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リスキリングは本当に仕事に生かせるのか? VUCA時代、可能性を広げるためのキャリアの育て方(全4記事)

秀でたスキルがなくても採用される人の、付加価値の作り方 “仕事に直結しない学び”がもたらすキャリアの可能性

JAC Digital主催のイベント「リスキリングは本当に仕事に生かせるのか? VUCA時代、可能性を広げるためのキャリアの育て方」の模様をお届けします。元・日本マイクロソフト業務執行役員でJAC Digitalアドバイザーの澤円氏が登壇し、これからの時代のキャリアについて深掘りしました。本記事では、自称ポンコツエンジニアだった澤氏がマイクロソフトに入社できた理由や、学び続けるモチベーションについて語りました。

前回の記事はこちら

デザインを学ぶと、人を動かす思考が身につく

澤円氏:次は、ちょっと変化球なんですけど「デザイン」。これはけっこういいですよ。めちゃくちゃ本格的にやる必要はないんですけど、まず「人を動かす」思考が身につくんですよ。デザインは、何らかの意図を持って人を行動に導く効果があるんですよね。なので、人を動かす思考を身につけるためには、デザインもすごく大事なんじゃないかなと思います。

「(デザインが)何のことだかさっぱりわからん」と思った人は、まずは、基礎はこれでいけます。『デザインの教科書』というけっこう古い本なんですけど、今のWebデザインよりも、ちょっと前の話です。

「デザイン」という言葉そのものの意図みたいなものが書いてある本ですので、デザインの基礎を学ぶのであれば、この本が超おすすめです。じゃあ次に行きますよ。「Adobe Creative Cloud」。これは高いのでさすがに覚悟がいりますが、やはり「Adobe Creative Cloud」を契約するって、すごく価値があるんですよ。

「Illustrator」から「Photoshop」から「Premiere Pro」から全部使えるので、課金し始めると「何か使わないともったいない」と思い始めて、なんとなく使い始めるんですね。僕は「Photoshop」を最近使っているんですけど、スライドの背景の写真をいじるのに、「Photoshop」なしではもうやっていけない体になりましたからね。

学びはみなさんの未来を創ることになります。そしてもう1歩踏み込んで、学ぶために最もいいアプローチを、ある方の言葉を借りてご紹介したいと思います。「学ぶために最も効果的な方法は人に教えることだ」。これはピーター・ドラッカーさんの言葉です。

ちょっと知ったことを教えることで、自分の学びにつながるんですね。自分の学びが深まるし、教えようと思った時に「あれ、わかんないな」と自分の足りないところを見つけられるんですよ。

お子さんがいる方だったら、お子さんに教えるのも1つのアプローチかもしれないですね。「学ぶために最も効果的な方法は人に教えることだ」というのを念頭において、一緒に未来を創れるといいなと思っております。

リスキリングは、過去のキャリアの延長線でなくてもかまわない

ということで、約束どおり若干早めに終わらせまして、質問の時間をたっぷり取りたいと思います。Q&Aタイムにいたしましょう。「40代ともなると、リスキリングと言っても過去に経験のある業界や、職種にかかわるものでないと効果は低いという見解をよく聞きますが、澤さまはどのようにお考えでしょうか」ということなんですけれども。いや、僕はそうは思わないです。

今日まさに、お話の中にも出てきたんですけれども、もちろん今までの延長線上で考えることも、1つのアプローチではあります。でもそれですべてうまくいくかと言うと、ちょっとそこの関係は薄いんじゃないかなって気がしているんですよね。

何が言いたいかと言うと、今って世の中がすごくアップデートされているのと、過去の話がそのまんま何かにつながるわけじゃないと思っているんですね。以前問題だったことと、今課題であることはすごく差があるので。そう考えるとぜんぜん違うことを、布石として学ぶほうが、結果的には自分のキャリアにすごくプラスになることがあるんじゃないかなと思うんですね。

ちょっと話が横道に逸れるんですけど、僕がマイクロソフトに入社する時に一番注目してもらったポイントで言うと、僕は茶道の師範の資格を持っていて、方円流(ほうえんりゅう)煎茶道という急須を使う流派なんですけど、一応師範なんですよ。

その資格を持っていることがすごく目を引いて、「こいつはITの知識だけじゃなくって、ジャパンを知っている」というタグをつけられるんじゃないかと。

外資系ですから、そうなった時に、「こいつはけっこういい仕事をするんじゃないか」という期待値があったみたいで、「おもしろいから入れようぜ」ということで、エンジニアとしてはスーパーウルトラポンコツだったんですけれども、入れてもらった部分もあります。

