NTT法廃止は今後の通信サービスの根幹に関わる

司会者:続きまして、会場から質問のある方は挙手をお願いいたします。では、最前列の入口側の方、お願いします。

質問者8:Impress ケータイ Watchのマツモトと申します。先の質問に少し重なるところがあるかもしれません。これはみなさんへの質問になると思います。NTT法に関する会見などは過去にも開催されていると思っていますが、話自体がどんどん進んでいっている印象を受けます。

ここまでの経緯を見ていると、例えば「議論をちゃんとすれば、本当に用意されるのでしょうか?」という疑問もあったり、あるいは議論をしたとしても、有識者会合に反映されなかったりするという懸念もあります。

もし、動きとしてどんどんNTT法廃止に向かっていってしまった場合、例えば裁判など、その動きを止めるような実効性のある手立てはあるのでしょうかというご質問です。

髙橋誠氏(以下、髙橋):それについては、これから議論が進む中で考えていかなきゃいけないなと思っています。ただやっぱり、今日本当にお願いしたいことは、今回のNTT法廃止は通信事業者のつばぜり合いじゃないんです。その業界の中だけでせめぎ合っている案件ではないんですよね。

(「通信会社感のつばぜり合いだ」と)こういうふうにおっしゃる方もいらっしゃるんですよ。でも決してそうではなくて、これからのものはすべて通信がつながっていくじゃないですか。これは本当に、その根幹に関わる大きな議論なんですよ。

反対意見が上がる中、廃止を押し切ろうとするNTT

髙橋:だから国民のサービスに必ず直結することになるので、この世論というか、みなさんにいかに関心を持っていただくかによって、この議論の流れは変わっていくんだと思うんですよね。

ですからオープンな議論を、そして国民の方にはぜひとも強く関心を持っていただきたい。関心の持ち方によってこの議論は変わることになりますし、それが大きな抑止力になると思いますので、ぜひともご協力をお願いしたいなと思います。

宮川潤一氏(以下、宮川):今、髙橋さんが言われたとおり、僕もまったく同じことを言おうとしていたんですが、本当に通信事業者同士の小競り合いじゃないんですよ。

我々はこの業界を一番よく知っている古狸として、「このまま我々が声を上げないのはまずいだろう」ということで始まったことですし、NTTさん以外の通信会社はみんなそう思っているのに、なぜにそう押し切ろうとするのか。ここが論点だと思うんですよね。

万が一、政治の力で決着しましたということであれば、どなたか日本国内の有識者、もちろんそれは私どももそうかもしれませんが、誰かが「それはおかしい」と思えば裁判になるでしょうね。今回はそれくらいのことだと思っていますよ。

“巨大な力”が垂直型に支配することの恐ろしさ

髙橋:三木谷さん、お願いします。

三木谷浩史氏(以下、三木谷):1つは、今日このような会を開催させていただいて、たくさんのメディアの方、そしてYouTubeではたくさんの方がこれから見られると思います。みんなスマホで見たり、パソコンで見たり、あるいはテレビ局さんのライブ放送で見ると思いますが、通信は本当に国民のライフラインだと思うんですね。

それを重要だとdefine(定義)しているのがNTT法であり、それを変えるということであれば、根本的にいろんな議論をしておくべきだと。分割民営化という話も、その理由があって行われたわけですよね。巨大な力が、すべて垂直型に支配することの恐ろしさをみなさんに理解していただきたいと思っております。

政治のプロセスに関して、我々がコントロールできるわけではないわけですが、お話しさせていただいても、政治家の先生方もこの重要さに対する理解がまだ十分とされてらっしゃらない中で、どさくさに紛れてと言うと言葉がなんですが。

「これをやるのは大変危険である」という認識をできるだけ多くの先生方、そして内閣、岸田総理にも理解していただいて、みんなで力を合わせてと「まずはじっくりと議論をしていこう」というふうに持っていきたいなと思っております。以上です。

村田太一氏(以下、村田):みなさまと同様なご意見でございます。その実効的な措置について、何があるかということにつきましては、今後いろいろと相談しながら進めさせていただければなと思います。以上です。

各国では通信の「公平な競争」をどう担保しているのか

司会者:お時間も長くなっておりますので、次の質問を最後にさせていただきたいと思います。ご質問のある方は挙手をお願いいたします。では、入口から2列目の後ろの白い眼鏡をかけておられる方、お願いします。

質問者9:フリージャーナリストのオオニシと申します。そもそも論になっちゃうのかもしれませんが、1980年代に各国で通信自由化があった話ですが、各国にも「特別な資産」があって、その上で公正な競争を担保しなきゃいけない。

これは日本と同じ状況にあると思うんですが、例えばアメリカやヨーロッパなどでは、ドミナントをどういうふうに制御して、どういうふうに公正さを担保しているのか。うまくいっているところと、うまくいっていないところとあると思うんですが、海外の事例を引いて、何かお手本になるようなところはあるのでしょうか?

