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「成長が早い」営業メンバーに育てる4つの鍵〜メンバーの「営業センス」を鍛えるとマネジャーはグッと楽になる〜(全4記事)

入社時は同程度のレベルだったのに、気づけば差が開くように 売れる営業・売れない営業の明暗を分ける“常識の違い”

営業力を上げるノウハウを詰め込んだ『無敗営業』などの著者であるTORiX代表取締役の高橋浩一氏が講演を行いました。「『成長が早い』営業メンバーに育てる4つの鍵」と題し、メンバーの「営業センス」を伸ばすためのヒントをマネージャー視点から解説。入社後は同じくらいのレベルだったメンバーが、しばらくすると差がついてしまった……そんな「成長スピード」を左右する要因とは。

そもそも「営業センス」とは何かを考える

高橋浩一氏:みなさんこんにちは。TORiX株式会社の高橋浩一と申します。本日は非常にお忙しいところ、ご参加いただき誠にありがとうございます。

本日は「『成長が早い』営業メンバーに育てる4つの鍵」ということで、「営業センス」というあまり語られることのない領域をお話ししたいと思います。

「営業センス」というのは日常的に言われるんですが、じゃあ営業センスって何なのか? どうやったら鍛えられるのか? このあたりをみなさんと一緒に考えていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

では、最初に簡単に自己紹介をさせていただきます。TORiX株式会社は営業の研修やコンサルティングを提供している会社ですが、その代表を務めております、高橋浩一と申します。

私は新卒で外資系のコンサルティング会社に2年半ほど勤めまして、その後2003年には人材教育ベンチャーのアルー株式会社。こちらは3人のメンバーで創業した会社なんですが、そのうちのナンバー2として6年ほど役員を務めておりました。

最初に3人で始めた会社は、6年経った頃には従業員70人ほど、年商10億円ほどになりました。その中で私がやっていたのは、主に事業の立ち上げや営業の組織作りを中心とした全体の統括の責任者の立場です。

そこで、やはり「営業人材の育成」が非常に大きなテーマでありまして、現在はTORiX株式会社という営業の支援を行っている会社で代表を務めております。これまでに、営業を中心として何冊か本を書かせていただいております。

1を聞いて10を知る人、10回言われても変わらない人

では、これからセミナーに入っていきたいと思うんですが、「1を聞いて10を知る営業」と「10回言われても変わらない営業」は、どこが違うのだと思いますか?

ここで、まず中心のキーワードとして挙げたいのが「気づく」ということなんですね。例えば、このままいくと目標未達が濃厚なのに、行動を変えないといけないことに気づかない営業の方もいらっしゃる。

また、商談で一方的に資料を説明し、お客さまが飽き飽きして退屈そうなのに気づかない営業の方もいらっしゃる。果てには、上司からいつも繰り返し指摘を受けており、同じ課題でつまずいていることに気づかない営業もあったりするわけです。

よく「センス」と言われたりするんですが、一般的にセンスというのは「物事の感じや味わいを微妙な点まで悟る働き。感覚。また、それが具体的に表現されたもの」。これは『デジタル大辞泉』の定義ですね。

「コトバンク」による定義では、「人それぞれの内面にある感覚的なもので、感じ方、理解の仕方、あるいは表現の仕方に現れ出るもの。特にちょっとした行為や微妙な事柄についていう」とあります。

一般的には「感覚」が「センス」と言われるんですが、本セミナーにおいては「センス」をどのように定義していきたいのか。今回は、営業について何らか伸ばしたい方々がお集まりいただいているわけですので、営業人材育成の文脈でちょっと語ってみたいと思います。

言語化しづらく、教える手段も少ないのが「センス」

まず、言語化しやすいし、教える手段が多いものは「スキル」。そして、言語化しやすいけど教える手段が少ないものは「キャラクター」、いわゆる性格ですね。

例えば「人に愛される」「敵を作らない」というのはよく言われますよね。でも、じゃあどうやったらそういう性格になれるのかって、あんまり教えることができないじゃないですか。これがキャラクターです。

左上は「スタンス」ですね。言語化しにくいけど、教える場面や手段としては多い。「営業への取り組み方」はちょっと言葉にはしにくいんですが、「背中を見て育て」という言葉があるように、いろんな場面でOJTとして教えられたりもしますよね。

さて、「センス」というのは、言語化もしにくいし教える手段も少ない、誠にやっかいなものと言ってしまうものなんじゃないかなと思います。なんとなく「センスがある・なし」で薄々意識はしているけど、言語化もしにくいし、教えることもしづらいんじゃないかということですよね。

じゃあ、なんでこんなものに焦点を当てていくのか。今回「センス」に焦点を当てる理由として、「巷にノウハウがあふれて、スキルを上げる機会は十分にある。本人のスタンスも悪くないし、真面目に努力をしている。それでも成果が上がらないメンバーの育成をどうしたらいいか?」というマネジャーからのご相談が非常に増えたんですね。

また、これは営業ご本人からのコメントですが、「私、そもそものキャラクターが営業向きじゃないんです。目標を追いかけることに情熱が持てなくて……」とメンバーに居直られてしまい、どうすればよいかわからないマネジャーからの悩み相談。私も、これをメンバーの方から言われることがあったりします。

