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口コミ&Z世代マーケティングから判明!選ばれる企業の方程式(全4記事)

就活中の興味1位は年収だが、辞める理由の1位は年収ではない 今の若手が職場や上司に求めること

社会の大変動に対抗し、新時代の組織づくりと経営戦略の本質を掴むことを目的に開催されたカンファレンス「SmartHR Next 2023」。本記事では、オープンワーク株式会社の社長・大澤陽樹氏とSHIBUYA109 lab.所長の長田麻衣氏が登壇したセッションの模様をお届けします。3年以内に辞める若手の退職理由や、人事や会社の意識変革の必要性などが語られました。

前回の記事はこちら

新卒入社から3年以内で辞める人の退職理由

大熊英司氏(以下、大熊):ここまで、(Z世代に)選ばれるための話を聞いたんですが、選ばれた後も続けてもらわなくちゃいけない。入社後、早期退職してしまうZ世代も多いということで、離職の理由にはどんなものがあるかを大澤さんにうかがいたいと思います。

大澤陽樹氏(以下、大澤):「OpenWork」の口コミの1つに、「退職検討理由」という項目があります。実際に辞めた人の退職した理由が書かれていて、現職者の方も「退職するとしたらこれが理由です」と書いていただいているデータです。

これも機械学習を使って、新卒で入社した人、そして入社から3年以内の人に絞って、すでに退職検討理由を書いた方がどんなパターンで辞めているか、どんな理由で辞めやすいのかを調べたのが、このデータになります。

でも今聞いていて、少し前置きをしたほうがいいかなと思って。「OpenWork」を使っている方は全Z世代ではなくて、わりと多いのはがんばって勉強していい大学に入って、キャリア意識がちょっと高くて、自分で会社も調べてよりいいキャリアを歩むにはと考えている方なので、その前提を置いてもらうと。

大熊:全体ではなくて、ちょっとまた違う思考の人もいらっしゃるんじゃないかということですね。

大澤:さっきのリスク分散にちょっと似ているかもと思ったのですが、キーワードは一言で言うと、不満ではなく不安で辞めている方がすごく多いです。

大熊:不安。

大澤:不安。今まで、私たちみたいな世代のイメージは、例えば年収をもっともらいたいとか。

大熊:そうですね。お金が少ないとか。

大澤:そう。あとは勤務時間が長い。そういうのは納得いかない。上司が不満だ、みたいな不満がある。

だけど、わりと将来への不安で辞める方が多い。例えば仕事や配属。「配属ガチャ」という言葉があるんですけど、入社した時に自分が本当に入りたかった部署に入れない。これが配属ガチャと言って、そこに居続けて本当に自分は大丈夫なのかと不安になる。

組織の社風も、自分がこのままここに居続けた時に、「ぬるま湯」とよく言うんですけど、「ぬるま湯にいて大丈夫か」とか「成長環境があるか」というところで、辞めている方が多い。

就活中の興味1位は年収だが、辞める理由の1位は年収ではない

大澤:公開していないおもしろいデータがあるんですけど、就活生が就活している時に「OpenWork」のデータの何を一番見ているかでいくと、1位が圧倒的に年収なんですね。やっぱり年収に興味があるんです。

大熊:まあ、たくさんもらえたほうがうれしいですもんね。

長田麻衣氏(以下、長田):まあ、確かに。

大澤:なんですけど、入社してから辞める時、年収で辞めている人は5人に1人くらいしかいないんです。5番目です。みなさん年収とか気になるんですけど、実際に入社した後に辞める理由はそういった不満じゃなくて不安なんですよね。

先ほど髙倉さんがおっしゃっていましたが、自分が70歳まで働かなきゃいけないとなった時に、「この仕事をしていて自分は食っていけるのか、生きていけるのか」という不安のほうが勝ってしまう。リスク分散したいというのが、けっこう辞めている理由です。

今、「あまり厳しく言うと……」とか「成長させようとすると嫌なのかな」と思って控える企業が多いんですけど、逆にそれが理由で辞めている人が多いよというのは、僕は知っておいたほうがいいことかなと思っています。

大熊:「これやれ、あれやれ」じゃなくて、どういうふうに成長させてあげるかをちゃんと提示できるかどうか。言い方もあるんでしょうけどね。

大澤:もう1つ、補足みたいなデータですけど。よく言うのが「働き方改革をうちもやろう」「残業時間を減らそう」「有給消化率を上げよう」。これはいいことなんですけど、結論だけ言うと、あまり会社満足度に効かなくなっています。

もはやあって当たり前。残業、有給消化はむしろ取れて当たり前だよねと。そんなところではないと。20代成長環境とか社員の士気が高い会社のほうが、年々総合的な満足度が上がっているんですよ。

