2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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デジタルハリウッド大学で開催された「近未来教育フォーラム2023」。生成系AIを中心に、人工知能やビッグデータに精通した専門家による対談などを通じて、教育の未来について議論しました。本記事では、IT批評家の尾原 和啓氏とデジタルハリウッド大学の教授・橋本大也氏の講演の模様をお届けします。人工知能が人の心を動かせる日は近い? 抽象化が苦手な人がAIを使いこなすコツは? など、両氏がさまざまな疑問に回答しました。
細野康男氏(以下、細野):尾原さんへのご質問がまた来ておりまして、先ほどの「価値=差異×理解」と。
尾原和啓氏(以下、尾原):はい。「違い×理解」「差異×理解」。
細野:(この文脈で「差異」をどのように解釈したらよいのか? を確認しているシーン)「差異」というと……。
尾原:リファレンスですね。リファレンシエーション。
細野:「あらためてご説明、解説をお願いしたい」というご質問です。
尾原:価値というのは、同じものだったら同じ価値になっちゃいますよね。違うものだから、その違いに価値を感じるわけなんです。
価値が理解の範囲を超えちゃうと人はわからないから、「怖い」とかむしろネガティブになっちゃうわけですよ。だから、理解の幅のぎりぎりの違いを攻める、ないしは理解の幅を広げていくことによって価値がわかる。そういうことをやっていく必要性があるっていう話ですね。
細野:ありがとうございます。先ほどの「ラストワンマイル」が響いた方もいらっしゃっていまして、「人工知能が人の心を動かせる日は近いと思われますか?」というご質問です。
尾原:GPTの一番でかい影響は、「人間がどう感じるのか」という評価モデルをAIで作ったことなんですね。
GPTそのものは「もっともらしい文章を作ります」というだけの機能なんですが、めちゃめちゃ人間にとって便利じゃんと思わせたのは、人間っぽい答えとか、人間が「いいね」と思う答えに関しては評価をして返す、評価AIを作ったことなんですよ。
現状で言うと、テキストに関して評価するAIがあるからいいAIモデルを作れるというのはあるんですが。もしかしたらマルチモーダルのように、「これはいい絵だよね」「これはあんまり人の心を動かさない絵だよね」と、絵、動画、音楽だったり(を評価する)評価モデルAIができる可能性がけっこうありますものね。
橋本大也氏(以下、橋本):人の心を動かすAIの事例をちょっと持ってきているので(笑)。
尾原:ええ!?
細野:すでにあるんですね。
尾原:大也GPT、ヤバイなあ。
橋本:「ぐっとくるAIクリエイティブ」として、1つ目はご存じだと思うんですが、松尾(公也)さんという方が、10年ぐらい前に亡くなられた奥さまの写真を合成して、EAGLESの『Desperado』を歌わせて賞を獲ったものです。これも愛が伝わってくるすごい作品だったんですね。
尾原:これな。いやぁ、本当に。
橋本:世界中でAIで故人を蘇らせるプロジェクトはあって、松尾さんだけではなく、いろんなことが行われています。チャットのログから会話までできるようにするものなんですけが、次にご紹介するのが、韓国で数年前に小さい娘さんを病気で亡くされたお母さんの映像です。ちょっと見てみてください。
尾原:みなさん、ハンカチを用意してください。
橋本:長くなってしまうんですが、これはかなり人の心を動かすAIだと思うんです。ただ、完璧なCGってわけでもない。
尾原:そうですね。
橋本:ねえ。だけど、あれで十分ですよね。たぶんお母さんも、AIだとはわかっているはずです。わかっているんだけど、あれを出されたらもう泣いちゃうんですよね。だから、こういう企画をして、デザインをしていく。それにAIを使うことがすごく重要なのかなと思います。
尾原:そうですね。
尾原:いい話の中でちょっとだけテクノロジー的にしてしまうと、人間は何らかの文脈だったり、何らかのエピソードに感情がひも付いていることが多くて。
今日(イベントは2023年11月18日)、取締役を解任されて退任したOpenAIのグレッグ(・ブロックマン)が前に言っていた話なんですが。
GPTを作ったきっかけの1つが、GPTの初期の頃にAmazonのレビューを大量学習することで、どの商品の何がいいのかを識別しようとしたら、結果として「この商品に何の感情を持っているか」という、感情分類器ができちゃったという話があって。
レビューの中には、「どの商品に対して憤ったか」「どの商品に喜んだ」という大量のエモーションエピソードが入っているわけですよね。これを学習しちゃうと、「ビデオによって人がどんな時に喜んだか」ということを学習するから、ビデオで喜びを強化するためには、どんな内容を流せばいいのかがわかっちゃう。
