組織課題の1位は“ミドルマネジメント層の過剰負担”

奥田和広氏:まずは今日の主題の「中間管理職の実態」からお話をさせていただきたいと思います。どんな企業でも、中間管理職の方はいらっしゃいます。「中間管理職は組織の要」なんて言われることが多いですね。

経営者からの要求と、現場からの要求、「経営と現場をつなぐ要」ということで、中間管理職は組織の中で非常に重要な役割を果たしていることになるかと思います。

こういう重要な役割を果たしていますので、当然、業務的にも責任的にも非常に負担のかかる役割ではあるんですが、昨今その業務負担は非常に重たくなっていると言われています。

こちらはリクルートマネジメントソリューションズさんのアンケートの結果なんですが、人事担当者と管理職層それぞれに「現在の会社の組織課題は何ですか?」と聞いたアンケートです。今回初めて、「ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」というのが双方で1位になりました。

ミドルマネジメント層の負担はもともと重かったんですが、それぐらい過剰になってきているんじゃないかということが課題になっています。

その他には、「次世代の経営を担う人材が育っていない」「中堅社員が小粒化している」というのも、経営課題として大きいと思われている結果になっています。

10年前と比べて変化している「求められる管理職像」

ますます過剰負担になっているということですが、このようなデータもありました。

2021年のデータなんですが、「求められる管理職像が10年前と比べて変化していますか?」ということで、一般の社員の方でも約半分、管理職の方で言うと8割が10年前に比べて変化していると回答しています。負担が重たくなってきているということですね。

これはどういうことか、もう少し細かく考えていきたいと思います。先ほど「中間管理職は、経営や上からの要求と現場からの要求がありますよ」という話をさせていただきました。

特に昨今言われているのは、部下マネジメントの変化ですね。現場とメンバーを活かすというところで、例えば心理的安全性やパワーハラスメントなんてことも言われますし、少し前から働き方改革とか、コロナで広がったリモートワーク等々、部下へのマネジメントで大きな変化がありました。

一方で、イノベーション、SDGs、DX、リスキリング等々、トップと現場をつなぐ組織の要である中間管理職には、新たな経営課題もいろいろと出てきています。その中で過剰負担になっているということですが、ミドルマネジメントに求められる機能をあらためて見直していきたいと思います。

管理職に求められる機能は減らず、負担は増える一方

いろいろな考え方があると思うんですが、「PM理論」という、パフォーマンスとメンテナンスの機能に着目した理論があります。

それになぞらえて考えてみると、まずは「目標達成機能」。パフォーマンスの機能は目標達成機能です。メンテナンスは「集団維持機能」ですね。チームを維持したり、チームを活性化したりする役割・機能があるということです。

目標達成機能としては、もちろんこれまでも、例えば課長であれば課の業績を重視されていたんですが、外部環境の変化が激しくなってより仕事が複雑化し、高度化していっています。

心理的安全性等を含めて組織の多様性が広がったり、ライフシフトなどの変化によって、これまで以上に集団維持機能を求められるようになってきました。

これまで求められてきた目標達成機能や集団維持機能は特に減ることなく、ただただ新しい環境に対して負担が増えていっている。結果的に、それが過剰負担につながっているという実態があります。

「集団維持機能」を重視した育成が圧倒的に多い

中間管理職の負担増は、人事の方も経営にとってもある程度大きな課題だということで、対応していかないといけないと考えられてはいますが、実際にどんな対応をしていますか?

1つ目の対応として行われているのが、「中間管理職の育成を強化しましょう」ということです。私も、ミドルマネージャーや中間管理職の育成で研修を行わせていただいたり、伴走型でチームマネジメントを見させていただいています。最近で言うと「リスキリング」なんていう言葉も言いますが、さまざまな研修や育成をされているかと思います。

最近の育成を見ると、目標達成機能で言う「デジタル・スキル」「デザイン・シンキング」「アジャイル」に対応したスキルを身につけて、目標達成をしていきましょうというように、スキルを強化されています。

集団維持機能に関して言うと、例えば「コーチング」「サーバント・リーダーシップ」、1on1の研修など、チームメンバーの育成や支援のスキルを強化していきましょう、ということが行われています。今はどちらが多いかというと、やはり圧倒的に集団維持機能に重きを置いた育成が強化されているかと思います。

