Wordではなく、パワポで資料を作る理由

豊間根青地氏(以下、豊間根):というところで、Wordの設計書ができたわけですね。いよいよ、それを伝わりやすくするためのポイント。今日のメインを話すのが、あと35分しかなくてあれなんですけど(笑)。「型に流し込む」と「構造を図解にする」、そして「デザインする」というところでお話をしていきます。

最初にお話しするのは「型に流し込む」。これはある意味、スライド資料を作る時のお作法みたいな話です。「お作法を守ることによってわかりやすくなりますよ」というお話をしていきます。

さっきも再三言いましたが、パワポ資料、スライド資料にする意味は「ひと目で伝わる」を作りたいからです。今、スライドに2つの情報を出しています。

左側は桃太郎パワポの一部を文章にしたもの、右側はそれをスライドにしたものです。

みなさん、左側の文章を目を細めて見ていただくと、固まりに見えるんですよね。なんとなく黒~い固まりに見える感覚がわかると思います。

文章で書くことのデメリットは、こういうふうに「どういう内容があるのか」「どういう構造が書かれているのか」を読み手が文の意味を解釈して、頭の中で再構成しないとわからないわけです。だから「見る」「解釈する」「理解する」という3ステップが必要になります。

一方で、スライドは見た瞬間に「ああ、なんか3つあって、そこをぐるぐる回すみたいな話なんだな」ということがわかるわけです。これができるのがパワポ資料の利点です。

逆に言うと、これが作れないんだったらパワポにしなくていいです。パワポにする意味ないです。ずっと文章をだらーっと書いているだけみたいなスライドは、どうしてもそれを作ったほうがいい場合もあるんですけど、あんまり意味がないので。だったらWordのほうがいい可能性が高いです。

官僚が作るような情報満載の資料はプレゼンには使えない

我々は「正確に」「ひと目で伝わる」を両立するプレゼン資料を常に目指すことを推奨しています。ビジネスの場においては、正確に伝わることも重要なわけですね。

例えばここに出しているのは、経産省が作ったDX関連の資料の抜粋ですけども、官僚の方が作るパワポってこんな感じでどんどんどんどん文字が増えて、要素が増えて、結局何が言いたいかがわからなくなりがちです。

別にこれが駄目というわけじゃなくて、官僚の人が作る資料って、どういう立場の人がどういうシーンで見ても誤解が生まれないように、注釈や細かい情報を載せる必要があるので、これはこれで1つの正解ではあるんです。

けど、少なくともこれをプレゼン資料として使われたら、数百人を前にするセミナーでこの資料が出てきたら、「え、どこの話をしているの?」と言われて、わけがわからないですよね。

というふうに、情報、文字を増やせば、誤解が生まれないというのは簡単に作れます。なんですけど、それをぱっと見てわかる、ひと目でわかる状態にするのが難しいわけです。だからこんな感じで、文字ばっかになってわからなくなるわけですね。

一方で、じゃあ「ひと目で伝わる」を作りたいといったら、これだけも実は簡単で、要は文字を減らせばいいわけです。

最初に出していた、受講後の姿はこんな感じを目指しますよというスライドって3行しか書いていなくて、イラストがぽちっとあって、見た瞬間に内容がわかりますよね。「あ、今日はこういう状態を目指すんだ」ということがぱっと見てわかる。

なんですけど、みなさんがビジネスシーンにおいてこういう資料を作るシーンはあまりないです。なぜなら正確に伝わらないから。もしくは伝えられる情報が少なすぎるからですね。「ひと目でわかる」だけを作るのは簡単なんですけど、正確に伝わらないわけです。

「正確性」と「ひと目でわかる」を両立する資料を作るコツ

以上のように、「正確に伝わる」だけも簡単だし、「ひと目で伝わる」だけも簡単なんだけど、価値が高いのは「正確にひと目で伝わる」資料です。それをするためには、今からお話しするようないくつかのお作法を守ることが必要です。

1個目の概念が、「2階建ての説明」です。これもプレゼン資料に限った話ではないんですけど、要するに大枠をまず話しましょうと。抽象的な概要、大枠、全体像をまず話してから、そこにくっつけるかたちで具体的な詳細、細かい話をしていきます。

