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商品を「買わせる」文章力 ~文章のクオリティを決めるポイント~(全5記事)

ビフォーアフターを見せられると、行動したくなるわけ 共感や納得感を高める「伝え方」のコツ

令和時代の必須スキル「情報発信術」。本イベントでは、起業やセールスで役立つ、SNSなどの情報発信のポイントが語られました。本記事では、『ブログ飯 個性を収入に変える生き方』など著作多数、企業や地方自治体のIT(集客・PR)アドバイザーとしても活躍する染谷昌利氏が、共感や納得感を高める文章を書く秘訣を明かします。

前回の記事はこちら

共感や納得感を高める文章の形式

染谷昌利氏:また、文章形式の話もあります。これが使えるようになったらすごく効果的です。対比と因果(時系列)があります。同格は、要は同じようなものを並べて積み重ねていくことによって、共感度や納得度を上げていくやり方です。

どういう状態で使うかと言うと、今日のみなさんの状態です。ここに来てくれている、ある程度の共感・理解をしている人に対して畳みかけていくことによって、行動を促すことができるやり方です。

一方、対比は反対派と話す時に使います。なぜかと言うと、先ほどの恐怖型もそうなんですけど、きっかけを作らなければ人って話を聞いてくれないんです。だから、あえて対立させることによって、きっかけを作るやり方です。

ただ、今来ている関係性ができている人たちに対してこの対比型を使うと、「なんで今もずっと対立しているの?」みたいな気持ちになって、嫌になります。その関係性によって使い分ける必要があります。そして、因果は同格でも対比でもなく、その間くらいの状態に使うとすごく有効です。

文章に厚みを持たせる「対比」の使い方

では、より具体的に話します。同格も、確か『東大作文』に載っていたと思います。同格と並列は厳密にはちょっと違うんですけど、例えばトヨタ、テスラ、メルセデス、日産はメーカーが並んでいるので並列です。厳密な同格というのは1つの名詞があって、それを説明している文章です。「つまり〇〇」というのが同格なんですけど、この場合はそこまで厳密でなくてもいいです。

厳密な同格と言うと、例えば「テスラ。つまりテキサス州オースティンに本社を置く、アメリカの電動輸送機器およびクリーンエネルギー関連企業」が同格です。そして、トヨタ、テスラというのは並列です。

どういうことかと言うと、例えば電気自動車に興味がある人に向けて、「電気自動車って所得税無料で、充電器が家の近くにあれば一生ガソリン代が無料だよ」と言ったら、ちょっといいなと思いますよね。

同格を表現する言葉はどれを使ってもいいんですけど、小学校の作文みたいに、「そして」を多用すると、大人の文章として恥ずかしいじゃないですか。だからいろいろな言い方があります。

「そして(並列)」「つまり」「すなわち」「~という」「~との」みたいな。これは使い分けをしてもらえればいいかなと、事例を持ってきています。

一方、対比ですね。並列で対比する場合と前後で対比する場合があるので、説明します。まず左右対比です。「Aがあります。一方でBがあります」「Aがあります。他方でBがあります」「Aがあります。逆にBもあります」など、横並びはなんとなくわかりますよね。

もう1つは前後対比です。「Aがあります。しかしBもあります」。なんとなくわかりますか? 先ほどお話しした「譲歩構文」と同じで、前と後ろがあるんです。後から言うほうをメインに伝えたいのが対比なんだけど、「AがあるにもかかわらずBもあります」と、どちらかというとBを推していますよね。

後に来るほうを推したい場合に使うのが、「とはいうものの」とか「でも」です。それが前後の比較をつけたい時に使える対比のやり方です。恐怖を煽って比較させた上で、「でも、より伝えたいのはこっちなんですよ」みたいな使い方ができます。立体感というか厚みが出るんです。

人は時系列が混乱すると行動しなくなる

あとは因果です。これはその名のとおり、原因と結果を表します。「Aが起きた。なのでBになった」「Aが発生した。それゆえにBが発生した」「Aをやった。その結果Bになった」という感じになります。これにも使い方があります。実は因果って、時系列というか、AとBでは、Bのほうが後に起きているんです。ここも意識しておく必要があります。

