DXの本質は、デジタル活用ではなく「生活を豊かにすること」

野水克也氏(以下、野水):みなさん、こんにちは。サイボウズ株式会社の野水と申します。今回のテーマは「働き方の極意」という、デジタルとあまり関係ないところです。でも、働き方ですから。

「ひょっとしたら、みなさんがここ(会場)に来なくて、家でリモートで休憩しているんじゃないか。誰も来なかったらどうしよう」と、すごく心配していたんですが、集まっていただいて本当にありがとうございます。

あらためまして、Cybozu Daysへようこそ。今回は「働き方」について、みなさんと一緒に議論をしていきたいと思っております。

「AX」について一応説明しておくと、DXは「デジタルトランスフォーメーション」の略なんですが、今回はあえて「デジタル」を抜いて、「トランスフォーメーション」のほうにフォーカスしてお送りしようと思っています。

なんでかと言うと、別にアナログにこだわっているわけではないんですが、DXで大事なのはデジタルを使うことじゃなくて、トランスフォーメーションで業務を変えて生活を豊かにすることが主です。なので、本当はトランスフォーメーションのほうが大事なんですよね。

ところが、我々もそうなんですが「儲けたい」という心が出ちゃうので、やはり「デジタル、デジタル」と言っちゃう。どうしても「デジタル機器を買わなきゃ」という気分になるんですが、主題はそこではないということです。

この40分間はトランスフォーメーションについて、「デジタルはデトックスしましょう」ということでお送りしたいと思っております。

働き方改革で幸福感は上がっていない?

野水:念のため言っておきますが、今日ゲストでお迎えするパプアニューギニア海産さんは、ちゃんとkintoneを使っていただいているkintoneユーザーです。今日の話には出てこないけれども、「kintoneを使っていただいている」ということをご了承いただければと思います。

僕のセッションは毎年そうなんですが、わりと年齢層の高い方が来られるので、誰も投稿をしてくれなくて。僕が後でX(旧Twitter)を見て、「うわぁ、(投稿が)なかった」と寂しい感じになるので、ぜひともハッシュタグ「#CybozuDaysで会いましょう」で、お写真やポストのご協力をお願いできればと思っております。

本編へ行きます。まずは「働き方改革で幸せになれるのか?」ということなんですが、あんまり幸せになっていないみたいなんですね。

これは自治体のデータなんですが、「働き方改革で幸福感は上がりましたか?」(という質問に対して)「変わらない」人が過半数です。これはおかしいぞ、(働き方改革を)したはずじゃなかったのかと。

逆に、経営者に「働き方改革はどんな効果がありましたか?」と聞いたら、「残業手当を出さなくてよくなった」。いや、これは間違っているでしょうと。

「働き方改革によって業績を上げる」というのは、効率化で雑巾を絞る話じゃなくて。本当は、みなさんが幸せになって、やる気になって働くから効果が上がるという話になるはずなのに、どうしてこんなことになっているのか。

シフトが存在しない「日本一自由な働き方の工場」

野水:ところが世の中には、いい働き方改革をしていらっしゃる会社もたくさんあります。その中の1つが、今日ご紹介するパプアニューギニア海産さんです。なんとここは「日本一自由な働き方の工場」ということで、海産物のエビを扱っている大阪の工場です。

なんとシフトがないので、好きな日に、好きな時間に出社していいんですよ。休む時は連絡禁止。休む時は勝手に休んで、わざわざ連絡しなくていい。これ、サイボウズよりぜんぜん自由じゃないですか。うちだって、連絡しなきゃめっちゃ怒られますよ(笑)。

そして、嫌いな仕事はしてはいけない。「連絡禁止」「してはいけない」とか、なんでこんなルールがわざわざあるのかということについても、今日はじっくりとお話を聞きたいと思っております。

実は僕、この話をサイボウズのYouTubeにチャンネル上げたんですよ。そうしたら、なんと広告をしてないのに38万回再生です。たぶん一生分のアクセス数を稼いでしまって、もう何を作っても(これ以上は)上がらないような気がするんですが、38万回はすごいですよね。

