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佐久間宣行の誰もが自分らしく働けるチームマネジメント(全4記事)

佐久間宣行氏が、今でも会議の議事録を自分で書く理由 回り回って自分を楽にする、メンバーとのズレをなくす仕事術

社会の大変動に対抗し、新時代の組織づくりと経営戦略の本質を掴むヒントをお届けすべく開催されたSmartHR Next 2023。本記事では、テレビプロデューサーの佐久間宣行氏、株式会社SmartHRタレントマネジメント事業事業責任者の重松裕三氏、フリーアナウンサー(元テレビ朝日アナウンサー)大熊英司氏、ロート製薬元取締役(CHRO)/高倉&Company合同会社共同代表の高倉千春氏が登壇。佐久間氏が部下に伝えているメッセージやコミュニケーションの取り方についてお話しします。

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佐久間氏がやっている情報収集術

大熊英司氏(以下、大熊):質問がいっぱい来ていまして。まず最初の質問ですが、「コアメンバーの見つけ方、嗅覚がすごい印象があります。ポイントみたいなのがあれば教えてください。ヨーソロー!」。船長、よろしくお願いします。

佐久間宣行氏(以下、佐久間):なるほど。コアメンバーは、僕は人の見つけ方というより、コンテンツで特殊な見つけ方をしてて、自分がおもしろいと思った作品をネットで検索する。それかおもしろい感想を言っていた人をブックマークする。

そのブックマークした人の感想が3つくらい(自分と)似ているなと思ったら、その人のブログをRSSリーダーに入れて、その人が勧めたものは無条件に3つ見ると決めているんですよ。

重松裕三氏(以下、重松):へえ。

佐久間:そのうち2つでも、自分が知らないおもしろさを教えてくれて「おもしろい」と思えたら、1軍のリストに入れる。その人は僕も会ったことないですけど、その人が勧めてくれたものは無条件で見る。そうやって10年か20年の間に入れ替えたりしているわけです。

3つ以上感想が合わなかったら外すとかをやりながら、僕の中の選者というか、音楽ならこの人、映画ならこの人みたいな人が全部合わせると15人くらいいるんですよね。

そういうかたちで出会った作品の中で、同じように「これを作っている人、おもしろいな」とか「この番組おもしろいな」と思ったもののスタッフリストを調べて、共通している2~3人が出てきたとします。例えば大熊という作家がおもしろいなと思ったら、そのスタッフロールに載っている中で知っているスタッフに「大熊くんってどういう人?」って聞きに行く。

意外に人柄で、チームに合うかどうかがけっこう出てくるので、そういうのを人から聞いた上でやるかやらないか(判断する)。

大熊:なるほど。才能とは別の部分があるわけですね。

佐久間:両方加味した上で、「あ、ちょっと難しい子なんだ。じゃあ小さい番組に入れてみよう」とか。

大熊:なるほど。最初は。

佐久間:はい。あと僕は出会いとしては、人をたくさん見つけてくれるプロデューサーも何人かいて。そういう人と同時に出会えたのもでかいですかね。

自分ができること・できないことの見つけ方

大熊:でも、1回も会ったことない人に仕事を頼むのってやはり難しいと思うんですけど、佐久間さんが「絶対欲しいな」と言ったら出て行って、頭を下げて「一緒にやりませんか?」という感じなんですか?

佐久間:そうですね。幸い今は、けっこういろんな方が「やりたい」と言ってくださっているんですけど。あとはテレビ界の場合は、「雇ってください」って弟子入りみたいなかたちで来ることがあるじゃないですか。それはその子の人生を変えることになるから、僕はこの20年間で2人だけですかね。

大熊:ああ、なるほど。

佐久間:企画書をとにかく送ってきたりした大学生とかの中で、自分で「じゃあ君、僕の番組に入ってみな。最初はノーギャラだけど」みたいなところで、入ってもらった2人だけです。

大熊:そうやってチームを作っていくということですね。

佐久間:その2人は今、1人は50万登録とかあるYouTubeを運営しているスタッフで、もう1人は『水曜日のダウンタウン』もやっているんで、優秀な子になっていますけど。

大熊:一般の企業で(そうやって人を)集めるのはなかなか難しいかもしれませんけども、そのあたりどうですか? 