厳密に言うとそこまでやる必要はないんですけど、人の脳って時系列が混乱するとわけがわからなくなって、わけがわからなくなると行動しなくなるんです。「面倒くさい」ってなるんです。

知識として持っていてもらえればいいですが、例えば「電気自動車を買ってしばらくしたら、近隣に無料充電器が設置されたので、燃料代がほぼ無料になった。ガソリン車に乗っていた時は、毎月1万5,000円も使っていたのに。だからこそ、電気自動車をおすすめしたい」という文章があったとします。

主張は、「電気自動車をおすすめしたい」でいいんだけど、「?」と思った人は感覚が鋭いというか、疑問に気づく力が強いというか。別にできなくてもよくて、できたから偉いと言っているわけではありません。電気自動車云々の文章は、今なんです。その後ろに過去が来ているのがわかりますか?

「今→昔→主張」になっているんです。なんとなく違和感が出るんです。これを、「ガソリン車に乗っていた時は毎月1万5,000円も使っていたのに、電気自動車を買ったら燃料代がゼロになりました。だから電気自動車をおすすめしたい」だと、スッときますよね。

こういうのって、因果を使って過去・現在が逆転している場合もあるので、そこは注意しておいたほうがいいよという余談でした。

ビフォーアフターを見せられると、行動したくなるわけ

この3つを同時に満たすのが、よく見るビフォーアフターです。ビフォーは、「これが今(過去)のあなたの状況です。こんなに悲しいことがたくさん起きています」。アフターが、「でも、これをやることによってこんなに明るい未来が生まれるはずです」。そして「この世界に入るためにはこのダイエットプログラムをどうぞ(Bridge)」というかたちです。

ビフォーアフターには、この3つがきれいに入っています。いろいろな販売ページとかサービスの紹介ページでビフォーアフターが使われています。なので自分が申し込みたくなるのは、こういう理論があるからです。

これも覚えておくと(いいです)。入れろと言っているわけではないですよ。たくさん入れると鬱陶しくなるので、伝えたい人に向けて使ったほうがいいかなと。

あるいは、これから新規顧客に伝えたいのであれば対比を使う必要があるし、今いる仲間に伝えたいのであれば、同格を使ったほうがいいです。ちょっとわからないなという時には、因果やビフォーアフターを使うという、使い分けも重要になります。

相手に考えさせず、直感で「いい」と思わせる

いろいろと話してきましたが、では、なぜ人は行動に対して、そんなに壁があるのかという話をしていこうと思います。

これも『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?』という本に載っています。2冊(上下巻)で800ページくらいある本なので、興味があればぜひ読んでいただきたいと思います。

人の脳は2つの構造に分かれていて、便宜上、システム1とシステム2に分けています。反射と言って、思いついたことをすぐにできる構造と、考えなければ動かないという仕組みです。そして人は反射・直感で動いていることが多いです。

なぜかと言うと、考えると疲れるからです。良い悪いではなく、そういうものなのですが、エネルギーを使うんです。なので考えさせないように、直感で「いい」と思わせる文章を出しておくことが重要だったりします。

例えば赤信号で車が突っ込んできた時に、考えていたら死ぬじゃないですか。そういう時は、反射ですぐに避けるんです。人間というのは、そもそも反射のほうが強いということです。何かを決める時は熟考するんだけど、ある程度いいなと思っていることに対してはポジティブな考えにしかいかないので、なるべく初見でいいと思わせておく必要があります。

これをすごく上手に使った文章術を身につけるということです。良い悪いではなくて、人の脳というのはそういうものなので、きちんと物を伝えていくことによって、ポジティブな印象を持たせることが可能になります。

それに人って、誘導されていることにもあまり気づきません。だから悪用してしまうとダメなんですけど、自分の望む方向に伝える能力を持っておくのは、すごく有効な能力・スキルになります。

『影響力の武器[第三版] なぜ、人は動かされるのか』というずっと読まれている本にも載っています。これも500ページくらいあるので、興味があればぜひ読んでみてください。

人の心を動かす7つの要素

人の心が動くか動かないかは、だいたいこの7つの要素で決まっています。それを一つひとつお話ししていきますね。

1つ目に、人は受けた恩を返したくなるものです。食品売り場で試食させられた時に、今晩のおかずが決まっていなかったら、「このハンバーグでいいかな」と思ってしまうのが人だということです。また、誰かにアドバイスをしてもらった時、次に何か言われたら、ちょっと前向きに返答しようかなと思ってしまうのが人だということです。