1on1が広がってきたり、部下へのフィードバック、コーチング、サポートといった文面での育成が強化されていっている状態です。

マネジメントの他に、もう1つ大事な「素養」がある

中間管理職の過剰負担に対して、育成以外にも取り組まれているところで言うと、「中間管理職の役割定義を見直しましょう」ということがあります。

昨今、さまざまな企業の事例が出てきますが、多く言われるのが、今までの中間管理職の「ボス型」ではなくて「コーチ型」にしてみましょうとか、「管理職の定義はメンバーの支援職なんですよ」というように、役割変更をされているところが多いかと思います。

つまり先ほどの2つの機能で言うと、より集団維持機能に重きを置いた役割変更をされているわけですね。1つ目の対応として、中間管理職の育成を強化して、役割定義を見直すことで、中間管理職の過剰負担を見直す。最近はこういった動きがあります。

ただ、もう1つ中間管理職について大きなことがあるんですよね。あえて先ほどは触れなかったんですが、中間管理職は経営と現場をつなぐ要であるとともに、次世代経営幹部候補でもあるわけですよね。

次世代に経営をしていくためには、ビジョンや戦略を構想するとか、不確実な状況下でも厳しい決断を下せる決断力を持つことも大事になってきているわけです。現場をうまくマネジメントするとともに、今後の経営をしていく幹部として必要な素養も、中間管理職の段階で育成する必要があるわけです。

部長が「大課長化」し、次世代の経営者候補が育たない

そう考えた時に、先ほどの対応にはいくつかの問題があります。もちろん、中間管理職の育成を強化するとか、役割定義を見直すことは、過剰負担の問題もクリアできますし、新たな環境変化や戦略変化に企業が対応していく上では大事なことです。

ただ、本当にその対応だけでいいんでしょうか? というのが、こちらの問題点になっています。増える一方の負担を、個人のスキルや役割変更だけで解決しようとしても、そもそも負担増が変わっていないので解決していません。

特に役割変更で起こりがちなんですが、いろいろな事業や機能がある組織において、マネージャーの役割変更をしましょうということで役割を見直しましたと。ただ、総花的になっていたり、みんなに当てはまるようにしようと思って曖昧になっていたり。

このようなスキル強化や役割変更をしても、結局増える負担自体は変わらないですし、増えた負担も個人の力だけで解決するのはなかなか難しいです。

さらに言うと、先ほどの対応を見ていただくとわかると思うんですが、メンバーへの配慮とか、「チームを活かしていくんだ」という集団維持機能を中心に、今は強化が行われているわけです。

戦略を構想して、決断して実行していくとか、目標を達成するとか、こういったものの強化は実はあまり行われていません。そうなると、将来必要となる戦略構想力や決断力が養われないんです。私もさまざまな企業で接するんですが、結果として部長の方が「大課長」化してしまうわけですね。

現場のマネジメントや現場への配慮は部長の方もされるんですが、大きな構想とか決断力がないまま部長になっていくので、結果として次世代経営者の候補として育たないということもございます。

育成しても、仕組みが変わらなければ負担は軽減しない

このような問題がなぜ起こるのかというと、戦略を実行していく、そしてマネジメントをやっていくという仕組みは、そもそも変わっていないわけですよね。

縦割り組織とか、「承認が必要ですよ」「失敗回避の再現性重視ですよ」という中で培われてきた仕組みを変えられない。その中で、中間管理職の人のスキルや役割を変えても、結果として組織としては変わっていきません。つまり役割定義を変更しても、実際の行動・業務は変わりません。

「もっとチャレンジしましょう」「メンバーを支援していきましょう」と言っても、目標管理でチャレンジしたほうが損をするとか、「みんなでもっと協力して業務を進めましょうよ」ということがあっても、すべてトップダウンで、縦割りでモノが動いていく。こうなると、スキルや役割変更をしても実際は変わらないわけです。

あと、中間管理職の方の業務負担が増えている原因の1つは、プレイヤー部分の業務もあるわけですよね。仕事の仕組み、マネジメントの仕組みが変わらないと、プレイヤー部分の業務も変わらないので、現場で動くべきことも変わらないし、結局は負担も変わらないんです。

こうなっていくと、せっかく中間管理職の育成を強化したり、中間管理職の役割を見直しても、なかなか実効性のあるものにならないという実態がございます。

中間管理職を育成する前に“飛ばしがちなステップ”

