プレイングマネージャーはどう自分の「成長機会」を確保するか

田久保善彦氏(以下田久保):グロービス経営大学院の田久保です。このコーナーでは、みなさまからお寄せいただいたさまざまなご質問に、私からお答えさせていただいています。

今日のお悩みは、「今までの実績が認められて若くしてマネージャーになったけれど、自分の能力開発もやりたいし、部下の能力開発もしなければならない。こんな状態に置かれた時に、何かいいアイデアや対応策はありますか?」というご質問です。

「若いか・若くないか」に限らず、良し悪しは別にして、日本の会社では「プレイングマネージャー」に置かれることは非常に多いと思うんですね。プレイヤーとしても働いてほしいし、チームをマネジメントする仕事もしてほしい。そんな状態です。

こうなった時に、1つアドバイスがあるとすれば、例えば年末に、今年1年間自分がやってきた仕事をざっくり棚卸ししてみる。棚卸ししたら、それを「マネージャーの仕事」と「プレイヤーの仕事」に分けていただきたいんですね。

マネージャーの仕事は、基本的には「プレイングマネージャーであるあなたにしかできない仕事」と分類されると思います。一方で、プレイヤーとしてやってきた仕事は、あなたの抱えているメンバーに渡すことができるかもしれません。

そうすると、例えばプレイヤーの仕事が40パーセントありました。その40パーセントのうち、20パーセント、掛け算すれば40パーセントの20パーセントですから、8パーセント。

ざっくり言うと10パーセントを、翌年みなさんの部下に権限委譲すると、机上の空論みたいにも聞こえるかもしれませんが、全体で10パーセント分ぐらいの空間ができるはずです。

その10パーセントの部分に、新しいチャレンジ課題を持ってくることができれば、ご質問された方の、プレイングマネージャーの方の能力開発に必ずつながると思います。

「誰に」「何を」「どこまで」…部下に任せていい仕事の基準

今年まであなたがやってきたことのうち、ところてん方式でむにゅっと出た10パーセントをメンバーに渡す。渡された側も、今度は自分の10パーセントか15パーセントの仕事を、その人のメンバーや後輩に押し出さないと、たぶん回らなくなりますよね。

そうすると、上のほうからところてん方式でどんどんどんどん仕事が押し出されていくと、結果的に組織全体の質が上がることにつながるのではないかと考えます。

プレイングマネージャーの方がご自身の能力開発の機会を獲得するためには、まずはご自身の仕事を棚卸しして、「これなら任せられる」「これは任せない」と分けていくことがとても大事です。

こうなると、次の課題は「何を任せるのか」「どこまで任せるのか」「誰に任せるのか」という話になります。基本的なルールは、任せたことについて問題が起きた時に、ご自身でそれを肩代わりできて、完全に責任を取ることができるものから渡していくことをお勧めします。

問題が起きた時に、「見てびっくり、聞いてびっくり」みたいなものを渡してしまうと、いきなりその状態で自分のところに降ってきても、にっちもさっちもいかなくなる場合が多いと思いますので。

まず、自分が確実にやれることから切り離していく。そんなマインドセットを持って、ご自身の仕事の棚卸しと権限委譲。これを組み合わせることで、自分自身の成長機会を獲得する。そんな努力をされてみてはいかがでしょうか。

本日はこれで終わりにします。