最近、TikTokとかを採用に使っている会社が多いんですけど。「うちはいい会社です」とか。

長田:ありますね。

大澤:「めちゃくちゃ休めます」とかやっているんですけど、打ち出し方を間違えているんですよ。

実は、そんなのはもうあって当たり前で、その会社に入ったら自分は本当に食いぶちに困らないか。自分は本当にこの後も稼げていけるか。活躍できるかという不安を打ち消してあげたほうが、僕はいいんじゃないかなというのがデータから見えてきたところですね。

今の若手が職場や上司に求めること

長田:確かに、今の若者からけっこう聞くのは、やっぱり研修や育成とか、寄り添い型になっているかというところです。上司に対して求めることも、引っ張っていってくれるとかではなくて、丁寧に教えてくれるとか、寄り添ってちゃんと向き合ってくれるとか、そういう言葉のほうが多くなっている。

士気を上げるとかももちろんそうだと思うんですけど、成長環境をちゃんと作ってあげている、コミュニケーションができているかみたいなところがすごく大事です。

大熊:「見て覚えろ」じゃないってことですね。

大澤:そうですね。

長田:人にもよるんですけど、やっぱり丁寧に教えてほしいというのが多い。成長を実感できる向き合い方をしていかないと、やる気も下がっちゃうし、辞めちゃうことにつながるんじゃないかな。

大熊:長田さんはZ世代と接しながら、早期退職の理由はどんなところだと思われますか?

長田:さっきの研修・育成制度の部分かなというところと、あと、大きくはコミュニケーションの部分だなと思っています。

例えば、先ほどジェンダーの話を少しさせていただいたんですけど、普通に上司や同僚と話している時に、「男の子なんだからこうしなよ」とか「女の子なんだからこうしなよ」というところ。

あとは「なんか女子力あるよね」とか、褒める気持ちで言っている言葉が、「なんで女の子だからとか男の子だからで、そんなにやり方が変わるんだろう」と感じる。コミュニケーションの中での違和感を感じるというのは、調査の中でもZ世代全体で6割くらいが回答していたりします。

彼らは多様な人たちがいて当たり前で、「こうである」という固定概念に縛られることをすごく嫌がったりする。決めつけのコミュニケーションは、すごくNGです。そこがやる気をそいでしまったり、会社に対するモチベーションが下がる結果にもなるというのは聞いています。

次世代の活力を出すための、人事や会社の意識変革

長田:なので、男女だけじゃないと思うんですけど、年齢だったり、「Z世代なんだから社会課題とか関心あるんでしょう?」ということもよかれと思って言っていると思いますが、「私、Z世代だけど別に社会課題に興味ないし」という子もぜんぜんいる。

「女の子だから」「男の子だから」「Z世代だから」とかくくらずに、「あなたはどうなの?」「Z世代って社会課題に関心あるって聞くけどどうなの?」とか、やっぱり個にちゃんと目を向けるコミュニケーションをしないといけない。私も嫌ですし、もっと下の子たちにとっては本当に受け入れられなくなってきているというのは思いますね。

打ち合わせの後に「あの会社の人の発言、やばくなかったですか」と後輩に言われることがけっこう多いんですよ。

大澤:へぇ~。

長田:なので、私もけっこうちゃんと言うようにしているんですけど、「でも、そこで『まあまあ……』とか言っても、『え、この人受容するんだ』って思われちゃうな」と思って。

大熊:自分たちの時は新人類とか言われても、「周りが言っているだけで、自分たちは思ってないから」じゃなくて、「なんでそんなことを言うの」という意識になっているってことなんですね。

長田:「それぞれ違うじゃん」「細分化・多様化しているのが前提なのに」ということがあるので、すごく大事だなと思いますね。

大熊:髙倉さんもどうですか?

髙倉千春氏(以下、髙倉):いやいや。非常におもしろいなと思ったんですけど。私も10年前に働き方改革をやって、我々の時代は……大熊さんもそうかもしれませんけど、「24時間働けますか」といって成長を押し上げてきたというプライドがあるわけですよ。

だけど、それじゃだめだよねって時間短縮しました。それはもう所要の条件という状態で、「当たり前なんだから、そこを掘ってもしょうがないでしょ」という話はとても刺激でした。

「じゃあ、その次にどこにいくの? できた時間をどうするの」って、自分たちの人事の意識を変えなきゃいけないなと。一括管理は楽なんですよ。「この人たちはこうだから、こういう施策を打っておきましょう」「こっちの世代はこうだから、こう」「おそらくこれが大事そうだからこういうふうに聞いといたらいいな」とか。

もはやそうじゃなくて、個人個人違うんだという意識変革を人事や会社がしないと、次世代の活力は出ないなというのが、今まで聞いてきたところですね。

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