コメントも称賛の嵐で、「こういう会社がもっと増えることを祈る」「これが本当の働き方改革だと思う」と、本当にコメントがたくさんついて。やはり世の中「させられていること」に対して、ストレスのある人がいっぱいいるんだなという印象です。

ということで、ここでパプアニューギニア海産の武藤さんをお呼びしたいと思います。武藤さん、どうぞ。拍手でお迎えください。

(会場拍手)

野水:武藤さん、よろしくお願いします。

武藤北斗氏(以下、武藤):よろしくお願いします。

野水:どうぞおかけください。さっき「うちの青野(慶久)のスーツ姿を初めて見た」と言ったんですが、僕は武藤さんのスーツ姿を初めて見ましたね。

武藤:今日は、ちゃんときれいめの格好で来ました。

野水:でも、中はちゃんとパプアニューギニア海産さんの(ロゴTシャツ)でしょう。

武藤:うちのエビのロゴです。エビもおいしいので、ぜひ買ってください。

野水:(笑)。ありがとうございます。

利益や効率よりも“おいしいものを作ること”が第一

野水:まずは会社の案内を簡単にしていただきたいと思っています。

武藤:超簡単にいきます。大阪でやっています。従業員は約20名で、パートさんがほぼ9割です。先ほどから言っている「働き方」については、パートさんの働き方と社員はまた別だと考えています。

働き方をどういうふうに考えるかというのは、一人ひとりを見ていく必要があります。「パートさんの話だから」ではなく、従業員に対してどういう取り組みをするのかという話をできればいいなと思っています。

2年前から代表をやらせてもらっています。扱っているのはパプアニューギニアの天然エビのみ一筋30年。それだけでやっております。大阪の工場では、エビフライやむきエビなどを作っております。

正直、理念はあんまり考えたことがなかったんですが、何を大事にしているかなと思ったら、自分たちが食べたいと思うもの、家族に食べてもらいたいものをちゃんと作っていくこと。当たり前のようなんですが、実は食品業界では当たり前ではないです。

利益や効率を追い求めていくと、それは二の次になってしまう可能性がすごくあるんですね。なので僕らは、あくまでも「おいしいものを作り続ける」ことを大事にして、こういった商品を作っています。

野水:ホームページで買えるんですよね。

武藤:はい。オンラインショップからも買えますので、ぜひ買っていただきたいです。とにかく単純においしいです。

野水:(笑)。

武藤:こんなにおいしいエビはないです。これも称賛の嵐です。うちはいろんな働き方をして、けっこう強めの発信もしているんですが、それでも支持してもらえるのは、やっぱりエビがおいしいからなので。ぜひお願いします。

野水:ありがとうございます。

朝起きてから“出勤するかどうか”を選べる

野水:次に具体的な働き方の話をしていただきたいんですが、一番の特徴が「フリースケジュール」ですね。

武藤:そうですね。最近はこれがうちの代名詞みたいな感じになってきていますが、10年前に始めました。(従業員の中には)当時、子育てをしているお母さんが多かったんですね。そのお母さんたちがどうすれば働きやすいかと考えた時に、単純明快で、休みやすければいいんです。

野水:なるほど。「働きやすい」じゃなくて「休みやすい」。

武藤:そうですね。みんな働きやすい方向を考えがちなんですが、本当に重要なのは「いかに休めるか」「いかに自分の欲求をきちんと表明できるか」です。だから、好きな日に休もうと。

じゃあ、好きな日に休むにはどうしたらいいかということで、うちはフリースケジュール(を導入しました)。10年の間でかたちが変わってきたんですが、今(の形態として)は好きな日に出勤します。朝起きて、行きたければ来ればいいし、休みたければ休めばいい。

8時半から17時までの間は好きな時間に出勤できます。プラス、好きな時間に帰っていいです。11時に帰ろうが、15時に帰ろうが、全部自由。極めつけとして、ここが一番大事なんですが、連絡がすべて禁止になっています。

