2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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宮﨑敦子氏:今回、私のことを知っている方も参加していただいてると思うんですが、はじめましての方もいらっしゃると思います。まず、はじめまして。
2020年4月から先端研(東京大学先端科学技術研究センター)の身体情報学分野特任研究員をしております。宮﨑敦子と申します。学位は医学博士で、脳科学が専門です。
また、Dr.DJ ATSUKOという名前で、研究者よりも長くDJをやっています。ジャンルはハウスミュージックです。今回そのDr.DJ ATSUKOと宮﨑敦子が初コラボする機会にもなりました。なかなか研究者の私とDr.DJが結びつくことがなく活動してきましたが、初コラボとなりました。
今回の『聴くだけで作業効率が自然に上がる! すごい音楽脳』という本では、実際に自分で実験した結果をまとめることにこだわりました。なので、初めて「この本を書きましょう」とモリシタさんという編集者さんに声をかけてもらってから、実験した結果を全部まとめるまでに、7年くらいかかりました。
もう1つご紹介すると、脳科学と音楽と言った時に、いろんな仮説が立てられます。私が一番研究のアイデアが出てくるというか、自分のやりたい研究がまとまっている図を1つ見ていただきたいと思います。これは2012年で、ちょっと前の研究にはなるかと思います。こちらの論文※ではビートを知覚する、つまり(ビートを)聞いている脳の領域が研究されています。
テンポが速い音楽と、テンポが遅い音楽。「200BPM」、「80BPM」と書いてありますが、BPMは1分間に4分音符を打つ回数でどのくらいの速さかを表す表記の仕方です。200BPMと言うと、1分間に200回打つので速い曲。80BPMだと1分間に80拍になるので、ゆっくりな曲となります。
速い曲でも遅い曲でも、脳の活動する場所は同じです。今、(スライドに)脳の図があると思います。その、オレンジとか赤色とか色がついたところは、脳の活動が起こっているところになります。
遅くても速くても活動する場所は一緒。ただし、速いBPMの時に脳活動が大きくなります。場所は同じだけど、脳活動は、速い曲を聴いてるほうが刺激が強いというか、脳の活動を高めるという研究の結果でした。
この図が、私の脳科学の研究のベースになっています。こういうビートとかリズムの研究を本にまとめさせていただきました。
今日みなさんにお話ししていきたいことは、この本で言いたかったことです。「Music with You」。私たちは、音楽と一緒に生きていると思うんです。音楽があって良いこととは何かを研究したいと思っています。
音楽って見ることができませんが、Googleで検索した時に、音楽に合わせて踊っているようなイラストや写真がたくさん出てくると思います。これは本当に世界中どこでも、歴史を遡っても出てきます。
一番古い楽器の写真がありますが、4万年前というすごく昔の楽器です。これが(現在も)残っている世界最古の楽器であると掲載されていたので、持ってきてみました。これはたまたま材料が骨だから、4万年前の資料として残っているんだけど。残らないものでも、もっともっと前から楽器はあったと思うんですね。そう考えるとやっぱり、人間が生きていく上で音楽が一緒にあるという流れがあるとわかります。
そして、最近の話でまとめていきますと、レコードとか、カセットテープとか、若い人だと見慣れないものかもしれません。私たちはレコードとかカセットに囲まれていました。私はレコード屋をやるくらいレコードが大好きで、お昼ご飯を抜いてでもレコードを買っていました。
レコードってなくても生きていけるものです。でも何よりもレコードが欲しかったんですね。今はCD、MD、あとはスマホとサブスクという感じでより便利になって、私たちは音楽を使うことができています。
まず、本のチャプター1、チャプター2の「速いテンポで楽々認知機能をアップ!」の話をしていきたいと思います。さっき言ったように、音楽が身近になっていて、私たちはすごく音楽を使いやすい環境にあります。
