条件をしっかり整えてからでないと」というふうになってしまうと、どんどん時間が経ってしまいますので、とりあえずやってみる。

大村:まずはとりあえずやってみる。

大平:「仮決め仮行動」はすごくおすすめです。

次の日のタスクは、前日にちょっとだけ着手する

大平:あとはこれも小ネタなんですが、「前日にちょっとだけ着手しておくこと」の効果は絶大です。翌日や翌朝の面倒なことは、前日に少しだけ手をつけておくということですね。

大村:脳が気になっちゃうんですよね。

大平:そうなんです。(事前に)アンテナ立てておく、みたいなこともありますし。

大村:「ツァイガルニック効果」でしたっけ? ドラマのCMや最後の予告とかも、たぶんそれと同じような効果なんでしょうね。

大平:そうですね。前日にちょっとだけ着手しておくことで、例えば必要な資料が机の上にあれば、おのずと着手も早くなります。私もよく執筆で「明日はこの部分を書こう」と資料を用意したり、パラパラっと1、2分だけ読んでおいて寝るんですね。そうすると、朝起きた時にけっこうアイデアが(湧いてくる)。

大村:眠ってる時に考えてくれるんですね。

大平:そうなんです。眠ってる時に記憶が整理されて、起きた瞬間にインスピレーションというか、ひらめきが出てきて。「この本も参照しよう」「この具体例で書いてみよう」というふうにアイデアも出る時があって、前日着手は非常に効果的です。

寝る前でもいいですし、お仕事が終わる時に「明日はこれをやるぞ」と、あらかじめ少しだけ準備しておくだけでも、かなり変わってくるんじゃないかなと思います。

大村:なるほど。

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