これを我々は「2階建ての説明」と呼んでいます。プレゼンやパワポ資料に限らず、全体像を見せてから、具体、ちっちゃな話をくっつけるという説明の仕方は、説明をわかりやすくする上で非常に重要です。

これは難しい話ではなく、たぶんみなさんもふだんから自然とやっているはずです。例えばこれはメールのイメージですが、「プロジェクトは順調に計画どおり進んでいますか?」というメールをしたら、こういう返信が返ってきたら、すごくうんざりしますよね。

「例のプロジェクトなんですが、リーダーの田中さんが体調不良で3週間くらい休んでおりまして、加えて新人の鈴木君がサンプル品の発注でミスをしてしまい納品が遅れてしまったこと、代理店の担当者さんが人事異動で変更になってしまったことで引き継ぎに時間を要したことなどもあって……」と、ひと固まりの文章でポエムみたいのを書かれると、めちゃくちゃ読みづらいわけです。

みなさんがもしビジネスメールでこの返答を書くんだったら、たぶんこんな感じにすると思うんですね。「約2週間ほど遅れちゃっています」と。「原因と対策に分けて話します。原因は3つあります。対策は2つあって、こういった策を取ってリカバリーをしていきます」。

さっきみたいに文章をぐちゃーって書かれるのと違って、まず2週間遅れていると。で、原因と対策という2つに分けて話をしてくれて、それぞれ3つと2つの要素があるんだなという全体像が見えると、すごくわかりやすいわけです。

これもある意味、2階建ての説明です。全体像を先に見せてあげた上で、細かい情報を読んでもらうことができているから、このメールは見やすいわけですね。それを資料でもやりましょうという話です。

資料での「目次」と「扉」の重要性

例えば今日、最初に目次を出したんですが、目次も一種の2階の情報です。今日はざっくり自己紹介と、謎の資料のプレゼンをし、問いの重要性を説明した上で、6つのステップをお話しして、最後に質疑応答で終えますという全体像を聞くことによって、聴き手が安心するわけです。

これがないまま、突然桃太郎パワポの話が始まると、「これはいったい何のセミナーなのか」と、わけがわからなくなっちゃうわけですね。だから全体像を見せるのは常に重要です。

それを資料で行う際は、「目次」と「扉」が非常に重要になります。

表紙と目次と扉というスライドが桃太郎パワポに入っていましたね。表紙を作らない方はあんまりいないと思います。「プレゼン資料ってなんか表紙が必要だ」という認識は、たぶんみなさんされていると思うんですね。いきなり始まる方はあんまりいないです。

問題は目次と扉です。目次と扉を作らない方がけっこう多いです。作ってください。目次と扉の役目は、全体像と話の切れ目を示すことです。

目次は、まさに2階の情報なわけです。要するに「今日、桃太郎パワポは社会背景に関して話して、具体的にどんなサービスかを話して、最後に登録の流れに関して話しますよ」という全体像を見せてあげる。

その上で扉。要はセクション、章の切り替わりを示すスライドですけど、それを入れてあげることで、さっき示した全体像のうちの「今からこの部分を話しますよ」を伝えて、最初に話す全体像と今の話をリンクさせるわけですね。

これをしてあげると、頭の中が整理されてすごくわかりやすくなります。なので、目次と扉を入れるようにしてください。だいたい20ページを超える資料だと、入れたほうがいいです。

プレゼン時間の短縮にもつながる「サマリー」

あと、サマリーも大事です。サマリーはまさに2階建ての情報なわけです。みなさんも社内の会議で、30枚をずらーっと30分くらい説明されて、「はい、以上です」となって、「結局何だっけ?」となったことはたぶんあると思うんです。1枚で結論まで把握できるサマリーを1枚差し込んであげると、情報はすごく伝わりやすくなります。

桃太郎パワポはサマリーがなかったんですが、「今日はDombraCoというサービスに入ってほしいということを話しにきました」という結論を先に言っていましたよね。あんな感じで、「今からする話って要するにこれです」というサマリーを入れてあげると、聴く側はすごく聞きやすくなります。

例えば「現状」「改善ポイント」「提案の内容」「進め方」という4つの章で話していく資料だったら、「今から4つに分けて話すんですけど、それぞれ要するにこういうことです」と。こういうのをエグゼクティブサマリーと言ったりします。