では、どうしていけばいいのかというと、本日のテーマの「ミドルマネジメントの再構築」です。環境が変わって実行する戦略が変わっていくからこそ、中間管理職の負担が増えたり、「中間管理職が新たな役割や力をつけないといけない」と、みなさんは目を付けられているわけですが、ここで1つ段階を飛ばしているわけですね。

環境変化や戦略変更に応じて、組織全体のマネジメントの仕組みを再構築しないといけないわけです。仕組みを再構築をした上で、今いる中間管理職と一口に言っても、課長層や部長層の役割をしっかり明確にすることが大事です。

では、その役割を実行するために、どんな力やどんな経験が必要なのかというと、育成をしていくことが大事なんですね。

戦略変更や環境変化に対応すべきだと、中間管理職にいろいろ仕事を任せてきたんですが、それが過剰負担になっています。役割定義と育成だけに頼らず、もう1つの前の段階で、組織全体のマネジメントを見直していただくのが非常に大事になってきます。

では、組織全体のマネジメントを見直すとはどういうことなんでしょうか。大前提として、戦略が変わればマネジメントも変わらないといけないです。

例えば不確実性とか、将来の予見がなかなかしにくい状況下での戦略においては、自発的な動きとか、何かを探していく探索型の強化をするようなマネジメントをしないといけないわけですね。

一方で、一度できた仕組みの再現性をしっかり上げていくとか、効率や改善をしていくところで言うと、できた仕組みをしっかり回していく。それに逸れた行動を減らす意味で制約をしたり、1つのことをしっかり深掘りして深化していくことが大事なんですね。なので、どういった戦略をとっていくかによってバランスを取っていくことが大事になります。

マネジメントの仕組み化に必要な4つの要素

特にこれまでの日本企業は、どちらかというと(スライド)右側、再現性や制約に重きを置いた戦略であり、仕組み化をされていたわけですね。

これからの戦略をしていく上では、もちろん会社や状況によって違いますが、左側の不確実性、自発性を大事にするマネジメントに変えていかないといけません。戦略だけ不確実性に対応して「スピードを上げていきましょう、調整をしましょう」と言っても、物事は進まないわけです。

こういう戦略に対応したマネジメントをどうするのか、いろいろ研究されています。管理会計の分野で(ロバート・)サイモンズという方が「Levers of Control」という4つのレバーの理論を提唱されています。

(スライドの図解は)その理論を、日本の企業に合ったかたちで独自で再解釈したものだとご理解いただければけっこうです。戦略を実行していくマネジメントの仕組みには、「目的と価値観」「対話と学習」「境界と規律」「業績管理」という4つの視点が大事です。

「目的と価値観」というのは、いわゆるパーパス、ミッション、ビジョン、バリューと言われるようなものです。「対話と学習」というのは、トップと現場の対話とか、組織内での対話や学習の機会をどう作るかということです。

「境界と規律」というのは、やってはいけない部分ですね。組織として制約をしっかり決めていって、やらない部分を決める。それから「業績管理」は、目標を立てて、それに向かってどうやって管理し進めていくかというものです。

10年で売上を2.6倍に拡大したワークマンの成長戦略

もう少しだけわかりやすくお話しするために、一例としてワークマンさんのお話をさせていただきます。もともと作業服専門店最大手だったワークマンさんが、データ経営や「WORKMAN Plus」という新しい業態を作っていくことで、10年間で売上が2.6倍に拡大した事例です。

これを先ほどの4つのポイントで見ていくと、戦略はレッドオーシャンではなく、ブルーオーシャンで新しい市場を探して、「高機能・低価格」に舵を切って戦略を導いていく。

じゃあそういう時には、どういうマネジメントの仕組みを作らないといけないのか。「声のするほうへ」ということで、「顧客の声のするブルーオーシャンの部分へ行きましょう」「やり始めたことはしっかりやり切りましょう」という価値観を重視されているということです。

「対話と学習」で言うと、全員がある程度データを使えるような状況まで学習して、データをもってみんなで対話する。こういう対話と学習の仕組みを作られたんですね。

「メンバーへの制約」ではどういうことをされてきたかというと、「しない経営」ということで、「社員のストレスになることはしない」「ワークマンらしくないことはしない」「価値を生まないムダなことはしない」と、しないことをはっきりされました。

「業績管理」で言うと、Excelでデータ管理されていることが、非常にいろいろなところで取り上げられています。Excelで取り扱えるデータを用いて管理して、それを仮説検証に回していく。こういうふうに業績の管理をしていきました。

