“超アナログ”だった家具工房がkintoneを導入した話

宗政伊織氏(以下、宗政):「家具工房がkintoneを入れてみた話」と題し、発表させていただきます。私は宗政伊織といいます。「政宗」じゃないです。なんだか大男みたいな名前なんですが、小さい人です。よろしくお願いします。

このままだとちょっといかついので、ギャルみたいなフォントに変えてみました。一昨年、高専を出ました。新卒2年目の22歳です。プリンが好きです。よろしくお願いします。

私の会社は、神戸市の中央区でフルオーダーで家具を作っています。職人が5人いて、営業設計が2人の小さい会社です。こんな感じで、一般の家の家具や店舗家具などを作っています。この前は、G7の偉い人が座るでっかい机を作りました。

オーダーの流れは、お客さんの話を聞きながら打ち合わせをして、採寸して、職人さんに作ってもらって、納品までしてもらいます。「心が浄化される」と話題の工房ブログも書いているので、ぜひ検索してみてください。

今までの説明でわかるかはわからないんですが、すっごくアナログな会社だったんです。何がアナログかといったら、とにかく全部が紙やし、進捗管理はホワイトボードに付箋を貼る、みたいな。

だから職人は、ホワイトボードに付箋が貼られた瞬間に「え。俺、これ作らなあかんの?」と、逆サプライズ(を受ける)ということが起きていました。

紙による案件管理で属人化が発生

宗政:紙を全部ファイルに入れて管理していたんですが、ファイルって見ないじゃないですか。なので、案件がちょっと属人化していました。そんな時に社長が、人材育成研修で出会ったのがkintoneです。私たちの会社では2021年の9月に導入をして、基本研修として入れています。

ここにいる稲澤(康博)さんというおじさんが、毎日来てくれて研修しています。おじさんがいつもたくさんお菓子を持ってきてくれるので、私は「お菓子を食べられる」と思って、研修をがんばっていました(笑)。

だいたいの形を作って、それを実際に次の研修までに使ってみて、直して……という感じでアプリを作っています。

まず一番初めに、すべての問題を解決するために作ったのが、この案件管理アプリです。これ、色がつくんです。中には地図とかを入れたり、タブをつけたりして、かわいい感じにしています。

見やすいし、全部の案件をこれで見られるし、正直「めっちゃ解決してもうたやん」って思ってたんですが、ぜんぜん解決しなかったんですよね。そこで問題が発生します。それは「職人が使ってくれない問題」です。

職人さんってやっぱりちょっと堅くて、どうしても(アプリを使うのが)嫌みたいなんですよね(笑)。私調べなんですが、「なんで使ってくれないんですか?」と聞いたら、「なんかよくわからん」「見にくい」とか、いろいろ言われて。

一番意味がわからんと思ったのが、「名前が嫌」っていうやつ。名前が嫌とか言われても、そんなん私のせいじゃないしという問題なんですが、とにかく「なんか嫌やねん!」みたいな感じでした(笑)。

有休の残時間をアプリで可視化し、取得率が3倍に

宗政:ここで私は3つのことをします。1つ目はとにかく聞くことです。でっかいiPadの画面を職人に突き出して、「ここを直したんですが、使いにくいですか?」みたいな感じで聞く。

次に、週1回のミーティングを始めました。色つきの案件の画面を見せながら、「これを見たら案件のことがわかるんやで」と、どんどん刷り込んでいきました。

そして最後に、絶対に触らないといけないアプリを作るということで、タイムカードアプリを作りました。タイムカードアプリは2つのボタンがついていて、押すと時間が記録されます。1ヶ月ごとの表で一覧で見た時に、上に残業時間とかが出るようになっていて、とても良きです。

押し忘れが多かったので、色も赤くしてみました。やっぱり赤って目立つので。出力したいなということで、krewDataを導入して一月ごとにまとめて、「ぷっ」と押したら「ぴゅっ」と出力できるようにしました。

ほかにも有給・代休申請アプリを作りました。これもボタン押すだけでできるんですが、推しポイントは上に残りの有給時間が出ることです。これは私のものなんですが、実は(有休が)1時間から取れるので、私はあと24時間しかない有給を1時間ずつコツコツ、ちまちま使ってます。これはちょっと革命的です。

こんな感じで有給の残時間がわかって、顔を見て社長に「お願いします」って言わなくて良いので、有給の取得率がなんと3倍になりました。ギュイーン!