大量のナラティブデータベースであり、そのナラティブの中で「大也さんをくすぐるアテンションを持ったものを表出します」みたいな。
クリエイティビティとか、人の心を動かすとこを理数系で分解していいのかっていうのは(問題提起として)常にあるんだけど。とはいえ、厳然としてああいうもの(亡くなった娘をAIで蘇らせた映像)を見ちゃうと泣いちゃいますからね。そこのバランスはすごく難しいですよね。
細野:お時間的に、もう少しで最後となります。ご質問があと1個来ていますので、これも取り上げさせていただければと思います。「抽象化が苦手な人はAIは使えないんでしょうか?」というご質問です。
尾原:どうですか? 抽象化の権化の大也さん(笑)。
橋本:いやいや(笑)。抽象化が苦手な人がAIを使いこなすためのコツ。指示を出すために、抽象化したりしてプロンプトを作ることは、すごく重要なことだと思います。抽象化できるということは、俯瞰して見られているんだから、その分野に関して十分知識・能力があると言っているような気がするんですよね。
そういった意味では、やはり抽象化する能力は重要で、それがある人がよりAIを使いこなせるということだと思いますね。抽象化というのは、その分野に関してちゃんと詳しいってことだと思うので。
尾原:そうですね。もともと僕はマッキンゼー出身なので、「ロジカルシンキングをやりたいです」「コンサルティングを考えられる人間になりたいです」とかよく言われて。
そういうのはセンスって言われるんですが、僕からすると引き出しの量の多さが8割で、多い引き出しの中からどれとどれを組み合わせるかという、残りの2割がクリエイティブだと思っていて。抽象化が苦手な人って、単純に引き出しの部分がまだ足りないことが多いなと個人的には思うんですよね。
尾原:おもしろいのが、(前田裕二氏著作の)『メモの魔力』という90万部売れた、「抽象化すると、自分のビジネスや自分のキャリアに転用できますよ」というすばらしい本があるんです。
あれと同じで、例えば「『スターバックスって他より高いのに、なんであんなに毎朝通う人がいるんですか?』というのを抽象化してください」と(GPTに)言うと、「スターバックスには居場所効果があると思います」「毎日習慣化することによって、自分が元気になるためにお金を払っているんです」とか。
さっき言ったように、GPTは大量の引き出しを持っているものですから、抽象化の引き出しをある程度教えてくれるんですよね。毎日訓練していると、だんだん自分の中にGPTが出来上がってくるから。
尾原:みなさんのご質問を聞いていると、「クリエイティブとは何なんだ」「抽象とは何なのか」「コンセプトは何なのか」というところ自体に、もともとみんなが憧れがあるというか、そこを再構築していくことが大事かなと思うんです。
デジタルハリウッドであれ大也さんは、ここのクリエイティブは再構築されていくとお考えですか?
橋本:そうですね、スライドで……。
尾原:また事例が出てくる(笑)。
尾原:すごいな。僕の仮説は、だいたいOpenAIもMicrosoftもGoogleも、GPTの貢献はプロダクティビティとクリエイティビティだと言うんですよね。要はプロダクティビティって、クリエイティビティという試行錯誤を作るための隙間作りだと、個人的に思っているところがあって。
橋本:そうですね。スライドが準備できました(笑)。
尾原:ありがとうございまーす。
橋本:(笑)。
橋本:私がこの10年で思うところは、AIの侵略に聖域はないんじゃないかっていうことなんですね。
尾原:おお。まずね。
橋本:だって10年前は、データサイエンティストは思考力とかが重要だったんです。
尾原:そうね。
橋本:ところが、人間しかできないと言われていた「創造力」が、だんだん侵されている。リーダーシップやコミュニケーション、思いやりとか人間らしさも、もう怪しいですよ。いわゆる「心の理論」というか、人の心をわかるための心理学の理論がありますが、あの問題をChatGPTは一部解けているんですよね。
尾原:そうですね。「これをみんながどういうふうに思っている?」と聞くと、言ってくれたりしますからね。
橋本:そうよ。だから、ちょっと鈍い人よりChatGPTのほうが優しいし、思いやりがあるんですよ(笑)。
尾原:そう。GPTのほうが空気を読むんですよ。
橋本:だから(スライド右側の項目は)全部真っ赤みたいな状態です。
尾原:(笑)。
橋本:どれを鍛えても(GPTに)抜かれる可能性はある気がします。やはりメタに視点を上げていくことが重要で、クリエイターの人がディレクター、ディレクターがプロデューサー、プロデューサーがエグゼクティブプロデューサーというふうに、AIを使うことでそれを越えていかないとダメなのかなと思ったり。
尾原:そうですね。