ということで、新しい戦略に向けてマネジメントを回すためには、4つのポイントがあると見ていただけるといいかと思います。

倒産から再上場を果たしたJALの復活劇

今日の「中間管理職」というテーマで言うと、もう1つ稀有な例なんですが、みなさんもご存じかと思います。JALさんが2010年に負債を抱えて倒産されたんですが、わずか2年8ヶ月で利益を出して再上場を果たしています。

もちろん大きなリストラもされているんですが、だからと言って今回の中間管理職(というテーマ)で言うと、「ごろっと人が入れ替わったよ」という話ではないわけですね。

みなさんご承知の通り、京セラの稲盛(和夫)さんが筆頭となって再生をされたんですが、中間管理職の人がごろっと替わるわけではなく、でも事業として立て直していった。この時のポイントを、先ほどの4つのポイントで見ていくとわかりやすく、みなさんの会社でも活かしやすいかなと思います。

戦略としては、それまで赤字体質だったわけですね。規模がどんどん大きくなっていたので、「赤字体質から脱却して、規模を縮小してでも黒字化していきましょう」という戦略を短期間で成し遂げました。

京セラの稲盛さんで有名になっていますが、「まずは理念やフィロソフィーをしっかりしましょう」ということです。トップとの対話、特にリーダー層がトップとの対話をして、リーダーの教育や意識改革をします。それと、「会社全員で参加する経営」ということで、対話や学習を重視されて、メンバーの自発性を活かしていく。

一方で制約という意味では、「不採算路線から撤退していきましょう」「本業とは少し離れた、非中核事業をしっかり売却していきましょう」と、やらないことを決めました。それを動かす上でけっこう大事な仕組みだったのが、京セラさんで有名ですが「アメーバ経営」。

工場で使っているものをそのまま持ってきたわけではなくて、JALで使えるようなかたちに変えた。「路線や路便別の会計をしっかりしていきましょう」と会計責任を持って、みなさんが動かしている路線や路便が本当に赤字なのか、黒字なのかを見極めて、そこに対して全員が参加していく。こういった経営をされていきました。

先ほども言いましたが、ごろっと大きく人が替わったわけではなく、経営を立て直していったということです。

パーパスやMVVの書き換えが最優先とは限らない

このように、4つのポイントでマネジメントの仕組みを見直していくと戦略はうまくいき、マネジメント層も「どういうことをやっていかないといけないのか」が明確になっていく。

今、大きな会社の2つの事例をお話ししましたが、これらは後付けの事例になるので、「みなさんの会社ではどう見直しますか?」ということです。

マネジメントの仕組み化をする上での大前提としては、新たな戦略を構想して、それを理解する。もちろん、経営部門の人がすでに新しい戦略を立てられたのであれば、それを理解しようというところからでも大丈夫です。

いずれにしろ、「戦略がどうなっていくのか」と「マネジメントをどうするか」は両輪ですので、まずは戦略がどういうものになっていくのか、これからどう変わっていくのかをしっかり中核に据える必要があります。

じゃあ何からしましょうか? という時にけっこうあるのが、最近は「パーパス」なんていう言葉がすごく有名になってきて、「パーパス、ミッション・ビジョン・バリューを書き換えましょう、きれいにまとめましょう」みたいな動きがあるんですが、これは必ずしも最優先でないんですね。

というのも、これから新しく企業を立ち上げるとか、ぜんぜん違う事業に乗り出すとかなら別ですが、言語化されているかどうかは別として、そうでない限りパーパスやミッション・バリューとは何らかのかたちであるはずなんですよね。

それをきれいに書き直すことにいきなり労力を割くよりは、新しく立てた戦略をどう実行して、どう成功させていくのかに着目をする。目線として「まずは業績管理をどうするのか」ということです。

人事評価が先行すると、戦略実行や成功が軽視されがち

業績管理といった時に、ついつい人事評価に引っ張られてしまうんですが、人事評価の前に「新しい戦略における成果や提供価値って何なんでしょうか?」「毎年追い掛けている売上やその他のKPIで本当にいいんですか?」というところですね。

そこが決まってきたら、じゃあ、その成果や提供価値を生み出すためにどう運用するのか。多くの会社ではトップが予算を決めて、それがボトムにただただ割り振られていく。こういう運用で新しい戦略が実行できますか?