野水:なんでこれは禁止なんですか? わざと禁止にしているんですよね。

武藤:そうですね。

野水:「しなくていい」じゃなくて、「禁止」なのね。

武藤:はい。10年前から、明確にここが一番大事だったのでそうしているんですが、休みやすいためには「言わない」ことが一番重要だったんですね。

野水:なるほど。

武藤:やはり、どうしても(休む時に会社に)電話をするとか。

野水:けっこう勇気が要りますよね。

かつては監視カメラで従業員を縛る“独裁者”だった

武藤:僕、昔は真逆の経営だったんですね。監視カメラを付けて、「人を縛ってなんぼだ」みたいな人間だったので。

野水:どこで変わったんですか? めっちゃ変わってますね(笑)。

武藤:震災でがらっと変わったんです。

野水:なるほど。

武藤:元は本当にヤバいやつなんですよ。

野水:(笑)。

武藤:僕は自分で自分のことを「独裁者だ」と言っていますので。たまたま独裁者がいい方向に行ったから今はいいんですが、(休みやすい環境を作るには)どうしたらいいかと考えた結果、連絡をしない。そうすれば好きに休めるということで10年間やっていましたが、1日だけ誰も来なかった日があります。

野水:(笑)。

武藤:(全員)来れるのがパーフェクトなんですが、そんな簡単なものでもない。ですが、僕がよく言うのは「その1日をどう考えますか?」ということです。

ここが経営者やリーダーの大きなポイントなんですが、うちの工場は土日祝が休みなんですよ。10年間のうち、1日だけ全員来ない日があった。だけど、なぜその1日を基準にして物事を考えるんだと。

野水:そうか。来た日がたくさんあるんだから、そっち(にフォーカスする)でいいじゃないかと。

武藤:そうです。そっち側に思考を振れば、たった1日のことにこだわるのがいかにムダなことかというのが、僕の考え方ですね。

野水:ありがとうございます。

嫌いな仕事はやってはいけない

野水:もう1つ大事なのが、嫌いな仕事も「してはいけない」なんですよね。

武藤:そうですね。これは7年ぐらい前に始めましたが、僕が掃除が大嫌いだったので、みんなにいかに平等に掃除を割り振るかを考えていたんですが、途中で「私は掃除好きです」という人が出てきたんですね。

「僕がこんなに嫌いなものを好きな人がいるんだ」ということに驚いて。他の人にも聞いていったら、当たり前ですが、好きな人も嫌いな人もいるんですね。多様性です。

その時に「じゃあ他の作業はどうなんだろう?」と思って、主要な作業も◯と×でアンケートをとったら、こういう結果が出たんです。人によっては「×が多いな」「少ないな」とか、捉え方は違うと思うんですが、僕は×が少ないと感じたんです。

だから、嫌いな人が(嫌いな作業を)やる必要があるのか? と思って。これも最初は「やらなくてもいいよ」と言ってスタートしたんですが、「一生懸命やらないとダメだ」というのが染みついちゃっているんですね。

野水:(笑)。「徹底しましょう」と。

武藤:そういうのが染みついているから、うちは「これはやっちゃいけない」と、禁止事項にしました。その代わり毎月このアンケートをとって、変えられるようにしてやっています。

野水:なるほど、ありがとうございます。

自由な働き方によって、逆に出勤する人が増加

野水:出勤がどれぐらい自由かというのは、実際にYouTubeの取材の時にお邪魔してインタビューを撮ったんです。

女性のパートの方に「朝はどうするんですか?」と聞いたら、「雨だったら行くのをやめます」という話があって、どんなゆるい会社やと思いました。これでよく会社が回るなと思ったんですが、逆に出勤は増えているんですよね?

武藤:平均は増えていると実感しています。会社に行かされているんじゃなく、単純に「自分で選んでいる」ということなんです。普通の会社は、シフトを組んだ瞬間に「来いよ」ってなっちゃうんですね。だけどうちの場合は、自分で行くか行かないかを決める。そうすると「行ける日は行こうかな」と思うんですよ。

