資料をわかりやすくする上で重要なテクニック

豊間根青地氏(以下、豊間根):非常にシュールな時間が流れたんですけども、お金をもらってやる研修で、最初に真顔でこの「桃太郎パワポ」について話すというのがシリョサクの研修です(笑)。

みなさんにちょっとご質問したいんですが、どうですか。DombraCoに登録したくなったでしょうか? 「A なった」「B ならなかった」「C もう少し考えたい」で、リアル参加の方だけ挙手で簡単にアンケートをしたいと思うんですけども。

じゃあ、「A なった」方。ありがとうございます。「B ならなかった」方。「C もう少し考えたい」方。ありがとうございます。概要の部分が多いので、もうちょっと具体的な内容が聞きたいという方もけっこういらっしゃるんじゃないかなと思います。「A なった」という方、ありがとうございます。

とはいえ、毎回プレゼンがおもしろかったら「なった」と言っていただいた後に、プラン表の左下とかを見ると「別途きびだんご税がかかります」とか「基本だんごの数は予告なく変更される場合があります」みたいな、しれっとやばいことが書いてあるので。

「もしかしたら1回踏みとどまったほうがよかったかもしれないですね」という話をして毎回非常に心苦しい気持ちになるんですが、すごくわかりやすいプレゼンだったんじゃないかなと思います。

ただ、この左下の注釈って一種のボケなわけです。1つ、けっこう重要なポイントがありまして、注釈という情報は全員が全員、絶対見なきゃいけない情報ではないわけです。

注意書きとして、スライドの上に情報として載っている必要はあるけども、このスライドで一番言いたいのは、要するに2つのプランがありますよ、と。それぞれこういう動物におすすめで、このくらい基本でもらえて、このくらいプラスでもらえて、最終的にこのくらいもらえますよ、ということが言いたい。

きびだんご税の話や基本だんごの変更の話は、あくまでサブの位置づけなわけですね。だから、左下に小さな文字で書いています。

このように、そのスライドで一番言いたいことが何なのかを明確にして、大きさとか、太さとか、位置関係によって、情報に優先順位をつけるというのは、プレゼン資料をわかりやすくする上では非常に重要なテクニックです。

「良い資料」の定義

ちょっと前置きが長くなりましたが、内容は少々ふざけてはいますが、非常にシンプルで、メッセージがわかりやすいと思います。こんな感じの資料が作れたらいいですよね。

今日の90分だけでこれが作れるようになるわけではないんですが、桃太郎パワポのようなシンプルで内容がわかりやすいスライドを作るための手順を追っていく時間だと思っていただければと思います。

では、みなさんの気持ちがそろったところで、今日のお話の最も柱の部分である「問い」の話をしたいと思います。まず最初にみなさんに考えていただきたいんですが、良いプレゼン資料ってどんな資料だと定義されますか? 答えは1個ではなく、人やTPOによっていろんな答えがあるんですが、じゃあお聞きしてもよろしいですか?

回答者1:提案資料だったら、提案する人にどうしてほしいかが書いてある資料。

豊間根:なるほど、めっちゃいいですね。提案資料だったら、提案する相手にどうしてほしいのかがちゃんと書いてある資料ってことですね。めちゃくちゃいいですね。ありがとうございます。

じゃあ、どんな資料だと思われますか?

回答者2:次にどんな話をするのか、だんだんワクワクする。

豊間根:なるほど、次にどんな話が出てくるのか、だんだんワクワクしてくるような資料。聴き手がワクワクしてくる、興味を持ってくれる資料ってことですね。それもめちゃくちゃいいですね。ありがとうございます。

お二人ともすごく鋭いですね(笑)。今、お二人ともかなり抽象的なことをおっしゃったんですよね。よく出てくるのは、文字が少ないほうがいいよとか、図が多いほうがいいよとか、写真がいっぱいあったほうがパッと見てわかるよねとか、おしゃれなほうが、魅力的なほうがいいよねという話が多いです。

今おっしゃっていただいたのって、提案した相手がどうしてほしいのかであったり、聴き手がワクワクするみたいな、聴き手目線ですよね。自分が何を載せるかという目線ではなく、相手がどう捉えるかを軸にコメントされているのは、めちゃくちゃいいですね。唯一解があるわけじゃないんですが、我々シリョサクは良い資料をこう定義しています。

