中国ECでポジションを取るためのデータ活用

⻄尾宗哲氏:本日のテーマは「中国EC市場を細分化! 自社ポジションを把握し、市場、販売機会の特定」です。ここからは講師の土田からお話しできればなと思っております。土田さん、お願いいたします。

土田明聡氏:ありがとうございます。本日お話しさせていただく例題としましては、実際に存在するフランスの健康食品メーカー・BIOCYTEというブランドさんを軸に話をしていきたいと思います。睡眠関連のサプリを、100元と150元の2商品で展開しています。

今、中国では抖音の急成長によって市場が急拡大しているところに加えて、もちろん新興ブランドの登場も増加しておりまして、新しい訴求も増えております。その中で市場全体を広くかつ細かく把握するということは、今までの手持ちのデータでは難しいところがあります。

そこでNintのデータを使っていただき、成長性やポジションを再確認するという例題で話をさせていただきます。大きく分けて3つ、「市場把握」と「プレイヤー」、そして最後に「ポジション」について、現状を再確認するところを見ていきたいと思います。

まず最初に市場を把握するところで、アリババ、京東(JD.com)、抖音(Douyin)という3プラットフォームを1画面で見ていきたいと思います。今表示されている、2023年11月から12月の2ヶ月間のデータを基軸に話をいたします。

その中で3プラットフォームを合わせて、睡眠関連のサプリは市場規模として1億元。日本円でだいたい20億円の市場になっております。前年比ではマイナス7.5パーセントです。

プラットフォームごとに見ていきますと、半分が京東で5,000万元の売上。天猫・淘宝で5,000万元。抖音はまだ小さいですが、成長率はプラス22.6パーセントで、今後期待されるような市場になっているかなと思います。

常に新しいブランドが市場に出てくる

土田:先ほど金額で市場を見ていきましたが、次にブランド、店舗、そして商品数で市場の状況を把握していきたいと思います。

スライド真ん中はブランド数を示していますが、3プラットフォーム合わせて621ブランドが存在しており、前年比で言うとマイナス11パーセントと、ブランド数は減っているもようです。店舗数と商品数についても、ブランド数が減っているので同様に減少しているかたちとなります。

621ブランドがある中で、トップ10のブランドでだいたい市場の50パーセント以上を占めており、だいぶ寡占率が高い市場になるかなと思います。ただ、この10ブランドがここ数年変わらずに市場を独占しているのかどうかは、次のブランドの詳細で見ていきたいと思います。

今ここに現れているのは、トップ1からトップ30までの10ブランドずつで、市場に対するシェアが表示されております。トップ1から10は先ほど見たとおり51パーセントです。

ここに記載されているブランドを実際に見ていきます。VitaFusionやBY-HEALTHは、市場の占有率で言うと、一番大きいブランドは14パーセントを占めており、2番目が8.4パーセント。3位以下と比べてシェア率は高いものの、前年比では大幅にマイナスしていることが見て取れます。

それに対して5番目、6番目はまだ市場に対するシェアは4.5パーセントほどですが、前年比では大幅に成長しております。なので先ほどの「10ブランドで市場50パーセントを占めている」という話に対しては、ブランドが変わっていないのではなく、9番目に新しく出ているブランドが占めているように、常に新しいブランドが市場に出てくることになっているかなと思います。

今回仮定としているブランドがどこに位置しているのかといいますと、BIOCYTEというブランド、だいたい26番目の市場に対する順位となっております。マイナス22パーセントなので、前年と比べても市場全体と比べて落ち込みの幅は大きいとわかります。

中国ECのプラットフォーム分析

土田:ブランドの次に、実際に商品を見てみて、自社と比べた時にどんな違いがあるかを見ていきたいと思います。今ここに表示されている商品を説明しますと、「ali」はアリババ、「jd(京東)」と、基本的にアリババ・京東の商品が全体の中で出てくるかたちです。

