メンバーに言いにくいことを伝える時の留意点
田久保善彦氏:グロービス経営大学院の田久保です。このコーナーでは、みなさまからお寄せいただいた質問に、私からお答えさせていただいています。今日のご質問は「会社の中で言いにくいことを相手に伝える時に、どんなことに留意したらいいでしょうか」という内容です。
例えば一緒に働くチームメンバーに、言いにくいこと、厳しいことを伝えなければいけない状況になることは、マネージャーやリーダーだったり、メンター、メンティーみたいな関係でも時々ある話ではないかと思います。
人間、できれば誰からも嫌われたくないわけですから、厳しい話はしなくていいのであればしたくないですよね。でも現実的に、人に嫌われることをイヤがって、伝えなければいけない言いにくいことを伝えないことで、問題がだんだん大きくなって、結果どうしようもなくなるみたいなことも散見されるかもしれません。
じゃあ、そういうことを言わなければいけない時に、どうしたらいいのか。どういう注意をしたらいいのかということですが、その場その場のテクニックみたいなことも、確かにあるかもしれません。
しかし、「この人に言われたんだったら、厳しいこともしょうがないよね」と受け止めてもらえるような信頼関係、人間関係を日頃からできるだけ作っておくことが重要ではないかと思います。
例えば、2日間しか一緒に仕事をしていない人に、いきなり厳しいことを言うということはあまりないような気がしますよね。ある程度の期間、同じプロジェクトに携わっていたり、一定の期間、チームのメンバーで一緒に仕事をした時に、何か厳しいことを言わなければならない状態になる。
つまり、ある一定の長さの人間関係があった上でということが、よくあるパターンだとすれば、やはり日日(にちにち)のコミュニケーション、日日の関係性の中で信頼関係を作っておく。まずここに注力しておくことが大事だと思います。
言わなくていいことまで勢いで言ってしまう“事故”の避け方
そして、いろんなやり方があると思いますが、言いにくいことを言う場合というのは、注意的なことだと思いますので、私個人としては虫歯と同じで、放っておいて良くなることは、基本的にないと思うんですね。
ということは、できるだけ気がついた早いタイミングで、的確に伝えてあげることが重要です。ただ言いにくいことですから、伝える前にそのことについてちゃんと考えるべきです。「売り言葉に買い言葉」という言葉もありますけども、思い立ってポーンと厳しいことを言ってしまうと、相手も感情的になるかもしれません。
でも、伝えなければならないことについて、なぜこのタイミングで、こういう状況の時に伝えなければいけないのか。なぜこういう方法で伝えなければいけないのかということを、いろいろ考える中で、伝えなければいけない側の人間もだんだん頭が整理されてくると思います。
その結果、出会い頭にパーンと弾けてしまうような言い合いになったり、言わなくてもいいことまで勢い余って言ってしまうみたいな事故は避けられるかもしれません。
大事なことは2つだと思います。1つは日頃からの信頼関係を作ること。そして、できるだけ早いタイミングで、言わなければいけなくなってしまったことを伝えること。そんなことを留意してみてはいかがでしょうか。今日はこれで終わりにしたいと思います。