「問題解決ができる資料」です。まさに、提案した相手がどうしてほしいのかが書いてある資料というのは、それにかなり近いですね。誰がどうなるのが目的なんだっけというのが明確で、その状態にちゃんと持っていける資料ということですね。それを我々は良い資料だと定義しています。

資料は「理想」にたどり着くための道具

これ、めちゃくちゃ抽象的なんですね。これをするために、文字を少なくしたり、聴き手をワクワクさせるような演出をすることが必要になってくるわけですが、常に最終的なゴールは、何らかの問題解決に落ちてきます。

問題解決ってどういうことかと言うと、めっちゃシンプルです。もう手垢のついた話ですが、現状に対して理想を定義して、その間のギャップを明らかにして、それを埋めることですね。当たり前ですけど、これが問題解決です。

何か困っている状態、ないしはこうありたい姿を設定して、その間をどうやったら埋められるか。それを埋めることが問題解決なわけです。我々がプレゼン資料を作るのも、常に問題解決の手段であるべきなんですね。

例えば、とあるプロジェクトを社内で提案して決裁を取るためのプレゼン資料であれば、決裁者が企画の意義を理解して、「なるほど。確かにそれやったほうがいいね。はい、予算承認。はんこポンッ」という状態に持っていく。そのために、今はまだ企画の内容の特徴もあまりわかっていないから、その手段としてプレゼン資料を作るわけです。

1個注意したいのは、資料というのは常に「手段」なわけですね。今日の90分の講演も、僕のべしゃりだけでみなさんに全部ご理解いただけるんだったら、わざわざこんな百何十ページもスライドを作ってくる必要はないわけです。

しゃべるだけでみなさんに「なるほど。そうしたらいいんだ。次回からそうしよう」と思っていただけるんだったら、別にいらないわけです。なんですけど、さすがにみなさん、僕の1人漫談の90分では飽きてしまうのと、内容がいまいち理解していただけないので、スライドを作っているわけです。

資料は目に見えるので、みなさんもついついこれが目的化しがちですけど、あくまでも理想にたどり着くために、道具として資料を使っているということを必ず忘れないでいただきたいというのが、最初にお伝えしたかったことです。

相手の問題解決ができる資料を作るポイント

プレゼン資料が問題解決の手段であるということは、言い換えると「聴き手の問いに答える」道具であると言うこともできます。これ、プレゼン資料に限らないんですけども。

例えば、先ほどのプロジェクトの社内提案資料であれば、聴き手は「あなたはこの予算を承認してほしいんですよね。なんで承認するべきなんですか?」という問いを持っているわけです。それに対して「それは、うちの課題を解決してくれるめっちゃ良いプロジェクトだからです。だからはんこを押してくれ」と、プレゼン資料を使って答えるわけですね。

聴き手の問いと、それに対する答えという関係性が非常に重要です。これを明確にすると、何を伝えなければいけないのか、どのゴールに向かうべきなのかが非常にクリアになります。これが問いの力ですね。

ただ、この問いにそのまま答えようとすると、うまく答えられないんですね。「どうしてこの予算を承認するべきなんですか?」という問いに対して、「いやいや、良いプロジェクトだからです」と言うのは、答えになっていないわけです。どう良いんですか、なぜ良いんですかということを説明する必要があります。

それを分解して考えると、資料は非常にロジカルになります。問題解決ができる資料を作るためには、まずは「聴き手」と「大きな問い」を明確にします。

大きな問いを明確にするのも、けっこう大事です。大きな問いというのは、要するにプロジェクトの提案であれば、「なんでこの予算を承認するべきなんですか?」という問いに答えたい。ドンズバで答えたい一番大きな問いを明確にすることが、まず大事です。なんですが、先ほども言ったとおり、このままでは抽象的すぎてプレゼンが空中戦になるわけです。じゃあどうするかというと、問いを分解します。

(スライドの)左下からいくと、「今、我が社はどんな状況にあるんですか?」「それをあなたはどう捉えているんですか?」「なんでこのプロジェクトが必要なんですか?」「具体的にどんなことをするんですか?」「いつ、どんな方法で評価するんですか?」「達成できるとどんなメリットがあるんですか?」「まずは誰が何をするべきですか?」という問いに全部ちゃんと答えれば、理想状態に到達できる。

