2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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日本能率協会マネジメントセンターが、『新しいスキルで自分の未来を創る リスキリング 【実践編】』の出版記念セミナーを開催。著者で、日本のリスキリング普及の第一人者である後藤宗明氏が、“ステルス失業”への対処や、米Indeedで特集された「エンプロイアビリティスキル」などを解説しました。
後藤宗明氏(以下、後藤):「人生100年時代で、人生長いから学び直しましょう」みたいなノリではなく、デジタル化によって本当に一瞬で世の中が変わる中で、自分をアップデートして、未来に適用できるようにしていく。これが、私が一番お伝えしたいことです。
そのための解決策がリスキリングです。今からリスキリングにちゃんと取り組んでおくと、自分をアップデートして未来に対応できるようになる。そういうことが、これから起きるのではないかなと思いますね。
西舘聖哉氏(以下、西舘):先ほどのレポートの数字の部分に注目して見ていたんですが、2027年って本当に目と鼻の先ですよね。今年も半分以上終わっているので、あと3年半くらいの話です。しかも無人レジや、大手の金融機関が人員を削減するという話がリアルに伝わってきている。
あらためて、かなりの危機感だなと思います。自分自身の仕事も、「このままだといつなくなるか」と思いながらしている部分があります。こうやって見ると、「本当に今、身近に迫ってきているんだな」と、あらためて実感させられますね。
後藤:はい。最近の「ビジネスインサイダー」に、AI出力が始まっているという記事が出ていました。「これはかなり深刻だぞ」と思うところがあります。ラスベガスのホテルでカクテルを作っているのがロボットだったり。こういうことがこれからかなり顕在化するのではないかと思います。
バーテンダーの仕事や警備員の仕事のロボット化は徐々に進んでいくものですが、進むとなると一気に行くんですよね。特に日本社会はわりと横並びで、横を見ているところがあるので、いざ進むとなると一気に行くなと私は思っています。
「日本は人員削減が簡単にできないので、“ステルス失業”が発生しそうですね」というコメントをいただきましたが、私が恐れているのはこれです。実は水面下でじわじわ失業していく事態が進んでいくのではないかと思います。
そういった事態が起きた時に対処できるように、今から自分のスキルをちゃんと上げていく。「攻撃は最大の防御なり」ではないですが、自分で対処できるように、今のうちにリスキリングをちゃんとする習慣を持っているとアップデートできます。これも書籍の第二弾の中で書かせていただきました。
こういうステルス失業のようなものが、いつ広がるかもわからないわけですよね。なので、そこに対する対処方法として、ぜひリスキリングに取り組んでいただけたらいいなと思います。
西舘:おそらく、徐々に職がなくなっていくというよりも、一定のところまで技術レベルが来たら、ボンっとなくなるイメージですよね。
後藤:まさにそうだと思います。
西舘:「昨日までの生活がいきなりできなくなる」とならないための準備。次の道に行く準備のためにリスキリングの習慣が大事だというところに、すごく納得感があります。
西舘:先ほど僕のエピソードで、「勉強とかしなくてもいいのかな」と思っていたのが、「ぜんぜんそうじゃなかった」という実感が湧いてくるとお話ししました。ステルス失業もそうですけど、いつなくなるかわからないのであれば、次に移れる準備は常にやっておかないといけないなと思いました。
「危機的状況である」という部分がすごく伝わったかと思いますし、リスキリングは習慣づけしていくのが大事だと思います。
それがまさに、(スライドの)「リスキリングの実践」かと思います。
1冊目の書籍では、企業や組織側が取り組むべきことがたくさん書かれていました。2冊目の本では個人にフォーカスを当てた内容が書かれていて、自分たちがそういった状況にならないために実践していける道を示していただいていると思います。
