2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
本気ファクトリー株式会社 代表取締役 畠山 和也 氏(全1記事)
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アマテラス:初めに畠山さんの生い立ちについて、育って来た環境や今の仕事の原体験になったようなお話があればぜひお聞かせください。
畠山和也氏(以下、畠山):恐竜や宇宙などが大好きな子どもでした。特に宇宙への興味が強く、小学生の頃から科学雑誌の『Newton』や『ホーキング、宇宙を語る』など宇宙論系の読み物を愛読し、さらには図書館に通い詰めて相対性理論や量子力学分野の本を読み漁るようになりました。
宇宙論や量子力学の世界の影響か、自分の生きる意味や価値などについてもわりと早い段階から意識していた気がします。「宇宙が無から始まり、人間も死ねば無に戻っていく。だとすれば、私個人が人生を楽しみ良い思いをすることにあまり意味はなく、世の中に価値を残すことがより大切なのではないか」と考えるようになりました。
高校に進学すると、進路選択の過程で「次の世代まで受け継がれるような大きな価値を創造するためには何をするべきか」と、より具体的に考えるようになりました。その中でたどり着いたのが「教育」です。優れた教育制度を創り、それを子々孫々つなげていくことで世の中に貢献したいと考えるようになりました。
その頃はバブルが崩壊し、社会全体が未来に希望を抱けない閉塞感に包まれていた時期でした。「失われた10年」のような過ちを繰り返さないためにも、優秀な人材の育成は必要です。教育制度を仕組みから改革するためには文部省の事務次官になるしかないと決意し、東京大学進学を目指すことにしました。
畠山:結論から言うと、「死ぬほどがんばった」と言えるほど勉強漬けの日々を送ったにも関わらず、東大に合格することはできませんでした。自分の限界を突きつけられ、人生最大の挫折を味わった瞬間です。その後も会社をクビになったり事業に失敗したりという経験はありますが、あの時味わった挫折と比べれば小さいものです。
結果的に早稲田大学の商学部に進学することになりましたが、その入学式が「自分の夢が絶対に叶わないことが確定した日」となりました。
ただ、今振り返ると、ベンチャーブームが到来していたあのときに商学部に入学したことは幸運だったかもしれません。「Web1.0」の時代で、サイバーエージェントの藤田さんやライブドアの堀江さん、ソフトバンクの孫さんなどがITでどんどん社会を変革していく様子を目の当たりにし、「官僚の道以外にも、社会を変える方法があるのだ」と大きな感銘を受けました。
卒論は「支配株主移転時の株式公開買い付け制度の是非」というテーマで書いたのですが、上梓した直後に、論文で問題を指摘した手法を使って堀江貴文氏がニッポン放送株を買い取ったことをきっかけにフジサンケイグループの経営主導権争いが発生したこともあり、懸賞論文の第二席首位をいただくことができました。
実は受験の挫折で大学入学後に鬱になってしまい、初年度はあと1単位落とすと留年確定というスタートでしたが、ベンチャーの世界と出会い、新たな社会貢献の道筋が見えたことで、再び前を向くことができたのです。
畠山:学生時代のもう1つの大きな経験は、父のリストラです。父は高校卒業後、大手の自動車会社に就職しました。当時から現在に至るまで日本の基幹産業であり続ける自動車業界を、まさに成長が始まったタイミングで選んだのは、当時で言えば恐らくベストの選択だったと思います。
子どもながら父が相当努力をしていたのは感じていましたし、一時期は50人以上の部下がいたと聞いたこともあります。今ならわかりますが、高卒としては珍しいくらいの評価を得ていたはずです。
しかし時代の流れで勤めていた工場の閉鎖などいくつかの不運が重なり、50代になって間もなく退職を余儀なくされました。再就職先は前職とは比べものにならない小さな会社で、この経験を通じて「どんなに安定しているように見えるキャリアにもリスクがあること、このリスクを回避するためにはただ努力するだけでは足りないこと」を痛感しました。
父の失業は私のキャリアプランにも影響がありました。当時、公認会計士試験に向けて勉強をしていたのですが、学費の問題などから急遽就職することにしたのです。
アマテラス:大学卒業後のキャリアについて教えてください。
畠山:いずれは起業したいと考えていましたが、まずはソフトバンクBBという会社でキャリアをスタートしました。ここで新規事業の立ち上げなどを経験した後、リクルートに転職します。リクルートでは営業を担当し、初めは「1アポ1クレームの男」と揶揄されるほどの状態でした。しかし、そこからがむしゃらにがんばり、3年目には関西カンパニーMVPを受賞するまでに成長することができました。
その後、リーマンショックのタイミングで早期退職の募集があったため、起業の良いチャンスかもしれないと退職を決意。今振り返ってみると、十分な準備もしておらず、勢いだけの独立だったと思います。
大学生向けのキャリア教育事業や人事コンサル事業に取り組むも、結果は当然ながら失敗。リクルートからの退職金や失業保険などをつぎ込みましたが、最終的に手元に残ったのはわずか3,000円。ほぼ全財産を失いました。