髙倉千春氏(以下、髙倉):でもやはり佐久間さんがすごいのは、客観視して自分ができないことをちゃんと認識されて、そこを補う方をいろいろ持っていらっしゃるって、やはりズルいなと思う(笑)。

佐久間:(笑)

大熊:そういう人をちゃんとチームの中に入れて。

髙倉:ちゃんとチームの中に入れて、やはりそこがすごく力になっているんだと思います。

大熊:その話にも通じるかもしれませんが、次の質問は「自分のできること、できないことはどうやって見つけましたか」ということで。

佐久間:できること、できないこと。できることは苦労していないわりに褒められることですね。「自分がやってて楽しい」とは別で、自分が結果を出せたなと思っても、すごい工数かけないと結果が出ないものは、得意ではないなという。

髙倉:そうですね。

「苦労しなくても褒められること」を探す

佐久間:僕はけっこう早い段階で「あれ? ここ褒められるんだ」「俺、別にそんなに力入れてやってないのにな」と褒められることがいくつかあって。

その頃、ADのトップであるチーフADに、「佐久間が入ってくれるととにかく段取りが良くて、進行が速くて、スケジューリングがうまい」「スケジューリングがうまいからプライオリティをつけるのが速い」と言われました。

僕は本当にナチュラルにやってただけなんですけど、ということはそうなんだと思って。そこから「制作進行はそんなに優秀な人がいなくても俺、大丈夫」みたいな。特番とかも全部スケジューリングは自分でやっちゃうんです。

大熊、髙倉:ええ!

佐久間:完パケというか、番組が出来上がるまでのスケジュールも会議で自分から言っちゃうんです。

大熊:普通はAPとかがやりますよね(笑)。

佐久間:それがあまり必要なくて、それができる代わりに、僕はタレント事務所に電話するのはすごく躊躇しちゃう。

(一同笑)

大熊:それは「何て言おうかな」とか、「何てお願いしようかな」って。

佐久間:思っちゃう(笑)。電話したらすぐなんですけど、それが面倒くさいとか。自分が我慢できないものが何かと、苦労しなくても褒められることは何かを考える。けっこう自分の中で自分を客観視するんじゃなくて、他人の評価の中でこの部分を大事にするという考え方で、何となく自分のキャラクターがわかるようにしてきたという感じ。

大熊:あまりやりたくないことというか、嫌いなことは得意な人に任せるのも、1つストレスが溜まらない方法ではあると思うんですよね。

佐久間:そこがけっこうありますね。

大熊:重松さん、今の話はどうですか?

重松:それが一般企業でできればいいですけど、なかなかできないこともあったり。そこはどう考えるといいのかなと思っていたんですけど。とりあえず自分ができる得意なこと、伸ばしたいこととか、逆にできないけどこれはちゃんとできるようになりたいなとか、そういうのを認識しておくことは、非常に大事かなと思います。

大熊:自分でしっかりわかっていることが大切ですよね。

重松:そうですね。部下に対してもそれを把握しておくことは、すごく大事だと思うんで、そのへんをちゃんと気にかけておくのが、1つ有効なのかなと思います。

髙倉:そうですね。

佐久間氏が、今でも会議の議事録を自分で書くワケ

大熊:次の質問です。「ビジョン(仮説)を共有し、腹落ちしたメンバーが行動することの重要性はすごく納得しました。共有のフェーズでは相手が少人数であれば直接語ることができ、鮮度を保つことができると思いますが、伝える人数が増えると齟齬が生まれる可能性があると感じます。

その際、佐久間さんが気にかけていることがあればご教授いただきたい」ということで、たくさんスタッフがいる場合どうするかということだと思いますけど。

佐久間:けっこうテレビの会議でも特殊だと思うんですけど、僕は議事録を自分でやっています(笑)。

大熊:ええ! 打ち合わせの議事録ですか?