この2ヶ月間で一番売れている商品を見ますと、GABA・メラトニンが含まれているような商品。価格としてはだいたい200元です。

京東について見た時には、例えば2番目、5番目、6番目の中で「中老年」と書いているように、これは40歳以上、50歳以上のどちらかというと年配の方向けの睡眠用サプリとなっております。なので京東は、このターゲットに対しての訴求が強いプラットフォームになっている可能性はあるかなと思います。

続きまして、価格帯について見ていきたいと思います。先ほどPPTの中で話が出たように、このブランドは100元と150元の2価格帯で展開しているんですが、市場全体で見た時にその価格帯がどこに入っているのかを見ていきたいと思います。

今、右側で4つの価格帯が区分されているかと思いますが、これは25パーセントずつで表示されております。その中で100元から150元を引き算で計算してみますと、約25パーセントの100元から150元の価格帯が、市場に対してのシェアになっております。

ここは今2023年の11月から12月で見ていますが、もう少し時間を伸ばして過去と比較して、価格帯がどう推移しているのかも見て取れるかなと思います。

最後にここで全プラットフォームを合計した時に見ておきたいのが、自分たちのベンチマークとしているブランドと比較してどうなのかになるかなと思います。今3列データが現れているかなと思うんですが、カテゴリー全体と自社と、あとはベンチマークとしているブランドの3列で出てきております。

市場に対しての成長速度はマイナス22パーセントが自社となっておりまして、プラットフォームはマイナス7.5パーセントになっております。

下のところで1つ見ておきたいのが、自社とベンチマークとしている会社さんの、価格帯ごとの商品のシェアになります。例えば自社で言いますと、今はシェアに置き換えまして70元から130元、先ほどの価格帯で自社が一番販売しているのがスライドのとおりです。

ベンチマークにしている会社さんがどうなのかでは、ここだと75元以下のところで3割売っていらっしゃって、135元以上でも売っていることになります。もしここをベンチマークし続けるのでしたら、新しく価格帯を作るような商品を作るか。

または、市場全体で見た時にこういったかたちになっているので、おそらくこの255元以上はセット商品になってくるかなと思います。セット商品が弱い自社に対して、セットを強化するような施策が必要になってくるかなと思います。

価格帯を分析する際のポイント

土田:というところで今、3プラットフォームを合わせた状態を市場全体で見てきました。続いては各プラットフォームを詳細に見ていきたいと思います。ただ時間の限りもあるので、アリババだけを中心に見ていければなと思います。これからのデータはアリババだけということをご注意ください。

その中で同じく睡眠用サプリ、メラトニンがどういう状況かと言いますと……一番最初に、ベンチマークとしている会社さんが市場の大きいシェアを占めているとわかるかなと思います。VitaFusion、アリババの場合ですと市場の約23.5パーセントを占めています。なので2位以下のブランドと比べると、かなり大きい市場シェアになっているとわかります。

それ以外で1つ見ておきたいのが、2番目や7番目です。前年比がないということは、この1年間で新しく登場したブランドだと指しております。こういった新しく登場しているブランドが何を訴求して、どういうポジションで入ってきているのかは、見ておく必要があるかなと思います。

ここは市場に対してのブランドランキングになりますが、自社が今13位に位置づけております。ブランドではなくて商品がどうなのかを、次に見ていきたいと思います。今、商品のランキングで見ておりますが、先ほどのブランドの上位に出てくるようなブランドの商品がやはり上にはくるかなとは思います。

一番売れている商品は200元のところで、2番目は先ほどのブランドランキングの中で新しく出てきたようなブランドになっているかなと思うんですが、単価が654元と自社と比べて5倍以上大きいです。市場に対して需要があるために、この販売金額になっている可能性はあるかなと思われます。

今は価格帯を指定せずに商品ランキングを見ていったんですが、やはりポジションを確認する意味では、自社の価格帯を絞った時にどういうところが成長しているのか、減少しているのかを見る必要はあるかなと思います。