「音楽は勉強や仕事のパフォーマンスに影響を与えるか」ということについて過去の論文を調べましたが、UKのオフィスワーカーは、週の3分の1は仕事をしながら音楽を聴いていると。2011年の論文ですが、今はサブスクで聴き放題だし、いつも持ち歩いているスマホで聴くことができますから、今はもっと音楽を聴きながら仕事や勉強をしているかもしれませんね。
じゃあもっと昔はどうだったかと言うと、1935年、学生の68パーセントが勉強中にラジオを聞いていたと報告されています。つまり、もし勉強や仕事の邪魔になっていたら音楽を聴くことはしないですよね。あるいは音楽を聴くことで何かいいメリットがあるのではないかと考えることができます。
先行研究を調べると、音楽と勉強や作業との関係についての研究は、大きく分けると2つの効果があります。勉強や仕事は認知的に負荷をかける作業をすることなので、認知課題をしていると言えます。音楽を聴きながら何か作業や勉強をすることはBGM効果と言って、バックグラウンドミュージックとしての音楽効果の1つがあります。
あと、もう1つはモーツァルト効果。音楽を聴いた後に認知課題、つまり作業や勉強をした時の効果を検証する。大きく分けるとこの2種類があります。ちょっとユニークなので、このモーツァルト効果についてお話ししていきたいと思います。
モーツァルト効果とは、モーツァルトが作った、2台のピアノで弾く『K.448』(ケッヘル448)のピアノソナタの曲。この音楽を聴いた後に、今(スライドにある)、折りたたんだ紙に切り込みを入れて開くとどの形になるかという、空間認知課題※が出ています。
これはIQにも関係してくる課題です。モーツァルトを聴いた後に、この空間認知課題をやるとスコアが良くなるという、『Nature』にも載った論文です。まず、モーツァルトのこのピアノソナタ『K.448』はどんな曲か。本だとお聞かせできなかったのでこちらで再生しますね。みなさんも知っている有名な曲ですよ。
(音楽が流れる)
この曲を聞いていない時、あるいはリラックスするような音楽と比較して、この曲を聴くと空間認知課題のスコアが8点上がったという研究でした。IQに関しては私たちはあまり変わらないと言われてますが、聞いただけで8点上がると、非常に話題になった論文でした。
この効果を作業環境……図面を描いている人とかは、空間認知は使いますけど、なかなか日常的な仕事の内容とか作業の時には、空間認知課題はないので、私は短期記憶課題(で検証します)。短期記憶課題とは、ちょっと覚えて、それを使って何かする作業です。
今回の実験では、数字を8個並べて3秒間見てもらいました。3秒間見てもらった後に、一瞬消えて、「9は入っていましたか? 入っていませんでしたか?」という質問に、イエス・ノーで答える課題です。
こういった短期記憶課題は、私たちの日常の仕事の中でよく使う、非常に頻度の高い課題です。この短期記憶課題を、「モーツァルト効果で再現できないかなぁ」と思ったのが、今回の実験の内容になります。
さっきちょっとお見せした、私の研究のインスピレーションになった非常に重要な研究の図ですけれども。これは、速いビートを聞いている時に、脳の活動が非常に高くなる場所がわかるという研究でした。
この研究を使うと、テンポの速い音楽、あるいは速いリズムと、短期記憶課題の認知機能との関係性について仮説を立てることができました。速いリズム、つまり、速いビートを聞いている時に、下前頭回というこめかみのあたりですね。IFG(Inferior frontal gyrus)と書いてありますが、左のこめかみのあたりが、賦活(ふかつ)して脳の活動が高くなります。
また別の論文です。(スライドの)下の図は、速い音楽を聴いている時の脳活動ですが、この時にも下前頭回(こめかみ部分)の活動が高くなりました。
よって、速いビートや音楽は、短期記憶に重要な、こめかみにある下前頭回、IFGの活性につながるのではないかと考えました。短期記憶課題は下前頭回の活動が必要です。つまり、その前に速い音楽とか速いリズムのものを聴いて脳の準備運動をして、その後に短期記憶の課題をやったら、ベストなパフォーマンスができるのではないかという仮説を立てました。
実際に実験をしてみます。先ほどやりました、数字を覚えてもらって、イエスかノーで答えてもらうという課題です。この過程で脳活動として起こっていることを、簡単に図で書きます。