「現状はこうだから、改善ポイントはこのへんで、こういう提案をしたくて、こういうふうに進めたいという話を今からします」というのを1枚で最初に示すと、これで話が終わったりします。30分の会議のうち20分プレゼンで、10分しか議論できなかったものが、サマリーを入れると5分で終わったりします。

なので、必ず最初にペライチで全体像を見せるものを差し込むことをおすすめします。細かいことを言うと、結論から言われることを好まない聴き手も世の中にはいたりする。

例えば、すごく保守的な人に対して今までにないような話をする時は、「あえてボトムアップで積み上げ、積み上げで、最後に結論」としたほうが納得してくれやすい場合もある。なので、ケースバイケースですけど、基本的には最初に結論を言ったほうがいいという認識を持つのがおすすめです。

やや話が行ったり来たりしますが、全体像を見せた後に順番に1個ずつ回収していく。わかりやすいスライドは、「全体像を見せる」「順番に拾っていく」を、いろんなレベルで繰り返しています。

例えば桃太郎パワポって、「3つ特徴がありますよ」という話をしましたよね。「世の中の他の鬼退治アプリって何だよ」というツッコミどころもありながら話をしたんですけども、これもまさに全体を見せて1個ずつ回収するという、2階と1階だったわけです。

「3つあります」と1枚で見せた上で、「1個目はこれです。2個目はこれです。3個目はこれです」というふうに、2階を見せてあげてから1階で拾っていくようにすると、話がわかりやすくなります。

細かいテクニックとしては、スライドの右上で「3つ見せたうちの今は3分の1だよ、3分の2だよ、3分の3だよ」というのがわかると、よりわかりやすくなったりもする。

こういうふうに「全体を見せる」「1個ずつくっつける」という2階と1階の考え方は、本当にいろんなところで使えますというのが資料全体のお話でした。

ビジネス資料を構成する3つの要素

次に話すのが、スライド1枚の話です。スライド1枚にもお作法があります。前提として、我々がビジネスシーンで使う資料は、基本的に3つの要素で構成されます。「タイトル」と「キーメッセージ」と「コンテンツ」ですね。基本的にこの3つがあるんだなという認識を持っていただくのが、1個のお作法ですね。

パワポ資料の最高峰である戦略コンサルの人が作る資料も、基本的にはタイトル、キーメッセージ、コンテンツが差し込まれています。

コンテンツを書かない人はいないと思うんですね。ここで言うコンテンツは、図表です。グラフや写真、図解とかですよね。タイトルもみなさん書くんですよ。「スライドの左上にそのスライドのタイトルを書かなきゃいけない」という認識は、なんかみなさん持たれているわけですね。

ただ、重要なのはキーメッセージです。かつ、タイトルとキーメッセージの意味合いとしての関係性が重要です。タイトル、キーメッセージ、コンテンツの関係性は「QAR」にしてください。これは我々の造語なんですが、「Question」「Answer」「Reason」の略です。

タイトルは、「今からこういう話をします」。言い換えると、「今から何の問いに答えるのか」を示すのがタイトルです。キーメッセージは「このスライドで言いたいのはこれです」という、タイトルで前振りした問いに答えること。それがキーメッセージです。

じゃあコンテンツは何か。キーメッセージで言った答えに説得力を持たせる根拠・理由がコンテンツなんですね。

みなさんはけっこう、とりあえず何か貼る。「このグラフをとりあえず貼ろう。この表をとりあえず貼ろう。何かタイトルをつけよう。できた」と、コンテンツから作られているものがけっこう多いんですけど、そうじゃないです。

上から作ってください。問いを立てて、答えて、理由をつける。答えを明確にして、問いをつけるというパターンもあるんですが、とにかく必ずQARの関係性にしてください。

キーメッセージは「主張を」「具体的に書く」

最初に「スライド作りはQ&Aを作ることだ」と言ったんですが、要するに「QとAをちゃんと全部のスライドに書きましょう」ということですね。すべてのスライドはQ&Aを持っています。