0元から180元を30元ずつ切った時に、市場はどうなっているのかになります。今、自社が入っているところで言うと、金額ベースで90~150元で、アリババですとだいたい市場の20パーセントがこの価格帯に収まっています。

なので今の自社が展開している価格帯は、そもそも市場の20パーセントしか取れていないような価格帯に位置しているところが再確認できるかなと思います。

青色のところが今年で、緑が昨年比です。ここも見ると、まず自社がいる120~150元では件数ベースでも増加しています。そのほかの価格帯で前年比で成長している価格帯というと30元以下、かなり安いところが成長しているのかなと思います。

価格帯×ブランドの軸で読み解く

土田:今までは価格帯という1つの軸で見たんですが、価格帯と各ブランドをクロスで見ていきたいと思います。まずは自社が一番入っている価格帯で、金額ベースで90~120元という価格帯を見ていきたいと思います。今BIOCYTEという自社のブランドは3位の位置につけていますが、近いところでほかのブランドさんを見てみますとAmeri-VitaやSwisseが入っております。

自社をあらためて確認をすると、90~120元が一番売れている価格帯で、その前後は10万元、20万元と、かなり低いところになっています。

一番最初にベンチマークとして見たところが一番上のブランドさんですが、だいたいこう見ますと30~180元、180元以上も含めて、かなり幅広い価格帯で展開しているので、本当にこのブランドをベンチマークとするべきかどうなのかは1つ疑問になるかなと思います。

そういった意味でベンチマークになり得そうなところは、この2番目のブランドさんは60元以下と150元以上で基本的に商品はないので、価格帯の構成で言うと自社と似ています。

その中で1個の違いとしてあるのが、このAmeri-Vitaのブランドは120元~150元の中でも60万元と、自社と比較をするとけっこうな大きい差で商品が売れている状態です。なのでこの商品、このブランドがどういうブランドで、どういうポジションを取っているのか。自社はそれを真似できたり、参考にできないかを次に見ていきたいと思います。

Ameri-Vitaというブランドがどんな商品をどういうカテゴリーで展開しているのかを見ていきたいと思います。先ほどからずっと見てきた睡眠以外でも、彼らは美容関連のサプリだったり、あとはアイケア、スポーツダイエット用というさまざまなカテゴリーでサプリを展開しているのがわかるかなと思います。その中でも睡眠は伸びています。

それに対して自社はどうなのかというと、今は画面変わりましてBIOCYTE、自社の今回仮定としているブランドを見ていきますと、美容を展開していて、それに続いて睡眠関連を展開しています。

なので美容・睡眠関係は先ほどのブランドと近いんですが、カテゴリーで言うとその他のアイケアでは、先ほどのAmeri-Vitaと比べてカテゴリーは少ないかなと思います。

流通展開をターゲティングから分析

土田:続いて流通を1回見てみたいなと思います。どちらも海外のブランドであるので、海外旗艦店を中心に販売していることは間違いないかなとは思いますが。

いわゆるC店という個人店がどうなのかで言いますと……今見ているAmeri-Vita、新しくベンチマークしようとしているところは18店舗で展開していて、その中で自社旗艦店は98パーセントの販売金額シェアを持っています。

一方で自社は47店舗で、青色の個人店でかなり販売されているので、ここらへんは1つ違いとしてあるのがわかります。ここを戦略的にどうコントロールしていくのかは、認知を拡大するところでも大事ですので、あらためて確認する必要はあるかなと思います。

ブランド全体の販売金額に対して、旗艦店のシェアは74パーセントになっております。なので、ここの店舗の流通でも違いは見られるかなと思います。

変わりまして、Ameri-Vitaで新しくベンチマークしている商品を見ていきますと、100元近くの1.5グラムのメラトニンが入っている商品と、GABAが入ってさらに3グラムのメラトニンが入っているところが、基本的に同じような2商品構成で販売しております。

なので、1.5グラム、3グラムというところも含めてかなり近いことになっております。そこらへんは1つ、さらにベンチマークとする必要性があるかなと思います。ただ1つ、自社ブランドの商品を見た時に明確に違うと思われるのは、「学生」と「女性」をしっかりターゲティングしているところかなと発見できました。