この数字の課題があって、その課題を頭に入れます。それを、ボトムアップと言っています。この課題を頭に入れるのに、先ほどのこめかみの部分の活動が重要ですよ。数字の情報をボトムアップして脳に情報が入るわけです。
そしてイエスかノーか答えるのがトップダウンになります。ボトムアップに対して1回頭に入れたことを判断して、そして答えるのがトップダウンですね。このような短期記憶の課題に関係してくる脳の活動は、ガンマ帯域と呼ばれる周波数帯域でわかります。脳が活動して記憶や認知機能を発揮している時、高次な認知機能の課題をする時の、脳の活動を反映するのがガンマ帯域になります。
その周波数帯域を計測すると、この脳の活動はこんな感じになります。
まずボトムアップされて、頭の中で、当たっているか当たっていないかを判断します。ボトムアップとトップダウンのタイミングで30から100ヘルツ……という高い周波数帯域で、あるガンマ帯域が発生しています。
この周波数帯域で、課題を頭に入れる脳活動、ボトムアップのガンマ帯域が発生します。これは惹起(じゃっき)と言われます。そして「うーん、こっちかな?」と判断し課題に対して答えますね。それが想起と言われます。惹起と想起で、私たちはイエスかノーか答えることができます。
ちょっと本にも書いたんですけど、MEGとは脳の磁場を計測するものです。脳の細胞が活動すると電気が起こります。これは脳波と言って、よく知られているものですね。電気が発生すると、磁場が発生するわけです。その磁場を測るのが、このMEG。
この脳の活動を見るには、みなさんに課題をまず覚えてもらいます。まず惹起。次に保持。そして答える・想起するステージがあるわけです。この短期記憶には、実は2種類の正答がありますが、正答とは何ですかという話です。
今、「29463425」という数字を覚える課題がありますね。この中に9があったか、なかったか。「9がありましたよ」と答えると正解ですよね。それが、スライドの上のほうの「あった」です。
「なかった」も、実は正当になります。例えば「29463425」という数字を覚える課題があります。この数字の中に「1」が入っていましたか? その場合、「入っていなかったよ」と答えるのも当たりですよね。なので、この2種類の正答がある。
さっきの「29463425」に「あった」と言うのは簡単です。なかったと答えるのは1234567890まで全部考えて、それで「あ、なかった」と考えないといけないんですよね。なので、「なかった」のほうが時間がかかります。つまり、この「なかった」という正答の時に時間が短くなっていれば、作業効率が上がったと考えます。
実験の縦組みをお話しすると、今回は5つの条件を作りました。さっきの数字を覚える問題を、5つのパターンで解いてもらいます。1つめは速いテンポの音楽。
(速いテンポの音楽)
ちょっと速めで流しました。次は速いテンポのリズム。これは、さっきの曲のメロディーをなくして(メトロノームで)リズムだけ出します。
(速いテンポのメトロノームの音)
さっきの曲の速さだけど、メロディーがないこのパターンでは、私たちは速さだけを知覚することができます。じゃあ、遅いテンポの音楽です。
(遅いテンポの音楽)
同じ曲ですけれども、だいぶ遅いテンポにしています。次に(メトロノームで)遅いテンポのリズムを出します。
(遅いテンポのメトロノームの音)
さっきの遅いテンポの音楽と同じ速さで、メロディーがないものをリズムとして作りました。そして、無音の時にも同じ課題をやってもらいます。
この課題をやってもらってる時の無音の状態から、音楽・リズムがある4条件を引きます。そうすると音楽があった状態の効果と、リズムだけの状態の効果がわかります。つまり無音でこの問題を解いてるのはこの人の実力です。その実力の差をなくして、この音楽の効果を知りたいので、実力の部分を引いているということです。
そしてプラスやマイナスがわかりますね。無音の時よりも音楽やリズムがあったほうが、正答率が上がりました。したがって実力(だけで課題を解く)よりも、音楽の効果があったことが、まず1つわかります。
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