特に自発性やチャレンジを重視する時には、運用を変えていかないといけません。そういう運用の1つとして、人事評価にどう反映するかを考えていただくほうがいいかと思います。ついつい人事評価が先に来ると、人事評価の公平性が重視されて、戦略の実行や成功に重きが置かれなくなります。

もちろん人事評価はすごく大事なことなんですが、それを一番に置くというよりは、戦略を実行して成果が大きくなると、結果として人事評価としての原資も大きくなりますし、さまざまな人の上げた成果や評価すべき能力も変わってくるわけですね。

なので、成果や提供価値は何なのか、それをどうやって実行・運用していくのかを第一義として考えていただくことをおすすめしています。

負担軽減のためにも「やらないこと」をきちんと決める

次の段階として「戦略の実行と成功を支える」。もちろん数字を含めた業績管理は大事なんですが、ただただトップダウンでとか、自発性のない数字だけを追い続けてもなかなか人間は動きませんので、対話と学習をしっかりとしていただく。

最近は組織開発として、単発のイベント的に「こういうことをやりましょう」と、さまざまな取り組みをされています。しっかりとしたイベントとか、単発の構造化されたものをするのは、これはこれでもちろん大事なんです。ただ、単発だけでなく、しっかり日常業務にも結び付くような文化にしていただくことが大事です。

組織学習や組織開発を促進するとともに、トップとボトムの対話の機会(を設ける)。これは直接対話もあるでしょうし、今で言うとITやチャットを使った対話もあるでしょうから、トップとボトムの対話の機会をどうやって設計するのか。

学習や対話という意味で言うと、ヨコやナナメのつながりを作っていただくような設計もしていただくといいと思います。こういうことが起こると、自然とイノベーションが起こってきやすくなります。

さらには、メンバーの自発性を上げることはもちろん大事なんですが、中間管理職の過剰負担の問題もありますし、戦略を実行するという意味でも、「やらないこと」をしっかり決めるのは大事なことです。

自発性を上げながら、「新たな業績管理をしていきましょう」みたいなことをすると、中間管理職の方の負担は増える一方になりますし、それどころか会社としての資源配分や集中力も落ちていくわけですね。「やらないこと」をしっかり決めましょう。

幹部層の成功体験から生まれる“呪縛”が足を引っ張る

戦略や業績管理から「やらないこと」や「重要度の低いこと」をしっかり決めることももちろん大事ですし、ついつい過去の成功事例の“呪縛”があるんですよね。

今現在、経営幹部層にいらっしゃる方がやってきたことが呪縛となって、本来は新しい戦略では不要だったり、場合によっては「足を引っ張るようなことでも続けなければいけない」みたいなことになっていることがあります。そこから脱却するという意味で、「やらないことはやらない」とはっきり明言することが大事です。

この上で、パーパスやミッション・ビジョン・バリューを見直すことになるんですが、これは順番というよりは、①②③をしている中で「いや、もっとこういう価値観が重要なんじゃないか?」「今のパーパスではここが欠けているんじゃないか?」ということを見極める機会になるんですね。

いきなり「ミッションやビジョンやパーパスを見直しましょう」というよりは、これらのマネジメント・コントロール・システムや戦略の理解が深まっていく中で見極めることができる。だからこそ浸透もしていく。なので、きれいな言葉にまとめるだけでは意味がない。

その過程で「きちんと見直さなきゃいけない」となったら、もちろん変えていただいてもいいと思います。こういうふうにマネジメントの仕組み化をしていただくということですね。

中間管理職の負担が増える今こそ見直したいポイント

繰り返しになりますが、環境変化とか戦略変更が行われるからこそ、今の段階でミドルマネジメントの方の新しい負担が増えていっている状況です。

育成をしていくとか役割定義を見直すのは、これはこれで大事なことなんですが、その一歩手前の外してはいけないこととして、組織全体のマネジメントを見直していただくことが大事になってきます。

そのためにも、先ほどお伝えした4つポイントを、みなさん各会社の戦略に合わせて見直していただければなと思います。今の戦略と合っているか・合っていないか、あらためて確認していただくところから始めていただいてもよいかと思います。

今日のお話は以上になるわけですが、もちろん「今日のお話だけではなかなか理解が追いつかない」「自社ではどうしたらいいんだろう?」ということもあるかと思いますので、ぜひお気軽にお問い合わせいただければと思います。