例えば、どういうところを訴求しているのかに対して、あらためて自社の商品を見ていきますと、特別ターゲットとユーザーに対しての訴求は商品名に記載していないことは、明らかに違うところかなと思います。

このブランドが、学生や女性向けに話をしている中で、この訴求は市場全体として増えているのかを見ていきます。今、睡眠サプリがどういうユーザーに対して訴求が多いかを見ますと、前年比で子どもや学生への訴求が増えているので、1つ参考になるところかなと思います。

ライブコマースなどのプロモーションは?

土田:というところで、今、ベンチマークとなり得るブランドさんのカテゴリー展開、商品展開、流通展開を見ていきましたが、最後にプロモーション関連について、このブランドさんの場合は何をやっているのかを見ていくことで、新しくポジションを取った時に、どういうプロモーションができるのかを参考にできると思います。

プロモーションの場合、今は基本的なモール内の広告に加えてライブコマースも増えている状態ではありますが、果たして新しくベンチマークとなるようなこのブランドさんが、ライブコマースをやっているのかどうか。もしやるとしたらどういうことができるのかを見ていけるかなと思います。

ライブコマースの場合は、2023年の1月~12月の1年間のデータを見ていきます。彼らがアリババでライブコマースをやっていることがわかります。どれぐらい売り上げているのかについては、ここに記載されているように約400万元を販売しております。

この400万元を作っている、ライブコマースをやる時にKOLが必要になるんですが、KOLさんに何をお願いをしているのかについては、「17」という数字がKOLの数を示しております。

17人のKOLで、年間で約260回ライブコマースをやっているということは、平均と比べると、ライブコマースをやるKOLの数は少ないが、1人当たりの回数が多いということなので、恐らくこのブランドさんとしては、1人のKOLと長らく契約などをして付き合っていく体制を取っているかなと思います。

実際にどのKOLを使っているのかは、やはりトップのKOLが販売力も強いので、(トップの方を)使っていらっしゃるかなと思います。3番目のKOLはウエストなので、100万人もいないようなKOLさんになっております。

そういったところでも45万元と強い販売額を持っているので、ここらへんはポジションを含めて確認した時に、どう付き合っていくかは参考になり得るかなと思われます。

というところで、今新しいベンチマークになるブランドさんを見ていきましたが、市場全体を把握して、どういうプレイヤーがいて、最後にポジションでは、新しいベンチマークのAmeri-Vitaを見ていった時に例えば学生や子どもに対して訴求をしているところが、まず1つ違いとしてありました。

価格帯構成でも、自社が強いような価格帯以外の120~150元以上でも、強い販売力を持っているところがわかったりと、1つ把握を含めて参考になるところがあったかなと思われます。以上となります。

まずはしっかりデータでファクトを捉えるのが重要

西尾:土田さん、ありがとうございます。最後にまとめというかたちでお話しさせていただきます。さまざまなデータと活用のお話でしたが、データを拝見しているとおり、マーケットの変化や、抖音などの新しいプラットフォームが出てきていたり、中には新興ブランドが新たに出てきているところもそうです。

ライブコマースなどのプロモーションも非常に多様化していますので、まずはしっかりデータでファクトを捉えていただいて、市場の動向や自社の立ち位置を正しく把握するのがよいと思います。

新しいブランド、新興、プラットフォームの「まずは知る」ということを把握いただき、これらを自社のデータと、競合・市場を比較いただいて、どのあたりに差分があるのか、伸びしろはあるのかを特定いただいてですね。

それらのデータを基に、社内でいろいろ議論したり企画を策定したり、最終的には流通の戦略、販売戦略につなげていただければいいのかなと思っております。

今回は以上になりますが、今後また別のテーマや、その他いろいろなサービス機能がございますので、このあたりもいろいろコンテンツを充実させていきたいなと思っております。本日はご視聴いただき誠にありがとうございました。