野水:なるほど。「今日は晴れていて天気もいいし、気分もいいし、行こうか」と。

武藤:次の日も「今日も(気分が)いい。行こうか」とか。不思議なことに、(気分が)悪い日も「いや、半日ぐらいだったら行こうかな」ってなるんですよ。

野水:自主性が芽生える感じですよね。

武藤:そうですね。だから、自分の中で(会社に行こうという)気持ちが出てくる。人間は、本来そういう生き物だと思うんですよね。

野水:本能としては、やはり食うためにがんばるわけですよね。

武藤:そうですね。原始人が狩りに行くように、僕らは「逆に自由だったら行く」ということが起きている。これは理由を説明できないんですよ。サイボウズさんの場所で言うのはちょっとあれですが。

野水:でもこれは本能だから、「人はほっとけば働くものだ」というのは、たぶん働き方改革の本質ですよね。

武藤:そうです。人間の本質じゃないかな? ぐらいに思っています。

野水:ありがとうございます。

生産性向上よりも「社員の幸せ」を先に考える

野水:ここからは、こういう会社さんとサイボウズの働き方も比較しながら、いろんなことについて議論を進めていきたいと思っています。

まず1つ目は「幸福感」。最初の説明で「働き方改革で幸せを感じていますか?」という質問に対して、「ないよ」というものがありましたが、働き方改革の順番ですね。

先ほど言ったとおりなんですが、幸福度が上がって、みんなで仲良くチームになって、最終的に全体最適化になったり、クリエイティブになったり、効率や業績が上がっていくというのが本来のやり方なんですよ。

これを間違えて、一番前に「生産性向上」がやってくると、「残業を削減したけど、誰も幸せになりません」みたいな話になってしまうわけなんですね。ここで、幸福感に対する2社の考え方を比較してみました。

まずはサイボウズです。2社に共通している話なんですが「働き方は自分が決める」。要するに、「社員が働き方を決められる」というところは両社に共通しています。さすがに僕らは「朝、行くか行かないかを決める」というのはないんですが。

例えば僕の場合、今は週3しか会社に行ってないんですが、それは週3の契約にしているからです。でも、正社員ですよ。あとは「(勤務時間を)15時までにします」という人がいるのもぜんぜんオッケーなんですね。

さっき武藤さんが言ったとおり、パプアニューギニア海産さんの場合はいつ来てもいいし、いつ帰ってもいいので、働き方は自分で決められます。ところが、この(スライドの)下が違っていて。

サイボウズの場合は「だから自立してやりなさい」なんですよ。一人ひとりが自分で自分をコントロールできるようになって、他人がどうあれ、それは認めてあげる。だけど自分の生き方を貫いてがんばってください、その代わり自由は最大限に認めますよ、というのがサイボウズの働き方の根幹にあります。

従業員同士で“仲良くすること”は禁止

野水:ただ、違う人たち(同士)が働くわけですから、どうしてもコミュニケーションが難しくなります。「できるだけいろんな人とコミュニケーションを取りましょう。活発な議論をちゃんとやって物事を決めていきましょう」というのが、サイボウズの文化になっています。

そこに関して、パプアニューギニア海産さんは自立はあまり求めていない。ここはけっこう真逆ですよね。

武藤:そうですね。正直、サイボウズさんの今の話を聞くとちょっと引くぐらい。

野水:(笑)。すみません。

武藤:「本当にみんなそんなのを求めるのかな?」と思うぐらい、僕はそういうのが苦手なんですよ。

野水:苦手なんですね。

武藤:はい。どっちが正しいかではないですが、自分自身が「そういうのはいいや」と思っているタイプなので。

野水:「正しい」じゃないと思いますけどね。

武藤:たぶん僕は無理だなと思いますね。あとは、さっき言ったように「パートさんだから」というところがすごくあって。パートさんって、社員にならない理由があるんですよね。その理由があるからこそ、時給でボーナスもなくて、はっきり言ってしまえば安い給料で働くことをわざわざ選択してくれているわけです。

それであったら、会社はその人たちが求める働き方を提供して当たり前じゃないかと思っているし、そうしなければ彼や彼女は自分の本当の力を出すことはできないとも思っています。そのためには仲良くしない。僕は明確に「仲良くするのをやめましょう」と、従業員に言っています。

