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佐久間宣行の誰もが自分らしく働けるチームマネジメント(全4記事)

人一倍働いて「手を抜けない空気」を作る上司だった 佐久間宣行氏が失敗から学んだ、風通しのいい組織の作り方

社会の大変動に対抗し、新時代の組織づくりと経営戦略の本質を掴むヒントをお届けすべく開催されたSmartHR Next 2023。本記事では、テレビプロデューサーの佐久間宣行氏、株式会社SmartHRタレントマネジメント事業事業責任者の重松裕三氏、フリーアナウンサー(元テレビ朝日アナウンサー)大熊英司氏、ロート製薬元取締役(CHRO)/高倉&Company合同会社共同代表の高倉千春氏が登壇。佐久間氏がやっている、人のいいところを見つける習慣や部下を叱る時のポイントについてお話しします。

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想定外の事態で事前の情報共有が生きてくる

大熊英司氏(以下、大熊):やっぱりこう、チーム作りがうまいというか。チームにちゃんと自分の思いが伝わってるってことなんですかね。重松さん。

重松裕三氏(以下、重松):いや、すごくおもしろいなと思って。やっぱりHowを共有してこれをやってもらうとかになっちゃうと、それに向けてがんばるけど、それって別に本質的ではないですよね。やっぱりWhyとかWhatをちゃんと共有して、それに対して(やっていく)。それがあるからこそ自律的に動けるし、それがやっぱりチームをうまくまとめる秘訣なのかなと。

佐久間宣行氏(以下、佐久間):そうですね。だからうまくいかなかった時に、「あ、じゃあ俺の仮説が間違ってて、これがうまくいかなかった……ってことはこういうことか」というところまで一応共有するようにしてる。

大熊:あ、そこまで。

佐久間:うん。じゃないと、ADさんも「なんでこれをやってんだろう」となってしまうので、できるだけわかるようにしたいという。

大熊:そうですよね。でもバラエティなんかやってても、台本どおりにいったらおもしろいと思ってたけど、「え、意外とおもしろくなかった」みたいな。なんかぜんぜん違うほうにいったけど、「基本がここにあって、こっちにいっておもしろくなったね」というのを経験したんですけど。やっぱりそういうのはちゃんと仮説を共有してるからなんですね。

佐久間:現場でちょっと違うノリが生まれた時とか。あとは何かうまくいかないことがあってみんなでこっちにいった時に、「実現したいテイストはこれなのね」とか「彼がおもしろくなったら今回はいいのね」とかをわかってくれるから、躊躇なくいってくれるというか。

大熊:なるほどね。それがおもしろくなる、ならないの違いなんですね。

髙倉千春氏(以下、髙倉):おもしろいなぁ。すごいです。

相手を叱る前にまず伝えるべきメッセージ

大熊:じゃあ次の質問です。たくさんのチームを抱えてらっしゃる佐久間さんですが、誰もが自分らしく働けるチーム作りで心がけていることはありますか。

佐久間:僕の中で心がけてることは、とにかく褒める場所を見つけること。口に出すのはその時のタイミングによりますけど、基本的にはいいところを見つける作業を常にする。できれば口にしておくことが大事だなと思っていて。

君は他にもいいところはあるかもしれないけど、少なくともこのプロジェクトに関してここが役立ってるとか、ここが助かるってことをできるだけ口に出しておくためには、いいところを見つけなきゃいけないので。

人の長所を見つける癖をつけておくと、結果的に自分がチームを組む時にも助かるし。かつ、この癖をつけて話しておくと、何か決定的に怒らなきゃいけない時とか、何かマイナスを伝えなきゃいけない時に、「いいところも言ってくれてるしな」となる。それをとにかく心がけてスタッフとは仕事しています。

髙倉:いや、すごいですね。グローバルレベルの人材育成がいろいろ問題になってるんですけど。今おっしゃる習慣がすごく大事なので。厳しいことを言いたいじゃないですか。「次はこうやってがんばってほしい」みたいな。その時にまず2ついいことを言いましょうと。

そうすると心理的に何が起こるかと言うと、扉が開くんですよ。「私、けっこういいかも」と。その瞬間に「いや、とはいえ、これをやったらもっといいんだけどね」という厳しいのが入る。そうじゃないと人間は言うことを聞かないっていう話があって。

ダウンタウン松本氏から「お前売れるで」と言われた話

佐久間:だから僕、この癖が身につきすぎて、こないだ松本(人志)さんと中居(正広)さんの番組に出た時に、「俺の悪いとこ言ってくれ」って松本さんに言われたんですけど。

大熊:(番組で)言ってましたね。

佐久間:「ちょっと先にいいところ言っていいですか」って言っちゃった。

(一同笑)

松本さんに「悪いとこ言ってくれ」って言われたから、言えばよかったんですけど。これはふだんの癖にしてるから、「その前にちょっといいところ言っていいですか」って言っちゃったんです。でも、そのぐらい癖づけているというか。

大熊:でも本番は悪いとこまでいきましたっけ。なんて言ったんでしたっけ?

