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第967回 仕事に効くパワーワード『長所を伸ばせばダメがわかる』(全1記事)

短所の克服は「労多くして功少なし」に陥りがち 結果を出せる人が「長所」に注目している理由

日本最大のビジネススクール「グロービス経営大学院」が、ビジネスパーソンに向けて、予測不能な時代に活躍するチャンスを掴むヒントを配信するVoicyチャンネル「ちょっと差がつくビジネスサプリ」。本記事では、ビジネスパーソンとして成長するために「短所の克服」よりも注目すべき点について語られました。 ■音声コンテンツはこちら

ミスター・ラグビー、平尾誠二氏の言葉から学ぶこと

中村直太氏:今回の言葉は「長所を伸ばせばダメがわかる」です。みなさんはこの言葉、どのように受け取られたでしょうか。「ミスター・ラグビー」の愛称で、選手としても指導者としても、日本ラグビー界に大きな実績を残した平尾誠二さん。私はラグビーには明るくないのですが、友人から勧められて平尾誠二さんの本を読んでみました。

1冊の本を通じて私が感じ取った平尾さんは、実践の中で学び取った原理を自分の頭で徹底的に考え抜いて、人を惹きつける研ぎ澄まされた言葉でそれを表現できる方だということです。気がついたら手元にたくさんメモが残っていました。今回の言葉もその中の1つで、このような文脈の中で語られた言葉です。

「人間は上を目指す習性があるから、長所を伸ばしていけばダメなところが自分でわかる。ほかもがんばろうと思ったら、結果的に全体が良くなる」。私なりの解釈ですが、大前提として平尾さんは「人間は上を目指す習性がある」と、人間に備わっている向上心を信じるところから始まっています。

その向上心に任せて、まずは自分が得意なこと、好きなことに励み、とにかく長所を伸ばしていく。長所を伸ばしていく中で、相対する課題の難易度も高まっていくでしょう。より高いレベルで長所を発揮していくにあたり、短所が足かせになっていることに気づく。ダメなところが自分でわかる。

もっと長所を発揮したいというモチベーションを土台に「ほかもがんばろう」と、短所の克服と主体的に向き合うことになる。その主体性が短所を克服する力となり、もっと長所を発揮したいという目的感の中で、結果的に全体が良くなっていく。これは平尾さんが選手・指導者としての実践の中で学び考え抜いた原理の1つなのではないかと想像しながら読みました。

短所の克服は「労多くして功少なし」に陥りがち

ここでのポイントは長所を伸ばしていくこと、そして「もっと長所を発揮していきたい」というモチベーションがスタートになっていることだと、私は思いました。

仮に「短所を克服しなければ」がスタートになった場合、長所を伸ばすことには意識が向かず、ただただ苦手意識の強い短所の克服に力を注ぐことになります。もともと苦手なことなので、その克服は非効率にならざるを得ません。

そしておそらくその過程はおもしろくないので、モチベーション低下の観点からもさらに非効率に向かっていきます。さらにはただ短所を克服したところで、そこから何かが生まれるわけではありません。結果として短所克服の営みは「労多くして功少なし」に陥りがちなのではないかと思います。

ピーター・ドラッカーは強み・弱みの扱いについて、こんなコメントを残しています。「人が何かを成し遂げるのは、強みによってのみである。弱みはいくら強化しても平凡になることさえ疑わしい。強みに集中し、卓越した結果を上げよ」。

今、大きな流れとして「強み」に着目するマネジメントが唱えられているのは、個々人の卓越した成果でビジネスの突破口を生み出そうとする1つの現れなのかもしれません。

また強みの発揮を推す一方で、ドラッカーは「成功するには多くの領域において並みでなければならない」とも言います。つまり、たとえ長所が大事と言えども、致命的な短所は足かせになるということでしょう。

ドラッカーの考えに照らしてみると、長所を伸ばしながらダメに気づいていくことの重要性がより一層際立って見えます。もっと長所を発揮したいというモチベーションをスタートに、そのために克服すべき短所にも前向きに光を当てて、主体的に改善していく。そうありたいなと私も思います。

自分の長所を把握するための3つの視点

ちなみに、診断ツールを使わない簡易な方法として、自分の長所・強みを把握するための3つの視点を紹介して終わりたいと思います。

1つ目は「得意である」という視点です。得意かどうかを判断する観点としては、例えば「同年代と比べてうまくこなせる」こと、「比較的苦労なく上達していく」こと、そして「いつでもうまくできる」こと。そんなことが得意だと言えるのではないでしょうか。

2つ目は「情熱が向く」という視点です。情熱が向いている活動は続けやすく、上達もしやすいものです。情熱が向いているかどうかの判断は、その活動をやっている時に心がワクワクすること、あるいは長時間取り組んでいても疲れないこと、成果が見えなくてもやりたくなることなどが挙げられます。

最後は「他者から評価されるか」という視点です。自分の長所は意外と自分ではわからないものです。ですので「〇〇さんってこういうの得意だよね」って言われたこととか、不意に感謝の言葉をもらえたことなどが、自分では気づいていない長所に気づくためのヒントになります。

以上、「得意である」「情熱が向く」「他者から評価される」の3つの視点で長所を把握し、その長所を伸ばし挑戦していく過程でダメなところに気づいていく。もっと長所を発揮したいというモチベーションで、そのダメなところが足かせにならないように克服することで、結果的に全体が良くなっていく。平尾さんの言葉から、長所を軸にした1つの成長モデルを教えていただいたように思います。

まとめます。あらためて、今日の言葉は「長所を伸ばせばダメがわかる」でした。「人間は上を目指す習性があるから、長所を伸ばしていけばダメなところが自分でわかる。ほかもがんばろうと思ったら、結果的に全体が良くなる」というミスター・ラグビーの言葉から、長所を軸にした1つの成長モデルを教えていただきました。

こんなことも考えられるかもしれません。より高いレベルの挑戦を想像した際に、力になる長所と、克服したいダメなところは、それぞれどのような点でしょうか。ピンとくることがあれば、ぜひ考えてみてください。今回も最後まで聞いていただき、ありがとうございました。

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