「職場環境優良法人1位」の企業から組織づくりのヒントを学ぶ

大野拓氏(以下、大野拓):初めまして、GCストーリーの大野です。よろしくお願いします。今回はこういったご機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

まずは自己紹介をさせていただければと思います。あらためまして、大野と申します。2013年に入社しまして、新卒から11年ほど働かせていただいております。

(スライド)一番上に「パーソナルミッション」と書いているんですけど、弊社GCストーリーでは全社員が入社するタイミングで志を立てておりまして、それをパーソナルミッションと呼んでいます。

どういう人生を送りたいか、どうありたいかを明文化していまして、僕は「可能性を未来につなぐ」というパーソナルミッションを持って、日々働かせていただいたり、人生を生きています。

経歴としては、2013年に入社してから最初は施工管理をやっていたんですが、3年目でマネージャーになりました。そこから部下のマネジメントと、事業部でチーム自体の売上の目標を達成していくところにコミットをしました。

2018年、ちょうど世の中の流れ的にもホラクラシー経営やティール経営がはやったタイミングで、かなり組織変化が起きました。弊社でも多様性のある若手社員が入ってきたタイミングで、より強みを活かす組織づくりをしていきたいなと思い、マネージャー職を撤廃する組織改革をしました。

そこで僕も人材開発に席を移しまして、今では人事として社内の研修づくりや組織デザインという、組織づくりを外に向けて発信する事業を兼務しております。

あとは副業をやっていまして、YouTubeのチャンネルのチームリーダーで、チャンネル登録者が25万人いるチャンネルのディレクションリーダーをさせていただいております。

従業員の幸福度を高める意識変容のポイント

GCストーリー自体の説明ですが、西坂勇人という者が代表をしております。2005年に創業して、来年で20周年を迎えます。まだまだ若い会社ではあるんですが、従業員は80名ほどおりまして、江東区の木場に本社を構えております。

今年度から社外取締役に、前野(隆司)教授の奥さまで、幸福学研究の第一人者である前野マドカさんに就任いただきました。いろいろとアドバイスもいただきながら、組織づくりをさせていただいている状況です。

僕らの一番大切な価値観として、「成長と貢献」を大切にしています。ここがGCストーリーという社名の由来にもなっているんですが、「Growth for Contribution(貢献のための成長)」ですね。

「何のために組織があるか」もそうですが、一人ひとりが何のために生きるのかを考えた時に、「それって幸せになることだよね」と考えています。

じゃあそれをどう実現していくかと考えると、組織としても個としてもそうですが、貢献できる範囲を広げていくために成長していくことによって、より関わる人の幸せ・幸福を最大化させていく。

(スライド)右に図があるんですけど、個人から家族・恋人・友人、チーム・プロジェクト、会社、社会、人類……と、主語となる自分の認識を広げていって、意識変容していくことが重要だと考えています。

そして、貢献する範囲を広げていくために成長していくことによって、そこに関わる人たちの幸福度を最大化させていくと考えています。

会社のミッションは、あえて「余白」を持たせて設計

この大切な価値観をベースにして、ミッション・ビジョン・バリューを設定しています。ミッションは「ステークホルダー全体の幸福」、ビジョンは「収益・事業の発展と幸せな組織づくりを同時に実現することで、世界のモデルになる」を掲げて日々がんばっているわけです。

ここに「全社員がコミットできるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を設定」と書いておりますが、「ステークホルダー全体の幸福」は少しふわっとするといいますか、具体的に何をしているかが定まりにくいものではあります。

最近では「パーパス経営」などと言っていますが、ミッションを設定してそこにコミットしていく時に、具体性のあるミッションやパーパスに全社員がコミットできるのかと考えると、難しいのかなと思います。

数字を生み出さない事業部もあれば、売上を作っていく事業部もあると考えた時に、僕らは「一人ひとりが関わる人を幸せにしていくことが自分たちの幸せにもつながるよね」と考えています。余白のあるミッションを作ったことによって、全社員がコミットできるものになっているかなと思っています。

その上で、ビジョンの「収益・事業の発展と幸せな組織づくり」は、『論語と算盤』ですかね。「収益の持続性」と「幸せな組織づくり」という、もしかしたら二律背反的に考えてしまう部分かもしれないんですが、ここを同時に実現していくことをビジョンに置いてやっています。

ホワイト企業大賞や職場環境法人など、数々の賞を受賞

ここは「収益・事業の発展」のフェーズですが、具体的に5つの事業を展開しています。一番上がサービスプロモーション事業部という、看板を中心とした全国の施工関連業者のネットワークを活用した、チェーン店舗さん向けのサービスです。

それ以外にエネルギー事業として再生可能エネルギーという、太陽光のソーラーパネルを使ったソーラーカーポートの販売・設置を日本で一番販売・施工させていただいています。

その上で、IoTソリューションとか、僕が所属してる組織デザイン事業とか、介護事業というかたちで、これを見ると「GCストーリーって何屋さんですか?」と、パッと関連がつかない部分ではあると思います(笑)。

もともとは創業当初に、「これからインターネットができた時に、看板職人さんの仕事はどんどんなくなっていくよね」という話から、全国の看板の職人さんのチェーンのネットワークを作ったのが創業のきっかけでした。

それを元に、僕らの「ステークホルダー全体の幸せ」「成長と貢献」という価値観を体現していくために、事業を新たに作っていった流れになっています。

そして「幸せな組織づくり」では、アワードを受賞させていただいています。「働きがいのある会社ランキング」では、5年連続ベストカンパニーです。施工管理や看板という事業の中では、女性が1位を取るのはけっこう難しかったのかなと思うんですが、女性部門ランキング1位をいただきました。