例えば桃太郎パワポであれば、「アプリで完結」というタイトルだったんですが、これはどういう意味かと言うと、要するに「『アプリで完結』とはどういうことか?」という問いに答えたスライドなわけです。どういうことかというと、「鬼退治までのフローが全部アプリ内で完結するんですよ」ということが言いたかったわけです。

ポイントはQ&A。タイトルとキーメッセージで1回話が終わるんですね。キーメッセージで、文字情報として言いたいことはもう言えています。キーメッセージまでの上のほっそい部分だけを見てもらえれば、一応話は終わる。

だけど、それだけだとさすがに「具体的にどういうこと?」というのがわからないから、わざわざ5個のフローを書いて、「こういう5個の流れだよ。アプリのこういう画面を押すんだよ」ということを説明しているわけですね。ただ、本質は常にタイトルとキーメッセージのQ&Aになります。Q&Aを作って具体的に話をするという関係性を必ず守ってください。

キーメッセージは、「主張を」「具体的に書く」のが1個ポイントです。キーメッセージを書くことは知っていたとしても、書き方があんまり良くない方はけっこう多いです。

例えば、「以下の通り、社内アンケートを行った」とか、「会議の棚卸→残業時間の削減→付加価値向上」と矢印や記号で略しちゃうとか。あと「売上高:980億円 営業利益:36億円」という感じで、ただ数字を書くだけみたいなキーメッセージはよくあります。これって答えていないんですよね。主張になっていないんです。

「社内アンケートの結果、資料作成が業務時間の8割以上を占めていて多すぎることがわかった」だったり、「棚卸によって無駄な会議をなくして、残業時間を減らすことで業務の付加価値を高める」と、ちゃんと文章で省略せずに書く。

あるいは、売上高や営業利益の数字がそうだったということがどういう意味合いを持つのかを書くのがキーメッセージです。それに対して、それを具体的に示す内容をコンテンツに書いてください。

何が言いたいかを明確にするための階層構造

ということでまとめると、各スライドの3つの要素は「QAR」。問いを示して、それに答えて、根拠をつけることを必ず繰り返してください。さらにスライドも、2階の情報と1階の情報になっています。

タイトルとキーメッセージさえ読めば、そのスライドの大枠・結論がまずわかって、「具体的にどういうこと?」がコンテンツに書いてある状態を作ると、情報量が多くてもわかりやすいスライドが作れるわけです。

さらに言うと、コンテンツにもQARをつけてほしいんですね。今ここに出しているのは、桃太郎パワポの一部を題材にしたよくわからないスライドの例でして。私はよくわからないスライドも作れるんですけども、こういうグラフがあると。

右側に、強奪被害を放置して村人の不満が爆発して、ワーキング・グループを作ったらしいと。鬼強奪の対策のポイントがいろいろあるらしいということが書いてあるわけなんですが、これ、右側の図表が突然始まっているんですね。説明なく、突然謎の情報が載っかっているんです。

その感覚を持っていただきたいんですが、シリョサク的な正解は、例えばこうなんですね。これは、上からQARを作りました。タイトルとキーメッセージがQとAになっているんですけど、さらにコンテンツ(Reason)を2つに分けて、上からQ、A、Rにしています。

要はこういうことですね。スライド全体が上からQ、A、Rだったんですけど、Rの中にも「そのコンテンツって何の話をするの?」「何が言いたいの?」「なぜそう言えるの?」を書く。QARの階層構造を作ると、各コンテンツも何が言いたいのかが明確になってわかりやすくなります。

コンテンツは、場合によってはAを省略したり、Qを省略してもいいんですが、常に「今から何の話をするのか」「何が言いたいのか」「なぜそう言えるのか」という3点セットを作るとわかりやすくなるということを意識いただくと良いですという話です。

口頭説明でもそうです。「何の話をしているの?」「何が言いたいの?」「なぜそう言えるの?」のどれかが抜けると、あらゆる説明はわかりづらくなるので、そこは必ず3点セットを作ることを意識すると、説明がわかりやすくなるはずです。

ということで、「抽象的な全体像=2階の情報」と「具体的な詳細=1階の情報」とに分けて説明をしてください。そのために、おおよそ20ページを超えるような資料は、表紙・目次・扉を作り、スライドはQARで組み立てて、コンテンツもQARで考えるとスライドはわかりやすくなります。