改めて会社員としてキャリアを再開することにし、スターティアラボで約3年、ラクスルで約半年新規事業の立ち上げなどに携わりました。
いずれの会社でも「どうすれば会社に貢献できるのか?」「顧客満足度を高めるにはどうすれば良いか?」「どうすれば売上をさらに上げる仕組みが作れるのか?」などと考えながら、成果を出すために一生懸命がんばりましたが、やはり独立への思いが断ち切れず、2度目の起業を決意します。
畠山:2014年、本気ファクトリーとして本格的に再スタートを切りました。初めは中小企業向けのWebマーケティングを中心に行っていましたが、「仕事があれば何でもやります」という姿勢で取り組みました。さまざまな会社から業務委託を受けて参画し、ピーク時には8枚の名刺を持って働いていたこともあります。
1度目の失敗で得た反省を生かし、今回は毎月固定費を稼げる仕事を受けることを心掛けました。
アマテラス:2度目の起業を決意した理由を教えてください。
畠山:本気ファクトリーのミッションでもある「若者が未来に希望を持てる社会を作りたい」というのが最大の理由です。また、ソフトバンクからラクスルに至るこれまでのキャリアを通じ、新規事業開発における失敗・成功のパターンを数多く見たり経験したりして来たことで、ある程度成功の法則を理解できたことも起業に踏み切る自信につながったかもしれません。
アマテラス:畠山さんが「若者が未来に希望を持てる社会を」と考えるようになったのには、どのような背景があったのでしょうか。
畠山:高校時代に抱いた「教育改革を行い、若者の将来への不安をなくしたい」と考えたことが、その後の自分の行動の原動力になっている気がします。
少し話は飛びますが、経済産業省の次官・若手プロジェクトが数年前に発表したレポート(※『不安な個人、立ちすくむ国家 ~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~』 020_02_00.pdf (meti.go.jp))に掲載されている「昭和の人生すごろく」という資料はご存じでしょうか。1950年代と80年代生まれを比較しながら「人生の標準モデル」の変化を数値データで示したものです。
そこで発表されている「正社員として定年まで勤め上げる割合」を見ると、50年代生まれの人たちでもたったの34パーセント。意外ですが、昭和時代からすでに終身雇用など全く成立していなかったということです。うちの父も、実はマジョリティ側だったわけですね。
80年代生まれではこれがさらに27パーセントまで下がっています。私たちは転職を前提としたキャリアプランを考えておく必要があるということがよく分かります。
そんな状況の中で私に何ができるかと考えた時、若者が希望を持って多くのことにチャレンジできる豊かな社会を実現するために自らが起業し新しい事業を創ること、そしてキャリア教育や起業家教育の提供やエンジェル投資を通じて若者をサポートしていくことだという結論に至ったのです。これは、創業当初から現在までずっと変わらぬ思いです。
アマテラス:畠山さんが経営者としてぶつかってきた壁についてお聞かせください。多くのスタートアップ経営者が仲間集めや資金調達、事業立ち上げなどの場面で壁に直面していますが、畠山さんはいかがでしたか?
畠山:最初に突き当たった壁は人集めでした。採用を本格化したのは2021年からでしたが、特に最初の1年はとにかく断られまくる日々でした。さまざまな会社に参画し、知り合いもそれなりに多かったので「おもしろいですね、一緒にやりましょう」と言ってくれる人は数多くいたものの、入社してくれる人はなかなか見つかりませんでした。
アマテラス:そこから参画者が増えたのは何がきっかけだったのでしょうか。
畠山氏:そもそも私自身の中でこの会社で何をやっていくか定まっていなかったことが問題だったのだと思い、約1年かけて経営方針を明確化しました。「だれでも新規事業つくれるカレッジ」という大手企業の新規事業担当者育成SaaS、起業の教習所構想を軸足としたMissionやVisionを作ってからは、採用がしやすくなってきた実感があります。
畠山:個人的には、組織拡大後のマネジメントは今後の1つの壁になるだろうと考えています。私自身は、会社のMission, Vision, Valueや行動指針といった会社の考え方に納得し、最低限の経済合理性を達成してくれれば、あとは自由に働いてもらい、それぞれの働きに応じた給与を支払うという仕組み作りを目指しています。
「出産したのでしばらく労働時間を減らしたい」「プライベートでほかにやりたいことがあるので労働時間を減らしたい」「そもそもあまりがんばって働きたくない」、そんな人たちを誰でも許容できる組織にしたいのです。
ただ、これまでの経験で、このスタイルではあまり人が定着しないことも分かっています。「あなたの仕事はこれ、やり方はこれ」と明確化することが組織作りの正解なのかもしれませんが、今度は私がそれを受け入れられないというジレンマがあります。これは私が経営者として成長するために取り組むべき課題だと考えています。
アマテラス:資金繰りや事業立ち上げについてはいかがでしたか?