また、「ごめん。今飯代がなくてさ。1,000円貸して」「いや1,000円は……」「じゃあ200円でいいから」と言われたら、「200円だったらいいかな」と許してしまうのが人です(笑)。

ドア・イン・ザ・フェイスといって、大きな要求の後に小さな要求をすると、意外と通りやすいです。これも文章に直していくと、最初にびっくりさせるような大きなものを出して、「でも割引でこうですよ」みたいに言われると、「ちょっと安いかも」と思ってしまうのが人の心です。それは仕方のないことです。

「この50万円の結婚指輪がお似合いですよ」と言われた時に、「いや50万円は」と答えて、その後20万円くらいの指輪を出されたら、僕としては「じゃあ、これで」と言わざるを得なくなります。そういうことが、みなさんの生活の中でも何かしらあるので、こういう脳の構造もちゃんと知っておくことが大切です。

2つ目に、人は約束を守りたいことが多いということです。なぜかと言うと、人間ってそういう人だと思われたいんです。なので、イエスを繰り返させると、どんどん大きな要望が通っていきやすくなります。こういうのも、いろいろな申し込みページとかで使われているので、それに気づけたら、ぜひ自分の引き出しにストックしてください。例えばアンケートでは、「はい」と答えやすくなっている状態にあります。

あとは勘違いさせる力です。すごい能力が1つある人って、ほかもすごいと思わせてしまう傾向があります。このあたりは2週間後のキャラクターの部分で話しますが、このように、「1つすごいとみんなすごい」と思わせるということです。

僕は自己紹介をあまりしないのですが、自己紹介でしっかりとしたものを載せて、実績を出しておくと、「すごい人が言っているんだから間違いないだろう」という印象を与えることができます。

印象の良し悪しは、半分以上「見た目」で決まる

3つ目は社会的証明です。「みんなが褒めるものっていいんだろうな」というのがよくありますよね。「これまでに1万5,000人の方に使っていただいています」とか、「お客さま満足度95.3パーセントです」とか、行列ができているラーメン屋って並びたくなりますよね。

人は、みんながいいと言っているものをいいと思いがちなんです。まず、その時点でちょっと操られています。

テレビもそうですよね。「ここで笑うんですよ」みたいに、お笑い番組で笑いの音声を入れていますよね。そうするとみんな笑ってしまいます。そういったものが、文章の中でもいろいろと使われているのに気づいてほしいんです。良い悪いではありませんが、そういうテクニックです。

SNSでも、集め方がどうかは置いておいて、人は「フォロワーが3万人いる人はすごい」というものを信じがちです。それを文章に入れるかどうかですが、それは、みなさんの主張やモラル、考え方にもよります。入れたければ入れればいいし、そういうのが嫌なんだったら、入れなければいいという考え方です。

4つ目に、見た目の感覚が重要です。これは研究結果にも出ています。半分以上が視覚情報で、好印象か悪印象かを決めています。あとは声や話し方です。文章なので聴覚はあまり関係ないかもしれませんが、写真などの見せ方です。フォントの大きさとか、いろいろな見せ方があります。そのようなところで良い印象を与えなければ、人は嫌になります。悪い印象になった文章は、基本的に読みません。

ただ、かっこいい・かわいいは最重要ではなくて、人が好意を持つ理由もいくつかあります。容姿でもいいんですが、(自分と)似ているとか、褒めてくれるとか、あるいは同じ方向を向いているとか。「一緒にがんばろうよ」という熱量が伝わってくる文章って、心に刺さりますよね。あとは接触回数が多いと、人は勝手に好意を持つことがあります。

文章で使えるのは、基本的には「みなさんと同じ方向を向いていますよ」というところを押し出していくことです。だから僕も、「みなさんと一緒に文章を極めていきましょう。上達させていきましょう」といった思いを込めて書いています。それに共感してくれた人が見てくれているし、来てくれると思っています。