「個人が取り組むリスキリングの実践方法と考え方」、ぜひ後藤さんの口から解説いただきたいと思います。
後藤:これからリスキリングに取り組む方は、最初にご自身のことを振り返っていただきたいと思うんですが、リスキリングで目指すべき将来の仕事は二軸で考えられると思います。
「好きか嫌いか」と「向いているか向いてないか」の中で、向いていないかつ嫌な仕事は、当然やめるべき仕事ですね。次に「好きだけれども向いていない」の場合は、稼げない可能性があります。
次に「向いているんだけれども好きじゃない」で、これは感情的なところを抜きにすれば稼げる可能性がある。つまり、未来につながる可能性はある。
この(スライドの表の)赤い部分は2つ方向がありますが、自分がやりたいと思える、好きでかつ向いているといった分野にリスキリングの方向性をセットできるといいのではないかなと思います。
「こういった分野のところに簡単には行けないよ」と思う方もいらっしゃると思います。ですが、せっかくリスキリングに取り組むのであれば、イヤイヤやるのはもったいないですし、人生100年時代、もしかしたら80歳まで働くなんていう話もあります。
長い人生の中で、自分のやりたいことができる方向にリスキリングを持っていくのは非常に重要なのではないかと思います。
西舘:今日の話の中でも、デジタルスキルが話題に多く上がっていたかと思います。
先ほどの「得意・不得意」「好き・嫌い」もある中で、デジタルが苦手だったり、あまり好きではない方もいると思うんです。そういった場合は、(表の)右上の部分はどうやったら見つかりますか? どういう考え方で、どう接していけばいいとか、どう広げていけばいいとかは、あったりしますか?
後藤:いろいろな分野が検討できるわけですが、先ほどご紹介したランキングみたいに、仕事が将来減っていく・細っていく分野に行くのか、それとも成長していく分野に行くのかには、大きな違いがあるわけですよね。
今後、将来の選択肢を増やす、給与が上がっていく。成長分野で働くと、当然給料が上がっていきますので、そういった選択肢を持つとすれば、大きな分野としては2つです。1つがデジタルで、もう1つは脱炭素化に向けたグリーン分野です。
グリーン分野は、まだ日本では雇用という観点では大きくなっていないんですが、今ヨーロッパやアメリカでは、グリーン分野の具体的な仕事が求人でもかなり出ています。
特に若い方を中心に、脱酸素化に向けた分野の仕事にリスキリングして、職種転換をしている事例が出始めています。日本では、おそらくもうちょっと時間がかかるのではないかと思います。
例えば、あまりデジタルに関心がない方は、グリーン分野も1つの成長分野だと知っておいていただきたいですし、リアルに今必要なのが、宇宙の分野ですね。日本で宇宙の話をすると、突飛もなく先の話をしているように取られるんですが、実は海外では、宇宙分野のスタートアップのカンファレンスとかがガンガン開かれています。
例えば日本でも、月に行った時に使えるシャンプーや宇宙旅行に行った時の損害保険が、実はもう発売されているんですね。
「先の話をしているぞ」という感じがすると思うんですが、起業家の方々が宇宙進出をし始めていて、宇宙での防衛の話もかなりリアルな段階に入っています。宇宙分野で使えるサービスや製品開発も、おそらくここ5年以内にはかなり一般的になってくると私は思います。
「無重力の状態で使える製品開発」といった分野の知識を我々が身につけなくてはいけなくなることも、そんなに遠い将来ではないです。
ご自身の明るい未来を作っていく意味では、できればこういった成長分野の中でリスキリングができると将来の選択肢を増やすことにつながるかと思います。
西舘:なるほど。「デジタル」という括りではなくて、成長分野で見ると、確かにいろいろなものがありそうですね。ふだんの仕事環境というよりは、もっとグローバルに目を向けて、世界で今何が起こっているかを見ていけばいい。
後藤:はい。2023年9月26日の日本経済新聞の記事において、三菱UFJ銀行がアメリカの宇宙開発スタートアップに出資したという話が出ています。