職人さんからも「子どもが体調不良の時とかに、すぐに休みを取れてうれしい」「振り替えやすいわ」って言ってもらえたり。最近は、自分で案件管理を見て「次に入っとるこのでかそうなやつ(案件)、どんなんなん?」と聞いてきてくれるようになりました。

最初は渋っていた職人もkintoneを活用するように

宗政:あと、一番「えっ」と思ったのが、私がすっかり納品日を言うのを忘れていて、「すみません、今日納品なんですけど大丈夫ですか?」と言いに行ったら、こっちも見いひんと「知っとう。kintoneを見たから」って言われて。

私は「ふーん」と言いながらも、「え、kintone見たん?」と思ってうれしかったです。こんな感じで、最近は(職人さんもkintoneを)触ってきてくれるようになっています。

次に「材料発注アプリ(改)」というものを作ってます。これは「GT」にするか「スーパー」にするかちょっと迷ったんですが、もともとあるアプリをちょっと良くしようという感じで(作り始めました)。

このアプリは、種類を選んでいくとどんどん項目が絞られて、簡単に選べる。もちろん「ぷっ」と(ボタンを)押したら、そのまま発注表も出せて送れる仕組みになっています。

これの何が「改」なのかというと、今まであったアプリは私たち営業設計だけが使うものだったんですが、職人が直接注文できるようにしたアプリになってます。

ここまでスマホの画面がいっぱい出ていて、「なんでやろう?」と思っていた人も多いと思うんですが、うちの職人はみんなスマホしか見ていないので、スマホの画面を見やすくすることをとても意識して作っています。

このアプリは、作る時から職人に「どんなふうに使ったら使いやすいですか?」と聞いて、初めて一緒に作ったアプリなので、私的にはすごくうれしいなと思ってます。

1年7ヶ月で業務効率化を達成できた理由

宗政:そして、なぜ1年7ヶ月でここまでできるようになってしまったのかという話にいきなり飛ぶんですが、それには3つの理由があると思っています。1つ目は「めんどくさいは即修正!」です。アプリを使っていて「これ、2回入力しなあかんやん」と思ったら、すぐにそこを直す。

次に「1年後の自分が見てもわかる」。自分が何をしたかを書き記すことはすごく大事なんですが、あとから見やすいように「色つけてみた」「月そのままよ」とか、見やすい名前をつけることを心がけています。

そしてもう1つ。最後は「ナイスな環境」があったことです。私たちは月1回、伴走者の稲澤さんと社長と先輩と、大量のお菓子で研修を行ってきました。

その中で、「こんなアプリがあったら良いよね」「こんなことができたら良いかも」みたいな話をしながら作るので、自然と目標が共有されていた。そこに向かってアプリを作るだけだったというのが、すごく良かったなと思います。

その途中で「やっぱりこれ、プラグインとかを入れなできひんやん」となった時に、社長がその場で「じゃあCustomineを入れようか」「krewData入れようか」と、すぐにやってくれました。私がアプリを作りたいと思っている時に、最後まで学びを深めることができたことが、すごく大きかったのかなと思っています。

そして最後に。私は建築系の高専(出身)だったので、初めはITとかはぜんぜんよくわからなくて。kintoneと言われても、正直「ドラゴンボールかな?」としか思わなかったんですね。そんな中、初めの研修で稲澤さんから「理想と現実の間が課題で、その間をkintoneで埋めるんだよ」ということを教えてもらいました。

新入社員も社長も、kintoneに関しては“みんな初心者”