根拠のない自称でも人は本当に信じてしまう

そして、5つ目が権威です。例えば、◯◯大学の教授といった社会的地位。ブロガーやインフルエンサーにありがちなのが、「100万円稼いでいます」とか、「毎日更新しています」とかです。毎日更新は(投稿を)追えばわかるんですけど、収益は自称ですからね。でも人って不思議なもので、それを信じてしまうんです。

なおかつ、調べないんです。白衣を着ていると、医者だと思うんです。みなさんが普通に車やバイクなどを運転していて、青い制服を着た人がいると、警察だと思ってスピードを緩めますよね。でも、ガードマンだったりするじゃないですか。人って、そういう見た目の印象で、行動がぜんぜん変わるということです。

僕が今日、スーツを着ている理由がそこなんです(笑)。ふだんはめちゃくちゃな格好をしているんですけど、「ちゃんとした人ですよ」というのを見せたくて、3年ぶりにスーツを着ています。今、暑いなと思いながら着ているんですけどね(笑)。

自称でも人は本当に信じてしまうので、自称で嘘をついたら、それは悪用です。でも自分の出せる専門性とか、見た目の良さとか、小綺麗さとか何でもいいので、そういったところをしっかり出すと、信用度が上がって、文章を読んでくれて、信じてくれる可能性が上がります。

権威の話でドクターや先生、教授と言いましたが、もう1つ、誰かの言葉を借りてくることも有効です。僕は先ほど、夏目漱石とスピッツを借りてきましたよね。あれは僕が言っているわけではありませんが、「見つけてきた俺すごいだろ」と伝えたいだけです(笑)。引用では、ちゃんとした人の発言を持ってこなければ、「だから何?」という話になります。

引用にはルールがあります。今回のセミナーであれば、内容に違和感がなく、文章としてちゃんと成立している部分と、先ほど言った「引用自体に価値がある」「誰が言っているか」という部分ですよね。最初、見た人は「何でこれを持ってきたの?」と思うけど、「聞いてみたら納得」となるように、持って来る文章には“謎感”もあるといいです。

ここは後で資料を読んでもらえればと思いますが、引用にはルールがちゃんとあって、それを守って使わないと著作権違反になるので気をつけましょう。著作権は、インターネットで「引用ルール」とかで調べればいろいろ出てくるので、今日は説明を割愛します。

「希少性」や「物語性」は人の心を動かしやすい

6つ目は希少性です。「期間限定」と入れると、人の心は動きやすいです。「限定何個」「限定何席」「明日までしか申し込めません」とか、あるいは「今申し込んでおかないと値上げしますよ」とか、未来の損をイメージさせることによって、人は行動します。いろいろな通販サイトがありますよね。「今だけこの価格」というのは、人の行動を促すための1つの仕掛けです。

最後、7つ目は物語性です。人って、物語が好きなんですよ。これに関しては2週間後に話すので、もし興味があれば、ぜひそちらにも来ていただければと思います。

これにも一定のパターンがあります。普通の生活で、誘いを受けても拒絶するけど、例えば誰か(自分を)導いてくれる人に会って、つらつらと連れて行かれて、困難を乗り越えていって、最後に(元の場所に)帰ってくるといったことです。『ジョーカー』のような悲しい話には当てはまりませんが、前向きなマーベル(Marvel)系は、だいたいこのパターンです。

来週もう1回出しますが、例えば『スター・ウォーズ』もこういう流れですよね。僕は、『スター・ウォーズ』は見ています。これだけは自信を持って言えます(笑)。例えば『アナと雪の女王』も見ています。エルサとアナがどういう行動をしていったかという流れがありましたよね。見ている人は、なんとなく頭の中に浮かぶと思います。

僕は映画が苦手なんですが、この構造がわかると、「どうせこうなるんでしょ」って先読みしてしまって、2時間見られないからです。それがいろいろな映画を見ていない言い訳です(笑)。このあたりは、次回話そうかなと思いつつ、今日はいろいろな話をしてきました。いきなり全部をやるのは無理なので、まずはレポートの状態でいいです。

いろいろなことを丁寧に説明する意識と、自分の感情と、どうだったかという「5W3H1R」、特にR「Result(感想)」です。使ってみて、言ってみて、自分の考えにいろいろな感覚を持たせるトレーニングによって、だんだん主張につながっていくようになるので、このあたりからぜひ進めていただければと思います。 

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