あとは「Work Story Award」で、組織変革を書いたストーリーで受賞させていただきました。最近では第6回ホワイト企業大賞の大賞受賞と、ストレスチェックの結果が一番高いということで、職場環境法人2021年、2022年と2年連続全国1位という結果をいただいております。

社員がストレスを抱えた時に助け合える組織を作る

具体的に抜粋して持ってきました。TRUSTY SCOREというストレスチェックがあります。法律上決められていて、みなさんも必ず受けていると思います。それを、僕らもマストで受けないといけないよねということで受けてみたところ、その結果がすごく高いと表彰いただきました。

(スライド)グレーのところが全国平均の数値です。これは偏差値ですが、90点、87点をいただきました。グラフの見方としては「面積が大きいほど信頼関係が強く、生産性の高い環境と考えられます」と書いてあります。

僕らの関わっている仕事上、ストレスはどうしても発生してくるといいますか。施工管理という業務ですし、職人さんとの関わりがあったり、ストレスがないとは言えないんです。

そういったストレスがあったとしても、職場内で相談し合えたり、お互い信頼して尊敬し合える関係性があることによって、社内でその部分の解決ができている。あとは、助け合いや挑戦ができているところがすごく特徴的で、結果としてそういった表彰をいただけたのかなと思っています。

同じ環境でも「思考」が変われば世界は変わる

これは社内でも話しているんですが、仏教の法話で「三尺三寸箸」という法話があります。法話を使った倫理感といいますか、社内で論語を説くのもけっこうめずらしいと思います。

幸せな組織がどうやって作られるかというと、幸せって結局人によって考え方が変わるのかなと思うんですが、この逸話がすごくわかりやすいのかなと思ってよく使わせていただいています。

天国の世界と地獄の世界を覗いてみた時に、まず最初に地獄の世界を見ると、食事のシーンでみんないがみあったり、ぜんぜん食べないで喧嘩が起きたりしているという話です。一方で天国の世界の食事のシーンを見ていると、みんなの助け合いがすごく起きていて、楽しそうに食事をしていたんです。

その場では三尺三寸、要は2メートルぐらいの箸を使っていたんです。地獄の世界では自分が食べようとして取りこぼしたり、そもそも環境にイライラしているけれど、同じ環境においても天国の世界ではお互いに食べさせ合う。食べて、感謝して、自分がもらった感謝をほかの人に与えるという、感謝の循環が起きている話です。

要は、組織として、関わる人たちに利己的な思考と利他的な思考を持ってるかどうかによって、環境は一緒でも世界は変わるという逸話です。

組織の中で、どうしても自分主義的に考えてしまう部分があると思うんです。ただそこで、自分だけではなくて、一緒にいる仲間や関わる人の幸せがあったり、「どう仕事をするとお互いに良いものが作れるんだろう」という利他的な思考になることによって、同じ環境においても天国になるという話です。

働きがいのある組織を作るカギ

認識の範囲として、自分だけのことや個のことを考えるのではなくて、組織全体、事業部全体、チーム全体のことを考えて組織づくりをしていく。一人ひとりが活躍していく環境を作れることによって、幸せな組織は実現できるのかなと思っています。

その上で、組織の中での成長支援をどう考えているか。「成長と貢献」と考えていますが、天国的な組織を作っていくためには、その「成長」が何かもすごく考えています。これは成人発達理論でよく言われますが、成長には2軸あります。

マインドとスキルの2軸の成長を考えた時に、幸福になったり意識変容をしていくためには「垂直的な成長」が必要だと考えています。組織づくりには、この2軸とも成長して面積を広げていくことがすごく重要だと思っていますので、社員の研修や評価制度も両軸の成長を元に設計しています。

横軸の「水平的な成長」は、できる物事が増えていく、Doing的な成長と言われています。スキルマップなどを活かしながら、ある程度一人立ちできるところまではサポートしていく。

それ以上のBeingと言われる垂直的な成長は、成人発達論では「自己中心性の減少」と言われたりしますが、人としての器が広がっていく成長を組織全体でもサポートしています。

自律分散ではなく「自律共創型組織」を目指す

最初にパーソナルミッションのお話もさせていただきましたが、社内の成長支援としては、まず自分がどうありたいのかと考えるところから、人との対話や社内の関係性を通して垂直的な成長もサポート・アップデートしています。

僕の話はこれで最後ですが、最近では「自律共創型組織」というワードを使っています。GCストーリーがどういう組織かを考えた時に、自律分散ではなくて、一人ひとりが自律しているけれど、組織全体で目指す方向性や一人ひとりの目指す方向性、生きたいあり方を共に作っていくような、自律共創的な組織だなと考えています。

僕らは来年で(創業)20年ですが、いろんなチャレンジをしてきた中で、「僕らの中で考えている自律共創型組織とはこういう組織だ」という3つキーワードを(スライドに)挙げさせていただいています。

「全社員が組織の存在意義に共感している」「社員同士の関係性の質が高い」「ひとりひとりが主体性をもって成長・挑戦している組織」の3つです。

存在意義への共感、関係性の質、一人ひとりの自律・成長・挑戦を、組織全体で実現することによって、結果として幸福な組織、幸せな組織を実現します。

ダニエル・キムさんの成功循環モデルにもありますが、関係性の質が高くて一人ひとりが仲間のために成長・挑戦している文化づくりができていると、幸せと成果を同時に実現する組織ができていくのかなと思っております。

GCストーリーはそういった組織として運営させていただいて、こういった機会をいただいてお話ししています。僕の話は以上です。