会社の経営が傾き、預金が「82円」になった過去も

立川健悟氏:みなさん初めまして。立川(タツガワ)と申します。どうぞよろしくお願いします。本日は、私の著書『お金持ちは合理的』の発売記念ということで、「お金持ちの合理的な思考と習慣を身につける」というテーマでお話をさせていただきます。

こちらの本は、(2023年)11月17日にすばる舎より発売されました。おかげさまでAmazon、楽天ともにカテゴリーのランキングでは1位、書店においても、渋谷、新大阪でビジネス書のランキングの1位を獲得させていただき、非常に好評を得ています。

まずは私の自己紹介を少しさせてください。立川健悟と申します。現在、ファイナンシャルプランナーとして活動しています。1980年生まれ、広島出身で、現在は川崎市で妻と息子と楽しい3人暮らしをしています。

ちなみに、私は最初からファイナンシャルプランナーの仕事をしていたわけではありません。大学を卒業して初めて就いた仕事は、広告制作会社のグラフィックデザイナーでした。

デザインの仕事はとても楽しく、いろいろ勉強しました。(スライドに)見えているのは私の本棚です。たくさん本を買って勉強し、演劇を観たり、音楽を聴いたりしましたね。

そんな私も、本当にお金がない時期がありました。東日本大震災により会社の経営が少し傾いて、給料が遅配された時には現金が82円しかありませんでした。

ちょうどその時、子どもが0歳とまだ生まれたばかりだったので、なんとか収入を得なければいけないと考え、転職活動を始めました。

そして転職した2社目が、不動産のITベンチャー企業です。そこで営業職に就くことになり、お金持ちの方たちと出会うこととなります。

お金持ちの思考を学び、現在はファイナンシャルプランナーに

お金持ちとのやり取りの中で、「君は何もわかってないんだね」と非常にかわいがられ、お金に関するいろいろな知識と知恵を教えていただきました。

教えていただいたことを実践するうちに営業スキルも上がり、できることが増えたこともおもしろくなり、仕事に絡めてお金持ちのみなさんに積極的にインタビューをするようになりました。

インタビューをする中で、お金持ちの思考や習慣などを学び、それを自分の仕事や生活に実践していくことで、仕事ではさらに成果が出て、会社の中では営業部を束ねる執行役員のポジションに就くことに。生活面では家族関係がとても良くなりました。

そして、会社が大きく成長して上場することができ、私は株主の1人ということもあり、そこで大きな資産を得たというのが私の2つ目のキャリアです。

自らの得た大きな資産の維持、お金持ちから学んだお金との向き合い方にさらに磨きをかけたいと考え、お金と向き合える最前線に身を置くことを決意。

さらには、私が学んだことをいろいろな人にアドバイスしたいと考え、今は金融機関でファイナンシャルプランナーとして活動しています。また今回の本には、私の投資経験や資格取得などで学んだ知識も盛り込まれています。

「使ったお金」よりも価値を出すことがポイント

では、ここから少し本の内容についてお話します。あらためて「富裕層とは?」。よく聞く言葉だとは思いますが、定義をおさらいします。

「富裕層」は金融資産を1億円以上持っている人です。5億円以上持っていると「超富裕層」と呼ばれますが、日本全体では2.7パーセント程度います。

あくまでも金融資産なので、それとは別に不動産などを持ってる人もいるでしょう。いわゆる資産家と呼ばれる人は、日本にはもう少し多くいます。

どうでしょう? 富裕層と聞いて、どんなイメージをお持ちでしょうか? ちなみに12年前に私が思ってたのは、「あまり考えず、金遣いが荒い人」というイメージです。

小中学生の頃、社会や歴史の教科書で「100円札を燃やしてる成金」という絵を見たことはありませんか? このぐらい、私も「お金を雑に使ってる人が、富裕層の人たちなんだろう」と思ってたことがあります。

しかし、実際のところは違いました。お金を使う時に深く考え、とにかくお金を丁寧に使う人。そして何より、お金を使うからには、使ったお金よりも大きな価値を引き出すことに非常にこだわってる人たち。これが富裕層でした。

「使ったお金よりも価値を出す」というのは、当たり前のことのように思えるかもしれません。しかし、それを徹底してやっていく姿を見て、あらためて「お金持ちは非常に合理的だ!」と感じたのです。

たとえ100円でも、お値段未満の価値なら買わない

この本は5章立てです。「①お金持ちのお金の使い方」「②広告に踊らされないお金持ちの思考」「③お金を自由に使うコツ」「④効果的なお金の活用法」「⑤お金の持つ最大の価値」となっています。