髙橋:これは非常に重要な問題で、実は国によってだいぶ変わるんですね。この間、XでNTTさんが「海外でも特殊法人の廃止時に民営化された会社が資産を引き継ぐ例がある」と書かれています。

これについての回答は(資料の)後ろに載せていますし、各国でどのような動きがあったのかについては、あらためて整理したものがありますので、我々の公式ページからみなさんにご案内できるようにしたいと思います。

これは本当に重要な課題で、一把一絡げに「世界がこうだ」とは言えないんですよね。「この国はこうやって対処してきました」(という各国の事例が)があります。これは非常に重要な課題・ご質問だと思いますので、しっかりと回答を用意して、みなさんに開示できるように準備します。

宮川:オーストラリアのオプタスが良い例かな、というものもあります。実はそのあたりも、総務省さんの勉強会の時に提示させてもらったものがありますから、これも開示させていただきたいと思います。

NTTに当事者意識がなくなったなら国に“持ち物”を返すべき

宮川:僕が申し上げたいのは、NTTさんが特殊法人化する時にその整理を1回やったんですね。それで「NTTを特殊法人として取り扱う」ということでNTT法を作って、こういうかたちで日本はやってきました。

最近、僕が一番カチンときているのは、「我々はその役割をもう終えたはずだ」という主張をされていることです。本当に当事者意識がもうなくなったのであれば、一回国に物を返せと僕は本気で思っていまして。それで、もう一度完全分離をしようじゃないかと。

国が全部株を持つのもよし、我々通信会社が出資するのもよし。とにかくそういうことをやりたくないなら、我々はやれる方法を見つけるべきだと思っていますから。それも含めて、海外の事例をいろいろと参考にして発言させていただきたいと思っております。

髙橋:今の部分は重要ですよね。だから本当にNTTさんは、「役割を終えたのでNTT法を廃止したい」というのが今回の引き金だったんですよ。そこの検証をなくしてこの議論を進めるのは、やはり問題だと僕も思います。三木谷さん、お願いします。

三木谷:ドイツテレコム、フランステレコムの例が出ていますが、実は今週(会見時は2023年12月4日)、ドイツでも我々が使っているプラットフォームで第4のMNOがスタートします。

その過程で、ドイツ、そしてフランスもそうだと思うんですが、かなりいろんなかたちで政府が介入しました。通信事業だから、例えばローミング費用であったり、いろんなアレンジメントは、政治的介入が当然重要です。

よって日本においては、その役割をNTT法がやってきたんだと思うんですね、政府の直接的な介入を最小限に抑えて、いかに公正な競争を促進していくかということをやってきた。

「とりあえずNTT法を廃止しよう」という考えは極めて危険

三木谷:海外の事例は政府がいろんなかたちで介入して、いかに競争を担保するかということをやっております。オーストラリアもそうですが、国によっては「特別な資産」については切り離して別のかたちにする、資本分離を行っているところもあります。

今回はそのような議論がなされないまま、「とりあえずNTT法を廃止しよう」というところがあるから、極めて危険であると思っております。

「一応対処するから、2025年に(法制度の廃止を)やらせてよ」という方向性を無理やり通そうとしているんだと思いますが、それは是が非でも阻止しなくてはいけないのではないかなと思っております。以上です。

髙橋:今回の件、国民のみなさんにぜひともお願いしたいのは、本件に対して興味を持っていただきたい。そしてメディアのみなさんにもしっかりとそれを伝えていただきたいということを、切にお願いしたいなと私は思いますし、ぜひともオープンな議論を求めたいというのが私の最後のコメントです。宮川さんも一言コメントを。

宮川:本当にみなさんお願いします。すべてのものが、とにかくなんでもつながるような時代になってきているのは、もうみなさんもおわかりだと思います。

あと10年も経てば、携帯電話も6Gと呼ばれる時代に入っていると思いますし、あと20年も経てば7G、8Gとか、そんなような話になると思いますが、今、7Gの使用規格を世界で語れる人は1人もいませんよ。それだけ技術革新が早いマーケットです。

何が起こるか本当にわからないんです。その中で、何が起こるかわからない人たちが決めちゃダメです。ありとあらゆるかたちで保険をかけないと、日本国は本当におかしくなっちゃいますから。

そういう意味では、僕は国民を代表して言っているつもりで、事業者を代表して言っているつもりではございませんので、みなさんのご理解をいただければと思います。

国民の生活を揺るがすNTT法廃止、まずはオープンな議論を

髙橋:では三木谷さん、最後にもう一言。

三木谷:本当に繰り返しになりますが、通信は国民の生活、企業の活動、社会のあり方、学習、銀行、遠隔医療、すべてに関わる基本的人権のとても大切な一部でありまして、NTT法があることがそれのベースになっているわけですよね。

それを廃止ということであれば、単純になんとなく雑に「2025年廃止の方向で」とするのではなくて、まずは国民的議論を行って、どういうふうに通信を発展させていくのか、どれぐらいそれは国民にとって重要かということを十分に議論する。

その上でこのような議論があるべきだと思っておりますので、ぜひ与党、政府には再考をしていただきたいと思っております。以上です。

髙橋:村田さん、最後に。

村田:繰り返しになりますが、ケーブルテレビは日々の地域の生活情報、ニュースを広げて発信すること、あるいは議会の中継、行政情報、それから一番大事な防災関連の情報といったものをずっと継続して発信してきております。

こういう情報発信をぜひとも続けていきたいので、継続できる環境を残していきたいと思っていますので、こういった議論をぜひ深めていきたいなと思っています。ありがとうございます。