佐久間:だからホワイトボードを僕が書くという(笑)。会議をホワイトボードの前で僕がやって、「ここの部分はこうだろ?」と言って書いていくんですよ。

大熊:これはだいたいADの仕事なんですよ(笑)。

佐久間:あとは例えば今リモートの会議があったりするじゃないですか。そうするとZoomの共有画面で資料を出して、資料に〇✕をつけていくのも自分でやっているんですよね。だからそうすると、長くやっている番組はもうスタッフに(ビジョンが)共有されているから、別にADさんがやってくれても大丈夫なんですけど。

そうじゃなくて、毎回新しいことを決めなきゃいけないものは、もうほぼ僕が議事録を自分で作って、ホワイトボードに書きながら、「ということはこうだろうな」とか言いながらやる。そうするとビジョンのズレがほぼないという(笑)。

重松:ああ!

大熊:全部自分で作っているわけですからね。

佐久間:自分で作っているから、議事録は「違うんだよ」がほぼないんですよね。

重松:同期でしゃべっている人以外にも、ちゃんと議事録というかたちで非同期で伝わっていくんですね。

佐久間:もちろん、それを裏で議事録とってくれているADさんもいて補足してもらったりもするけど、番組の構成表みたいなものは、もう僕はその場で書いていっちゃう。

髙倉:へえ!

会議中の内職がなくなる理由

佐久間:『トークサバイバー』の最初の会議も、1話から8話までのホワイトボードでの構成表は、話しながら僕が書いていきました。

「この話でこれが起きて、この部分のトークの話題が足りないです」というのまで全部書いた上で、それをスマホで撮って、ADさんに1回Excelの表にしてもらってそれを共有しているんで、話しながら共有しているからみんな見るというのと、あとはこれは人間の心理なんですけど、僕が書いているから全員目を離していないという(笑)。

(一同笑)

大熊:なるほどなるほど。

重松:内職しないですね。

佐久間:内職する空気にならない。なぜなら俺が書いているから。

髙倉:なるほどね。

大熊:確かに。でも、会議に来る人はある程度上の人が来て、それより下の人は間接的に聞くわけなんですけど、それでも齟齬は生まれないですか?

佐久間:生まれにくいですね。トップクラスはだいたい僕のビジョンと何を進めたいのかわかる。なんでこれをやっているかと言うと、結果的にこのほうが工数が少なくて済んだことがたくさんあるんですよね。

髙倉:なるほどね。

大熊:手を入れて手を入れてというと、どんどん面倒くさくなりますよね。

髙倉:(自分でやったほうが)修正がない。

佐久間:修正がないんで。YouTubeの会議もさっきやってたんですけど、YouTubeのラインナップ表も全部僕がやっているんで。

大熊:なるほど。(会議に)出た上のクラスが下へ伝えていけば、ちゃんと伝わるんじゃないかということですよね。

無名の若手と番組を作り、あえてメインストリームから外れた

大熊:ということで時間も迫ってきましたが、あらためて髙倉さん、せっかくなので佐久間さんに何か質問があれば。

髙倉:佐久間さんは下の方を育てることもお仕事になっていると思うんですけど、どういう人を「ポテンシャルがあっていけるだろうな」と見極めて、どんな機会を与えてらっしゃるか。次世代の育成についてはどんなふうに思います?

佐久間:僕が下の子に言うのと、下の子を見てて思うのは、僕に憧れてくれるのはいいんだけど、「自分にないもので僕に勝つ。もしくは僕にない武器で僕ぐらいの場所に来るつもりがない人は、だいたいたどり着けないよ」と言うんですよね。同じものを持とうと思うと、その頃には時代は変わっているので。

僕の例で言うと、僕がディレクターになった頃は、ダウンタウンさんが全盛で、吉本の芸人さんたち、今田さんや東野さんが本当に人気で。そういう状態だったから、僕は「ない勝負をしよう」と思って、東京の芸人さんやまだ無名だった若い人たちと番組を作り始めました。

