CLOSE

リスキリングは本当に仕事に生かせるのか? VUCA時代、可能性を広げるためのキャリアの育て方(全4記事)

トラブルや怒りの元になる「誤った解釈」はなぜ生まれる? 澤円氏が説く、正解のない問いに向き合える人の思考法

JAC Digital主催のイベント「リスキリングは本当に仕事に生かせるのか? VUCA時代、可能性を広げるためのキャリアの育て方」の模様をお届けします。元・日本マイクロソフト業務執行役員でJAC Digitalアドバイザーの澤円氏が登壇し、これからの時代のキャリアについて深掘りしました。本記事では、キャリアを考える上でリスキリングが重要となる理由を語りました。

元・日本マイクロソフト業務執行役員の澤円氏が登壇

澤円氏:よろしくお願いします。澤でございます。さっそくセッションに入っていこうと思います。今回は実際のセミナーというか、僕のプレゼンは若干短めにして、Q&Aをたっぷり取りたいなと思います。

今日のセミナーは、興味ある人が多いのではないかなと思うので。僕が話し続けるよりも、疑問や不安をどんどん寄せていただいて、それに僕が答えていくスタイルを取りたいなと思っています。

チャットは、賑やかしでどんどん書いていただいてけっこうです。ただし質問に関しては、Q&Aに書いていただいたほうが、僕は確実に拾いますので、そんな感じでお願いします。

まず自己紹介です。圓窓という会社をやっていて、JAC Digitalのアドバイザーを3年ぐらいやらせてもらっています。もともとマイクロソフトという会社にいて、いろいろな会社の顧問をやったり、アドバイザーをやったりさせてもらっています。あと生成AI活用普及協会の理事もやっておりますし、Voicyのパーソナリティもやっています。

(Voicyでは)「澤円の深夜の福音ラジオ」というタイトルで、日々ビジネスパーソンの役に立つ、ヒントになるようなお話をしますので、よかったらフォローしてみてください。

僕はもともとテクノロジーをやっていて、最初はプログラマーだったんですね。そしてシステムエンジニアとして働いて、ITコンサルをやるなど、ずっとテクノロジー畑で生きています。

その延長線で、サイバーセキュリティ、ビジネスマネジメント、ピープルマネジメントなんかも、本職としてずっとやらせてもらっていました。そしてプレゼンテーションそのものや、セルフブランディング、マルチキャリア、多拠点生活というキーワードでお仕事をすることが多い人間です。

とあるラーメン屋さんを舞台にしたワークショップ

さて、ちょっとしたワークを今からやりますね。ここでぜひチャット欄に入れていただきたいなと思います。(スライドは)ラーメン屋さんの写真ですね。このラーメン屋さんでとあることが起きるわけです。

「モハメドさんはラーメン屋さんで会計をする時になって、財布を忘れたことに気がつきました。日本語が話せないモハメドさんは、後で払いに来ると説明しようとしましたが、ラーメン屋さんの店長は警察に通報します。駆けつけた警察官はモハメドさんを連行します」。

「その様子をスマホで撮っていた隣の客はSNSで動画を拡散し、この動画が原因でモハメドさんは国外退去になりました」。これ、僕がでっち上げただけですけどね。

この文章を20〜30秒ほど、このまま残しておくので読んでみてください。じゃあ次は、ワークに行きますね。

今、4人の登場人物が出ているわけですけれども。この4人(1モハメドさん、2ラーメン屋さんの店主、3警察官、4隣の客)の登場人物を、許せない順番に並べてみてください。

これは僕の著書を読んでくださった方だったら、知っているエピソードだと思います。もうわかっている人がいますね。そうそう。そんな感じでどんどん入れてってください。もう言うまでもなくやり始めている人がいる。すばらしいですね。4が多いですね。(笑)。やはり4に(記号を)思いっきりつけている人がいる。

4・2・3・1やはり多いな。4・3・2・1。4がやはり1番人気だな。これ、いつも必ず4が1位です。2がいた。3もいた。いいんですよ。自分の考えをどんどん書いてください。いい感じでばらけているじゃないですか。

こんなもんですか。見ていきましょうね。4・2・3・1多いな。1・3・4・2もいるじゃないか。「4が絶対悪い」という人がいますね。

不完全な文章を読むと、人は勝手に解釈をし始める

じゃあ、なんでこんなワークをやったのか、話をしていきますね。これ実は、今回のテーマであるリスキリング、学ぶことの根本の部分に関わるお話になります。なんで学ぶんだっけ? という話。