宗政:私は新卒で入社をして、やっぱり何にもできないじゃないですか。先輩みたいに図面がいっぱい描けるわけでもないし、会社の流れがわかっているわけでもない。

そんな中で「どんな顔をして座っとこうかな?」と、ちょっと思っていた時があったんです。そんな時に、良い意味で社長とも先輩とも同じスタートラインに立てたのが、このkintoneでした。

私が暇だったというのもあるんですが、「ちょっと直しといて」と言われたところを直したり、自分で見て「ここが変やな」と思ったところをちょっと変えたりするだけで、「ありがとう」と言ってもらえて。「私でも会社の役に立てているんかもしれへんな」って思うのがうれしかったです。

例えば、研修で「色をつけられるよ」と教えてもらって、「色をつけられるんやったらめっちゃ良うなるやん。やってみたいわ」と思って、やってみて、それができる。その流れがおもしろいなと思って、私はどんどんkintoneを触るようになりました。

最近はSNSをやってるんですが、kintoneを触っていくうちに「今はどんな地域の人がよく来ていて、どういうものが売れてるかを全部分析して、もっと広告を出すのに活かせへんかな」「今、職人が何をしているか、簡単で良いから上でも管理したいな」とか、やりたいなって思えることがポツポツ出てきて。

「アプリのこのデータをいじって、プラグインをぎゅっとやって組み合わせたら、たぶんできるんだろうな」というのがわかってきて、今はやりたいことにちょっと手がかかっている感じのイメージを持てるようになっているんですね。

「理想と現実の間」を埋めるのがkintoneの役割

宗政:初めは「理想と現実の間」とか言われてもよくわからんし、「理想? そもそも私、kintoneでなんとかしたいって思ってたわけじゃないのに、意味わからんやん」とか思ってたんです。

でも、今やっと手がかかってるものが理想で、理想と現実の間をkintoneで埋めてるんかっていうのが、最近やっと理解できるようになったと思っています。

この前、大阪のkintone hiveでそういう話をした時に、終わってからたくさんの人が私に声をかけてくれて。私の発表した内容で、アクションを起こすまで何かを感じてくれた人がいっぱいいるんやってことが、すごくうれしかったんですね。

なので今日の発表でも、大企業でもなく中小企業で、ましてや新入社員の私だからこそ、みなさんに身近に感じてもらえたらうれしいなと思います。

私の発表の中に、今までできるなんて考えたこともなかったようなことが含まれていたとして、それを見て「これをやってみたいな」「できるかもしれない」に変わるきっかけになったらうれしいなと思っています。ありがとうございました。

(会場拍手)

司会者:宗政さん、ありがとうございました! とても思いの伝わる素敵なプレゼンでした。ありがとうございます。

宗政:ありがとうございます。

社内のメンバーと外部パートナー、どう役割分担した?

司会者:では、さっそく質問タイムに移らせていただきたいと思います。宗政さんの推進力、本当にすばらしいなと思っていたんですが、社長と伴走パートナーの方たちの存在も大きかったんじゃないかなと思っています。

先ほど「プラグインを入れたい時に社長が後押ししてくれた」というお話がありましたが、伴走パートナーさんとはどういった役割分担で進めていらっしゃったんでしょうか。

宗政:稲澤さんはアプリを作ってくれる人ではなくて、私たちが「こういうことをしたいんですが、どうしたらいいですか?」と言った時にヒントをくれる感じでした。教えてもらいながら「あ、なるほど」という感じで作るというか。

司会者:なるほど。じゃあkintoneのプロと壁打ちをしながら、予算については社長が後押ししてくれながら、すばらしいチームワークで進められたんですね。

宗政:はい、そうです。

司会者:ありがとうございます。今日、いらっしゃいますか?

宗政:そこに職人さんもいる(笑)。

司会者:本当だ。すごく素敵なうちわを(笑)。

宗政:恥ずかしい(笑)。

司会者:素敵です。みなさんの仲の良さが伝わってきます。宗政さんのご登壇は以上となります。ありがとうございました。

宗政:ありがとうございました。

(会場拍手)