投資の進む部分は、これから新しくどんどん成長する分野だと仮定ができるかなと。日本でもこんなかたちで宇宙の分野に投資をし始めているんですね。
例えばAIは、10年前にはSFみたいなものだったわけです。ところが、大規模な投資が実際に行われてきた結果、AIは我々が普通に使えるレベルになった。宇宙の分野も、ごく一部のお金持ちの方だけが宇宙旅行に行く時代から、どんどん変わってくると思うんです。
そういった時代の変化を先取りして、自社のサービスや事業を作っていく必要があるとすると、働く私たちもこういった宇宙の分野に行くことを前提にしたリスキリングを遠くない将来やらなくてはいけなくなるかなと思っています。
西舘:「今はこういう状況だから5年後の事業としてはこういうものを作ろう」という経営戦略の5ヶ年計画と同じように、個人の成長戦略的なところでも、「今の状況はこうだけど、こうなっていきそうだから、このあたりの分野に進出できるためのものを自分で学んでいかないといけない」といった考え方ですね。
個人と会社の戦略は違うものなのかなと思っていたんですけど、そう考えるとけっこう似ていて、主体的に考えないといけないなと思いました。
後藤:はい。今私がお話ししているのは、「雇われる」生き方をするのであれば、ということですよね。
雇われるということは、雇用が先に生まれているので、雇ってもらうためには、「エンプロイアビリティ(employability)」といって、雇われるための要件が必要なわけですよね。願わくば、将来給料も上がっていく成長分野がいい。
ただし、雇われないで自分で生きていく方は、自分の好きな分野を責めていってもいいのではないかと思います。
西舘:なるほど。
後藤:エンプロイアビリティは、私の書籍第二弾の最後のほうの「雇われ続ける力」で書かせていただきました。これは「雇われるための能力」と言い替えてもいいと思うんですが、これからAIやグリーン(分野)によって、雇う側が変わっていくわけですよね。
雇う側が変わっていくわけですから、働く側も競争力を持って雇ってもらえるためのエンプロイアビリティをアップデートしていかなきゃいけない。そのためにはリスキリングが必要になるんですよね。
西舘:直近のわかりやすいところでは、例えばプロンプトエンジニアが新しい職種として出てきたと言われています。ChatGPT的なものを使ったり、ちょっと安直かもしれませんが、グリーン分野だったら自然環境に詳しいとか、そういう経験を実際に現地でやっていたとか。そういうスキルを持つ人材は、これからの企業が欲しがりそうな感じですね。
後藤:本当にそうですね。実はエンプロイアビリティスキルがアメリカのIndeedでも特集されているんです。
コミュニケーション、チームワーク、信頼性、問題解決能力、体系化と計画力、イニシアティブ、自己管理、リーダーシップ、学習能力、テクノロジーといった10個のものを高いレベルで持っていると、どの企業でも評価されます。「こんな10個も高いレベルで持っている人はいないよ」と私は思いますけどね(笑)。
西舘:そうですね(笑)。
後藤:ただ、目指す道はそういった方向だということです。エンプロイアビリティは、10個の高いスキルを持っていることで、どこでも必要とされる人材になることです。ただし、これはあくまでも「雇われるために」です。
西舘:ひっくり返すと、自分でやっていくや経営者になるだと考え方が変わるんですね。
後藤:あると思いますね。むしろ権限移譲するとか、人を雇うためのビジョンを語れる力とか、やっぱり経営者には経営者の特定のスキルがありますよね。
西舘:確かにそうですね。財務とかもわりと経営者寄りのスキルかなと思いますし、お金や時流を読むのもそうなのかなと思うんですけど。確かに経営者寄りのスキルと従業員側のスキルはちょっと異なるところもあるなと思います。
個人でやっていかないといけないところ、まさにエンプロイアビリティですね。個人が実践すべきこととして、今まさに起きている世の中の変化と照らし合わせて、みなさんに納得いただけたのではないかなと思います。
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