一連の問いを設計する、つなげるということですね。ここが次のステップです。この後も話しますが、資料作りにおいて一番大事なのはここです。誰が持っているどんな問いに答えるのかが明確になっていないと、色や文字をいくら工夫しても、なんの意味もないです。この問いの設定が一番肝です。

資料作成は「Q&A」

次にするのは、それにちゃんと明確に答えられる情報を集めて整理することです。

右下にWordのアイコンを書いていますが、ここは文字でやってください。私は「いきなりパワポを開くな」といつも言っているんですが、いくらパワポをいじくり回しても、答えは出てこないんですね。

答えは常に情報であり、文字です。問いの設定と答えの整理は情報が大事なので、文字でやってください。ただ、文字がズラーッだと読み取るのが大変だから、場合によってはパワポにするわけですね。

問いを立てて、その問いに答える答えを整理して、1個1個対応してぶつけて、それを最後に伝わりやすくする。これを確実に行うと、問題解決ができる良い資料が作れます。

ちなみに、これはプレゼンに限らず、なんでもそうです。口頭の説明でも、誰がどんな問いを持っていて、それにどう答えるのかを明確にして、なるべく伝わりやすいようにハキハキと話すとかですね。

ビジネスメールも、答えなきゃいけない問いがあって、それにどう答えるのかをシンプルに整理して話す。どんな説明においても常にそうです。どんな問題解決も、常に問いを立てて、答えを整理して伝わりやすくするというステップを踏んでいます。

問いの設定から資料作成を始めるという概念、みなさんはふだんお持ちでしょうか? 「A そうしている」「B どちらとも言えない」「C そうしていない」。

じゃあ、ちょっと答えていただきたい。「A そうしている」方。「B どちらとも言えない」方。「C そうしていない」方。ありがとうございます。「A」の方も「B」の方もいらっしゃいましたね。でも「C」の方、ぜひ今日から、問いの設定から始めてみてください。

要は、Q&Aです。資料作成はQ&Aだと思ってください。Q&Aをまず作ることから始めると考えると、論点が明確で、伝えたいことがクリアになる資料が作れます。

問いの設定が一番大事なワケ

世の中に一番多いのは、問いの設定を間違えている資料です。問いの設定を間違えているのに、色に悩んだり、イラストに悩んだりするんですね。これ、まったく意味がないです。

こういう人は結局、何が言いたいのか自分でもわかっていないです。「このスライド、何が言いたいの?」「このプレゼンで何が言いたいの?」と言われると、答えに詰まる。それは問いの設定をミスっているからです。

一方で、答えの整理がうまくできていない。つまり、言いたいことは明確なんだけど、適切な答えを用意できていない。説得力のある情報を集められていないというパターンも、まあなくはないです。ただ、そんなに多くない。

いわゆる代理店さんみたいな、メッセージをポンポンポンと書いて、すごくそれっぽいことを言っているけど、「それ、本当にそうなの?」と突っ込みどころがある資料はけっこうこうなりやすいですが、そんなに多くないです。

一方で、伝え方が悪いのもあります。問いは合っている。答えもちゃんとひもづいている。だけど、伝え方が悪い。文字が多すぎるとか、色が多すぎるとかで、わかりにくいってパターンもあります。

みなさん、プレゼン資料を良くしたいと考える時、この3番目に気持ちが取られがちです。ここも重要なんですが、本質は1と2です。

1個大事な左側(問いを立てる)でミスると、後から挽回はできません。先ほども言いましたが、問いがミスっていると、答えも絶対ミスります。伝わりやすくても、絶対ミスります。問いの設定が一番大事です。

誰のどんな問いに答えるのかという設定に時間をかけてください。要は抽象的な話からだんだん具体的な話に降りていくわけですね。抽象でミスると、具体で挽回はできません。

ちょっとまとめます。

良い資料とは、問題解決ができる資料のことです。問題解決とは、理想と現実のギャップを埋めること。資料による問題解決とは、聴き手の問いに答えることと言い換えることができます。

「理想にたどり着ける一連の問い」の設定が資料作りの本質であり、資料作りは、問いを立て、答えを整理し、伝わりやすくするという3つのカテゴリーに分解できます。

伝わりやすくすることに気を取られがちですが、問いの設定と答えの整理が実は本質であるというお話をまずさせていただきました。