まずこのワークの特徴です。当たり前ですけど、みなさんが読んだ文章って、同じですよね。まったく同じ文章を読んだにもかかわらず、意見がばらけたんです。みなさんには1つの文章しか読んでいただいてないんですよ。だけど違いが生まれました。なぜでしょうか。

これが「解釈」です。みなさんは「解釈」をしたんですよ。どういうことかと言うと、さっき、かなり不完全な文章を、みなさんに読んでもらっています。コンテキストがぜんぜんわからない部分がいっぱいあるわけですね。

例外が1個だけあるんですけど、基本的にここでまったく説明されていないことは、それぞれの登場人物の意図ですね。それについては何も書いていないんですよ。

強いて言えば、「後で払いに来ると説明しようとした」というところには、ちょっとした意図が入っているように読み取れますけれども、ぜんぜん書いていないですね。それをみなさんは解釈したわけです。行間がたくさんあって隙間がたくさんあると、みんなは勝手に解釈を始めるんですね。

事実というものは存在せず、あるのはその人の解釈だけ

例えばさっきの文章をもう1回見せますね。じゃあ4(隣の客)が悪いと思った人。いろんな人に意見を募って「何で悪いんですか?」と聞いたら、「人が困っているところをSNSにアップするなんて、そんなことでおもしろがるのは許せん」と。SNSで動画をアップする行為の意図が、おもしろがるためだとか、「いいね」をたくさん稼ぐためだと解釈するわけですね。

だけど書いていないじゃないですか。もしかしたらこの人は、めちゃくちゃ横暴な警察官の行動を暴こうと思って、この動画を撮ったかもしれないんですよね。そしてその動画で警察官を陥れるようなことが書かれていたので、警察が動いて(モハメドさんを)国外退去にしたかもしれないんですよ。

あるいはモハメドさんは財布を忘れたことに気がついたんだけど、食い逃げするつもりだったかもしれないですよね。ここはわからないんですよ。

忘れたのは事実で、そこに気がついたのも事実だけど「ま、払わないでいっか」と思って、「後で払いに来る」と説明して逃げようと思ったので、ラーメン屋さんの店主が止めたかもしれないですね。

だけど、人はこうやって文章を見せられると解釈してしまうんですね。そして、この解釈について、いい言葉を残している人がいます。「事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである」。これはニーチェの言葉です。これ(スライド)はニーチェさんの写真です。こんなことを言っているんですよ。

だからみなさんが「事実だ」「真実だ」「これは間違いない」と思っていることが、「本当に事実でしたっけ?」ということです。ここは、疑ってかからないといけないですね。そうしないと、とんでもない勘違いをしてしまうかもしれないんですよね。

いかにして解釈をするのか。欠けている部分の勝手な解釈が、怒りを生んだり、何かしらのトラブルの原因になったりするわけですね。

電車の中で携帯電話で話している人にイラっとするわけ

ちなみに脳科学的なあるお話を聞いたんですけれども、挙手ボタンで答えてみてください。電車の中で携帯電話でしゃべっている人の声を聞くと、「ちょっと気分が悪いな」「イライラするな」「モヤモヤするな」という方、手を挙げてもらっていいですか。あ、けっこういらっしゃいますね。はい、ありがとうございます。

じゃあ1回、手を下ろしていただいて、別の質問にしますね。今、手を挙げた方。同じぐらいの声量で、人が2人立っていて、その2人で会話をしている時に、同じぐらい「やめて欲しいな」と思う方、どのくらいいらっしゃいます?

携帯電話でしゃべっているのと同じぐらいの声のトーンで、2人でしゃべっているのを聞いて、「黙ってくれないかな」とついつい思ってしまう人。これ、ぜんぜん悪いことじゃないですよ。そういう人もいますね。だけど随分、(手を挙げた人の)数は減りましたね。

これ、メカニズムがあるんですって。普通に2人で会話しているのを聞く分には、そんなに気にならないけど、携帯電話だったら、なんなら小声でしゃべっていても気になる人がいると。

なぜかと言うと、「解釈する材料が少なすぎるから」というメカニズムらしいんですよ。つまりしゃべっている側、目の前にいる人の声は聞こえるんだけど、向こう側の人がしゃべっている声は聞こえないんですね。

そうすると解釈に必要な材料が半分しかないので、解釈のしようがない。それがめっちゃストレスに化ける、という理由があるらしいんですよ。「へえ」と思いました。結局人は、「わかろう」という意思が働くのは自然なことですよね。わからなくて、特にそれが人絡みだったりとかすると、怒りと誤解で分断が深まっていくんですよね。