なので、ぜんぜん違うものを学んでおいても、これはこれでいいんじゃないかなって気がしますね。それもけっこうレアなものをやっていると、「あんた、おもしろいじゃん」と思われるかもしれないなと思ってます。今ので答えになっていますかね。

異業界への転職で高収入・高ポジションを狙うには

お、ドストレートな質問が来た。「今、転職活動をしています。転職では異業界の転職、かつ高収入・高ポジションを狙っていますが、正直苦戦しています。これを乗り越えるアドバイスがあれば教えてください」もう実にビッグ・クエスチョンですね。

乗り越えるも何もって感じなんですけど、大事なことは高収入・高ポジションを狙うんだったら、当然のことながら、それに見合う何らかを持っていかなきゃいけないですよね。これはもう変わらぬ宿命というか。なので、「何ができるか」ということを証明するのは大事なんですけれども。

今、非常に大事なポイントが「高収入・高ポジションを狙う」。難しい仕事をする時に大事なことは、課題を解決することなんです。要は、お金になる課題を解決する能力があることを証明することです。

ちょっと話が横道にそれるかもしれないんですけど、突然ですが、未だに洗濯板で洗濯をしている人っていますかね。たぶん、いないんじゃないかなと思うんだけど、いる? 洗濯板を使っている人にとって、洗濯機が便利だってことはもう言わずともわかりますよね。洗濯板よりも速くできるし、きれいになることはわかりきっていると。

つまり昭和の頃は、「洗濯機が便利だよね」ということは課題解決と直結してたんですよ。今、10年前の洗濯機と最新の洗濯機で、解決できる課題の差がどれぐらいありますかね。それを自信を持って言える方はどのぐらいいます?

ちょっとした機能差じゃなくて、ものすごく大きく人生を変えますかね。もちろん変えるって答えがあったとしても、ぜんぜんいいんですけど、もし良かったらチャット欄にも書いてください。

今やビジネス課題とは「発明するもの」

何を言っているかと言うと、課題がどんどん細かくなって、そしてパーソナライズされていっているんですよ。今やビジネス課題とは発明するものだと言われているんですね。

つまり、今すでにある課題を解決するのではなく、課題そのものを発明すると言われています。なので、もし「高収入・高ポジションを狙いたい」というのであれば、すごくお金になる課題を開発してそれ(の解決方法)を教えに行く。そういう意図で転職活動するといいんじゃないでしょうか。

異業種、異業界で、まだその人たちが到達していないであろう新しい課題を、「こういう世の中になって、こういうふうに解決していかなきゃいけない。そして私はもうすでにアイデアとして持っている」と。そのプレゼンができると、勝率が上がるんじゃないかなと思います。

じゃあ他はこれに答えておこう。「行間の多い質問で恐縮ですが、1社で勤め上げるのと転職するのとは、どちらがいいですか」。もう一言で言うと(答えは)ありません。

これは「賃貸と持ち家はどっちがいいか」っていうのと同じ問いなんですけど、コンテキストによってめちゃくちゃ変わる問いなので、どっちがいいというのはまったくないです。ただし1社で勤め上げようとした時に、その会社が存続しない可能性が高まってきているのも事実なんですよ。

どんな大きな会社でも、今は潰れたり買収されたり分割されたりが起きないとも限らないわけですよね。なので「自分は1社で勤め上げたいんだ」って思ったとしても、定年になるまでその会社が存続するかどうかはわからないんですよ。

そうなった時に、「会社が精算に入りました」って言われてから慌てて転職活動するのと、いつでもどこにでも行ける状態で、準備しておくのはどっちがいいですかって話なんですよね。

だから今の時点で転職をしようと思っていない人も、転職エージェントとは絶対に縁を持って会話しておいたほうがいいです。なぜかと言うと、転職市場に関する情報を教えてもらえるし、いざっていう時にすぐに行動に移せるからです。

すばらしい言葉があるので1個ご紹介しますね。「健康は金で買える。だけど健康なうちだけ」。健康なうちに健康を買っておかなきゃいけないですよ。健康じゃなくなってから健康を買おうと思うと、すごく苦労するんですね。これで答えになっていますかね。

澤氏の学び続けるモチベーション

次、「仕事やプライベートでも、常に『幸せとは?』を考えています。澤さんの幸せとは何でしょうか。そして生きる源泉、学びの動機はどこから来るのか、ご教示いただけると幸いです」。こんな素敵な質問をいただいちゃって、ありがとうございます。