無理に仲良くする職場は人が辞めていく

武藤:単純に、無理に仲良くしようとするとケンカをするんです。揉めることが起きてくる。これはたぶん、毎日出勤するんじゃないパートさんだからだと思うんです。たまに来る人たちが仲良くなって、和気あいあいと仕事をしていくって、かなりハードルが高いと思うんですよね。

だけど会社から「仲良くしていこうよ。チームワークでがんばろうよ」と言われると、無理に仲良くしようとする。そこでひずみが出て、結局は新人や自分の発言をするのが苦手な人が辞めていく職場になっていく。僕はそれを求めてないので、全員が残るにはどうするかというと、「仲良くするのをやめよう」という結論です。

野水:根底にある考え方が(サイボウズと違う)。ほっといたら働くのはわかるんですが、人はほっといたら争うんですね。

武藤:そうですね。というか、歴史を100年、200年遡っていけば、これ(ほうっておくと争いが起きること)は当たり前すぎると思って。

野水:戦争ばっかりですよね。

武藤:殺し合って、土地を取り合って、今だってそんな世界がある。なのにどうして人間を信用できるんですか? って僕は思います。

これはギャグで言っているんじゃなくて本気なんですが、「みんな仲良くニコニコ笑い合って一緒にチームを組めば、生産性は上がっていくよね」なんていうのは、まやかしじゃないかなと。それを基本に考えた上で組織を考えていきましょうと言いたいです。

野水:まやかしなんですね。

武藤:はい。僕はそう思っているんです。だから、「人は争うものだから、そのまやかしに惑わされないように、僕らの組織のあり方を探していこう」という感じなんですね。

仕事で苦しまないための5つの行動規範

野水:結論としては、「争いをしない」という方向に行くわけですよね。

武藤:そうです。すべてにおいて、絶対的に必要なものは争わないことです。何を考えるにしても、組織のことを考える時は「争うか、争わないか」さえ考えておけば大丈夫です。

これを考えると、効率や品質とか、会社にとって必要なものは後から全部ついてくるんです。この順番を間違えて「効率を求めよう」というところから始まると、逆に争いが起きて、人が辞めたり問題が起きて、結局は効率や品質が下がるんじゃないかと思っています。

野水:なるほど。ポイントは5つのことで、これは行動規範みたいなものですよね。

武藤:そうですね。読むまでもなく、単純に人として……という言い方は良くないかもしれないですが、この5つを大切にしています。

野水:「押しつけない」。そして、やはり根底には「苦しまない」ですよね。

武藤:そうですね。

野水:「嫌い」にこだわっているところが我々と違いますね。サイボウズの場合は「好き」にこだわっているんですよね。「好きなことをみなさんにやらせてあげよう」「好きなことができる環境を整えよう」というのがうちの考え方なんです。

パプアニューギニア海産さんの場合は、逆に「嫌い」にこだわって、嫌いなことをいかに徹底的にしないか。「好きにこだわる」と「嫌いをなくす」というのは、ぜんぜん違うんですよね。

武藤:そうですね、まったく違うというか。

好きなことをやるよりも、苦しまずに生きることが最重要

武藤:またサイボウズさんを変なふうに言うことになっちゃうんですが、「好き」はどうでもいいんですよ。「『好き』なんてクソくらえ」ぐらいに思っている。

野水:(笑)。

武藤:人間にとって大事なことって、好きなことをやることよりも、苦しまないで生きていくことだと思っています。

野水:なるほど。

武藤:それは、結果的には「好き」を求めていることになるのかもしれないけれども。好き嫌いで(作業の)◯と×を選んでいましたが、最初は僕も勘違いしていて、「『好き』を求めよう」と思ってやってたんです。

だけど途中で、「あれ? なんか違うな」と違和感を感じ始めて。好き嫌いを見ていたら、「好きならお前がやれよ」みたいな変な押しつけが始まって。

野水:逆に。そう言われると、なんか腹が立ってやりたくなくなりますよね。

武藤:そうなんですよ。本質的に大切なことは、「嫌い」「苦しい」を取り除いていった後に、僕が求めている争いのない職場、健全な効率、健全な品質(が生まれること)。継続的な効率や品質が、やっとそこでつかめるんじゃないかと思っています。

野水:ありがとうございます。