橋本:あと、人間とAIで戦うということはあんまりしなくて、「人間+AI」がAIと戦うとか、あるいはこう(「人間+AI」が人間と戦う)。でも数年するとみんな使うから、「人間+AI」が「人間+AI」と戦うゲームになっていくのかなと思っています。
ただ、5年ぐらいはしばらくこういう(「人間+AI」と人間)戦いがあるので、知っている人はアドバンテージがある。いずれはスマホやコンピュータやインターネットみたいに、みんなが使っちゃう気はします。
尾原:そうですね。
尾原:これを見て思ったのは、囲碁って6年前に世界チャンピオンがAIに負けて、もう勝てなくなってきているんですよね。でも囲碁を楽しみ続けている人はいるし、囲碁の人間だけの世界大会も残っている。
実は「AIvs人間」には2段階あるんですよ。1段階目の「AlphaGo」と呼ばれるものは、人間の成功パターンをAIが学んで戦ったんですね。最初に戦った時は、4対3でAIが勝ったんです。
次に行われたのが「AlphaGo Zero」です。これは何かと言うと、人間は自分の性能限界によって、最初から「このへんの正解はないよね」と思い込んでいるから、(AlphaGo Zeroは)その思い込みを外して、とりあえず全部のパターンを試していく。
ちょっとでも成功確率があるんだったら、そこを残していこうよということを「AlphaGo Zero」がやって。これができた途端、もう人間は勝てなくなったんですよ。
なぜかと言うと、自分の想定外のことばっかりやってくるから。でも、ここから先がおもしろくて。囲碁のチャンピオンからしたら、それがめちゃめちゃ学びの場になったわけですね。「俺たちの囲碁には、まだこの方向の成功があったんだ」と。
それ以来、AIと人間で戦い合うことによって、むしろお互いの感想戦がすごく豊かになって。それをやったことによって今、囲碁の定石はむちゃくちゃ増えていて。逆に言うと、AIが説明可能じゃない分、説明可能な部分を人間がすることによって、新しいクリエイティビティが生まれるところがあって。
尾原:だから僕はよく言うんですが、今は「お肉が養殖なのか天然なのか」というのを、牛肉で言う人はいないですよね。一部、魚はまだ「天然か養殖か」と言っているんですが、お絵描きの絵もある種、天然とAIで作られた“養殖”みたいなものなわけですよ。
橋本:Photoshopを使ってますしね(笑)。
尾原:そうそう(笑)。クリエイティビティも天然なのか養殖なのかって、受け取る人間の感受性が放たれて、養殖によるAIによってむしろ新しいロジックが自分の中に装着されれば、自分のクリエイティビティの軸が増えるのかなとも思ったりするんですよね。
橋本:そうですね。僕は初期に「ChatGPTで作ったレポートをそのまま出してはいかん」という学校が多かったことがナンセンスだと思っていて。ChatGPTの開発者は、そのまま出せるレポートを作らせるために、必死にがんばって開発をしているんですよね。
尾原:(笑)。
橋本:だから、いずれはすごいのが出てくるようになるから、たくさん作らせて選ぶとか。今、尾原さんが言われたことと同じで「本物と偽物」というのは、なんか意味がないんじゃないかという気がします。
尾原:人間が信じられるものとして、実はこの10年で圧倒的に育ったクリエイティビティがあるんですよ。それは何かと言うと、みんな写真のセンスが上がってますよね。インスタでアホほどセンスのいい写真を浴びて、自分たちも写真をスマホで加工できて、写真を上げたらセンスのいい写真だと「いいね」がすぐ集まる。
人間って大量のいいものを浴びて、細かいフィードバックループを上げると、センスは上がるんですよ。ということは、僕たちは今後10年で、AIによって問題設定と妄想のセンスが(上がっていく)。
みんなが妄想を上げればすぐ返ってくるし、問題設定を上げればAIが(解決策の)ひな形を上げてくれるから、それをポストすればみんなからフィードバックが返ってくる。写真のセンスがこの10年で上がったように、実はAIによって問題設定と妄想(のセンス)が上がる気がするんですよね。
橋本:みんなのレベルが上がっていくから、けっこう大変ですね(笑)。
尾原:それはその通りなんですよね。杉山(知之)学長が言ったように、チューリングマシンのような「AIが作ったのか、天然なのか、養殖なのか」を考える時代はもう終わったから。
結局、最後は「真善美」という、僕たち受け止める側のセンスをどうやって上げていくのか。AIで加速してあげるも良し、クラシックなやり方で積み上げるも良しじゃないかなと思うところで、ちょうどお時間かなと。
細野:そうですね。最後は「真善美」と、一番言いたかったところでまとめていただきました。では、橋本先生、尾原先生、本当に貴重なお時間をありがとうございます。
尾原・橋本:ありがとうございました。
(会場拍手)
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