佐久間:いいところは、松本さんの作ってる番組は耐用年数が長いということ。だから企画者としてすごく優れていて、それはシンプルだけど骨組みが強いって話をしたのと。悪いところは、松本さんのストーリーとかイマジナリーの、お笑いと違う部分を世の中に出す時のブレーンとプロデューサーがいないという話をしたんですけど。

大熊:なるほど。松本さんはなんておっしゃってたんですか。

佐久間:それを聞いた松本さんから急に「お前売れるで」って言われました。

(一同笑)

大熊:松本さんも褒めるところから始めてるんだ。

佐久間:かもしれないですけど(笑)。

大熊:なるほどね。重松さん、今の話はどうですか。

重松:上司がちゃんと自分のことを見てくれてるっていうのはすごくいいですよね。信頼関係を築く上ではやっぱり大事ですし。その後のフィードバックもちゃんと受け入れられると思うんですよね。

なんも見てねえのにたまたま目に入った事柄だけ取り上げて批判してくるみたいになっちゃうと、やっぱり心を閉ざしちゃいますし。さっき髙倉さんもおっしゃっていたように、やっぱりいいところを言って、その後にフィードバックをして最後にまたいいところで締めるのは、マネジメントする上ではすごく大事なことだと一般企業では言われてますね。

「手を抜けない空気」を作るタイプのディレクターだった

大熊:でも、もうプロデューサーになった当初からそうですか? それとも、どこかで変わるきっかけがあったんですか。

佐久間:変わりました。僕がプロデューサー・ディレクターになった頃は、たぶんとにかく自分が働くから(周りが)文句を言えないって感じのディレクターでした。とにかく僕が全部準備してきて、僕が編集も人一倍長くやるから、「まあ、こんなに佐久間が働いてるんだから」と。手を抜けない空気を作るタイプのディレクターだったと思います。

大熊:あぁ~。これは嫌ですね。

髙倉:嫌ですね。働きたくないですねぇ。

佐久間:30代前半はそうでした。まあ、そもそも仕事が好きだったのと、自分で考えた企画を実現するのに自分が最短の能力を持ってるからやるってタイプのディレクターだったんですけど。これは続かないし、やっぱり息苦しいなと思って。

それでもついてきてくれる子はすごく屈強に育ったんですけど、それだけだと、やっぱり作れるプロジェクトにも限界があるし。そうなってから、人のいいところを見つける作業(を始めた)というか。あとは自分に足りないものがわかったのが同時のタイミングだったので、そうなって変わっていったのが30代前半だと思いますね。

そもそも怒ったり怒鳴ったりするタイプではまったくないんですけど。

大熊:あ、そうなんですね。

佐久間:もともとそういう性格じゃないんですけど。でも30歳ぐらいはどっちかって言うと暑苦しいほうだったかもしれない。とにかく「佐久間が徹夜して編集してるな」みたいな。

「恐怖で場を支配する人」を見て学んだこと

大熊:あぁ~。でも上司がそうしてると、下はやっぱり休めない感じになっちゃいますもんね。でもテレビプロデューサーって一部にはちょっとパワハラでもないですけど、なんか「俺の言うことをそのままやれよ!」っていう人が多い中、逆にそういう人がいたから変わったっていうのはないですか。

佐久間:そういう人がいたから、最初からキレたりするのは違うなって思ってて。恐怖で現場を支配したり、もうちょっと怖いもので支配してる人たちの作るものよりも、楽しい現場でおもしろいものを作ろうって、20代の頃に(思いました)。僕が入社した20年前ぐらいはやっぱりテレビ業界はさらに特殊なパワハラ・セクハラとかある現場だったんで。

大熊:僕も経験はありますけど。はい。

佐久間:それを信条にしてたんで。怒ったりすることはほぼなかったというか、その頃からそういうタイプの人間じゃなかったんですけど。たぶんどなたに聞いていただいても僕に怒鳴られたってことはないと思うんですけど。でもその分やっぱり肩に力が入って死ぬほど働いてたんで。

それから少し、それぞれがプロジェクトに、それぞれの立場でちゃんと寄与してくれればいいっていう。もっと働きたい人は働いてもいいけど、別に休みたい人は休んでもいいっていうスタンスを取るようになってから風通しもよくなったと思いますね。

最初だけは徹底的にコミットする、新人の育成法

大熊:あとは、どうやって若いディレクターにチャンスを与えてるんですか。

佐久間:あ、でもチャンスはけっこう……やってくれってことは言います。ただ新しいプロジェクトを共有する時とか進める時は、一番最初だけ僕は徹底的にコミットするんですよ。

だから均等に振るんじゃなくて、新しいスタッフが入った時は「あ、佐久間さん、そんなとこまで来なくていいのに」とか(言われます)。要は細かい分会とか、あとは細かいフィニッシュのところまで1回いくんですね。

その作り方とトンマナだけ共有したら、あとは思い切ってけっこう任せるやり方。上がってくるのが違ったら違うって言うけど。こういうやり方にしてから、若いスタッフもどんどん任せられる人が増えてきてるなと思う。最初っから任せて上がってきたものにマルバツ出すやり方もやったことあるんですけど、そうするとやっぱり俺の判断待ちになっちゃうっていうか。

髙倉:教えてくださいになっちゃう。

佐久間:はい。特に僕の番組って、僕が総合演出とプロデューサーを兼ねてる番組が多いので、ちょっと僕の後ろに並ぶ人が増える状態になっちゃうので。それよりは、自分で承認までしてくれるスタッフを育てたいっていう気持ちで、それには序盤だけはめちゃくちゃコミットするのが一番今んとこうまくいったかなっていう感じ。

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