では、さっそく1章を少し説明します。「お金持ちのお金の使い方」はココが違う! という内容です。いくつか見ていきましょう。

先ほどもお伝えしましたが、お金持ちはお値段以上の時にしかお金を出しません。つまりお値段未満であれば、たとえ100円でも買わないのです。

私に、「あなたに1万円の物を売るより、私に100円の物を売るほうが難しいよ」と話をしてくれたお金持ちもいます。そのぐらい、たとえ100円であっても、本当に買うべき物なのかどうかを精査して、厳しい目で見ているのです。

次に、お金持ちは「買わされる場所」には近づきません。そもそもお金持ちには、外商など物を売る側の人たちから寄ってくることが多いものですが、お金持ちの方から買わされる場所には近づくことはありません。

「買わされる場所」の1つの例はセール。お金持ちは「セールには行かない」と話します。「自分の買いたい物以外にお金を使いたくない」という思いが強く、買い物は、必要な時に行くことを徹底しています。これは理屈もちゃんと通っていたので、あとでご説明します。

納得感のある買い物は、物への愛着も増す

次に「お金で買えないものにこそお金をかける」ルールです。お金はたくさん持ってるので、いつでもなんでも手に入ると思われがちですが、そんなお金持ちも「なかなかお金で買えないものがあるんだ」という話をされてます。

それが、知識や健康です。それらを持っていることで、中長期的に見て人生を有利に進められると言われました。例えば、知識でいうと「本」。お金持ちの方たちは積極的に本から知識を得ています。

例えば、マイクロソフトの元CEOのビル・ゲイツさんは非常に読書家です。毎年2回「今年のおすすめの本はこれでした」とご紹介されるほど、積極的に本から知識を吸収しています。

次は、お金持ちは高額商品を買う時に「維持費」と「将来の再販価格」に注目していることです。高額商品の代表例は家や車。維持費で言えば、車に関しては燃費の良さを意識しているお金持ちは多く、将来の再販価格で言えば、家は駅近、車は白か黒が選ばれています。

ちなみにお金持ちの買い物は、「安いからこれでいい」と妥協して買い物をすることはありません。「これがいい」と自分で価値を認めたものを選んで買っているのです。自分で「これがいい」と納得しているので、それぞれに愛着が湧いて、満足度も上がる訳ですね。

逆に、愛着が湧かない買い物をする人は、いずれ飽きてしまって「やっぱり別のものを買おうかな」と、つい散財してしまう傾向にあります。

ブランド品よりも先に寝具にお金をかける

そして最後が、長い時間を過ごす場所や道具から順にお金をかけるというもの。お金持ちは、高級品をたくさん持ってるイメージがありますが、実はブランドバッグよりも先に揃えているものがベッドや枕。

これは「コンフォート原則」と呼ばれる効果を考えた行動で、毎日長時間使うものから順にお金をかけると、幸福度や満足度が上がると言われています。

ブランドバッグを持っていても、体調が良くなったり、健康にいいということはありません。それならば、ベッドや枕を整えて睡眠の快適さを増すほうが、満足度も高く、幸福度も上がるのです。

その他、1章の中には、お土産の買い方やお金持ちが行っている家電量販店の活用法などについて書いています。

次に第2章では、行動経済学を無力化する「お金持ちマインド」について書きました。行動経済学はいろんなところでニュースになっていたり、本なども出ているので、知っている人も多いと思います。

行動経済学は、人間が直感や感情に左右されることで、ついつい非合理なことをしてしまうという心の動きに焦点を当てた学問。私たちは行動経済学を活用した販売戦略によって、お店に行った時に非合理な選択をさせられているのです。

お金は「物体」ではなく「数字」として捉える

いくつか例を挙げます。「『得』よりも『損』のほうがショック」というもので、こちらはプロスペクト理論と呼ばれています。みなさんも、ちょっと想像してみてください。

道で1万円を拾ってポケットに入れたあと、どこかでその1万円を落とした場合。もともと持ってなくて、拾ったお金のはずなのに、失うとなんだか損したような気がする……。

これは認識や感情の歪みによるもので、心理学者のダニエル・カーネマン氏は「人間は得よりも損を2倍大きく感じてしまうものだ」と理論付けています。

しかし、お金持ちはこの法則には沿いません。先ほどのような感情の揺さぶりを受けることがないと、口をそろえて話します。

私も昔はそうでしたが、お金を「物体」として捉えていると、失った時にすごく悲しく、ショックを受けるものです。しかしお金持ちはお金を「数字」として捉えることで、感情の歪みを抑えているのです。

ちなみにお金を数字で捉える感覚は、自分たちも習得することができます。例えば、クレジットカードや交通系のICカードのようなものにお金を入れて使うことで、お金を数字として捉える訓練ができるのです。