かつ本流じゃない、ど真ん中のお笑い番組じゃなくて、もうちょいカルチャー寄りのものをいくつか作っていったのは、「同じ武器だと勝てないな」と思ったのと。あとは今天下を取っているものの賞味期限を考えるというか、天下を取っているものと同じ勝負をしていったら、時代が変わっている可能性があるので。

どれだけ今天下を取っていたり、今真ん中にあったり、今憧れているものから距離を取りながら、一番速いスピードで自分のスイングができるか。それを磨いておくのが大事だよという話をするんですよね。

自分にしか出せない「味」を作る

髙倉:真似っこじゃダメで、やはり差別化というか自分流の何かを(持つ)。

佐久間:はい。カクテルに例えたりするんですけど、最初からこの現場に合うサワーを作ろうと思うと、次の現場に行ったらサワーの味じゃなくなるじゃないですか。でも、自分にしか作れないジンとか、ちょっと苦いスピリッツみたいな原液を作っておいて、「これは僕の味です」ってしておくと。

髙倉:なるほど。

佐久間:現場が変わったら割るものを変えればいいということになってくるんで、そういう例えを若い子にはする。

髙倉:わかりやすい。

大熊:わかりやすいですけど、わかってもなかなかできないとは思います。

髙倉:なかなかどうするか(笑)。

大熊:重松さん、何か質問あります?

重松:普通の会社だとチームビルディングと言って、お互いの内面をさらけ出して相互理解を促進したりする。チームをたくさん作られていく中で、そういったチームビルディングをすることってありますか?

佐久間:ああ、そうですね。でもコロナの期間の間に、けっこうその機会が失われたのもあるんですけど。それでもちょっとチームのビジョンがズレているなと思ったら、対面の会議を用意して、冒頭10分20分くらい雑談するところから話して、1回空気をつかみ直すことはやるようにしていますね。

重松:やはり対面のほうが空気をつかみやすいですよね。

佐久間:それは間違いなくそうで、でも全部対面だとけっこうスタッフの負担がかかるのと、あとはテレビ界の場合はフリーの人が多いんで、交通費をかけることになるんで。

大熊:そうですね。1回集まるとなるとね。

髙倉:ああ、なるほどね。

佐久間:社内だったら大丈夫なんですけど、テレビ界ってけっこうそこも考えてあげないと。

メンバーとの飲み会は年に1〜2回

大熊:佐久間さんは「さあ、今日は飲みに行って話そうか」みたいな感じにはならないですか。

佐久間:だいたいお正月とか、1年に1回か2回です。

大熊:そんなもんですか。

佐久間:年末特番をがんばってくれた若いスタッフと、順番に好きな食べ物を毎週末食べに行くと、1月に入っている。

髙倉:(笑)。

大熊:そういう機会を設けているということですね。

佐久間:それだけは決めてて毎年やっているんですけど、それ以降はあっちから誘われない限り行かないですけどね。もちろん誘われたら行きます。

大熊:なるほどね。ということで本当に時間が迫ってまいりまして、佐久間さんには人事もやってほしいって案がありましたけれども、今日はあらためていかがでしたか?

佐久間:そうですね。僕が心がけていたことがまさかOKRだとは思わなかった。

(一同笑)

佐久間:ちょっとOKRを心に留めながら、またやっていきたいなと思います。

大熊:髙倉さん、どうでしたか?

髙倉:実際の現場の話をたっぷり聞かせていただいて、本当にその瞬間が勝負のお仕事じゃないですか。まだ企業側ってちょっと時間的に長いので、緩いところもあるんですけど。そういう意味では人事の重要なエッセンスがギュッと凝縮されたところで、チームを作って成果を出して、勝負をしているなと思いました。どうもありがとうございました。

佐久間:ありがとうございます。

大熊:そして、重松さん、SmartHRに役立ちましたかね。

重松:もうすごく。

(一同笑)

重松:マネジメント術を本当に活かせると思いますんで、ちゃんとメンバーを見て褒めるというところと、あとは仮説を共有するというのはすごくおもしろい考え方だなと思って、これはぜひ活かしていけると思いました。

大熊:ということで、時間が来ました。佐久間さん、重松さん、今日はありがとうございました。

佐久間・重松:ありがとうございました。

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