そういうことを聞かれた時に僕がパッと答えているのは、「最大多数の最大幸福」ということですね。きれいごとに聞こえるかもしれないけど、なるべく多くの人たちがハッピーになるような行動をしているのが僕の幸せなんですよ。

だから、今やっているこのセミナーも、めっちゃハッピーな時間なんですね。みなさんがハッピーになるためのヒントになるかもしれないものを、こうやって一生懸命しゃべっているわけです。これがそのまま僕のハッピーにつながっているんですよ。これが生きる源泉なんですね。

僕はすごく恵まれた人間で、自分がハッピーになる方法がそのまま仕事になっているんですね。僕ってバチ当たるんじゃないかってぐらいラッキーですよね。

そしてさっき言ったように、「人に教えることが最も効果的な学びになる」とピーター・ドラッカーさんもおっしゃっていますよね。こうやって質問を受けて、欠けている部分を自分で理解できるんですよ。結果として学ぶ動機になるんですね。

今日のためにちょっとした調べ物をしたりとか、資料を作ったりしているわけです。それはなぜかと言うと、自分の原動力である「最大多数の最大幸福」に対して、僕は時間を使うぞと思っているから、学ぶことがまったく苦もなくできるわけですね。そういうふうに自分のモットーと紐づけたら、非常に幸せな時間を過ごせるんじゃないかなと思います。

職場の人間関係で仕事が長続きしない人へのアドバイス

次の質問は、「転職を複数回していますが、毎回3年程度で何かしらの人間関係の問題を起こしてしまい、転職せざるを得なくなっています。どの職場でも『能力は高いが協調性に難あり』という評価を受けます。空気を読み切れず同僚を否定する発言をしてしまったり、イラっとした際に攻撃的に接してしまったりすることがあります。その時は、自分では正しいことを言っているつもりです」。

「そうした時にどういうことを学べばいいかなど、アドバイスがあればいただけないでしょうか。アンガーマネジメントを学び、6秒待つということをセミナーで学びましたが、6秒経ったら怒りが増しました」ということなんですけど。

もしご自身でこれが抑えられないと思うんだったら、1人で仕事をすることをおすすめします。どの職場でも問題を起こすんだったら、1人でやればいいんですよ。そしたら嫌でも学ばざるを得ないと思います。ちなみに僕は1人でやっていますからね。1人で仕事はできるけど、お客さんを怒らせたらゼロになりますからね。

もしくは雇ってもらえる間であれば、ずっと転職し続けるのでもいいんじゃないですか。残りの人生、転職せざるを得ない状態になるまでは、ひたすら(会社に)いる。もしそれが嫌だったら1人になる。このどちらかかなと思います。アンガーマネジメントが役に立たなかったと言うなら、申し訳ないけどもう打つ手なしというのが僕の見解です。

6秒待ったら怒りが収まるんじゃなくて、本当は6秒待ってそして怒りをコントロールする「意思」を持つんですよ。これは他責にしているんですね。なので、まずは自分1人で仕事をしてみるのがおすすめです。

そうすると、めちゃくちゃ自分のことをメタ視点で見ることになるので、「こうやったらコントロールできるかも」とか、あるいは没頭してもう怒る暇がなくなる。要するに人間関係で悩んでいる暇がなくなるぐらいに、がんばって仕事をするような環境を整えてあげるといいんじゃないかなと思うんですけれども、どうでしょうか。

はい、次ですね。「デザインについて未経験であるという前提で、ご紹介いただいた本以外で、おすすめされるものはありますか」と。ありますよ。『Joyful 感性を磨く本』というイングリッド・フェテル・リーさんのこの本はすっごく素敵でした。めちゃくちゃハッピーな気持ちになれる本だったので、これはおすすめします。

アンガーマネジメントを身につけるコツ

そうだ。さっきの方にも、ちょっともう1つアドバイスしたいな。今ふと思い出しましたが、アンガーマネジメントの講師になるのはいいですよ。セミナーを受けたとおっしゃいましたけど、アンガーマネジメントのインストラクターになるのはいいと思います。

教える立場になるので、学びの質が上がりますからね。15万円ぐらいかかると思うんですけど、あれはけっこういいトレーニングなんで、セミナーで受け身でやるんじゃなくて、教える立場になるための時間を取る。それこそ、お子さんのiPadを平気で叩き割ったりとかするような、すねに傷を持つ人たちがすごく集まっていたりして、セラピー的なこともできますので。

日本アンガーマネジメント協会のセミナー情報を貼っておきますね。先ほどご質問いただいた方、アンガーマネジメントファシリテーター養成講座というのがありますので、ぜひやってみてください。

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