“厳しいお客さま”に対する対応の違い

「スキル」「スタンス」「キャラクター」は言われますが、「センス」ってどうやって考えていったらいいのか。そこで今日は「4つの鍵」ということで、アジェンダが4つあります。

まず1つ目は、成長スピードを左右する「思い込み」についてお話をしていきたいと思います。まず、AさんとBさんを並べてありますが、どこが違うのでしょうか? みなさんも考えてみてください。

左側はがんばっていて成果があり、仕事も楽しそうなAさん。右側はがんばっているが、成果が上がらず悩んでいるBさんです。

以前私は、それこそ何百人と新卒を採られる企業さまをご支援している時に、「入社した時はそんなに差がつかなかったのに、入社してしばらく経つとすごく差が開いてしまう。これはどこが違うのか、ぜひ外部のプロの目から見てほしいんです」と言われて、1日密着して見させていただいたことがありました。

いわゆる飛び込み訪問のような営業スタイルの会社だったんですが、例えば厳しいお客さまがいらっしゃったとしますよね。新規で「こんにちは」ってお店に飛び込んでいくと、「こら!」みたいな感じで、怖いお客さまはやはりいらっしゃるわけです。

そのようなお客さまに出会った時に、AさんとBさんにはやっぱり違いがあったんです。成果が上がって仕事も楽しそうなAさんは、厳しいお客さまや怖いお客さまに出会うと、「しまった。行くタイミングを間違えてしまったので、次はタイミングを変えてアプローチしよう」と考えていました。

すなわち「ニーズがありそうだ」という見立てをしているからこそ、そのお客さまにアプローチをしているわけなんですが、お客さまが怖かったりしたら「タイミングを変えてアプローチしよう」と思うわけですね。

(一方で)Bさんは、「しまった。行く相手を間違えてしまったので、次は優しいお客さまにアプローチをしよう」。どういうことかと言うと、ニーズのあり・なしではなく、「優しいかどうか」で行く先を判断しているということなんです。これがAさんとBさんの違いでした。

入社時は同じくらいのレベルだったのに差が開いたワケ

では、忙しいお客さまに会ったらどうなのかということなんですが、Aさんは「お客さまは忙しいから、どんな一言を投げかけるかいろいろと工夫してみよう」と、行く先々によってお客さまに伝える言葉をアレンジして工夫をされていました。お客さまによって言うことが違うんです。

ところがBさんは、「お客さまは忙しいから、あれこれ考えても無駄なので、とにかく簡潔に話そう」と、それこそテープレコーダーのように、ほぼ同じセリフをすべてのお客さまにテンプレートのごとく話していました。

みなさん、想像がつきますよね。AさんとBさん、どっちが売れやすいですかといったら、やはりAさんです。でも入社した時は、だいたい近いぐらいのレベルまでトレーニングで引き上げてから配属されているわけです。

じゃあどこで差がつくのかということなんですが、4つのアジェンダのうち、最初のキーメッセージが「思い込みが成果を分ける」です。

今回は「センス」を理解するため、補助線として「スキーマ」というキーワードを提示させていただきたいと思います。「スキーマ」とは、「行間を補うために使う(当人にとっての)常識」というものです。

例えばみなさんも日常の中で、「いや、普通は遅れそうな時ってちょっと連絡1本入れるよね」という会話があると思うんですよ。この「普通は遅れる時って」みたいなものは、ご本人の中に「遅れる時には1本ぐらい連絡を入れるものだ」という常識があるから言っているわけですね。

それはその人の中にそれぞれ存在するわけですが、これが「スキーマ」です。「センス」を理解するためのキーワードとして挙げさせていただきたいと思います。

成長スピードを左右するのは「思い込み」

歪んだスキーマ、すなわち思い込みにとらわれていると成果が出ない。例えば出来事として、忙しいお客さまに出会ったとします。そこでAさんが持っていたスキーマは、「お客さまは忙しいから、どんな一言を投げかけるかをいろいろと工夫してみよう」。そうするとお客さまとの会話の糸口が見つかって、大事な情報が聞けます。

ところがBさんにとってのスキーマ、すなわち常識では、「お客さまは忙しいから、あれこれ考えても無駄なので、とにかく簡潔に話そう」と思います。そうするとBさんは型通りのテンプレトークをすることになり、結果としてお客さまから冷たくあしらわれてしまう。スキーマによって結果が大違いですよね。

そこで今回は「センス」をどのように定義するかということなんですが、「目的に向かって、スキーマを柔軟にアップデートできること」をセンスと定義したいと思います。スキーマの歪みに気づいて、すぐに軌道修正しながら、より良いスキーマにしていける「しなやかな感性」がセンスであるということなんです。

では、最初のパートをまとめていきたいと思います。「『思い込み』が成長スピードにどう影響するか?」ということなんですが、歪んだスキーマ(思い込み)にとらわれていると、成長が鈍化してしまう。だからこれは、スキルやキャラクターやスタンスとはまたちょっと違った問題であるということですね。

ここでスキーマを柔軟にアップデートできるかどうかが、センスの鋭さや成長スピードを決める鍵であるということです。もちろんスキルはあったほうがいい。キャラクターも、営業として向いている・向いてないは一概に言えないかもしれませんが、スタンスも優位に越したことはないかもしれません。

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