誤った解釈をしないために大切なこと

これは、解釈のための材料が、すごく大事だということですね。まだ今の時点で「リスキリングと何が関係するの?」と思っているかもしれないですけど、ちゃんと関係していきます。

解釈をするためには材料が必要です。その材料は誰から仕入れるのか。これは人から仕入れましょうか。常に対話を意識して、いろんな人から学び取る。いろんな人が考えていることを聞くのも、1つのアプローチになります。

そして人は、どうしたってアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を持っているんですよね。実はさっきの(ラーメン屋さんの)話に関しても、アンコンシャス・バイアスが働いてしまう人はけっこういるわけですね。

いろんなアンコンシャス・バイアスが働きます。例えばさっきの話で言えば、4が1番悪いと思っている人がすごく多かったですけど、「SNSで動画をあげる人は、自分が『いいね』やPVを稼ぐためにやっている」というのも、アンコンシャス・バイアスなわけですよね。

(4が1番悪いのが)事実だと思うかもしれないけど、全人類の中でそう考える人はどのぐらいの割合ですかね。たぶんこれ、正確な答えはないと思うんですよ。だけど「そういうことをやるんだから、おそらくはそう考えているに違いない」と思うんですよね。

これも解釈です。これもアンコンシャス・バイアス。アンコンシャス・バイアスを知らない方もいらっしゃると思うのでお話をすると、アンコンシャス(無意識)とバイアス(偏見)で無意識の偏見だと思ってください。

誰しもが持っている「無意識の偏見」

無意識の偏見は誰しも持っています。「良い」も「悪い」もないんですね。あるものとして処理するしかないんですね。そう思ってください。そして、このアンコンシャス・バイアスを生んでいるのは、本人の常識になるわけですけれども、「常識とは、18歳までに身に付けた偏見のコレクションである」。これはアインシュタインの言葉ですね。

なかなか強烈なことを言いますけれども、日本人は特に同じような教育を、小学校、中学校、場合によっては高校までずっと受けるわけですね。どうしても、もうそれが正解であると思ってしまうんですね。

例えばこのコメントもそうですね。さっきのSNSの「解釈」ですけれども、やはり顔が撮れているかどうかわからないですよね。気になるってことなので、撮っている前提に思っているんですけど、これも解釈です。

隣の人は「スマホで撮った」と言ったけれども、足しか撮っていないかもしれないですよね。ラーメンしか撮ってないかもしれない。これもやはり解釈です。一般的には顔までバッチリ撮っているものが多いから、たぶんそうだろうなと解釈をなさったんですよね。

「正解のない問い」に向き合うための、リスキリングの重要性

ちょっと話が戻ります。アインシュタインの「常識とは、18歳までに身に付けた偏見のコレクションである」という話ですね。何を言いたいかと言うと、「正解のない問い」を考えてください。さっきみたいなラーメン屋さんの文章だけをパッと見せられると、何が正解なのか、わからないですよね。隙間だらけの情報を提供しているんだから、わかるわけないですよ。

でもそれに対して、向き合わなければいけないシーンは、仕事をしていると、どうしたってあるわけですよね。今はVUCAの時代ですから、ありとあらゆるビジネスにおいて、いろんなものが曖昧になって、はっきりしていないわけですよ。その中で問いに対して向き合わないといけないんですね。

その正解のない問いにどう向き合うか。大事なのは「広い視野」と「高い視座」になります。それを持つためには「学び」が必要なわけですね。いろんなかたちで学んでいくことが大事になります。つながりましたね。リスキリングは、この「広い視野」や「高い視座」を持てるんです。

それを持たないと、アンコンシャス・バイアスに振り回されてしまって、結局のところ、短絡的な考えに陥って、とんでもない間違いにつながってしまう可能性があるんです。なので、まずは(リスキリングをして)キャリアを作っていかないといけない。リスクを減らしていくことですよね。

今「決めつけばかりしていました」とコメントで書いていらっしゃいますけれども。決めつけてしまうと、判断を間違う可能性があるので、「広い視野」と「高い視座」を持ちましょうよ、と。これを「意識高い系だよね」とちゃかす人がいるんですけど、ちゃかす人はもう放っておきましょう。

意識を高めちゃっていいんですよ。その人たちはアンコンシャス・バイアスに振り回されて、間違った解釈をしていればいい。自分の人生を生きていただければと思います。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • リッツ・カールトンで学んだ一流の経営者の視点 成績最下位からトップ営業になった『記憶に残る人になる』著者の人生遍歴

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!