畠山:資金繰りにも苦労しました。実は「だれでも新規事業つくれるカレッジ」(以下「だれつく」)は開発に5000万円かけています。まだ3000万~6000万程度の売上しかない中で、ほぼ全ての現預金をこの開発とプロモーションにつぎ込んだので、最低限の運転資金しか残らず潰れる寸前までいきました。
コストカットと同時に借り入れや補助金の申請などを行いなんとか危機を乗り越え、「だれつく」の売上が立ち始めたところでようやく一息つくことができたという感じです。
新規事業開発の現場では「顧客と顧客課題、それを解決するソリューションがすべて明確化するまでPDCAを回し続けろ、投資はするな」と言い続けておきながら、一方では自ら5000万という過剰投資を行い、経営を傾かせるという失敗をしてしまったわけですから、当然ながら事業立ち上げ段階の自分の意思決定には大きな反省があります。
私自身は運良くこの危機を乗り越えることができましたが、同様の失敗をする経営者を増やさないためにも、自分の経験と反省をプロダクトに生かしていきたいと考えています。
アマテラス:今後のお話も伺わせてください。畠山さんが考える、本気ファクトリー社の展望について教えていただけますか?
畠山:ビジョンにも掲げている世界初の「起業の教習所」を実現することで、「起業=特殊な人が大きなリスクを負いながら行うもの」ではなく、「自動車教習所のようにしかるべき段階を踏みながら学べば誰でも当たり前に起業できる」という世の中を実現したいと考えています。
誰もが自分の力で自分の身を立てられるようになれば、つらい思いをしながら今の会社にしがみつく必要もなくなります。あとは健康くらいしか心配ごとがなくなるのです。それは「若者が希望を持てる社会」の実現につながっていくはずだと考えています。
アマテラス:そこに向けた短期的・中長期的な経営課題はどこにあるとお考えですか?
畠山:まずは会社の財務基盤をしっかり整えることを一番の課題と考え、取り組んでいるところです。現在、「だれつく」と並行してさまざまな動画研修を作成しています。現在はChatGPTやウェブマーケティングの研修など、わりと一般的な研修が売れ筋です。短期的には、こちらをしっかりグロースさせることで今後の事業展開のはずみにできればと考えています。
中長期的な課題はやはり「起業の教習所」の仕組み作りです。起業という大きな目標に対し、誰もが上りやすいステップを作ることを目指しています。
例えば第1段階で商売ができること、第2段階で組織を持ってビジネスができること、そして最終段階として投資を伴う大きなビジネスができること。そこに制度やサービス、さらには人間の心理などを多面的に組み込んだ仕組みをしっかり作り切れるかどうかが最大の課題です。
そこがクリアできれば、起業家希望者がどんどんやって来て事業を立ち上げ、自動的に経済エコシステムが回り出すはずだと期待しています。
アマテラス:今のフェーズ、タイミングで本気ファクトリー社に参画する魅力や働き甲斐について教えてください。
畠山:さまざまな起業や新規事業開発に向き合い、数多くの大企業のお客様とも仕事をさせていただいたことで、私自身それなりに経験や知見の蓄積があると自負しています。当社はステージとしてはまだエンジェルステージ、シードステージではありますが、言ってみれば「強くてニューゲーム」のような、わりと勝ち戦の状態だと分析しています。
これから参画される方には、経営メンバーの1人としてさまざまなおもしろい仕事に取り組んでいただくつもりです。私が「自由にやっていいよ」という考え方ですから、自分の力を存分に試せる環境も整っているほうだと思います。
もし残念ながらうちが合わなかったという結果になった場合でも、この会社でしっかり価値を発揮していただいた方であれば、次のステージでも必ず活躍の場が見つけられるはずです。
アマテラス:最後の質問です。本気ファクトリー社が求める人物像についてお聞かせください。
畠山:会社の名前にもありますが、向上心があり、仕事に対して「本気」で取り組める人を求めています。本気とは、具体的には「明確な目標」に向け、「具体的な道筋」をもってチャレンジすることだと考えています。
現在働いてくれているメンバーは、学びと挑戦の機会が多いことや裁量の大きさ、今後の世の中を生き抜く力を身に付けられることなどにも魅力を感じ、入社してくれました。本気で成長したいと思っている人は、ぜひ本気ファクトリーで挑戦して欲しいです。
アマテラス:本日は貴重なお話をありがとうございました。
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